第108話 『バードストライク』Ⅱ


「教え子?……まさかあの時、ロッタスの山に居た娘達か?くくっ…ハッハッハ!そうかそうか!冒険者を殺しても出て来なかったのに、その娘達の危機を察知して飛んできたのはその為かジンドー!」


『あぁ。その通り、この子達を潰される訳にはいかなかったからな。……なんだギデオン、レイシアス、その嬉しそうな顔は』


「ふふふっ…!私達、嬉しいのよ?別に私達は貴方が憎い訳では無いの、戦いを通じて分かり合う事もある……その人情を感じる部分はとっても好感が持てるわ」


『殺されそうになった男によくもまぁそんな言葉が出るもんだ…。残念だが情にほだされる事はない、最終勧告だ。今すぐに引き返せ。今ならこのまま消えるの見送ってもいい』


「優しくなったものだ、あの狂戦士がここまで理性的に話し合えるとは…。だが、答えは否。我らはここで退く訳にはいかん。グラニアスはここで解き放つ」


「こちらも忠告はしておくわ、ジンドー。グラニアスを明け渡しなさい。そうすれば…貴方も含めてその子達の安全も保証して上げる。四魔龍は全て私達の支配下……襲わないように命令することも出来るのよ」


『そうか…。それは魅力的だが、生憎あの鳥を開放したくない理由は他にもあってね。……別に、グラニアス一匹くらいならお前達のにもさして問題は無いんじゃないか?』


「まったく、どこまで知ってるのやら…。たしかに残念だ、交渉は決裂だな。だが、貴様だけで良いのか?我ら二人がかりで行かせてもらう…悪く思うな」


「この前は敗走しか無かったけれど…前を張る人が居るなら話は別よ、ジンドー。私達も敗北が決まったあの日から…随分と鍛錬に走ったもの。鍛錬なんていつ以来だったかしら…?」


「そうだ。もし三年前の我らの力を考えているなら、それはあまりにも甘い考えだと忠告しておこう」



2人と1人が相対して言葉を交わす姿は奇妙なことにあまり嫌厭のようには見えなかった


むしろ、どこか理解のある遠い友人のようですらあるのは不思議な関係と言えるだろうが…その芯にあるのは正反対の目的。それを軸にしたならば分かり合える筈もなかった


交渉は即座に決裂、元より戦闘による解決が路線だった双方に退く意志はない


そして、先の戦いで撤退を余儀なくされたレイシアスですらも彼と戦うことに意義はなかった


しかし…カナタは元より彼女の事は強く警戒をしていた



(そりゃそうだろうな…。レイシアスは生粋の「魔法使い」だ。最前線で暴れ回る奴を相手にするのが仕事じゃない、その真価は「後衛」に徹した時に最大限発揮される…チーム戦にすると厄介この上ないな)



レイシアスの事を荒野にて撃退したカナタではあったが、残念ながらあれはこちらの有利を全面に押し出してゴリ押したものによる戦果とも言えた


カナタの持論である「殴れる魔法使い」であれば、あの高機動格闘戦に対応しながら魔法攻撃を仕掛けてくるだろう。事実、カナタはそれを強みとして教え子であるシオン、マウラ、ペトラに教え込んだ


レイシアスは生粋の「魔法使い」だ。近接戦は基本的に行わない…というか弱い。恐らく水晶級の冒険者ならば容易く取り押さえられる程度だ。しかしその分……直に手を出されない魔法戦において無類の強さを発揮する


例えば頼りになる前衛が居る時などはまさにそうだ


故に、カナタは前の戦いでこのように驚きを表したのだ



ーー『前より硬いなッ!どれ、もういっちょ…ッ!』ーー



そう、以前戦った時よりも結界の強度が飛躍的に上がっていたのだ。以前ならば一撃のもとに結界を粉々に砕いて続く二撃目で決着が着いていた…あの時もカナタはそのつもりだったのだ


なのに、結界を盾にした砲撃戦に持ち込まれた…完全に計算外。明らかにレイシアスは3年前よりも圧倒的に力を増していた


この二人の言葉がハッタリではない事はすぐに理解できた




そう……そもそも彼ら魔神族の将ともなれば普段の鍛錬など必要ない。一度会得した強さがあれば人類を蹂躙することなど容易いことであり、実際に何百年と危機感すら感じること無く勇者を屠り向かう人々を片手間に鏖殺出来ていたのだ


それが三年前のあの日に…覆った


ただでさえ人類が何百年と叶わなかった三魔将という化け物が、勝利と生存の為に己を鍛え上げてきたと言うのだ。その辺の戦士や魔法使いが「鍛錬しました」と言うのとは話が違う


だが、それでも………





『俺1人ではキツいって?……どうかな、少し試してみたくなった…!!』



「ッ、来るか!離れろゼウル、バウロ、キュリア!」



「さぁ、いきましょ、ギデオン!3人とも、その女の子達を生きて捕らえればこの戦いはこちらの勝ちよ!私達がジンドーを抑えるわ!」



その挑戦的な言葉に、カナタの闘志は爆発的に燃え上がる。それをギデオンとレイシアスは瞬時に感じ取った


彼らにとって幸いだったのは勇者ジンドーが己の教え子という少女達を連れてきていたことだ。ロッタス山の一件で彼が教え子を大切にしているのは判明している…元より三魔将のみで勝利を掴む予定が、ジンドーを抑え込んで少女達の身柄を確保するだけで彼が止まる事が決定しているのだ


ならば無理にこの怪物を倒す必要はない


そして同時に少女達は……極力殺してはいけない両刃の剣でもあった


もし彼女達を殺してしまったらどうなるのか……



(ジンドーは間違い無く暴走する…!そうなれば手が付けられん…!一先ずは確保だ、普通の勇者ならば殺して問題なかったがジンドーの庇護下にあるならば話は別!もしジンドーが今の力で手段を選ばなくなればどうなるか分からん!)



