第96話 黒き星の慈悲


晴天の空に一陣の風が吹き抜ける


ただ足に力を入れて、筋肉を膨らませて傷口を狭め塞ぐ…それしか可能な対処は存在しない傷口から、壊れた蛇口から滴る水のように真っ赤な体液が地面へと落ちていた


だが、それを気に留める者は当人ですら居ない


…それどころではないのだ


太腿を貫通する重症は本来ならば無視してはならないものだが、吊るされた男にはそれどころでは無い問題がある



「どうだい!?いくら勇者とて魅力的な提案だと思うんだけどね!これを無碍にするのは少しばかり早計が過ぎると思うんだ!」



貫かれた太腿の痛みを無視して捲し立てる…いつの間にか、己を掴むその腕を殴り抵抗していた手は縋るように落ちない為にしがみつき、悪態をついていた言葉は機嫌を伺い下出に出る物へと移り変わっていた


金剛級冒険者であるゼネルガ・クラシアスは命乞いも機嫌伺いもしたことはない


その態度が冒険者ギルドでも問題になる程に傲岸不遜であり自己中心と自己愛の権化とも言える性格は度々対人にトラブルを引き起こしていた


だが…それを通してしまう力は、確かに持っていたのだ


でなければ、冒険者ギルドはゼネルガに金剛級の称号を与えたりはしない


まかり通してしまえていた…だからこそ、ゼネルガは自分が下に出たことなど一度としてなかったのだ


しかし、それもこの瞬間までは別


力の差は明白どころではない


あしらわれただけでも分かる強さの次元…誰もが知る圧倒的知名度、そしてその武勇伝は自分などでは到底及ばない相手が今…自分の命運を掴んでいる


漆黒の闇を写し込んだような分厚い装甲、力の流れる線を描くような光のラインが走り、胸の中央には4色…赤、青、緑、金の星のようなぎょくが大きな円型のパーツの周りを彩る


関節部は不自然な程に継ぎ目も見えない正体不明の構造であり、足の裏と背中の装甲が展開してそこから光の粒子を噴出させて空を駆け抜ける


その装甲はゼネルガの攻撃を受けても傷一つ入らず、そもそも触れる事すら叶わない魔法力によるシールドが張られ、フルフェイスの兜のような頭部には呼吸や目視のための穴すら無く、目を象った双眼型のバイザーが不気味に金色の輝きを秘めている


知らぬ者など居ない、黒鉄の勇者


3年前の時点…数百年に渡り世に蔓延った異界の怪物である魔物の7割以上を殲滅し、滅びの象徴であった魔神族をその手で蹂躙…滅亡の根源であった魔神を抹殺した正真正銘の救世主


そして……自分が成りたかった存在


今、自分の命を左右しているのはその男なのだ


捲し立てる提案と懇願の入り混じった言葉に対し、不気味な程に言葉を返さない彼に、どうにか言葉を重ねていくのはひとえに死にたくないからである


自分ならば例えこの後、全てを罪に問われて投獄されたとしても…生きてさえいればどうにか出来るだろう。抱え込んだ資金で買収して外に出るもよし、力尽くで脱獄もやってやれる筈だ


でも…死んでしまえば終わりなのだ


この足の傷も放置していれば命は数日と無いだろう。しかし…投獄されるという事は「生きて罪を改める」事だ。アーティファクト『キルスティン』によって開けられた傷は治癒される事は無いが…目の前にそれを治してのけた『前例』が居る


もし投獄や生かして貰える流れならば…死なないようにこの傷も治してもらえるかもしれないのだ


そう考えたゼネルガが、プライドも自尊心も全て投げ売って命だけは助けてもらおうと乞い願うのは当然の事であった



「勇者ジンドーの活躍なら知っているさ!そう、君は致し方ない相手ならば始末していたがそう人間相手に力を振るうことは多くなかった筈だ!俺は君が殺してきたような人間程に何かをしたかい!?まだ誰も傷つけていない!た、確かにやってしまいそうだったが…未遂だろう!?な、ならば少しくらい考えてくれてもいいとは思わないかな!?」



勇者ジンドーは人間相手でも容赦はしない


これは有名な話だ


とある街の真っ黒な領主や魔神族に媚を売り民を差し出そうとしていた商人、誘拐した子供を売る奴隷商や村を襲おうとした盗賊…勇者ジンドーはその悉くをなんの躊躇いもなく抹殺した


人間の味方というより『理不尽に対する理不尽』…それが勇者ジンドーという存在


彼の善悪による判断にかかるが…その判断によっては即座に抹殺される


それは尾ひれの付いた噂ではあったが…ゼネルガはこれが間違っていなかった事を今、確信していた



(冗談じゃない……!本物の勇者ジンドーが何故カラナックで大会なんかに参加しているんだ!?こんなイレギュラーさえ無ければ俺は今頃…ッ!クソッ!クソッ!クソッ!この屈辱は絶対に忘れない…!だが、今はとにかくこの場から生きて帰らなければ…!)



