第95話 自信作をかく語る


時界の支配者、時の法皇、時限神


そう呼ばれた者が居た


あまりにも隔絶した力を保持し、仕える者達から比喩ではなく『神』と崇められてきた正真正銘の超越者


勝てた者など居はしない


その力を知って、勝てると思える者はいない


彼女の魔法は概念を支配する


時間、という不可侵の概念をその手で操る女には如何なる攻撃も無意味。全てが世界ごと静止する


防御ですらも無意味。時の魔力を用いた一撃は次元の違う破壊力


回避さえも無意味。時が止まれば己が攻撃されていたことにすら気が付かず、次の瞬間死んでいる



絶対的な力



限られし筈の時を掌握するそれは


時限掌握魔法……無限天征ムゲンテンセイと名を付けられた


その力と知見により、遥かなる空間の先より現れ瞬く間に異なる世界の命を制圧しにかかる


引き連れられし眷属達と、自らが手を加えた獣達を放ち…その世界が己の物となるのを待ち続けるのだ


焦ることなく、玉座にて待つ


彼女の名はディンダレシア




いつからか………『時の魔神』と、呼ばれていた






ーーー





「ハッタリだ……ハッタリに決まってる……ッ!勇者ジンドーが人前に姿を表す訳が無い!ましてや生身でこんな所に……」


『居るんだよ、それが。とは言え俺は勇者としてお前の前に立った訳じゃない。ただ……俺は「神藤彼方」としてお前を潰す。俺が生きてきた中でも相当レアだよ、ここまで狂ってるレベルの自己中は』


「自己中なものか…!これは英雄の正当な権利だとも!その頂点こそが勇者ッ!だから俺は「勇者」なんだッ!」


『少なくとも俺は……誰かに勇者と呼ばれる中で、呼んで欲しいとせがんだ事は無い。成りたくて成るもんじゃねぇよ、勇者なんて』



つまらなそうに吐き捨てるカナタにゼネルガは信じられない…いや、信じたくなさそうに首を振る


むしろ信じる方がこの場合は難しいと言えるだろう


勇者ジンドーなど…ゼネルガは実際に見たことは一度として無い


魔神大戦期後期に差し掛かるにつれて今まで最前線に出ることが多かった冒険者達には1つの暗黙の了解が存在した



ーー勇者ジンドーと同じ戦場に立ってはならない



かの勇者が戦えば地形すら容易く変わる破壊をばら撒きながら戦場を縦横無尽に暴れまわる


巻き込まれかねないのだ


不思議とそれで命を落としたものは居ないのだが、その戦いに割って入れる者は居なかった。邪魔になるくらいなら最初から適材適所…町の防衛等に回った方がお利口なのである


だがゼネルガは当時、白金級冒険者として前線に出ていた


高位の冒険者は最前線を支えられる、故にゼネルガも例外なくそこに居たのだ


だから……見たことがある



(あの勇者ジンドー……!?あり得ないあり得ない…!姿を知る者は居ないあのジンドーがコイツだと…!?……いや、落ち着くんだ…!さっきの攻撃は確かに効いていた…無敵じゃない!復活するまでに時間があった……今度は復活する前に殺せばいい…!)



6人の聖女に囲まれた中から漆黒の鎧が前に進み出てくるのを見ながら己を落ち着かせ、過去の暴虐的な破壊の景色を遠ざける


地が爆ぜ、空は軋み、遍く構造物が悲鳴を上げるあの地獄…それを作り出す勇者ジンドーの姿は遠巻きから見るのすらも危険


ゼネルガも例外ではなく、二度だけ戦闘の姿を遥か遠くから見たことがあった


ジンドーの姿というよりも…その破壊の光景を眺めていたと言ってもいいだろう



(こんな町のど真ん中にある大闘技場で、聖女も自分の女もいる中なら馬鹿げた攻撃はできない筈だ…そうだ、勝ち目ならある。アーティファクトで俺の傷も癒えてきているんだ、慌てることはないさ)



僅かな時間で考えを落ち着かせる…もしも本当に勇者ジンドーならば勝ち目は薄いが、ライリーの攻撃は確かに通った。自分より等級の劣る冒険者のライリーですら、流血し倒れるダメージを与えられたのだ


この自分が、それを下回るとは思えない


当てさえすれば、防げさえさせなければいいのだ


ならば…



「チッ…そこで止まれジンドウカナタ!でなければライリーを自害させる!」



叫ぶゼネルガが首からぶら下げる首飾りを目の前に突き出して言い放った


カナタの斜め後方の壁際でマウラともつれ合うライリーの姿が目に入る…それまでマウラの高速を振り切ろうとしていたライリーが突然、両手を己の首に添え掴もうと不自然に動き出したのを見ればそばに居たマウラが飛び掛かってこれを止めに入った