ギデオンのチリつく緊張感の裏にはそんな計算もあった


この勇者が今でのような勇者ならば何も問題なかったのだ。まずは邪魔な少女達を消し、そして一人になった勇者を消せば終わり…


だが、勇者ジンドーは話が違う


例えば、もしこの場で少女達を殺してしまったら?


そうなればジンドーはなりふり構わず何もかも破壊するだろう。これだけの戦力だ、この男がその気になれば魔神族の拠点とするエヴィオ砂漠に総攻撃を仕掛けることすら可能だろう


今は理性的だが、その理性を破壊してしまえばどんな暴れ方をするか分からないのだ


幸いというべきか…勇者ジンドーは今までの勇者と違う部分がある


それはアルスガルドと魔神族の戦いに興味が薄いことだ


つまり、自分達と敵対する理由があまり無い筈


彼はあくまで、自分の世界に帰ろうとしているだけなのだから


ならば刺激は最低限に、ここでジンドーを殺すことはあってもあの少女達を殺してはならないのが現在のギデオン達のノルマへと変わったのである






カナタの背面が爆発したかのように魔力を炸裂させ、閃光を放つブースターを噴き上げてその身を瞬間的に加速させた


常人の目に見えるような物ではなく、飛び出した衝撃だけで大地は爆ぜるように吹っ飛び衝撃波の輪が周囲を薙ぎ払うような勢いと速度


その運動エネルギーのまま、両腕の腕甲から短いながらに分厚いブレードを手首の甲から出現させレイシアスの前に立ちはだかるギデオンに向けて拳撃のように拳一閃、ブレードの切っ先を叩き付けるように一撃を打ち込む


それをギデオンは、手にした白銀の長剣をその場で突きの構えで顔の横に構え…突き出した



衝突は……切っ先のみ



カナタのブレードと、ギデオンの白銀の長剣はその先端という点のような場所のみを正面から打ち合わせる事となる


そんな極小面積の衝突は周辺の物を爆風で薙ぎ払う程の衝撃を生み出した


ぶつかり合う切っ先では火花と魔力の閃光が瞬き耳が張り裂けそうな音を立てて拮抗が生まれる…その先端同士を打ち合わせる精密な技量と破壊力の両立は相反する筈の要素、それを双方は見事に成立させていた


そこに、ギデオンの後方で杖の宝珠に手を当てたレイシアスが即座に魔法を紡ぐ


詠唱はない、ただ魔力の波紋をもって発動された魔法は自身の頭上に50以上の魔力で固められた発行する闇色の刃を花のように生み出しノータイムで放たれる


空へと打ち上げられた刃は頭上に打ち上げられ、直ぐ様に刃一本一本が機動を変更…まるで誘導するミサイルのように猛速でギデオンと剣先を打ち合うカナタに様々な方向から迫る


が、これを拮抗していた力を抜いてわざと弾き飛ばされたカナタは瞬時に鎧の各部に存在するスラスターが魔力を噴き姿勢を回復。鎧の胸部中心に存在する4色の小さな宝玉に囲まれた水晶状のパーツに魔力の光が集まっていき



『ヴァニシング・フィールド……ッ!!』



破壊の領域攻撃と化して放たれる


カナタを中心にドーム状に爆散する破壊力のみを搭載した衝撃の嵐は自身に迫る魔力の刃を全て粉々に粉砕しギデオンとレイシアスすらも飲み込んでいく…その破壊範囲はカナタから急いで距離を取ったシオン達3人が衝撃波に煽られて地面から足が離れそうになる程のもの


衝撃の嵐が止み去った後にはカナタが立つ地面を残して彼を中心にクレーター状の破壊痕が地面に広がった光景が作り出されていた


しかし、カナタは兜の中で目を細める



『…流石に無傷か、残念』



分かっていたかのように「ふぅ」と一息ついたカナタの視線の先には結界を張ったレイシアスがギデオン諸共にカナタの範囲攻撃から2人を守り抜いた姿がある


溜めのある大威力魔法ならばまだしも、この程度の範囲攻撃ではレイシアスの持つ結界防御魔法…水晶障壁クリスタル・パレスは傷一つ付けられない


それも先日の一件のような即席の簡略詠唱による発動ではなく、正規詠唱によるフルスペックの水晶障壁クリスタル・パレスはさらなる強度を誇る



(面倒な…あれを貫通させるのは手間だな。あれは星核アトムでも分が悪そうだ…耐久力の限界まで砲撃を浴びせまくるのも悪くないんだけど、この手で直接叩き割るのが手っ取り早いな。ギデオンの方もそうだ、まさか不動で受けられるとは思わなかったがこいつら…突入前に盛り盛りのバフ受けて来てんな?)



ため息を付きたくなる


防御が硬いのはまだ良いとして、だ


カナタは明らかにギデオンとレイシアスが前より強くなっているのを感じ取る一方で間近で、打ち合って分かった事が1つ。魔法によるサポートやバフ効果を相当に盛られているのを感じ取ったのだ


防御力、強化、魔法アシスト、付与攻撃、魔法耐性、速度、魔力貸与、飛翔、剛力、金剛体…カナタが思う通り、盛りに盛られた相当量のバフが掛けられているのである


それが、あの2人の…入り込んできた魔神族全員のスペックを引き上げているのだ



「小手調べは止めておけ、ジンドー。今の我らはその程度の攻撃が通じる相手ではないと分かっただろう?」



ギデオンの声が聞こえてくる



(確かに。……これだと向こうの三弟子を俺が速攻で潰すプランも間違いなく邪魔が入るか。まぁいい……プラン通りだ、これでいいんだろ?……先輩。連中の気を引きつつあの2人を落とすならどうするか……ーー)



そう、ユーラシュア跡地の奥深くに据えられた勇者達の霊廟であの日かつての勇者2人が提案してきたプラン


愛しの少女達の身の安全を保証しながら敵を打ち倒すシンプルかつ最も効果的な行動、それは……






ーー暴れ回るッ!!