自分の…いや、こんな予想など不可能な巡り合わせを内心で口汚く呪う


ーー最初はラウラ・クリューセルが来賓として現れるから武争祭に出場したのだ


優勝の暁にはクリューセル家への褒賞として彼女へ自分のパーティ入りを褒美として要請し、晴れて世界で最も名のある聖女であり美女であるラウラを加えた勇者パーティとして活動を行うプランを建てた


その最中には自分を飾るに相応しい華となる女をパーティメンバーとして加える。当然、手段は問わず、だ


腕前と美しさを兼ね備えた新生勇者パーティを打ち立てた後には、呼び寄せた魔物の群れをパーティで打ち払い勇者として、パーティとしての華々しい初陣に仕立て上げる


これを自分の武勇伝の皮切りとし、勇者としてラウラを筆頭としたパーティの美女、美少女達を愉しみながら世界を漫遊し、時には依頼を熟してはこのゼネルガ・クラシアスの名をアルスガルドに響かせる……


一国の王ですら勇者である自分には強く出れず、逆に己の力を貸して欲しいと頭を下げるだろう。自分に上手に出れる者など居なくなる


勿論、自分だけでは勝てない相手はこの世界にも居るだろう


不遜にも「最強の冒険者」と讃えられるレオルド・ヴィットーリオには認めるのも癪だが間違いなく勝てない…この身に纏うアーティファクト達をフルで使っても勝ち目はないと分かっている程に強さのレベルが違う


だが…それは単騎での話だ


最高の聖属性魔法を操るラウラを後ろに控えさせた自分は即死しなければ不死身に近いだろう。そうなればいくらレオルドと言えども自分には勝てない。高位の魔法を操る魔法使いをパーティに加えておけばその勝率はさらに上がる


…故に、高等魔法や範囲魔法、見たこともない効果の特異魔法を操るペルトゥラス・クラリウスに目を付けたのだ


その彼女と仲の良い2人の少女も目を惹くどころでは無い美しい華であり、同時にそれぞれが違う属性の高等魔法に加えて体術と強化魔法まで一級品と来れば狙わない手はなかった


この3人とラウラが加われば…間違いない、最強の勇者パーティに至れる


…当然、これは理想のプランでありいくつかの障害はあるだろうが、ここまで上り詰めた腕前と様々な遺跡で手に入れたアーティファクト達があればどうにでもなると確信していた




何もかも……この「勇者」が居なければ、そうなった筈なのだ




魔道具創作において反則を通り越した技能を持つ「黒鉄の勇者」の抱える少女でなければ、ペルトゥラス・クラリウスはラジャンによって魂を隷属させられていた


待機席で接触した時に、師である男を目の前で潰し残りの2人もいただける予定だった…それがこの男でなければ


決勝もそうだ


アーティファクトは完全に決まっていた。ライリーの登場は予想外だったが、完全に裏をかいてキルスティンによる一撃を決めたのに…己の魔道具によって原理は不明だが無傷で復活を遂げたのだ


何もかも、黒鉄の勇者でなければ問題なかったのだ



『ならこれは知ってるか?今から僅かに数週間前……黒鉄の勇者は自分を呼び出した召喚主の内主要の2人を自らの手で細胞の欠片も残さず抹消した。転移で逃げたその2人を、さらなる転移で追い詰め2人が集めた数多の兵を地形ごとこの世から消し去り…存在の痕跡すら残さずにな。……残念だが、お前の考えるお優しい勇者様はここには居ない』


「まっ、待ってくれ!は、話そう!何か俺のことを勘違いしているんだ!俺はきっと役に立つ!あぁ必ずだとも!そ、そうだ!心配なら俺に隷属の首輪を付けてくれてもいいさ!それとも勇者ジンドーは、そこまでしても俺が怖くて始末したいのかな?は、ははっ!そんなことは無いだろ!?」


『いや、怖いな。怖くて怖くて…今すぐ始末しておかないと安心できないんだ。何故なら俺と同じ「勇者」だからな、ゼネルガ・クラシアスは…。念には念を、お前だってそうするだろ?』


「あ、い、いやいや!勇者だなんてとんでもない!馬鹿の戯言さ聞き流してくれ!き、君と同じ勇者だなんて口が避けても言えないさ!ごっこ遊びだよ、ほら!子供だって良くやってるじゃないか!そこに目鯨を立てのは大人げないと思わないかな!?」


『よく言えたもんだ…悪いがのお前と違って、俺はまだ17になったばかりの子供なんだ…仕方ないと思うよな?』



何を言い立てても、悩み考える素振りが無い


完全に、自分の行動に絶対の自信を持っている証拠


ゼネルガにとってこれ程厄介な相手も居なかった


そして、必死に生き残るための方便を考えるゼネルガに対し、カナタは実のところ内心とても複雑な思いを抱えていた…






(…えぇ…こ、子供って勇者のごっこ遊びとかしてるの?恥っず…王都戻るの怖くなってきたな…目の前でされたら膝から崩れ落ちるかもしれない…)