未だゼネルガのアーティファクトにて行動を掌握されている…それを見たカナタが「はぁ…」と溜め息をつきながら立ち止まり…








返事をした





「は、ははっ…ハハハハハッ!馬鹿が!脳味噌が足りてないんだよ馬鹿正直に答えやがって…!」



ラウラによって齎された、勇者のフルネーム


それはゼネルガが持つアーティファクト『傀儡の青石ブルー・マリオネット』の対象となる条件を与えていた


今、確かに返事をしたのだ


立ち止まる漆黒の鎧


つまり、これで勇者ジンドーの肉体の操作権を手中に収めたことになるのだ。笑いが止まらなくなるのも当然だろう


黒い兜からはその表情は伺い知れないが…これで最強の勇者を操れるのだ。今回の失敗や敗北など100倍の釣り銭が返ってくるほどにどうでもよい話となる



「よし……よしッ!やはり俺は上に立てるべき男だ…!本物の勇者すら俺には及ばない!俺こそが勇者なのさ!おいジンドー!ラウラを俺の元に連れてこい!乱暴にしても構わない、俺にお前の聖女を献上しろ!」



まずはラウラだ


ジンドーも手に入れ、その力でラウラを抑えてしまえばこの場で自分に逆らえるものは居なくなる


ゼネルガの声に反応したのか…漆黒の鎧が歩みを再開した



ラウラの方へ向かって、だ



「ら、ラウラ様!すぐにお逃げを!」



聖女タランサの声が大きく響く…何も言わずに歩む先をラウラに変えた勇者ジンドーに嫌な予感を覚えずにはいられなかった


だが…当のラウラは向かってくる勇者ジンドーに向き直ったまま一歩も動こうとしない


それどころか、向かってくる勇者ジンドーに対して何も行動を起こす気配がないのだ



(まさかラウラ様……ライリー様のご無事の為に自らをあの男に差し出すと……!?そんな……っ)



タランサの悪寒は膨らんでゆく


大聖女ラウラは優しい女性だ


きっとライリーの身を案じて、自分の身1つで助かるならば…そう考えたのだろう


眼の前まで迫る漆黒の鎧が、ガシュン、と音を立てて甲の部分が展開し、収納されると一人の男の素顔が露わになる


その男は、何を考えているのか分からない表情のまま…連れ去ろうとしているのか、ラウラの膝裏と背中に腕を瞬時に回すとそのまま持ち上げてしまう…






所謂、姫抱き…お姫様抱っこの形で






「……あ、あれ?ラウラ様っ?」



なんだか思ってたのと違う格好で困惑するタランサを他所に、ラウラはむしろ彼の首に両方の腕を回すと互いに目を間近で合わせたまま…


どちらともなく唇を重ね合わせてしまったのであった



「わぁっ…ら、ラウラ様ぁっ!?」



それも互いに啄むように、何度も押し付け合うような熱い口付けだ


きゃぁっ!…と聖女達から黄色い声が上がる!


聖女教会の伝説的人物であり、皆の憧れを一身に集めるラウラ・クリューセルと目の前にいる救世の勇者ジンドーとの熱烈なラブシーンに高まるテンションが止まらない!


ゼネルガですら口をぽかんと開いて「………………………………………………………………………………は?」と呆然としているのだ


挙句の果てに互いの額をくっつけ合いながら少し悪戯な様子で「……『乱暴』だった?」「あら、とても紳士でしたわよ…?でも…『命令』は守らないと…」「なら、そっちはまた今度で…」と仲睦まじく囁やき合ってるとくれば聖女達のテンションは天元突破!


もう気絶しそうなくらいきゃいきゃいと、先程までの緊迫感を異世界に置いてきたような様子で騒ぎながら見ているのだ!突然、目の前で始まった超伝説級のカップルの熱に当てられてしまうのも無理はない………と、後にタランサは1人で語る……!


ちなみに離れた後ろの方でシオンとペトラが「やっぱりのぅ」「あれ、わざと返事しましたね…」と呟きあいながらマウラの手伝いをしており、3人でガチガチにライリーを固めていた


完全に分かっていた風である。カナタに効く訳が無いと確信していた様子すらあった


ゼネルガがカナタを操れたと歓喜に叫んでいる間にカナタの方は見向きもせずライリーへと駆け寄り三人がかりで手も足も首もがっちり取り押さえてしまったのである


流石に3人が抑え込んでは身動きなど出来ないライリーが時折もがいているのが見えた



「へっ、返事はした筈だ…何故……」


「まさか効くとでも思ったか?…そりゃ無理に決まってんだろ、ペトラへの洗脳を防いだのも俺の魔道具だ。…肉体、精神、魂魄への干渉系魔法の対策はばっちりでね、その手の対策魔法は色々とんだ」