ーー






「まさか貴様らが勇者の教え子とは思わなかったが……やることは変わらない。潰して連れ帰るだけだ」


「ほんとにあの時の子達じゃん!まさかこんな形で会うとは思わなかったねー。まさかあの勇者のお弟子さんなんて」


「ふんっ……我はまた会う気はしておったぞ?それに、必ずまた戦う日が来るとも、な」


「そうですね。今考えれば三魔将の後継であるあなた達と私達が出会ったのは妙な奇縁でした…まぁ、私達自身もあの時はまさか自分が勇者の教え子だったなんて思いもしませんでしたが」


「えっ、なによあんた達…自分のお師匠様の事知らなかったの?…というか、強いのよねこの子達?あの獣人の子は見たことあるわよ、レイシアス様とジンドーから逃げた時に居た……立ち竦んでた子」


「あぁ。前に俺が傷を負った時は、そこのエルフと魔族の二人がかりだったがな。貴様らも鍛えてるようだが俺達には及ばん、いや…及ばせん。あの時と同じと思うな」


「まーたそんな自信満々なこと言う……また痛い目見せられるんじゃない?で、も!俺は可愛こちゃん達と再会できて嬉しいけどねー」


「む………あの時のチャラチャラした奴っ……」



勇者ジンドー……カナタから少し離れるように歩きつつ、互いに一定の距離を話しながら言葉を交わす。その記憶にあるのはロッタス山で会った時の事だ


あの日、マウラはバウロに得意の迅速で遅れを取り、シオンは力比べと手数で押され、ペトラはシオンと自分の合せ技とその後の大爆発からの防御に魔力をねこそぎ使い果たした…良い思い出はない、良く考えればカナタの教え子となってから初めての敗北はこの瞬間だろう


そしてゼウルにも同じことが言えた


たかだかエルフと魔族の小娘2人の合せ技で全身を負傷した…それは魔神族の中でも強く、ギデオンのもとで次期魔将として力を付けたゼウルのプライドを引き裂いた


ーー次期三魔将となる自分が、こんなぽっと出てきた小娘2人ごときに敗北したのか、と


それまで敗北など知らなかったのはゼウルも同じであった。師であるギデオンや肩を並べるバウロ、キュリアを覗けばまともに自分を倒せる魔神族など居なかった自分を、だ


許せるはずもなかった



「貴様らを引き摺っていけば勇者ジンドーは止まる…幸運だな、自分から弱点を連れてきてくれるとは」


「それはお互い様ではありませんか?そちらを取り押さえれば逆に魔神族が止まる…私達の立場は変わりません。どちらもが戦いを止められるキーカードにして、人質となる弱点…。ただ守られるだけの戦いになると思ってましたがこちらも運が良かったです」



シオンの言葉にギデオンはつまらなそうに目を細める…ああは言ったもののその点は彼も自覚があったのか反論はない


返答の代わりにゼウルは手にしたグレイブをシオンに突き付けるようにして構えるのに続いてバウロは双剣を手に下げ、キュリアは杖を正面に向ける


それに応対して、シオンも手にした戦槍…プロメテウスをゆっくりと振り、ペトラは棒状の可変弓…アルドラを弓型に変形させマウラは両手を覆うガントレット、ユーピタルを拳を丸めて打ち合わせた



「ま、そろそろ言葉は要らないよね。大人しくしてもらおっか。先に向こうの決着が着いてもヤバそうだし」


「ジンドーを早く止めないとどうなるか分からないんだから早くしないとっ。でも…一人くらいなら死んでも大丈夫でしょ?」


「ほざけ。ならばその逆もあって然るべきと言う事で良いな?我らとて…そちらが1人残っておれば問題はないのだ」


「ん……早めに終わらせる…。…カナタを心配させたくない……」



シオンとゼウルが前に進み、正面から相対する。互いに引かず、恐れずに背丈のあるゼウルが見下ろし、シオンが下から見合う格好でその距離はまさに得物が容易く届く位置だ


僅かな間、何も怒らない時間が流れた


何が合図となったのか…


吹き抜ける風か、転がる石か、はたまた少し離れた場所で行われる破壊の応酬による音か







シオンとゼウルが瞬間に動き出した


脚を切り払うようにして低位置を横薙ぎに振り払ったゼウルのグレイブに対してシオンが斜め下から振り上げたプロメテウスの刃が衝突し耳を劈く金属音が伝播した


ゼウルが舌打ちをする…この一撃をなんの表情も変えずに迎え撃ったシオンに、だ


瞬時に的確な迎撃を放ち、ゼウルの怪力に涼しい顔で拮抗する姿はあの日見た自分に押されて傷を付け表情を歪ませるシオンとは別の存在にすら見える


いくら本気ではなく小手調べとは言え、ここまで自分の刃が微動だにしないとなればあの時の彼女とは別物と考えなければならない…ゼウルのシオンに対する警戒度が一段上に上昇する


そのシオンの心臓に向けて突如として彼女の真横に現れたバウロが既に双剣の一振りの切っ先を彼女のぐっ、と膨らみを帯びた豊満な胸の谷間…中心に向けて躊躇いなく逆手で突き入れようとした