めちゃくちゃどうでもいい事だった


なんならゼネルガが必死で言っていた内容は半分以上聞いてなかった


無邪気に遊ぶ子供がまさか自分の真似をして格好つけながら仮面○イダーごっこよろしく勇者ごっこに興じてノリノリで遊んでいると考えてしまうと…耐えられそうにない


そんな事を考えながらも、ゼネルガの一挙手一投足には目を向け続けていた


こういう輩は大抵…



『それで…そろそろ何か思い付いたか?』


「ッ……」



ゼネルガの表情が苛立たしげに歪んだのが見えれば盛大なため息と共に『…やっぱりなぁ』とボヤく


自尊心と自己愛ばかりが肥大化したナルシストの塊…そんな輩がこの程度で真に下手に出てその命を乞うなんて…ある訳が無いのだ


大闘技場でもそうだった


身に付けたアーティファクトを使っても勝てないと思う程追い詰められた極限の状態でも相手を殺して見下す事をしっかりと第一プランに据えていた男だ


今、こうしている間…何も考えていないなどあり得ない



「ッ…調子に乗りやがって…!いくら勇者と言えどもは耐えれないさ…!替えが効かないから使い切りだけどねぇ…!」



やはりと言うべきか、ゼネルガはそれまでの卑屈な表情を仕舞い込んで普段の自信に溢れた物へと切り替えた


カナタの腕にしがみついていた手には魔法袋から取り出したであろうそれがいつの間にか握られていたのだ


金属製の手の平サイズ程しか大きさがない鏃状にも似た物体だった


先端は閉じたチューリップのような形をしており、矢を半ばでへし折った様な鉄棒の先にそれがくっついている用途不明の形状をしていた


それを思い切り…カナタの鎧の胸部分に突き立てたのだ


当然ながら、カナタの鎧…リベリオンには突き刺さるどころか傷一つ負わないが、鏃はまるでマグネットで貼り付けるようにリベリオンへとくっついたのである



「また油断したねぇ!その爆針致ボム・カラットは付いた物であれば生き物であろうとそれ自体を爆発させるアーティファクトさ!呪いでも何でもない、爆発化の効果だ耐性なんか関係ないね!これならどんなに頑丈でも無駄さ!強制的にお前は木っ端微塵だ!ハハッハハハハッ!バラバラに吹っ飛んで死ねジンドォ!」



リベリオンに引っ付いた鏃のような部位が赤く点滅を始めた


その点滅は次第に早くなっていくのを見るに、カウントダウンで間違いは無かった


それはまさにアーティファクト…古代の遺物と呼んで然るべき、対象の強制性質変化を齎すアーティファクト


遥か昔は一本の矢であったそれは、命中した相手そのものを爆弾へと変質させて敵陣のど真ん中で爆散させる事で周囲の敵軍諸共吹き飛ばす、対軍用兵器として扱われていた必殺のアーティファクト


その性質上…命中すれば確実に爆発して死ぬ


矢が爆発するのではない、矢が命中した相手そのものが爆発するのだ


ゼネルガが見つけた遺跡から出土したものではあったが、その遺跡の最奥に隠された宝物庫のさらに奥に安置されていた宝箱に3つだけ納められていた秘宝


それ以外の発見例は過去に4本しか存在せず、それらは既に過去の戦いで使用され失われている…つまり、ゼネルガが持つのは正真正銘この世に3本しか存在しない秘宝中の秘宝であった


値段など付けられないような宝物である


ゼネルガはこの内2本を金剛級に登り詰める為に使用していた


つまり…この世界にあと一本しか残っていないそれを、眼の前のカナタに対して使用したのだ


謎の金属に古代の付与魔法が施された魔法の鏃はその希少価値に比例して、強力無比かつ回避不能の絶対的な効果を示す


ゼネルガが使用した時は金剛級を超える可能性すらあった魔物をこの鏃で一撃の下に吹き飛ばしたのだ。それ程の破壊力と強力無比な魔法効果が宿っているのが『爆針致ボム・カラット』というアーティファクトなのだ


その力は呪いなどの状態異常と違い、規格外の『状態の付加』…それに対する耐性など存在しない


まさに切り札、最後の一手



『成る程…お前も巻き込まれて死ぬんじゃないのか?』


「ハハハハハハハッ!ある程度は威力が調節できるのさ!貴様は爆発して粉微塵だが俺ならば耐えられる!この脚はラウラの伝手で聖女教会に総力を上げて解呪させてみせるよ。ほらほら!吹き飛ぶまで残り10秒だ!最後の言葉くらいは聞いてあげようじゃないか!」



勝ちを確信した


勇者ジンドーの持つ桁外れの異常耐性は既に目の当たりにした。あれ程の防御を突破できるアーティファクトはもはや手持ちに無いと言えるだろう…この爆針致ボム・カラットを除いて


このアーティファクトばかりは特別性だ


ゼネルガが持つ中でも異質中の異質


恐らく過去の文明も量産は出来なかったのだろう、宝のように数本だけが大切に保存されていたのだ。進みきった先史文明ですらその扱い…現代で操れば確実なオーバースペック


惜しむらくは最後の一本であることだが…消し去る相手が最強と謳われる勇者ジンドーであれば役不足ではないだろう



(問題は爆発のダメージに耐えてから脚の傷を引いて街まで戻らないといけない事だ…でもそこは問題ない!群性暴走スタンピードの側にはずっとレオルドが張り付いてる!癪だが奴に助けを求めれば街まで連れ帰ってくれる筈だ!後はじっくりシオンとマウラとペトラを俺の忠実な下僕に躾けて…洗脳後も逆らえないようにしてやろう…!手を焼かされたんだ、まずはたっぷりこの鬱憤を体で晴らさせて貰わないと気がすまない…!あの世で見てなよ勇者ジンドー…!俺が彼女達をどうやって使ねぇ…!)



点滅する速度は加速していき、殆ど光りっぱなしに見える程の速さで明滅する


爆発まで、残り5秒



『確かに、このアーティファクトは凄まじい』



残り3秒



『普通に喰らえば俺でも只では済まないかもしれないな』



残り1秒



『俺も慌ててこのアーティファクトを避けないといけなかっただろうに…』



………ゼロ…!













