第84話 「武」と「勇」を継ぐ者達


「あー……やっぱり暫く離れませんね」


「……だね……まぁ気持ちは分かるけど……」



シオンとマウラのちょっと呆れ、ちょっと同情の含んだ視線がカナタに向けられていた


…いや、厳密に言うならば座るカナタの膝の上に横座りして彼の体にむぎゅっ、とコアラの如くしがみついている美しい銀髪の親友に向けられていた


カナタの肩に顔を埋め、体を強く密着させながら力強く抱き着いておりこれにはカナタも「おぉ…よ、よしよし…大丈夫だぞ〜…?」と以外そうに彼女の背中を強く抱き寄せながら頭の後ろを優しく撫でていた


既に試合が終了して半刻程が経過しているのだが、ペトラが客席に戻ってきてから彼女の格好は1ミリも変わっていない


余程メンタル的に堪えたのか、珍しくしおらしいペトラは時折カナタの手を抱え込んでは自分の胸の真ん中…紋様の真上に、その手のひらを押し当てさせては「…我はカナタのものだぞ……ちゃんと魂の一片まで…」と言っている…ちなみに、もう4回言ってる


シオンとマウラも流石に珍しいペトラの姿には驚きを隠せず、それだけ「魂に触れられた」という悍ましさは強かったようだ


それも強制的な隷属…もしもそのまま効いていたら…なんて事を考えれば体の震えも止まらない



ちなみに、決勝戦がまだ始まらないのは大闘技場の補修作業中だからである


本来、壁に穴が空いた程度では試合中止にはならないのだが、流石に地面の土が全部引っくり返って基礎剥き出しの状態では試合も行えない


現在、大闘技場整備スタッフである数名の地属性魔法使いが、その魔法によって隆起させた土を広い大闘技場内の隅々に敷き詰めては押し固める作業の真っ最中なのだ


そして…当然ペトラは大闘技場内で話題のど真ん中となっていた


あれだけ派手な魔法をぶっ放しては注目されない筈も無い


彼女が被る真っ黒なフードが無ければ観衆が詰め寄ってきて大変な騒ぎになるだろう


それだけ、彼女の魔法は普通ではない威力や迫力があったのだ


下手をすれば宮廷魔法使いと比較しても、あの一撃は同等かそれ以上の物があった…噂の美少女と会って話したいミーハーな者から冒険者パーティ、私兵へのスカウト等が押し寄せること間違い無しの実力を見せ付けたのだ


…というか、ここにペトラが居ることがバレれば大挙して押し寄せてくるだろう



「カナタ、あの魔道具は危険です。いくら対抗魔法で効かなかったとは言え、あんな奴らに持たせておいては…」


「そこは大丈夫。…さっき、ラウラがぶっ壊してたからな」


「…分かるの…?」


「俺、この街にめっちゃ魔道具ばら撒いてるからね。色々と監視できるのよ」


「と言うことは、ラウラさんもあのアーティファクトがどういった物か分かっていたんですね。…ラウラさんなら、あのアーティファクトによる洗脳状態から元に戻せたりしませんか?」


「どうだろうなぁ…。精神系なら一発で治せるけど、魂からの隷属は…分からないな。慈母抱擁アマティエルなら不可能では無いはずだけど…本来、「魂」なんて領域は人に触れるものじゃないんだ。干渉できるとすれば…それは死霊魔法ネクロマンスの類だろうな」



ーー死霊魔法ネクロマンス


死者の魂へと呼び掛ける魔法


闇属性魔法でのみ使用可能とされる魔法であり、その成功率は著しく低い


残留している魂や念の強さに左右されることから融通の効く魔法ではなく、「もしかしたら死者との会話が可能かもしれない」程度の高難易度魔法である


使用する機会は多くない魔法故に、闇属性持ちの魔法使いでもこれを習得しようとする変わり者はとても少ない


しかし…どのような力があるか未知数の特異魔法を除けば唯一の魂への干渉を可能とする魔法に間違いは無い



「それは…カナタは使えないんですか?カナタは色々な魔法を金属に付与出来るんですよね?…それなら…」


「んー…無理だな。死霊魔法ネクロマンスは持ってないんだ。最近欲しいとは思ってんだけどなぁ…」


「…カナタ、出来ない事あるんだ……」  


「そりゃぁそうよ。全部出来てたらとっくに元の世界に帰ってる……ところで、ペトラ?もうそろそろ大丈夫…?」


「……やっ」


「な、なんかマウラみたいになってます…まさか洗脳の後遺症が…?」


「!?……わ、私……洗脳の後遺症みたいなの……!?」



シオンの言葉にマウラがガビンっ、もショックを受けた!