姿が見えた時にはもはやシオンの胸に刃が触れる直前という異常な素早さは音すら立てずに移動する姿に瞬間移動する疑うものがあったが…シオンは眼鏡の向こう側から己の胸元に迫る凶刃をちらりと見て………


その視線をゼウルに戻す始末、それに眉を僅かに動かすバウロはその瞬間に彼女の胸を刺し貫こうとした短剣を振るう手がビタッ、と停止した事に引き攣った笑いを浮かべた



「!……追い付くか、子猫ちゃん…ッ!」


「…………やらせない……!!」



まさに刃がシオンの纏う戦闘装束、焔纏の上から胸の柔肌に触れる直前……逆手に短剣を手にしたバウロの手を、瑠璃色の稲妻を纏いながら片手で握り食い止めたのだ


しかも強力な強化によって振られた刃は彼女の片手たけで止められている


これに肝を冷やしたバウロは即座にその場を離脱し…瞬時に目の前に居た筈の猫耳の少女が姿を消したことに気が付き、その感覚が彼女の居場所を一瞬にして捉えた


瑠璃色の稲妻を纏いながら、普段は眠そうに見えるその目は冷たさを感じさせ物に見え、彼女がその目を怪しく魔力の色に光らせながら拳をぐっ、と引いた姿で空中を舞うようにしながら







「え……っ?」








後に居た、キュリアの真横に





「ッ……激震ゲキシンッ、シァァッ!!」




「むっ………!!」



普段おちゃらけていたバウロの鋭い叫びが響き渡り構えた双剣を目にも止まらぬ速さで十数回を一瞬で振るう


一見、離れた場所から双剣を振り回しただけ


だが、バウロが放った技に目を見開いたマウラはキュリアの脳天を叩き割るべく引き絞った拳を即座に引っ込めその場で高速で拳を空に向かって連打する


何も無い場所でただ拳を乱れ打ちしているようにしか見えないマウラのその拳…ユーピタルの装甲は打ち込む度に不可視の何かを「ギャンッギャンッ」と何かを弾き飛ばす音と装甲にぶつかる魔力の閃光が壊れたように弾け飛んだ



「マジか…!なんで弾けんだよ子猫ちゃん……!!この技は……」


「んっ……………もう見た……!!」



魔力を破壊力そのものに直接変換して使用し、放つことが可能な暗黒属性魔法に属する高等魔法…激震ゲキシン


それは魔神族の中でも習得してる者は彼1人と言われる高等魔法であり、その人物の代名詞とすら言われる技術……そんな彼の弟子であるバウロは類稀なる才能とセンスにより見事にこれを継承していた


魔力によって発動した瞬間に破壊力というに変換されるこの魔法の厄介な所は…発動時以外のタイミングで魔力による視認や感知が難しい点にある


手や肉体から直接放つ場合は関係が無いが、これを高位技術によって肉体やその延長から任意の形で発射出来るようになると話は別になるのだ


破壊力に色や形など存在しない、あまりに強ければ空間が歪むのだがそこまでの威力を出せるものなど存在しない


目や魔力感知による防御や迎撃は不可能のはずなのに


マウラはこれを自慢の猫耳によって破壊力が退を感じ取っていた


強く張った緊張の糸とあまりにも鋭敏な感覚器官が、本来聞こえる筈もないほど僅かな音から彼女にその不可視の連撃の軌道を教えていた


さらに、その妙な魔力発生の癖はとても強い…間近で見ていれば既視感が生まれる程に発動した瞬間の魔力が不自然に消失する現象は特殊な前兆、これをマウラは見逃さなかった


何故なら、彼女は一度受けているのだ…武争祭にて


この魔法を生み出した張本人…『絶壊』と謳われるダンスター・ガランドーサの手による激震を手刀や指弾の形で目撃し防御したことがあったのだから



だが、キュリアはこれにぞわりとした戦慄を感じ取る



(なによぉ!?あの時レイシアス様の魔法に何もできずに棒立ちでフリーズしてた子なのに……めちゃくちゃ強いじゃないっ!!全然反応できなかった……バウロ君ごめん…っ)



かつて一度だけ見たマウラの姿…その容姿は特徴的と言える程に目立っていた為に覚えているが、レイシアスが不意にジンドーの動きを縛るために牽制の魔法を放った時、目を見開いて驚き、動けず、ジンドーがその身をたてて守る姿しか無い


突然向けられた敵意に反応どころか驚愕で体がか動かなくなってしまう様はまさに素人、一般人。彼女がいてくれたから生きて帰れたとすら言えるくらいにキュリアはマウラの力を見限っていた


なのにマウラの不意をついた真速の一撃に自分はまともに反応出来なかった


間違いなく、バウロの妨害がなければ彼女の固めた鉄拳により自分の頭は叩き割られていた



キュリアの手のひらが真横で宙へ跳んだ状態で刃を振るうマウラのお腹にぎゅっ、と押し当てられる


マウラの体温すら感じ取れるくらいにその手を押し当てたまま…その手が「ヴヴヴッ」と不穏な音を立てて揺らめく空間の層に包まれた


激震による攻撃を迎撃する僅かな時間に仕掛けられたキュリアの反撃はマウラに回避と反撃の隙を与えること無く、高まる魔力のままに無防備なマウラの腹部に向けてその魔法を発動する




よりも前に




「潰せ………天帝の蛇王アヴァラス・ギドラ




目の前から迫る…エメラルド色の竜巻で体を形作られた30mを超える巨大蛇が、大型トラックのような巨大なアギトを開いて自分を飲み込む直前である事に「くっ…!!」と舌打ちながらに反応する