『このアーティファクトが……、な』






点滅が、ぴたりと不自然に停止した





「何でだよぉぉぉォォ!!?そんな筈はない!このアーティファクトだけは別の筈だ!おまっ、お前はバラバラに吹っ飛ぶのに…こ、壊れたのかァ!?嘘だ嘘だあり得ない!」



爆発は起こらなかった


本来ならば、勇者ジンドーはこのアーティファクトの力によって爆発し形すらも残らない


なのに…



『俺の魔法を覚えてないのか?…「神鉄錬成ゼノ・エクスマキナ」はあらゆる金属を生み出し、そして全ての金属に魔法効果を与えられる。与えられた術式を弄ればオリジナルの魔法だって作れるのは…お前も体験済みだろ』


「ま、さかッ……まさか貴様ッ!?この爆針致ボム・カラットの魔法効果そのものを効果を書き換えたとでも言うのか!?」


『正確には「効果を書き加えた」、だな。こいつは複雑な術式だ、すぐには改竄まで出来ないが……アーティファクト、いや魔道具創りは得意でね。一部の効果弄り程度は数秒あれば問題ない。それこそ……アーティファクトそのものに対干渉魔法が与えられてなければこの程度は簡単だとも』



神鉄錬成ゼノ・エクスマキナは対金属製魔道具に対し理不尽なまでの汎用性を持つ


もともとが「金属に対して魔法や術式、魔法効果を与えてその金属を介して間接的にその魔法や魔力を操る事が可能となる」魔法である


消しゴムと鉛筆を持っていれば他人の作文を書き換えられるのと同じ事…これにより、高性能魔道具でもあった勇者パーティの斥候であるザッカー・リオットの愛器をさらなる高性能魔道具へと昇華させたのが良い例だろう


勇者ジンドーにとって、金属製の魔道具やアーティファクトは魔法による干渉を防御する付与魔法が無い限り…その付与内容を強制的に変更させてしまうことが出来る


空いた手でゼネルガの手を掴み、鏃を直接握らせれば、ぽろり、と外れてゼネルガの手の中に収まる…それを見たカナタはこう告げた



『変更内容は爆発対象と起爆タイミング……『生身の手を離した瞬間、鏃本体が即爆発』、だ。気をつけて持てよ?』


「ひっ……ッ!?ふ、ふざっ…ふざけるなッ……こんな…ッ…ぁ…!!?」


『勘違いするな…これは俺の慈悲だ。人の優しさはちゃんと受け取るものだぞ、ゼネルガ』


「訳の分からない事を言ってないでこれを解除しろォ!!い、いや!解除してください!お、お願いしますゥ…ッ!イヤだイヤだッ…こんな…ッ」


『訳の分からない事でもないさ。ほら、待った甲斐があったな、下を見てみろ……が来たぞ?』



ゼネルガは気が付いていなかった


何故、自分の命を掴むこの男が今の今までこんな無駄話に花を咲かせていたのかを…別にゼネルガが新たな抵抗を思い浮かぶのを待っていた訳でも、その言葉に耳を傾けて赦しを考えていた訳でもない


カナタに言われるままに下に向けた視線…対空するその下に、彼の待っていたものがあった




そこに…数百と言える大小様々な魔物の群れがこちらを見上げてひしめき合っているのが見えてしまった




群性暴走スタンピードの群れが、自分に追いつくのをただ待っていただけの事だったのだ



魔物を誘引させているアーティファクトと同化したゼネルガ目掛けて集まった魔物達を、待ち続けていたのに気が付いてしまった


そしてこの男の慈悲というのが……自決をほのめかす物だとようやく察しすることが出来た。ゼネルガの自爆用にわざわざ改造して渡してきたのだ



「待て待て頼む待ってくれ!本当さ君の役に立つとも!い、今とは違うんだ!ハ、ハハッ…これはその…すっ、少し調子に乗ってしまったんだ!」


『あぁ、全然気にしてないさ。……何をしてても、この場でお前は始末する予定だったからな。むしろ、気兼ねなく消せるってところだ。…俺も、改善の余地がありそうな奴を手に掛けるのは心が痛む』


「俺にもかっ、改善の余地はあるともッ!いやもう改心した!ちゃんとしているさ!二度とこんな真似はしないと神に誓えるよ!だから助っ…」


『神に誓う、か…。悪いが俺は、目的の為なら…そのですら抹殺した男だ。あの世で沢山誓っててくれ。せめて来世で、その誓いを果たせればいいな』


「よせ!やめろやめろォォ!イヤだ!こんな所で俺はァァァァァァァァァ!………………………あ…ッ!!?」



ぱっ


躊躇いなく、カナタは掌を開いた


掴んでいたゼネルガの頭を離したのだ


しがみつこうとしていたゼネルガの手が空を切った…元よりその手に爆針致ボム・カラットを握らされていたゼネルガは咄嗟に片腕だけでしがみつくことが出来なかった。爆発によりカナタが吹き飛ぶことだけを考えていたからこそ…保身が後回しになっていたせいで何の抵抗もなく、落下