確かにちょっと自分と似た感じの応答だったけど、いくらペトラがそんな感じじゃないとしても「洗脳の後遺症」とか言われるのは心外である


ーー自分のはもっとこう…特別なオリジナリティのある感じのやつだよ!


マウラはそう言っているのだ!



「まぁ、搦手で攻めてくる相手…っていう経験は出来たな。ペトラも今回のは少し反省だ…不意打ちとは言え相手のペースに乗ったらダメってこと、いいな?」


「う、うむ…それは思った…。不甲斐無い……怪しきは潰さなければならん、ということだな。もう二度と……こんな無様は晒さん」


「そゆこと。……で、ペトラさん…もう大丈夫そうで…」


「……やっ」


「ま、また後遺症が!?」


「!?……後遺症じゃないと思うっ…!!」




どうやらペトラは暫く戻って来れなさそうだ…


そんなペトラをあやしながら、カナタは1人考える



(さて……ラジャン君には早々にこの世から消えてもらおう。…と、言いたいとこなんだけどなぁ…。ペトラが自分の手で潰して片を付けたし、ラウラも治癒せずに放置って嫌がらせしてくれてる…ここで俺が首チョンパしたら二人の格好がつかないな)



カナタとしてはすぐにでもラジャンの前に行き、あらゆる絶望と恐怖を与えた末に体を塵も残さず消し去ってやりたいところなのだ


ここまで弱気になるペトラはカナタだって見たことがない。勇者に辿り着いた時も、ペトラはただ強く…圧倒的な恐怖を見せてもその心は揺らぐことすら無かったのに


今はこんなに不安げで、落ち込んでいて…それだけ、恐ろしいと感じたのだろう


それを考えれば「うん、殺そう」と即決してしまいたくなるが…ペトラは自分の手でケリを付けた


重症を負わせ、男の弱点を潰しにかかり、腕を切り落とし、その体を自らの特異魔法で穿った…なにも効かない恐怖を与え許しを懇願させ、それを踏み潰して敗北させた


そして、ラウラもだ


ペトラだから…そして、アーティファクトの胸糞悪い効果とそれを彼女に使用された怒りからなのか、自分の手で癒やすこと無く、治さない部位も残して放り出した


ここまで、二人がラジャンをしっかり潰したのに…後からひょい、と出てきて二人によって立つことすらままならないラジャンをさっさと殺してしまうのは……きっと2人の為にならない


それに、残しておいても大したことのない相手、というのもある



(問題は兄貴の方だな。突っかかってくるならルール違反にあたる洗脳、精神支配の教唆、共謀の件で吊るし上げられるんだけど…あの性格の兄貴だ、恐らく弟君はその時ばっさり切り捨てられんだろうな。意味ないか…)



ゼネルガ・クラシアスが残っている


ーー3人を狙っているのは兄のゼネルガも同じ事…元より、恐らくあのアーティファクトもゼネルガが所持していたに違いない


何かしらのアクションは仕掛けてくる…そう思っていた


そして、やるとすれば恐らく…



(…いや、今はいいか。取り敢えず今は…そうだな…大事なのは…)






ーーマウラみたいになってるペトラ、めっちゃ可愛いな…





そんな事を考えている、カナタなのであった







ーーー





約1時間後…大闘技場内は元の姿を取り戻した


地球ならば、土を運び込んで重機を使ってなどなど…非常に手間と時間がかかる作業なのだが、ここは異世界、魔法の世界だ


地属性魔法の使い手は岩や砂、大地を操る魔法使い故に、魔法によって土砂を出現させたり離れた場所から浮遊させて移動させる等もお手の物


数人もいれば1時間であっという間に元通りに戻してしまうのである


そんな闘技場に続く入場ゲートの前で、カナタはシオンを見送りに来ていた



「では、行ってきますね。決勝戦…と聞くと緊張しますが…」


「好きに戦っておいで。とは言え…プロメテウスと炎纏ほむらまといは使わないんだっけ?」


「はい。あれを使えば、私の力は何倍にも増大しますけれど…やはり、私の素の実力とは言えません。カナタの力を借りてる状態です。だから…この頑丈さが取り柄の赤鉄と自分の身一つで挑もうと思います。……例えそれで、負けたとしても」