キュリアがすぐさま手にした木で造られた背丈程もある杖…直線のみで構成された形に先端はダイヤ型に膨らくり抜かれ、その中心に宝玉が浮かぶ愛杖を巨大蛇に向けるように地面へと突き立てれば…



触帝ショクテイ……十鋏纏じっきょうてん!!」



己の才に与えられた魔法を発動する


開き迫る大蛇のアギトを、十の大型の鋏がその顎の十箇所を挟み込むようにして受け止めた


杖のように直線的ながら、その見た目は蟹の鋏のように上の部分が少しの湾曲がありながら長く、下は短い構造であり術者である彼女を上回る3mは優にあろう大きさ


それがキュリアの背面に浮かぶ二重に重なる五芒星の魔法陣、その星の先端から魔力の太い触手によって繋がっており彼女を巨大蛇から守り真正面から受け止めたのだ



これがキュリアの持つ特殊な魔法にして師であるレイシアスですら持たない魔法……触帝ショクテイ・十挟纏


魔力によって固め生み出された大型鋏を自身の周囲に従えて操る事であり、その見た目に違わぬ鋏による物理攻撃が可能。さらに魔力を凝縮して形を作られている事から……風を編んで造られた天帝の蛇王アヴァラス・ギドラ実体魔力本体を掴みとり受け止めていた



「邪魔、しないでよっ!!放て!ショックバーストッ!」



ビシッ、と天に向けた指先を振り下ろしたキュリア。大蛇を掴む大鋏の、その鋏の間にギュルルルッ、と空間がたわむようなエネルギーが集まり…十の大鋏が同時に凄まじい衝撃波を放った


大地ごと根こそぎ吹き飛ばす威力のそれはゼロ距離で受けた巨大蛇が半ばから消し飛ぶような威力であり、ぐにゃり、と空間を歪ませながら消し飛んだ巨大蛇を超えて伝播した衝撃波がペトラに迫るがこれをペトラはアルドラに手を添えて



「…ギドラが破壊されたか。侮れん…しかしこれも偶然か?……似ておるな、発想は同じか」



彼女の中心に翡翠色の竜巻が突如として立ち上がり、回転する爆風の竜巻は襲い掛かる衝撃波を完全に受け流した


役目を果たした竜巻は一瞬にして拡散して消滅


そこにマウラが跳び退り戻ってくるのはほぼ同時だった



「……ありがと、ペトラ…。…あいつら強いね、やっぱり…」


「うむ……この装備でも取り敢えずは流される、か。やはり、加減はせん方が良さそうだな。向こうもそれ程力は出してるように見えんが…」



耳打ちするように話すペトラとマウラだったが、それは相対していたバウロとキュリアも同じだった



「ごめん、バウロ君…油断した。あんなにあの獣人の子が動けると思わなくて…」


「前会った時も速かったけどね、でもあそこまでじゃなかったなぁ…あれ、とんでもなく強くなってると思う」


「うん。魔族の子も相当強いわよ。どんな魔法なのか分からないけど…でも、あの大きい蛇みたいなの。あれの魔法理念は多分…私の十挟纏と同じね。風の魔法みたいだけど」


「確か、子猫ちゃんはスピードスターでエルフちゃんがパワー担当、そんであの魔族ちゃんがサポートとブレインだったかな。子猫ちゃんが居る限り、俺の暗殺は通じないと思った方が良さそうか…とは言え、子猫ちゃんの速殺も俺なら防げる」 


「私も魔族の子との魔法比べになりそうだけど、サポートまで手を回せるかな…。あの蛇一体倒したから暫く出て来ないとかだと嬉しいんだけど…」


「いやぁ、あの落ち着きぶりはまだまだやれそうな感じだねー。これ、簡単な仕事じゃないよ?」



助けられたキュリアだが、その驚きと共に相手への侮りを捨て去った


更には次なる強敵…高い練度による特殊な魔法を操るペトラを前に強い警戒を示す


バウロもジンドーの相手をせずに小娘の相手と高を括っていたらまさかの成長を遂げている3人に開幕の出の悪さを感じ取っていた


この調子だと恐らく、前までは押せていたゼウルの方も…

 

そう思い向けた視線の先では


強烈な金属を叩き付ける轟音を凄まじいペースで響かせて振り回すグレイブと長槍を打ち合わせるゼウルとシオンの姿が目に入る


驚くべきことに気の所為でなければ2人は打ち合った時から……


引かず、避けず、押されず…その場で器用に互いが長柄の得物を風音を切って振り回しながら相手の一撃を防ぎ、打ち込み、弾かれの応酬を繰り返しているのだ


僅かに溜めを作ったゼウルの一撃が冗談から振り下ろされ、これを両手で構えたプロメテウスにより受け止めたシオンだが…その一撃は強烈


受けた衝撃に地面には亀裂が入り、シオンの脚が僅かに後へとずりずり、と下がる程に



「シオン!一度戻れ、組み直す!」



背後から飛んできたペトラの言葉に返事をすること無く、ゼウルが押し込もうとする力を素直に受けて真後ろにステップを踏む


強く弾き飛ばされるものの、地面にプロメテウスの石突を思い切り突き刺してブレーキをかける事でピタリとペトラ、マウラの元へと戻って来た



「やれそうか?」


「不可能では無い…といったところでしょうか。今の所は互角…と、言いたいですが力は向こうが上と言わざるを得ません。本気でやり合えばどの程度の差が出るかはなんとも…」