その高さ、100mはあろう高度から落とされたゼネルガはその下に犇めく魔物の絨毯の上にぼとりと落ちて、その姿は…一瞬にして魔物に埋め尽くされて見えなくなった


その高さまで、ゼネルガの声が聞こえる事はない


断末魔すらも届かない


あの脚では逃げることなど出来ない、踏ん張って攻撃に転ずるのも限界がある。カナタはそれが分かっていた


蜥蜴型、牛等の獣型、虫型の魔物達がその一点に集中する様はそこで何が起きているのか想像するのを躊躇わせるものがあった…あの群れが、脚以外の負傷を自動回復させるゼネルガにひたすらつっこんで行くのだ


まるでしぶとく頑丈な生き餌


そして僅かな時間…凡そ十秒と少し


落下地点で爆発が起きた


離さざるをえないダメージを受けたのか、はたまたあまりの苦痛に自害しようとしたのか……あのアーティファクトを手放したのだろう


その爆発は……






『…あぁ、悪い悪い。確か…にしてたんだったな。爆発力の部分は弄るのを忘れてたよ』




あまりにもちっぽけで、魔物の洪水の中ではまるで火花程度の輝きしか生み出さないものだった


カナタを爆発させられれば良かったゼネルガはその威力を最低値にして使用し、自分は爆発に耐えられるようにしていたのだから……自決など出来ようもなかった


それをわざとらしく、空で1人冷たく謝罪を零しながら


リベリオンが拾う僅かな音の中に…その叫び声を聞きながら


カナタは両掌を胸の前で、爪を立てるような形で

向かい合わせた



『念には念を入れる質でね…さぁ、楽にしてやろうかゼネルガ。よく考えればお前の始末に……シオンの魔力は贅沢過ぎた』



その掌の間に……夜の闇を集めた様な漆黒と深い紫色のエネルギーが暴れ集い、球体となって現出する


周囲に黒紫のスパーク現象が走り回り、高密度のエネルギー球と化した己の魔力を両手で押し潰さんとするかのように凝縮と圧縮を止め処なく行い続け…という稀有な閃光によって周辺は昼間にもかかわらず夜の帳が落ちたような風景へと変貌を遂げた



『黒き闇より登れ明星、覇を唱えしは紫紺に煌めく星の心臓…事象の地平を乗り越え出でよ滅びの特異点……ッ!!』



急がないカナタは無詠唱でも放てるそれを、敢えて丁寧に詠唱を紡ぐ


大闘技場で使われたシオンの魔力によるオリジナル魔法…『超新星』よりも遥かに暴力的に、力尽くで力を押し留め、凝縮、圧縮…腕を震わせ収束させる破壊の球体


膨れ上がるその力を天に掲げたその瞬間……圧縮と凝縮の規模はさらに膨れ上がり、抑えつけられたエネルギーの球体は実に……半径20mに到達する。それも……、である


大闘技場で使用したシオンの魔力を用いたこの魔法の発展型魔法『超新星紅ノ覇星スカーレット・ドレッドノート』が如何に威力を抑え込んで発動されたのかがよく分かるだろう


巨大な魔力によるエネルギー球は周辺の空間を地響きの如く振動させ、あまりの異常に全ての魔物がゼネルガを貪ろうとするのを止めて天を見上げた


今、積み上げられた怒りを込めて




星核アトムッ!!』




放たれた


落下した深淵の魔力の大玉…星核アトム


それは地面に落下した瞬間…破壊範囲をドーム状に広げてその中に存在する構造物の全てを破砕した


爆発ではない…巨大な黒紫の球体へと膨れ上がったその魔法は、触れたものを破壊する超重力のエネルギー弾


ドーム状へと広がると不自然な程に一定の大きさ…半径約300mの範囲でピタリと拡大が止まり、その範囲のみを有り余る破壊力で消滅させる


カナタが好んで使用する重力魔法の応用に応用を重ねた破壊の一撃は、魔力と重力を押し硬めて超圧縮しそれを魔法によって性質強化する事で発生させた現世に影響を及ぼさない最低レベルでかつ、魔力によって仮想的に顕現させた極小ブラックホールの重力力場を内から外へ反転させ、極限の圧縮から開放する事で発生する狂気の破壊力を利用する


故に、爆発ではなく


『反転させた超重力力場を拡大させ、強制的に影響範囲を球体状に押し留めた事によりそれに触れたものを破砕する魔法』


それが…星核アトムの正体である


あまりにも扱う力が複雑で強力な為、兵器転用するには非常に大型かつ複雑怪奇な術式を転写しなければならず…事実上、カナタの手によってのみ発動が出来る大技


それを何の躊躇いもなく、放った


発動した瞬間、魔物の群れはなんの抵抗もなく消滅し、黒紫の光の中に消え去った


何秒、何十秒経ったか…超重力の力場と化していた巨大なドーム状のエネルギーはギュンッ、と収縮して消滅する


余韻も残さずに消え去ったその跡には文字通り…何も残っていなかった


ドーム状に見えていたのは地上部分のみ。地面はドーム状の部分を合わせて真球となるように綺麗にくり抜かれた形で消滅しており、夜の帳の如き閃光は消え失せ太陽の光がいつも通りの景色を照らし出す