「そっか。多分、シオンにとって大切な経験になるよ。あいつとの戦いは…今までに無い刺激になる。…探りは無し、全力で行っといで」


「はいっ。……あ、それと最後に……」



戦闘服に着替え、手にした長槍…赤鉄アカガネをくるりと回したシオンが気合十分に返事をして入場ゲートへと進み…


あ、と思い出したかのように振り返ると、その場に赤鉄を突き刺し、たたたっ、と小走りでカナタに駆け寄り、片手をカナタの首の後ろに回してもう片手でカナタの仮面をくいっ、と上にあげると少し背伸びをして…



「…どした?……シオ、ん…っ…」


「んっ…む………ん…ちゅ……あ、む……っ」



熱烈な口付けを交わした


カナタも不意打ちのキスにも関わらず、飛び付いてきたシオンの背中に手を回して抱き止める…


かなり情熱的なキスだ


躊躇いなく彼女の熱い舌が、にゅるり、と唇を割ってカナタの舌を舐め、絡める…ベッドの上でするような熱烈なキスに互いの息が乱れる程で、僅かに唇を離せば唾液が銀色の橋を渡す…


暫くの間…粘液の絡み合うディープな音を響かせながら人が居ないのを良いことに激しく舌を交合させ………いや、見てる人普通に居た!


すぐにでも闘技場内に入れるように待機していた聖女2名が顔を真赤にして二人を見ている!


シオンもそんな事は気づいていながらお構い無しだ!


カナタはちょっと恥ずかしい…!


明らかに歳下なエルフの少女の濃密な熱々熱愛シーンを目の当たりにした聖女二人は目が離せない…!


『えっ、あんなに舌入れちゃうの!?』とか『む、貪り合う感じ…大人っ!』とかそんな事を考えている訳では無い筈だ!


暫く…本当に何分も後の事、ようやく「ぷはっ」と唇を離すとつー、と互いの唇を繋ぐ唾液の橋をシオンが艶かしく…カナタの唇ごと舐め取り、やっと体を離した



「ふふっ…元気とやる気の補充ですっ。沢山いただきましたっ」


「う、た、沢山いただかれた…見られてたけどっ、めっちゃ見られてたけどねっ!?」


「見せてあげれば良いのです。ちょっと体が火照っちゃいましたけど……優勝祝いは今夜たっぷりと、飲ませてもらいますので…っ」



赤い顔で機嫌よく笑うシオンが、艶っぽく…自分の下腹をなぞればカナタもそれが何か嫌でも理解…「あっ……それはもう、溺れる程します…!」と言うしかない…というか、カナタがしたい!



今度こそ、入場ゲートへと歩いていき地面に突き刺していた赤鉄を擦れ違い間際に引き抜くと、くるり、と回してゲートへと向かう


これが武争祭本戦最後の決勝戦…緊張と、戦意と…そして愛しの相手との激しいキスに胸の鼓動を高鳴らせ、戦いの場へと入っていくのであった











「……………(じー…)」


「……………(じー…)」


「……………」



顔真っ赤な聖女2人の視線にとても恥ずかしさを覚えたカナタはずり上がったマスクを被り直して、そそくさと客席へ逃げ帰っていくのであった






ーー





『さぁ!ついに本戦も最後の試合だッ!優勝を競うのはこの二人!冒険者なら知らぬ者など居ない!かのレオルド・ヴィットーリオの1人弟子!若き冒険者の中で最強を謳われた、ライリー・ラペンテスッ!そして…予選から激戦を演じ、ここまでの戦いを制し、先の凄まじい戦いを見せた少女二人の同門という期待の新星、シオン・エーデライトッ!』



視界がその名を言い終えた瞬間、鼓膜を震わせる歓声が二人の姿を歓迎した


闘技場内に立つライリーは、シオンの姿を見て楽しげかつ獰猛に笑う…まるで肉を目の前に吊るされた肉食獣と思わんばかりの、獲物に飢えたその笑みが…彼女の期待と興奮を物語る



「やっぱ来たなシオン。待ってたんだぜ、ホント…ここまでの奴らは骨無さすぎて、お前とヤれるのだけを楽しみにしてたんだ。なー、やっぱ俺の女になってくれよ!…いや、して見せる!俺が勝ったら、バーレルナ来賓の報酬にシオンとの交際を名言させる!」


「まだその話を……。というか、手段選ばなさすぎです。…もしかして、他の人のモノを奪う趣味でもるんですか?」


「ははっ!そんなん、いただいた後で満足させりゃ純愛だろ!任せとけって、俺…テクニシャンだからな」


「そこの心配はしていません。あと……貴女は本当のテクニシャンを知らないと思います」



へっくしっ!


…客席のどこかで誰かさんがくしゃみをした


誰かに噂でもされたのだろうか?