「先史遺産のアーティファクトだぞ!?そっ、それを手製の魔道具で防ぐ!?あり得る訳があるかァァァ!」



癇癪を起こしたゼネルガにゆっくりとカナタの腕に抱き上げられたままのラウラが冷たい目線で言い放つ



「それが『黒鉄の勇者』でしてよ?」



ぎりぎりと歯軋りをして己のプランが崩れた苛立ちを隠さないゼネルガは、自分を敬い熱を込めて見つめるはずのその視線がゴミを見る冷たさを秘めているのに顔を赤くして屈辱に震えた


ライリーを意のままに操る首元のアーティファクトが、今はなんと頼りなく感じる事か…



「あと、そのアーティファクト…結構な制約があるな?受けた感じ……掛けた相手の魔力抵抗が強ければ完全には肉体の制御を奪えない。魔法が苦手なライリーはほぼ完全に操れたみたいだけど…それでも魔力量は多いからな、僅かに抵抗は出来てた。俺の心臓を紙一重で外したのは、ライリーがなんとか逸らしてくれてた訳だ」



そしてゼネルガですら知らない情報がカナタの口から語られる


ゼネルガはこのアーティファクトを鑑定したことがあるが、自分の鑑定魔法ではその使用方法と効果の概要が示されただけ…そんな制限や制約、対抗法が有ることなど聞いたこともなかった


それもそのはず…支配系の魔法効果を所持しているのがバレれば即接収から最悪捕縛、罪に問われるのだから鑑定屋に持ち込める訳もなかった



「ペトラに使った赤石の方が遥かに強力な隷属効果だった…ただし、魂を隷属させるだけで行動を強制出来るかどうかは隷属させた相手の行動次第、って不確定要素がある。あくまで判断するのは隷属させた相手だからな。意のままに…というよりは手下を増やしただけだ。その分、お前の青石は即支配、そして自分の意のままに即座に操れるがその分抵抗は遥かにし易い、てところ。そして…その青石の問題点は事だな?」


「なぜ、それを……ッ!そんなレベルの鑑定がなぜ……ッ」


「ただ待たせるだけでも。少しでも意識を外せば支配が解けてしまうからだ。だから…お前が操作できるのは精々数人で、しかも集中力と魔力の残量から操作には何日間かの時間制限もある。…でなきゃ、こんな力尽くで自分の仲間に引き込もうと色々考えないよな。ずっと操作出来るなら影で会ってから初見で返事させてオシマイだ」



ゼネルガが見つけた一対のアーティファクトにはそれぞれ特性があった


魅惑の赤石レッド・ハイチャームは魂の隷属、という凄まじい効果を有する。しかしその分、隷属させた相手が考えて相手が行動するのだ。隷属しているものの、その行動や命令したことが隷属させた者にとって都合のよい行動かは不確定。…そして、都合よく操れるのかは隷属させた者の魔力運用能力に左右されるのだ


魔力を上手く操れる程、強く隷属させられる


しかしその分、継続的に魔力が使用される為、大勢を永久的には隷属させられない欠点もあった


とは言え…魔力の運用能力が殆ど無いラジャンですら、強い魔力抵抗を持つペトラを隷属させかけた事がこのアーティファクトの強力さを物語る



それに対となる傀儡の青石ブルー・マリオネットは相手の肉体のみを操るアーティファクト。その効果が発揮される速度は凄まじく、赤石でペトラが隷属状態になるまで頭にもやがかかるような感覚と共に隷属が進行していたが、青石はそんな暇すら無い


即座に肉体を操作可能、という反則的強さを誇る


だがその分、隷属させたら終わりの赤石と違い、何もさせない時間ですら「立ったままでいろ」「姿勢を維持しろ」などの命令を出し続けなければ肉体の支配は解除される


そしてその分、相手の魔力抵抗による対抗が強く出てくるのも特徴だった


もしこれがペトラ達であればむしろ…高い魔力抵抗に対抗されて肉体を止めるだけに留まり、動かすことは出来なかった可能性すらあった



「舐めるな…!こんな程度のアーティファクトはオマケさ!俺が全ての強化系アーティファクトを使用した時点でこんな小細工は必要ない!」



ゼネルガの履く戦闘用ブーツ型のアーティファクト…『武速纏』が与られた魔力に反応して光を放ち、腰に吊るした色とりどりの宝玉を模したアーティファクトを指先で触れていけば、次々と光を灯していく


その装飾品全てが、アーティファクト


使う間もなく斃される所であった…そも、強化をどれだけしても関係のない破壊力の魔法を目の前にしていたが、本来ならばもっと自分の能力は上…その事を頭に思い起こすゼネルガ