いや、はっきり言おう



オーバーキルにも程がある



どう見ても、この程度の魔物の群れに放つような次元の威力ではない



『……やっぱり、後顧の憂いは断つべきだな。これでスッキリした…いやぁ、カラナック来てからかなり溜まってたし。むしろ張り切りすぎたかな…?』



口調を普段の調子に戻して『ふぅ…』とひと息ついたカナタは首を捻って満足気に呟く


そう、愛しの少女達にちょっかいを掛けられ続けていい加減ストレスが膨張しまくっていたカナタはゼネルガでその風船が破裂した


リベリオンに搭載されている光学センサー、魔力探知、動体感知…その他、カナタの感覚も加えて生存している生命体は存在せず


カナタの視界には黒と紫に埋め尽くされた破壊のエネルギー力場の中心地でゼネルガの肉体が粉微塵に破壊されたのを確認していた


実は別の隠し玉で生きてました…ではあまりにも腹の虫が収まらない


その死を、確信できるレベルで確認していた


カナタ自身、人を手に掛ける事に抵抗を覚えない訳では無い


しかし、これが自分とその縁深い者達に害として降り掛かる対象ならば…躊躇いも後悔も無く抹殺出来る



『さて、後は面倒なのが1つ…』



そのバイザーを、街の方向へと向ける


実は今の一撃で全ての魔物を葬り去った訳ではなかった。たった一体だけ…巨躯故に移動速度が遅く、他の魔物から遅れてやってきたその魔物だけは星核アトムの一撃から逃れていたのだ


その魔物は地凰竜エルグランド・ドラゴン


この群性暴走スタンピードの中心となっていた魔物ではあったが足自体は遅い


突然高速で移動し始めたゼネルガに慌てて食らいついて追いかけ始めた他の魔物とは距離が開く程遅れて向かって来ていたのを、カナタは飛行してる時から確認していた


とは言え、地凰竜エルグランド・ドラゴンくらいは敵ではない


いくら頑丈とは言え数発もカナタの攻撃には耐えられないだろう、それを面倒とは言わない


そう、カナタが面倒とぼやいたのは…




その地竜凰エルグランド・ドラゴンこちらを見上げる一人の男の姿



獅子の鬣にも似た髪に精悍な顔立ち、カナタを超える体躯に鋼鉄と言えそうな筋肉を搭載した偉丈夫が、長大なバトルアックスを肩に担いでこちらを見詰めているのが見える



彼の名はレオルド・ヴィットーリオ



ここに向かってくる地凰竜エルグランド・ドラゴンを始末した彼は…正確に滞空する勇者ジンドーへと視線を向けていたのであった





ーーー




【Side レオルド・ヴィットーリオ】




「まだかライリー…!いい加減カラナックまで着いちまうぞ…!さっさと原因の奴をぶちのめして魔道具でもなんでもぶっ壊せ!」



ひたすら荒野を駆けながら、手にしたバトルアックスで魔物の群れを外周から削り取っていく…だがこの光景でこいつらがこちらを向くことは殆ど無い



ーー無理やり突入して止めてもいいんだがなァ…。それでも足止めが出来ねぇ。ガワから削ぐしか今は手がつけられねぇからライリー、お前にかかってんだ頼むぜ…!



流石のレオルドとて、単騎でこの群れの中心に突入するのは相当の危険を伴う…正面から止めるにしても、こちらに食い付かない以上は群に飲み込まれて終わるだけだ


故に、まずは魔物を惹きつけている原因を排除しないことには戦うことも難しい状態


弟子のライリーを送り出してからどれ程経過したのか…なかなか群が止まる様子は無い


せめて中心のデカブツだけでも排除したいが…その足元を魔物が埋め尽くしていると来れば足場すら無いのだ、歯痒い事この上ないが今レオルドに出来るのはこれだけだった


既にカラナックを囲う外壁に近づいて来ている


近すぎては誘引している魔物は結局誘引から開放されてから目の前の餌であるカラナックへと突っ込んできてしまう


そのボーダラインはすぐそこまで来てしまっているのだ


ライリーにそれの処理を頼んで行かせたはいいが…



「クッソ…大会サボってまで来たってのにこうも素通りされたらムカつくってんだ!イチかバチか突っ込んで暴れ回ってみるか!?」



こうなれば四の五の言っていられない


被害を減らすべく可能な限りここで大立ち回りで戦力を削り落とす


手にしたバトルアックス…愛器『ジャックスレイ』を構え直し、群れの戦闘を追い越して正面に躍り出れば非常手段…「ど真ん中で暴れ回る」というかなり無理のあるプランを行動に移すべく自身の肉体に強化魔法を満たし上げた


更に先行し、カラナックを背にして正面から魔物の群れを見据えて突撃を開始する


その寸前



カラナックの中心地の遥か上空で、真紅の光が大爆発を引き起こしその衝撃と魔力の波動が光に遅れてレオルドの背中を震わせた



「どわぁ!?なんだァ!?カラナック吹っ飛んだか!?」



肝っ玉の太いレオルド、流石に慌てた


背後からビリビリと伝わる魔力の波動に鳥肌が立つ…一体カラナックでは何が起こっているのか、すくなくともただ事では無いに違いない


しかし…


これに驚いたのはレオルドだけでは無かった


今まさに正面から突撃をしようとしていた魔物達も突然の事に驚きたたらを踏んで進行を止めたのだ


これを見逃すレオルドでは無かった


恐らくこの恐慌による停止は一瞬のこと


ならば……!