「………もう使早く終わらせよ……?……チャラいのには追い付ける……あれは私がやるね……」


「問題はあの女術師の方か……あまり不用意に近づき過ぎん方が良い。あの魔法が我の物と似た物ならば面倒だ」



プロメテウスを構え直すシオンは少しばかり表情を曇らせながら正直な戦力評価を口にする


互いに全力ではなかった…いきなり手の内をすべて晒すのは愚行と判断したペトラによる、様子見の一手。それはマウラが言った通り…それぞれの特異魔法を使用せずに仕掛けられたものだ


この戦闘装束と武装がもたらす上昇したスペックにまかせて戦いを仕掛けたが、マウラはバウロと現状は互角。ペトラはキュリアを警戒し、シオンはパワー不足を改めて実感する結論を得る


ここでペトラは特異魔法を解禁し、一挙に攻め落とす事を考えた


そのメリットは初見殺しにて瞬時に相手を屠り去る、まさに速攻


だが、デメリットは対応されれば勝ちの目は潰れこちらは消耗するだけになる事。通じないとは思いたくないが最悪の可能性は常に頭の中を過ぎる



(ならばこそ…徐々にギアを上げていくべきか…?しかし、カナタの方の戦いもある。早めに決着は付けるに越したことはない…だが、我らがこ奴らを制圧すれば魔将は止まるだろうか?敢えてカナタの前に連れてきたのならば弟子と言えど犠牲とするのも厭わない可能性がある…ならば、無理に戦う事での我らの消耗はカナタも望まない…。思い出せ、カナタとの約束を…プランは変わったが『欲を出すな』と言われた筈だ)



魔将との戦闘からその弟子との戦闘へと計画は変わったが、言われたことは変わらない。それは『欲を出すな』という一言に尽きる


ならば方針は、即トップギアによる『即時殲滅』ではなく、ギアを段階的に上げての『制圧による捕縛』になるが、しかし加減は無理な相手と来ている


ならば…



「2人共、8割だ。消耗とデメリットが現れる分水嶺まで本気で行くぞ」


「異議無し、です」


「ん………」



本気と呼べる力で、しかし本気を超えた力を出さないようにする


今のペトラ達ではこの装備による凄まじいバフを受けた状態での100%を超えた力の発揮は自分が負荷に耐えられなかったり消耗が激しくてすぐに時間制限が来てしまうような物だ


そこまでは決して出さずに、されどもエンジンはかけていく


シオンとマウラが同時に頷く



改めて武装を構え直す…今度は自分の特異な才能の力を込めて





様子見はもう終わった、ここからが本番である




















その3人と、相対した魔神族の3人が突然の爆発と衝撃、地震と爆音に思わず思わず飛ばされそうになった


あまりの衝撃波に姿勢を低くしなければ両足が離れてしまいそうになりながらその方向に目線を向けて、絶句する



離れた場所で……キノコ雲が何本も立ち上り、大地は綺麗にすっぱりと両断されたような渓谷が量産され、花火のように連続して空中をと地上を彩る連爆の火が咲き乱れる…地獄のような光景がそこにはあった


大地には無数の魔法陣が輝きを放ち、連続して放たれる光弾の嵐が空を焼き尽くしていきそれによって生まれる煙や爆炎がフルーツでも切断したかのようにバラバラに両断され、その合間から漆黒のレーザーが連続して放たれ地上を消し飛ばす


巨大な魔法陣からビルのような大きさのゴーレムが5体同時に立ち上がり、一点に向けてその手を伸ばし…瞬時にドーム状に爆散した破壊の嵐が全てのゴーレムを粉微塵に粉砕し岩石の屑へと変貌させ、そのドーム状に放射されるエネルギーの中心に向けて三日月型の電柱を超える巨大な斬撃がマシンガンのように乱れ撃ち


ようやくその姿を肉眼で捉える……飛ばされる斬撃全てを両腕で叩き落としながら肉薄した漆黒の鎧が空中で白銀の剣を振るう男に拳撃一閃、大地に叩き付けるように殴り飛ばす


その場に滞空し、左右にそれぞれ手を向けた漆黒の鎧はその手の先に集め、生み出した……巨大に膨れ上がる漆黒の星を、左右で2つ



『まだまだァ!!その程度じゃないんだろうギデオン!レイシアスッ!さぁ堕ちろ滅びの特異点、我が障害を事象の彼方へ屠り去れッ!……星核アトムッ、双星ジェミニィッ!!』



空より落ち迫る漆黒の巨大魔力球……超重力により造られた破壊の星が2つ揃ってカナタの両手から同時に投げ落とされるようにして地上への落下を開始する


当たれば重力波による破壊の嵐ですべてが無に帰す黒き星が、地上で莫大な量の魔法陣を操るレイシアスの元に向けて隕石のように放たれたのだ


その大きさはまるで5階建てのビルを丸めたかのような巨大さ、全てを押しつぶし破壊し尽くす暴虐の天体


地に迫る寸前……叩き落された筈のギデオンが自身を覆っていた岩石と土砂を吹き飛ばしてダメージなど感じさせずに一目散に空へ飛び出した



「右は俺がやる!レイシアス、左をッ!」


「任せなさいッ!」



右側に落下するそれをギデオンが振りかざした白銀の剣が僅かにブレる動きを見せた。膨大な魔力を肉体と剣に込めて、まるで居合のように腰から剣を抜き動かすようにして



断骸ダンガイ……微塵ッ!!」



振られた白銀の剣、そのコンマ数秒の後



破滅をもたらす漆黒の星はサイコロ状にバラバラに解体されて魔力を霧散させ消滅する事となる


膨大な魔力による破壊と切断、魔法すらも切り刻む異次元の技能によってギデオンは放たれた星核アトムを無力化する




「神撃…空振…廃絶の魔穿ッ!極線ウルトロンッ!」



レイシアスの杖から放たれる魔力の光が放たれ、彼女の背面に浮かぶ4つの巨大魔法陣からも同じ様に放射される光が目の前の3枚重ねの魔法陣へと集約された


それは最後の1枚の魔法陣を通った瞬間…巨大なビーム砲と化して放たれる。真正面から漆黒の星を捉えたその一撃は押し退けるか押し上げるかの拮抗の後に……漆黒の星を見事に貫通、爆散させた