装着者が履いた履いた脚を動かした時、それにともなく肉体の動的速度を何倍にも上昇させる機能を持つ武速纏はゼネルガの俊敏性を目視すら難しいレベルに引き上げ、さらに肉体能力強化の重ねがけ


もはや出し惜しみはしない…アーティファクトは使う度に劣化していく。古すぎるが故に無限に使える訳では無いが、全て壊れても良い勢いで魔力を回しフルスペックで稼働を開始した


魔道具は古代のアーティファクトを模倣した劣化品……その常識がゼネルガに戦意を燃やし焚く


だが……それでも油断はしない


今、勇者ジンドーはラウラを横抱きしている格好だ。とても戦える姿勢ではない


猛スピードで漆黒の鎧の前まで肉薄すれば抱き抱えられたラウラ越しに手を伸ばす


迎撃、防御をしようにもラウラを間に挟めば下手な動きはできないと踏んだ一撃は、同時にジンドーへの攻撃と…ラウラを自分のもとに引き寄せようとするものだ


どんなに強かろうとラウラを抑えてしまえばいい…自分の手元には魔法を抑え込む封魔のアーティファクトもある。ラウラに付けてしまえば抵抗は皆無となる。あとはラウラの身柄と引き換えに降伏を促す


人質が最も安全で効率の良い勝利の方法


その為に伸ばした手


それは…触れた瞬間、青白く光を放つ不可視の膜のような防壁に触れて阻まれた



「これは…ッ」



火花のように青白い光が、分厚い障壁に触れている部分から迸りそこから先に手を進める事ができない…触れなければ分からない不可視の領域がそこに存在していたのだ



「つくづく腹のたつ奴だな。シオンも、ペトラも、マウラも………そしてラウラも、纏めて全員俺の至宝だ。汚い手で触ろうとするな」


「ほざけぇェェェェェェ!」



ゼネルガのガントレットが不可視のフィールドをギャリギャリと削りにかかるが、眩く光が散り弾け、フィールドと衝突する様は見えども貫ける様子はない


何も慌てる事はなく抱き上げていたラウラをゆっくりと両足から地面に下ろせば、露わになっていた頭部がジャコンッ、と格納された兜が展開して隠される


今一度、光を灯した金色のバイザーがゼネルガを正面から見据えた



魔法素粒子エーテル…俺がそう名前を付けた。魔力という魔法の根源となるエネルギーのさらなる基礎にあたる最初のエネルギー粒子…どんな魔力も、この魔法素粒子から始まって魔力へと至る。これが…俺の創り出す魔道具の基本エネルギーだ」


「オォォォォォォォォォォ!黙れ黙れ黙れェ!」


「そのエネルギーは単純な力に変換する事に限り、魔力よりも遥かに力への変換効率が良く、事象を強く出力させる事が出来る。例えば単純な破壊や衝撃……そして物理、魔法、エネルギー共に干渉する防壁とかな」



ゼネルガが乱れ打つように拳撃を連続で打ち込みその度に不可視のフィールドへと激突した一撃が青白い閃光を放つ。一発たりとも、そのフィールドを抜けることは無くカナタの寸前で止められてしまう


魔障領域エーテリオン・フィールド


カナタにそう名付けられたそれは、カナタが身に纏うように展開する不可視のエネルギー防御壁である


一度出力すれば長時間展開することが出来る防御壁であり、物理的、魔法的、熱や冷気等の基本エネルギー体に干渉して衝突現象を引き起こす魔法装甲…所謂バリアだ


ただし、耐久力には限界があり同じ箇所に攻撃を当て続けるとその箇所だけダメージの飽和によって霧散、消失してしまう


そして一度飽和すれば再チャージまで一切の展開は出来なくなるのだが



飽和させられなければ触れることすら不可能



今まで使わなかったのは単純な理由…使う必要が無かっただけのことである


そして実はまだ改良の余地を残す魔道具であり、リベリオン程の全身鎧、特別な金属には搭載できてもこれ以上小型化は出来ていない点がカナタの気になるポイントでもあった


現状、他に搭載できるのは更に大型の魔道具のみであった


そも、装甲だけでもこの世に存在しない金属素材で構成されたリベリオンは生半可な攻撃では傷すら付けられない


今回のゼネルガに関しては…ただ、ラウラに触れられたく無かっただけである



『これが俺の特異魔法だ。カビの生えたアーティファクトと一緒にされたら困る…勇者が持つこの世界における「特異性」、それが俺達が保有する特異魔法だ。この世界で代替できるような力なら…そもそも異世界から呼ばれる理由はないだろ?』