「いや、悪くねぇな!滾れ!バスタード・マキシマァ!!」



咆哮と如く叫ばれた己の代名詞といえる得意技…強化魔法の発展魔法「バスタード・マキシマ」


分厚い魔力が肉体に滾り、並の者が使えば肉体が即座にオーバーヒートを引き起こす凄まじい強化が引き起こされる


この魔法の使用中、レオルドは文字通り超人と化すのだ


地面を抉る勢いのジャンプは悠々と魔物の群れの頭を飛び越え…突然の閃光と魔力波動に慄いた魔物の頭を足場にその中心へ凄まじい速度で飛び込んでいった


足場にされた魔物はレオルドに踏み付けられ、跳び上がる衝撃で肉塊と成り果てるがそれを気にする事もなく、目的は一直線、一番のデカブツ…



迷うこと無く、地凰竜エルグランド・ドラゴンの足元へと跳びこんでいったのだ



強化の力を漲らせ、手にした愛器ジャックスレイに膨大な魔力を流し込めば黄金のバトルアックスはギラリと物騒な光を纏い、それを真横に一線…飛び込みざまに切り払う


技と言えるかも怪しい怪力を用いた一撃はその豪快なスイングながら正確無比に刃の切っ先を地凰竜エルグランド・ドラゴンの膝関節裏……分厚い岩盤のような鱗の隙間を精密に滑り込ませるようにして…



「ッハハァッ!!ぶった斬れろォォォッ!!」



ズ  バ  ン  ッ  ッ


恐ろしい程鋭利な音を立てて堅牢かつ頑強な体躯の竜が、鼓膜を揺るがす咆哮を響かせて片膝を地に着いたのだ


その一撃は見事……地凰竜エルグランド・ドラゴンの左脚の膝裏から腱と筋肉の半分をバッサリと両断させる事に成功する


自分の跳びこむ勢いと振り抜いたバトルアックスの反動で止まること無く自分の体を宙へと跳ばし、瞬間の内にレオルドは魔物の群れの中心地から自分をその外側へと離脱させる事を可能とした


混乱する魔物達を他所にスライディング気味に着地を果たし、体勢を立て直したレオルドは次なる一撃を構え…



「おっと、流石に我に返ったな!ダッハッハッハ!これなら俺に食い付くか!?」



中心となる竜は左足を半ば使い物にされなくなった衝撃で混乱から我に返ったのだ


縦に開いた瞳孔がしっかりとレオルドを睨み付けているのを機嫌良さそうに笑い飛ばす


一部の魔物はレオルドに側の同胞を足場にされた衝撃で踏み潰された事でターゲットをレオルドへと変えていた。当然、レオルドにとっては都合良く…


わらっ、と大群から抜け出てきた一部の魔物はレオルドがバックステップで引き付けた後に一閃の斧撃によって粉々に粉砕される


もはや相手にすらならない、レオルドが体を動かす度に魔物は体の形を失い斧どころか肩でのチャージですら虫型の魔物は関節ごとにバラバラに破壊されるのだ


まさに無双


一撃も貰う事無く、一撃で全てを破壊する


だがそれも長くは続かなかった


それは何故か…



「っておいおいまた移動かよ!……あ?どこ行くんだこいつら…?」



レオルドが限界を迎えたから、ではない


魔物達が慌てたように移動を開始したからだ


それも…先程と違ってカラナックから反対方向に向けて


その場に群がる魔物を全て片付けたレオルドがまたも鬼ごっこの形になると面倒くさがる中で…自分を睨みつけていた地凰竜エルグランド・ドラゴンの目線が空に向けられている事に気が付く


釣られて空を見上げたレオルドは最初は目を細めて首を傾げた


光の筋が一直線に街から飛び出し荒野へと向かっていくのだ


まるで流星…しかし、その違いは「ィィィィィィィィィィィィィ………ーーー!!」と甲高い謎の音を上げながら高速で星の海より遥か下を移動し続けている


あまりにも奇妙な光景、こんな現象は流れ星以外にそうそう起こることでは無いし何より今は真っ昼間である。このカラナック周辺のギラつく太陽の光の下でもあそこまで発光して見えるということは相当の光やエネルギーを放っている事になる


どんな新手の魔物が居るのか…そう思ったレオルドは魔法袋からとっさに単眼鏡の魔道具を取り出して正体を確認にかかる


距離、対象の大きさなどの情報まで分かる魔道具である単眼鏡は遠くの出来事を知る手段を多く持たないレオルドには貴重な遠隔調査手段だ


そしてその姿を



「……おいおい」



確認して



「なんでここに居んだ…!?」



驚愕を禁じ得なかった



己と身命を賭けて世界を旅したその男がそこに写っていたのだから



だからこそ…



「ジンドー、なんでテメェ……ーー」





ーーゼネルガなんて持ってんだ……?




ゴミ袋でも引っ張るように、ゼネルガ・クラシアスの頭を掴んで高速で飛行するその姿に…ぽかん、と首を傾げるのであった







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 


【後書き】



ーー申し訳ない…本当に申し訳ない…


「うおっ、どうしたのだ?我、なんかされたか?」


「い、いえ…なんか急に謝り始めました。気色悪いです」


「……きもきも……きもきもの実のキモ人間……っ」


ーー流石に酷くない?


あぁいやね?今回はちょっと入れるストーリーの比率完全にミスったなぁ、と思って


「ストーリーの比率?…そなた、いつもこんな感じであろう?何を今更言っておるのだ。というかそんな事考えながら書いておるのだな」


ーーまぁね。私は物語の順番とか、「ここでこの内容を出して〜この部分は後で語りをいれて〜」とか考える質でね。まぁそのせいで中盤後半で語られる内容を含ませた最初の方の話で「なんでやねん」のコメントが多く来てたりもするよ。まぁこればかりは後ろまで読んで貰わないと分からないかもしれない…


「思ったよりも色々考えてるんでしょうか…私はてっきり下半身に正直に文字を並べている物とばかり」


ーーわ~お辛辣ぅ


だが…否定はしない…!