当たれば終わりの一撃を2発それぞれを、1人ずつ瞬時に処理をするその姿はあまりにも常識外れの魔力と技量…尋常ならざる力と力の衝突は完全に戦いの次元が桁外れに違っていた


大爆発を引き起こして爆散した漆黒の星は空を埋め尽くす爆炎となって地上を太陽より強く照らし出し、その爆炎を背中に背負い…





その男は空より悠然と、少しずつ…まるで帝王が階段を一段ずつ降りるようにゆっくりと降下していく



金色の双眼を輝かせ、漆黒の装甲を持つ鎧に走る線は光を放ち、背面からは天の使いと見間違う程に神々しく写るエネルギーの放射が翼のように広がり


両手を僅かに広げ、腰の位置で掌を上に向けながら…そこにギュンッ、と凝縮される黒紫色に輝くスパークを纏ったエネルギー球を浮遊させ、全身から放つ魔力の波動は空間を歪ませて見えるその姿



「ば、化け物め……ッ!」


「洒落になんねー……マジかよ…!」



魔神族最強と言われる師が二人がかりで…周りの全てを破壊しながら激突し文字通り抑え込むその相手に戦慄くゼウルの口から漏れる言葉、キュリアは目を見開いて震え、バウロは冷や汗を流す




彼らは初めて目撃する




同胞の先人達が口を揃え、『黒の災禍』『異界の怪物』『機巧帝』と呼び恐れた最悪の存在


ただ1人で魔神族数百年の悲願の全てを終わらせたとされる正真正銘の破壊者


今、彼らの前にーー







『さぁ、続きをやろう。そうでなければここを去れ。グラニアスかお前達…どちらかの命はこの場に置いていってもらおうか』







ーー勇者が現れた






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【Database】



『ペルトゥラス・クラリウス』


〘種族〙魔皇族アークデモニアム


〘年齢〙15


〘魔法名〙刻真空撃エストレア・ディバイダー(基本属性・風)


〘魔力量〙899030(数値化による誤差あり)


〘職業〙魔法使い


〘身体〙165cm B88 W56 H86


〘来歴〙

愛称は「ペトラ」であり、心を許した者にはこの呼び方を許す。

ケネルーの森に存在したユーラシュア巨大亜人集落にて産まれ、生活してきた少女。その中でも古よりユーラシュアを支え導いてきた最古の四家であり、知識を護りその資料や歴史を継承し守護してきた司書の一族であるクラリウス家唯一の生き残り。全魔族の中で最も高位かつ高貴な種族であり、古に存在した魔族で初の帝王となり中でも最強の力を持っていたとされる魔族…その『魔王の直系譜』とされる希少種族…魔皇族アークデモニアムの少女。その中でも特に強大で才気に満ちた天才と言われ、圧倒的な魔法センスとそれを感じ取る鋭敏な感覚は一族でも類を見ない程。

思考を深く、先を読み、現在を組み立てる知恵者であり親友達をその先賢によって助け導いて来た。料理全般を得意としており、その古風な言葉回しに似合わず家庭的。古風な言い回しは尊敬する祖父の真似であり幼き日から真似していたらいつの間にか染み付いてしまっていた。

さらに古めかしい言葉使いに似合わず大の甘党であり、大好物は生クリーム。菓子作りの達人である親友のシオンが作るケーキは大好物で、時折彼女にせがんで作ってもらうのだとか。

しかし、冷静で知略家の性格とは真逆に己の懐に入れた相手の事となると一転して激情を見せる事もあり、それがむしろ彼女の心を許した相手への親愛の深さを物語っているだろう。


神藤彼方と出会い、彼に助けられ拾われてから共に暮らすようになる。

共に暮らすようになってから、時折彼が無表情の奥に見せる不器用な優しさや、厳しいながらも魔物にすべてを奪われた自分達にこそ、と戦いの術を叩き込んでくれたことには深く感謝しており、だがそんな彼があまりに影の差した姿が多いのを見て日に日に「この人を一人にしてはいけない」という感情を膨らませていく。その甲斐あって彼が明るくなってからはさらに心を寄せ、強い愛情を心に宿すに至った。


戦闘力・

まだ己の力を知る前にユーラシュアが滅亡する憂き目に会ったが、後に最愛のパートナーとなる神藤彼方に拾われてからその才能を開花させた。

保有する特異魔法、刻真空撃エストレア・ディバイダーはあまりに前例無く、危険な魔法でありこれを教えた彼方からも「慣れるまでは決して無闇に使ってはならない」と強く念を押された。


その魔法効果は「消滅」

あらゆる物を、魔法が接触した瞬間に消滅させ虚空の果てに葬り去る力であり、物質に使えば魔法が発動した箇所だけが綺麗にくり抜かれたように消滅する。魔力や他の魔法ですらも例外ではなく当たれば消滅してしまう力はあまりにも強力無比かつ誤射すれば取り返しのつかない魔法でもある事から師である彼方からは力を付けるまで発動を一切禁止されていた。

万物を消し去る力ではあるが、強い魔力を持っていたり魔力操作に長けていればその魔力によって消滅に抵抗することも可能であり、その場合は負傷のみで留まるものの高い集中力と魔力を削ぎ落とす事になるだろう。