淡々と語られる内容はあまりにも突飛で、そしてよく考えれば当然の内容だった


この世界の人間が当たり前のように勇者と同類の技能才能を持つのであれば勇者など呼ぶ必要はない。勇者だからこそ、持つ力…それ故に勇者は特別なのだ


如何に過去の躍進した文明遺産たるアーティファクトと言えども…勇者が持つ特殊能力に匹敵する物は存在しない


過去の勇者皆がそうだったのだ


勇者ジンドーは勿論、例外ではない



『お前は勇者を「英雄」と、その頂点だと言う。けどそれは違うな。勇者ってのは英雄でも敬称でも無い』


「だったらァ………!!」



ゼネルガが目標を変えた


俊足にて近寄ったのは……その後方に膝をついていた6人の聖女達


何も人質ならばラウラに限定しなくとも良い。もっと非力な聖女を盾にすればこの場をやり過ごす程度は可能な筈だ、と


聖女達は目視することなど出来ない、それ程の速さで肉薄したゼネルガはその速さのまま






「がべぁッ!?」





漆黒の鎧に正面からぶつかり跳ね返されるように真後ろへと吹き飛んだ


どんな速さを出せば可能なのか…先程までラウラを降ろしていたジンドーは腕を組んだままゼネルガの目の前に立ち塞がっているのだ


それも今回は不可視のフィールドが無い…硬い超合金の鎧はゼネルガ自身の速度も相まって強烈な凶器と化して、棒立ちながらにゼネルガの体を叩きつけた


もはや瞬間移動をゼネルガは疑う速度…今の自分を悠々と上回る猛烈な速度での回り込みは強化やアーティファクトを幾重にも重ねている筈の自分ですら見えなかった



「クソ…ッ……ならば…!」



悪態をつくゼネルガがその目標をシオン達へと変える


先程と同じ速度を瞬時に出してその身柄を抑えようと駆け出し……一歩踏み込んだ先でまたも回り込んだ漆黒の鎧に衝突し、跳ね返されるように真後ろに飛ばされた



『「兵器」だよ、ゼネルガ。勇者の現実はこの世界…アルスガルドにおける最終兵器リーサル・ウェポン。ただアルスガルドの敵を駆逐し正常を取り戻す為だけに存在する決戦兵器。あぁ…本当にその通りだと思うよ。だからこそーー』



尻をついたゼネルガにジンドーがゆっくり前に出ると、その頭を鷲掴みにして持ち上げる


ここで初めてゼネルガは………恐怖した


先程のような正体不明の恐怖ではない…ただ、自分が通用しない圧倒的脅威が己を掴んでいる。今まで自分を生存させここまで登り詰めてきたはずの力が何も通じない…その恐怖が初めて自分を震えさせた



『ーー俺は勇者と名乗るのを躊躇った。勇者ってのは兵器じゃなくて…「人」であるべきだからな。ただの兵器が…勇者を名乗るのは間違えている、そう思った。そんな決戦兵器である勇者が人と成るか…それは人にそうであると求められた時に他ならない』



その揺るがない在り方に、自分が勇者を名乗る不自然さをゼネルガは初めて認識した 


なんてことはない…強ければ勇者では無いのだ


己が勇者を名乗ろうと…求められていないならば勇者とは呼ばれない。力尽くでそう呼ばせようとして、力尽くで己に従えようとして…勇者を名乗る


そのあまりにも無理のある己の理屈が垣間見えてしまった



『お前は誰かに求められたか?「勇者」であることと…側に居て欲しい「人」という事を、誰かに求められたのか?』



ただ、己は勇者であると…自ら名乗りを上げて、自分の思うままのパーティを立ち上げるべく洗脳に手を出した


…誰にも望まれていない「勇者」は、誰からもそう呼ばれない「勇者」は…勇者ではないのだ、と


そして…自分は一体誰に望まれたのか…?


真に勇者と謳われた者の…狂気とも呼べる自己認識の前に自分を着飾るべく頭の中で作り上げた輝かしい自分の虚像は砂山の如く崩れ落ちたのだ



「離せ…離せェェ!違う!俺は勇者!勇者になれる!いや!既に勇者の筈だ!今からこの街の危機を救い、新たな新生パーティと共に世界に輝く英雄として君臨する!俺は勇者だァァァ!」