とは言え、これも読む人が増えてくれたおかげなのか結構そう言う人は増えてまして…。片手で数えられる最初の話数読んで「はい意味不」「おかし過ぎ」「不自然やんなにこれ」みたいなコメントも多くてね


勿論、小説初心者かつ初投稿作品なのもあるし未熟な文才故の足らなさはありますが、それにしても……


え…もしかして最初から仕組みとかネタとか展開と か過去とか関係とかオチまで全部教えないといけないの?


と言う他ない…


あとは「気に入らない展開で萎えました」っていうのもあったかな


なのでここまでお話を追いかけてくれてる方には感謝しかありません


ちょっと愚痴っぽくなってしまいました、申し訳ないです。とは言え、私はこういうのは普通にお知らせするタイプの作者です。こういう反応がある、というのも作品の情報としてお知らせするべきだと思いますので


今読んでくれてる人を大事にしろ、と言うことでね。このスタイルを変えるつもりはありません。まぁ貴重なご意見と受け取ることにしております



「ま、まぁそれは良いとして……そのストーリーの比率を間違えた、というのはなんだ?」


ーーあぁ、それね。いやぁ読んで分かると思うんだけどさ、前回から引き続きで今回1行目からなのに…





ゼネルガ君の処刑シーンまでに1万字掛かってるんだよね。ちょっと長く書きすぎたと思ってるよ




「「「あ〜……」」」


ーーいやはや…ちょっと書くのに夢中になった感はあるかもしれないね。そんなにボリューム無いかもしれないけど、本来より結構量は増えてしまった方なので


これが良いかどうかは…読む方々にお任せい致そうかと


「まぁ死ぬべくして死ぬ男でした。仕方ありませんね、えぇ」


「……むしろ……死なないとさらに苦情が来る……」


ーーあー…ね。本来ならもっと残虐系描写で死に様を書く予定でしたけれど流石にちょっとグロ表現が過ぎる可能性が高かったのでわりかしオブラートに包みました


実はレビューで書いてもらってるからね。『この作品、グロと胸糞もあるよん』って。ま、好きで書いてるんだけどね


「そなたが変わり者というのは良く分かったのぅ…。ただそれよりも…カナタ、あやつはあの技を使えたのだな」


「そこは確かに驚きでした…色も形もほぼ一致の魔法でしたからね」


ーーえ、なんだっけ?そんな変なのあった?


「んっ……見て分かるくらいのインスパイア……っ。……そう、あれはまさに……っ」






「「「フリーザ様のデスボールっ!!」」」






ーーバレてしまったかぁ



「とは言え、あれ大丈夫なのか?地上へマイクロブラックホール出現させとるが…いやはや人間辞めておるなカナタよ」


「普通に惑星滅亡の危機とかありませんか、これ?」


ーーうん。これはね、『重力魔法の粋を集めて多方面的かつ各種別々の手段による強化の重ね掛けとそれを凝縮させることによる昇華を経て仮想的に極小ブラックホールと呼べる物を生み出し、その超重力を『ブラックホール出現』の完成前に魔法現象へとシフトさせる事でブラックホールそのものによる周囲への干渉を無効化しながらブラックホールの持つ超次元の重力エネルギーを魔法そのものに落とし込み惑星内にてブラックホールの仮想顕現という特異点を生み出してる』んだよ


「……んん…?……全然分からないっ…!!」


ーーまぁ分かりやすく言うとね。カナタ君は重力魔法で発現させた極小ブラックホールを、その性質とパワーだけ現実世界に顕現させて使ってるけど、本質的な部分は仮想的…つまり魔法による仮の再現までしか行っていないんだ。だから本当のブラックホールみたいな現象は現実世界に発生せずに仮想的なだけで留まってるけどその力自体は実際に出力、顕現させて圧縮、制御、範囲指定系の魔法に組み込んで新魔法として確立してる


「えぇい!良く分からんわ!もっと分かりやすく言わんか!」


ーーめっちゃ雑に例えて言うと、カナタ君は『現実世界と互換性のあるバーチャル空間で作ったブラックホールの重力とパワーだけを現実世界に持ち込んで魔法に使ってる』


魔法っていうのは魔力と術式の結果……魔力+術式=魔法っていう式なのよ


魔力と術式で極小ブラックホールを再現できる式を作ってはいるけど、魔法っていう『答え』までは出さずにおいて、その最中で発生されるパワーだけを他の魔法…今回は超重力波拡散制御魔法『星核アトム』に転用してるのさ


「小難しい話ですが…要するに本物のブラックホールを世界に創り出した訳ではなく、完成させられるブラックホールを作る過程で得られるパワーを使ってるから『仮想的な極小ブラックホール』という表現なんですね。いやはや……人間辞めてますね、カナタ」


「…わっ、分からないぃっ……!…分からなすぎて……尻尾の毛が逆立つ……っ!」


「よ、よく分かるのぅ。我もここまで言われなければさっぱりだ…と言うことは、シオンの魔力を使った『超新星』とかも色々とあるのか?」




ーー…話、長くなるよ?




「「「やめておきますっ!」」」

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