人に使えば体の一部を文字通り消滅させてしまい、重要な臓器に当たれば即死、前例のない傷跡となる事からも治癒は非常に難しく高位の聖属性魔法が必要とされる。


だが、真に恐れるべきはその魔法への極めて高い練度と精度にある。

肉体による能力は親友2人に及ばないが、こと魔法関係に関しては魔法の一族であるエルフの頂点、エンシェントエルフのシオンですらも及ばない能力を誇る。保有する風属性魔法は風の刃から竜巻、付与バフには追撃、速度、防壁等の様々な魔法を操り同時発動可能な魔法は簡単なものならば100を有に超える。

その極地こそが「単身による複数過程処理発動による大規模儀式魔法の発動」であり、これを行える者は世に指の数で数えられる程度しか存在しない。


戦闘スタイルは親友達の中でも随一を誇る体術による近接戦闘と風属性魔法による広範囲攻撃や遠距離攻撃とバランス型だがその真価はチーム戦にある。


その明晰な知略による戦闘の組み立てや駆け引き、付与による味方の強化、風による高射程攻撃に味方の防御と多くのファクターを1人でこなすチームの心臓となる事こそが特に強みを発揮する部分でありこれに加えて消滅の魔法による一撃必殺を狙う、敵からすれば非常に厄介な存在となる。


愛武器は弓。これは元々家族から弓を仕込まれていた事もあり、今では棒術も体得して戦棒と弓に可変可能な武器を使用して2つの形態の武具を操る。

その狙撃精度は非常に高く、風の流れを読むことである程度の大きさの物ならば2,300m先のものを容易く撃ち抜く程。

主に矢ではなく魔法弾を撃つのが得意であり、手や魔法陣から放つよりも射撃速度や弾速、精度、威力に優れる事から特に愛用している。

弦は魔力の糸であり、これは増やすことも可能。弦をすべての指に掛けて引いたりと工夫することで秒間7,8発の驚異的連射を可能とする。


実力は間違いなく白金級に相当するものがあり、武争祭では己の力のみで城壁用の客席を守る巨大な防壁を一撃で吹き飛ばした上で周辺を壊滅させかねない程の魔法を行使した。

これは発動時間や単独での魔法という点を鑑みればすぐに金剛級冒険者パーティや国から高待遇でのスカウトが雨あられと来るような事であり、この時は観戦していたラウラ・クリューセルにより無力化された。


お気に入りの魔法は天帝の蛇王アヴァラス・ギドラ

全長30mを超える大きさの、翡翠色をした暴風で編み込まれた体を持つ巨大な蛇を作り出して操るオリジナル魔法。

巨体を構成する凄まじい爆風を利用した体当たりか咬撃、盾として立ちはだかる等の多岐に渡る活躍を見せ、最大で8体を同時に操ることが出来る。一体ずつがそれぞれ風属性のブレスを放ち広範囲を削り取れるが、その真の力は一体ずつがそれぞれという事。

同時に同じ魔法を使うのではなく、違う発動者として魔法を彼女の意のままに使用する事が出来、これは事実上ペトラが9人に増えてそれぞれ魔法を使ってくる事に等しい。

その真髄こそが、魔法使いが複数人で発動する超魔法である大規模儀式魔法をペトラただ1人で実現可能である点にあり、単身で放つ魔法とは別次元の複雑で緻密かつ強大な魔法を彼女は1人で発動する事が出来る。


これを最大限に利用したとある魔法を最近は必死に試行していたとか…





〘・・・〙

「何が」とは言わないが彼方とする時は覆い被さられるのが大好き。特に体重を掛けて思い切り奥まで抉られる◯◯ぴーーーけプレスなる物が最高らしい。抜かずの最高記録は4回。わりとМ気質ではあるが、かなり尽くすのが好きで結構な奉仕好き。じっくり口でしたり、胸とか太腿に挟んだりボディソープを裸体に絡ませて彼に体を絡み付かせたりと割と隙がない。そのせいかテクニックは随一であり、曰く「喉に酷く絡むが…飲むのも結構好きだな、我…だが一番は中だ、これは譲れん…!」らしい。欲しい子供の数は3人。持ち前のテクニックでたっぷり彼に薪を焚べてから一気に燃え上がって自分を食べてもらうのが大好きなんだとか



〘一言コメント〙


「あの中に熱く重いモノが弾ける感覚は……とても良い。うむ…カナタの命の種が我の腹に入り込んでいると考えただけで…ち、ちょっと濡れる……っ。上から体重をかけて激しくされると、カナタに貪られてる感じが強くてなっ……も、もっと我の肢体を味わって食い尽くして欲しいと思ってしまったり……っ。こう、仰向けで尻を上げて迎えに行く感じでな?そうするとカナタが上から叩き付けるみたいに激しく打ち込んでくる感じで…あっ、実はカナタは事前に口とかでじっくり奉仕してからすると出す勢いとか量とか濃度がかなり上がる質でのぅ?ゼリーと、とろろを混ぜたみたいな…これがかなり気持ち良さそうにするものだからワレモドキドキしてしまってな?ち、ちょっと悪戯で1時間出させずにずっと口と胸で奉仕したら火が着いたカナタから抜かず4連発とかされてしまって…さ、流石に壊されるかと思った…っ。いやっ、カナタになら壊されても良いっ。苦しいくらい下腹が熱く重く張った感じがして、カナタの種がぎっちり我の腹奥に詰め込まれてるのを感じるとなんとも言えん気持ち良さが…っ、もうパンパンで入らないと体は訴えてくるのに我の心はもっとたっぷり欲しがってしまうのだっ。あんなに濃く強く種を仕込まれると流石の我も相当激しくイーーー」


※コメントが長時間に渡ったので割愛



ある意味一番カナタとのは間違いなくこの女である


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