頭を掴む漆黒の鉄腕を我武者羅に殴り付ける


それでもなお、己の中に組み上がった理想の自分を捨てきれない


この男が居なければ…この男を超えた先に自分の理想郷は存在するはずなのだ


自分は必ず英雄となれる…凝り固まった自信と上手くいった先の景色を考えればそれをまざまざと諦める事など出来なかった


勇者……それは皆の畏敬を集める最高の存在。戦いを生業とするならばその華々しい活躍に心躍らせない者は居ない


ならば自分こそがその立場に相応しいのだ


…それをゼネルガは信じて疑わない


強化を施した拳も蹴りも…まともに叩き込まれるそれを、掴んだ手すら僅かにも揺るがせる事無く溜め息を漏らしたカナタはゼネルガを片腕で吊し上げたまま





左手に拾い持っていた古ぼけた小剣でゼネルガの太腿を深々と突き刺し貫通させた




「い、あぁぁぁぁぁァァァァァァ!?なにを、するんだァ!?お、俺の脚がッ……キルスティンで俺の脚をぉッ!?」


『俺は胸を貫通されたんだ、脚の一本くらい安いもんだろ?それに……あと10分もせずに群性暴走スタンピードが外壁まで到達しそうだ。さっさとやる事やらないとな』


「こっ、殺す気か!?俺を!?」


『さっさと殺しても良いんだけどな。…残しておくのは厄介だ。後顧の憂いは断つべきだろ?』


「ハハッハハハハッ!だが群性暴走スタンピードを止めるのは無理だ!あれは俺が飲み込んだアーティファクトに引き寄せられているのさ!俺を殺しても腹の中のアーティファクトは取り出せない!何故なら…」


『体組織と融合してお前自身が誘引中の魔物を引き寄せるアーティファクトと同化しかかっているから、だろ?元々は他の魔物に同化させて人為的に魔物を引き寄せ同士討ちさせるアーティファクト、ってところか。そのアーティファクトが放つ魔力波長を一度でも捉えた魔物は同化した相手に向けて一心不乱に突っ込んでくる、と。…別に、あの程度の群れなら駆除に5分もかからない。でもま、俺が暴れると足止め中のレオルドが微妙に危ないか…』


「な、ぁ………」



脚を自分の保持していたアーティファクト…治癒不能のキルスティンで貫くまで深々と突き刺されれば突然の激痛に上げたことのない絶叫が迸る


熱い体液が太腿から噴き出し伝う深いと激痛…そしてその傷が治癒不能の力を持って刻まれた絶望がゼネルガを襲った


持ち、使っていたからこそよく分かる。この小剣で傷つけられたのなら…もう助かる見込みは殆ど無い。自分のアーティファクト達ですら傷をふさげるかどうかは分からない…


だというのに、何の気負いもなく言ってのけ、自身の虎の子であるアーティファクトまでつらつらと逆に説明され、挙句の果てに自分の言う事を最後まで聞くことのなく、カナタに未だに顔面を掴む腕を殴り付けるゼネルガが色々な意味で素っ頓狂な声を上げた


呼び寄せた魔物は上位竜を中心とした街を滅ぼせる戦力だ。自分を殺せば魔物は止まらなくなる…そう言いたかったのだがあまりにも相手が悪すぎる



『じゃ、そろそろ行こうか』



「へ…ぁ…っ!?」



挙句の果てに…突然「行こうか」等と言われた直後に、眼の前の鎧が背中や脚からブースターの光を噴き出しながら自分を掴んだまま空中へと浮かび上がったのだから間抜けな声も出るだろう



「と、飛んで…ッ!?ど、どこへ行くつもりだ!?」


『俺がお前を殺したくないのはリベリオンとか、あと周りが汚れるからだ。間違ってもお前の血なんかで汚したくねぇ…ラウラに付いた日には清浄化の魔道具を1から作らないといけなくなる』



心底面倒くさそうにぼやくカナタがナチュラルにゼネルガを汚物扱いしながら『…それに』と続けた



『お前に魔物が向かってくるなら…



「……は?」



『楽しいフライトと行こう』



ゼネルガの返事など待つこと無く、物を持つように顔面を掴んだままカナタは一筋の流星の如く光の尾を引いて飛翔した


地上に強風を撒き散らしながら、聖女達やラウラが真上を見上げた時には既に…光の線は大闘技場の真上から直線上に街の外へと進んでいくのが見えていた


先程の喧騒は何もかもなりを沈め…2人が空へと飛び去った大闘技場は観客も逃げ出したこともあり驚くほど静かになるのであった







その中で…タランサが呆然と呟いた



「ら、ラウラ様…あのお方はやはり…」


「えぇ。あの方こそ、私の…最愛の殿方でしてよ。……今見聞きしたことは全て秘密ですから、よろしいですわね?」


「「「「「「はっ、はいっ!」」」」」」



目の前に降りた伝説、誰も姿を見たことが無い勇者…今、すぐそこに彼が居た


側で見ることすら無かった存在だ。それがまさか自分達の数m先で自分達を守ってくれたのだと思えば鼓動が早くなるのも無理はない


聖女教会は常に勇者と共にあった


初めて召還された初代勇者の時から、必ず教会内の聖女が勇者の癒し手として旅に同行をしてきたのだ


聖女達にとって、勇者と共に旅へ出るのは憧れ…物語に抱く憧憬と同じ光景なのである。だからこそ、随伴となる聖女は教会内でも高い人気を誇るのだ


今……目の前に聖女教会最高の聖女と、世界を救った最強の勇者が揃っていたのである。そんなのは書籍化された物語の挿絵でしか見たことがない



(も、もしかして私達はとんでもないシーンを見てしまったのでは!?)