「んだよ、回数の話か?安心しろ、俺のスタミナすげーから、気絶するまでシてやれるぜ?」


「そこの心配もしていません。あと……貴女は本当に気絶させられる感覚を知らないんです…」



ぶへっくしょい!


…客席のどこかで誰かさんが盛大なくしゃみをした


誰かに話のネタにされたのだろうか?



「あっははははははっ!色を知ってるところも素敵だぜ、シオン!そういう所を、俺の色に染め直すのも最っ高だ…!」



めげないライリーがさらにリビドーを燃やす…シオンもこれには「…言っても無駄ですか」と諦めのため息を漏らし…ギュンッ、と赤鉄を一振りして周囲の砂埃ごと空気を薙ぎ払うと片手に赤鉄の石突の方向を担ぐような姿勢で構え、左手は指二本をライリーに向けた姿勢に変わる…脚は開、腰は下げ…即座の動きが可能な姿勢はまさしく臨戦態勢


それに、ライリーも呼応した


背中に担いだ幅広両刃の金色のバトルアックスを降ろし、柄の中心部分を掴んで肩に担ぐと左手を地面にぴたり、と着ける低姿勢…脚は片方を伸ばしてクラウチングにも似た姿勢で相対した



「様子見はしません。全力で潰します、いいですねライリー?」


上等じょーとーッ!俺と殴り合える戦士とヤれる…ッ簡単に潰れんなよシオンッ!」



大銅鑼が、鳴り響いた


今、決勝戦の火蓋は切られたのだ


そこからは、いつ、どう攻めても、攻められてもおかしくない



「…ライリー。1つだけ、貴女の勘違いを訂正しおきましょうか」


「あん?」



怜悧なシオンの視線に眉をしかめるライリーの危機感知と反射神経が生存本能に警報を鳴らしたのはその直後だった



「私は戦士ではありません。ーーーーー魔法使いですッ!穿て!罪禍の炎熱ディザスター・ヒートッ!」



突き出されたシオンの左手の指二本…その先端がギュルルッ、と真紅の魔力を収束させたのを見たライリーは咄嗟に構えたバトルアックスを盾のように正面に構えた


次の瞬間…真紅の魔力を纏った熱線が一直線に放たれライリーに向けて直進…槍を構えてると見せかけたのシオンはノーモーションでの熱線をライリーに叩きつけたのだ


構えたバトルアックスの腹に男の胴体程もある太さの熱線…罪禍の炎熱ディザスター・ヒートが直撃し、凄まじい勢いでライリーの体がノックバックし、地面を2本の脚が踏ん張りガリガリと抉りながら体が下がっていく


距離が開いた…しかし、熱線を受け止めながらもライリーに直撃していないのを見ればシオンも舌打ちを隠さない…ライリーはバトルアックスの腹で熱線を防ぎ続けており、ついには踏ん張りきって立ち止まったのだ


その状態で…ライリーは器用にも熱線を受けるバトルアックスを片腕と片足で支えながら…何かを投げたのをシオンは見逃さなかった


は猛烈な勢いで熱線を放ち続けるシオンの喉と腹に飛び込んでいく…それを、シオンは魔法を中断して赤鉄を一閃させて叩き落とした


ガンッ、キンッ、と硬く金属質の音が何かを弾いたのを感じさせ、横目でそれを確かめれば…それは半透明なナイフの刃部分の形をしたものだった


見えづらい…良く見れば形は輪郭が見えるし光を僅かに反射して煌めいて見えるのだが、透き通って見えるそれは非常に視認性が悪い…まるで暗器のようである



「ったくよー…!丸焦げになるとこだっての!あっぶねー…!なーんか隠してんなーって思ったけどよ、まさか…まさか魔法使いとはな!あんだけ殴り合えてそりゃ予想してねーよ!」


「決まったと思ったんですが…やはり、ただの斧ではありませんね。…私の魔法による熱が籠もってない…まさかその斧は…」



楽しそうに文句を漏らすライリーだが、息も乱さずあの魔法を受け止めていた


その理由…柄から何まで金色の金属製バトルアックスが熱線を受け止め続けていたのだ、人が持てるような温度ではない筈…ただの金属ならば溶けて折れ曲がるような威力なのだ


なのに平然と得物を持ったままのライリー…バトルアックスは赤熱化も起こしていない


シオンの予想はただ1つだった



「…魔法耐性…いえ、そんなレベルじゃありませんね?」


「お、流石に気付くか。俺の相棒、『グレイゼル』は柄のケツから刃の頭まで100%がヘキサタイトとアーガンメタルの合金で作られてんだ。そんでもって、付与魔法で幾つか効果を盛った魔道具だからな、この程度は問題ねーんだ」