(はわぁ…!こ、これ自慢しちゃ駄目なんですよね!?辛すぎるぅ…!)


(尊すぎて動悸が…!…は、早くこの感動を文字に綴らないと…!)


(バカっ…これは私達とラウラ様の秘密なのよ!?記憶にとどめておかなきゃっ…!)


(落ち着きなさい!今は……今は祈るのよ!)



なんてことを小声で囁やき合いながら両手を合わせていることはラウラも知らない事だった


茶目っ気に片目をぱちり、と閉じながら忠告するラウラに声を揃える聖女達がキラキラした眼で見つめてくる


ちなみに……この場にいる聖女達はこの件からラウラ付きの特別な側仕えの聖女として取り上げられ、常に側で行動することを許される事となる


今まで誰も側に置くことはなかったかのラウラ・クリューセルが「大聖女付き特務聖女隊」…通称「福音」と名を付けてまで己と共にいる事を許したのは世界と、さらには聖女教会の中にまで激震を走らせた


後に、彼女達はラウラの教えを側で受け、時には彼女の代行者としての役割を受け持つに至る




「あれ?抵抗が…ライリー?意識はありますか?」


「う……わりー、戻った…。情けねー…こんな姿見せるなんて…」


「ん…情けない………カナタの事刺した…許さん…っ」


「ご、ごめんてー…」


「結果良ければだが……そなたを殺しておかなければ、とも検討したぞ?」


「ごめんてば!ホント悪かった!」



少し遠くでぐってりと力の抜けたライリーに冷たい視線を向けるシオン、マウラ、ペトラの3人…ちょっと苦しそうな謝罪の言葉がライリーから響き渡る


とても居心地が悪そうだ


ちょっと押さえ付ける力が強くて苦しいのはライリーの気の所為ではない…


むっ、と頬を膨らませた3人の少女に体の所々を締め付けられて「ぎぶっ、ちょっぎぶぎぶ…!」と呻いているライリーにラウラが苦笑しながらも…助け船を出さないあたりちょっとだけ思うところがあるようだ


この場に彼を追い掛けられる者など居ない以上、連れて行ったゼネルガがどうなるのかを知る事はできないが…ラウラも、シオン、マウラ、ペトラの3人もこれだけは分かっていた




カナタはこういう場合……情けや慈悲をかけるような性格ではない事を





ーー




良く晴れた雲一つない晴天、カラナックから離れた平たい荒野の空を流星のように光が一線、空を駆け抜けていき、ある一点でぴたり、と空中を静止した


それは光を噴き出しながら対空する人型と、それにしがみつくようにしながら頭部を鷲掴みにされるもう一人……



「待て!待て待つんだ!本当に俺を置き去りにするのか!?ゆ、勇者ともあろう者が人をこんな形で人を…!」


『勇者はお人好しって意味ではないからな。あと、俺はお前の考えるような勇者ではない。殲滅、鏖殺、形あるものは妨げとなるなら何もかも破壊する…そうやって生きてきた。無論、これからもな』


「う、嘘が下手だ!なら何故俺をまだ落とさないんだい!?ほら、迷っているんだろう!?」


『…そうだな、迷ってるな。どちらにするべきか…』


「は、ハハッ!やはりそうだ!勇者と呼ばれるものはやはりそうでなくては…」


『このままお前を俺の手で殺すか、それとも魔物の餌にするか…悩みどころだと思わないか?』


「そ…それでも勇者なのか!?人の命をなんだと…」


『それをお前に言われるとはな。俺を殺し、女を奪い、魔物を街にけしかけ、挙げ句アーティファクトによる洗脳……鏡を見てみろ、勇者の所業か?』



金色に輝く双眼のバイザーが冷たくゼネルガを睨みつける


自分を棚に上げるのも限界が来ていた


勇者、という名を免罪符に自分の我儘と欲望を叶えようとして来たその末路…本当の勇者に今、命を握られている状況は自分が望んだ姿とは正反対の…まるで勇者に打ち倒される悪そのもの


最後のジンドーの言葉によって…自分が勇者らしいか否か、それが何となく理解できてしまったのだ。しかし…それを認められる訳が無かった


……認めたく無かった


今、自分は自分の頭を掴む勇者の腕に縋り付き落ちないようにするのが精一杯


脚から流れる血は止まる様子を見せず、自動回復のアーティファクトはこの傷に対して一切の効果を発揮してはくれない


この脚では…群性暴走スタンピードの魔物から戦うのはおろか逃げることすら不可能だ


だから、この場でゼネルガに残された選択肢は一つしか無かった





「た……………助けてくれっ!は、ははっ…つい魔が差してしまったんだ!なぁ!済まなかった!この通りだとも!もうこんな事はしないさ!君達にも一切何もしない…そ、そうだ!俺の持ってるアーティファクトも上げよう、全部だ!あのアーティファクトがあれば好きなら女を手に入れられるぞっ?それに何かあれば俺がこの身をかけて力を貸してあげようじゃないか!冒険者ギルドにだって口利きできるし…あ、あぁそうそう!実はバーレルナの貴族に伝手があってね!よ、良ければそこと懇意にさせてあげられるんだ!それにまだ俺しか知らない遺跡の場所なんかもある!そこにはまだまだ未解明のアーティファクトがあるんだ、教えてあげるさ!あ、いや目障りなら二度と君達の眼の前には現れないとも!でも良く考えてみてくれ、間違いなく俺は役に立つと思わないかな!?い、いやそうだ!投降するよ!今回は悪いことばかりしてしまったからね、どんな罰が下るか分からないけど厳正な裁きが俺には下されるはずさ!そこで考えを改めるさ誓うとも!一生かけてでも反省するつもりさ!だから、だから…」




ーー許してくれッ…!





ゼネルガは冒険者となって初めて………人に許しを請い始めた




その言葉に……勇者ジンドーは少しの間、無言を貫いた






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【後書き】




「んっ……皆大好き〜……っ?」


「「アニメ・マンガ、最オシ命乞いランキング〜〜!!」」


「うっわぁ……本編のあのラスト見てからやる企画じゃねぇ…!」


「溜まってますわねぇ、あの3人…とは言え、読者様からもゼネルガへのヘイトは割と高いですし、当事者ともなれば致し方ないのではなくて?」


「こういう事書いてるとまた「人の心無いんか?」とか言われるんだよなぁ。ま、カラナック編のテーマが三人娘が『初の他国進出に伴う大衆への露出による注目』って感じだからこうなるのは作者的に既定路線らしい」


「確かに……カラナック編だけでも相当色んな言い寄られ方してましたものね。その辺は色々とコメントでも指摘はされてましたし」


「一応作者としてはここらの流れは「わざと」らしいけどな。確かにわざとらしいくらい流れとか敵役は作った節はある…。まぁそれが賛否分かれるのは分かるよ…俺もイライラしてた…うん…」


「…ちなみに私でもイライラしてくれます、カナタさん?」


「えっ……そ、そりゃまぁ……わりと…結構……かなり……というか…」


「あらあらっ…これは今後楽しみですわね?私、自分で言うのもアレですけれど…一応、本編世界では世界的人気の聖女でしてよ?」


「うっ……い、嫌な予感が……それ今後こんな感じの事がラウラで起きる、と…?」


「ふふっ…守って下さいまし?」




「やはりランキングに入れるべきはニンジ○スレイヤーシリーズの敵ニンジャ系の命乞いですね。あの無様感とか掌返す速度はランキングに入れて然るべきです」


「……あばーっ……さよならっ……!」


「なむさん、慈悲はない」


「ん…私は断然……ジ○ジョのディオ様…!」


「お、あれか。主人公ジョナサンに生首を掴まれて船ごと沈むシーン。今までイキイキで殺しに来てたのに急な命乞いは映えたのぅ」


「んっ……ジョナサンまで不死身にしてでも助かろうという今までの悪行とセリフを全部無かったことにする無様な命乞い…そしてジョナサンの覚悟……っ!…んん〜っ…ぐっとくるぜっ……!」


「その後にジョナサンの一族によって倒されるところまで美しい流れですよね。3部ファンが多いのも納得です」


「だがっ!我は断然ドラゴン○ールシリーズの命乞いを推す!フリーザに始まり様々な命乞いがあるが……やはり最高の命乞いはパラガス!自分の息子に潰されて死ぬ間際の命乞いは至高であった…!挙げ句、自分が殺される理由が「サイヤ人の宿命」とか考察してるあたり何が悪いか分かっておらん…!」




「語りますわねぇ、命乞いに。それだけ鬱憤が溜まってると……あら?これってもしかしてーー」


「あぁ……3つの共通点は1つだ、つまりーー」



「「ーー全員命乞いの後に死んでる」」





「「「(……にや)」」」

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