「っ…な、なんて非常識な武器を…っ!」



シオンが驚いたのも無理はない


魔法金属「ヘキサタイト」…それは古代のある文明の遺跡からのみ、極稀に確認されている超希少金属である


その効果は……「魔力を受ければ、受けるだけ強度と魔法耐性が上昇する」という現代では再現不可能とされる超金属だ


あまりにも希少…かつ、採取難易度の極悪さから市場に出ることはほぼ無く、一部では幻の金属とさえされるほどでありその有用性は…今、見せられた通りである


武器や防具に転用すれば魔法に対して無類の防御力を獲得できるのだ



そしてもう1つ…


秘伝金属「アーガンメタル」……古来から続くとあるドワーフの一族が代々受け継いでいる金属であり、その特性は…ただひたすらに頑丈


温度変化から酸化、腐食等のあらゆる損壊、変性を一切受け付けず、現在確認されている金属の中で最も頑丈とされるものであり、破壊不能とすら噂される程だ


それ故に、精製、加工は基本的にドワーフのある一族しか不可能であり、彼らが操る魔法の炎でのみ鍛造が出来る…



そんな反則級の希少金属を使用した超合金を100%使用した武器など、カナタの武装で目が肥えている筈のシオンですら度肝を抜かれるレベルの一品である


これはカナタ以外知らない事だが……この2つの金属はカナタの身に纏う鎧…リベリオンにも使用されている程なのだ


ヘキサタイトとアーガンメタルはカナタが加工、合成、精製しない…言わばこの世界に存在していた金属の中でも数少ない、カナタがなんの手も加えずに使用している金属である


しかし、ヘキサタイトはその特性から魔道具として魔法効果を付与するのが格段に難しい…


これを可能にするには特別な付与魔法に精通した魔法使いが何人も必要であり、例え「幾つか」しか付与されていなくとも、そもそも魔道具であることすら異常なのだ


金だけの話ではない、どんなツテがあればそんな物が造ってもらえるのか…



さらに、今ライリーが投擲した物…ライリーが何か取り出す訳でもなく突然の投擲モーションから投げられた刃のような半透明の物…


地面に落ちているそれを、赤鉄の石突で叩き付けてみれば、ガラスの割れるような音と共に砕け散り…ふわり、と光の粒子となって空に溶けて消えた



「これは…魔力…?」



そう、魔力特有の光だ


ーーまさか…魔力を鉄のように硬めて投げ付けている…?でもそれなら魔法を撃った方が…というか、そもそも魔力を物質的になるまで押し固めるなんて普通の技ではない


ただの力技だ


魔力を形通りにガチガチに固めただけの、魔法とすら呼べない技…しかし、真似できる者は殆ど居ないだろう


結界のように魔法の術式で具現化してる物ではなく、強引に魔力を仮想結晶になるまで凝固させている…並みの魔力放出力では不可能な芸当だ



「成る程……やはり『暗器』と、考えた方が良さそうですね。飛び道具が使えるのは確かに厄介…ですが、遠距離戦ならこちらが上ッ…!赤熱球レッドスフィア!」



赤鉄を正面に構え直し、指で柄の中心部分にある宝玉をなぞる


シオンの言葉と魔力に応じ、彼女の周囲に何十発もの紅くエネルギーに満ちた球体が浮遊し、指2本を、びっ、とライリーの方向に向ければ真紅のエネルギー球は弾かれたように放たれた


それも次々とシオンの周りに生成されては片っ端から発射されていく…


弾幕、とも言える攻撃魔法『赤熱球レッドスフィア』は触れれば爆発するシンプルな魔法…故に威力の調整と乱れ撃ちが容易であり、ライリーに向かう最中にその逃げ道を潰すよう地面に着弾させれば爆炎の華がそこら中で咲き乱れた


ライリーの姿は一瞬にして爆発の中に消える…しかし、ここで仕留めたと思う程シオンはおめでたくは無かった


ライリーが居るであろう爆炎の向こう側へとさらなる赤熱球レッドスフィアをばら撒き続けて徹底的に逃げ道を塞ぎにかかる


いくらあのバトルアックスに魔法を無力化する程の力が備わっていようとも…全身を守れるような大きさではない


範囲攻撃、爆発による広範囲に破壊力を撒き散らしてライリーに防御しきれない攻撃範囲を実現する…



その爆炎を引き裂いて…ライリーの姿が飛び出した



飛来する赤熱球レッドスフィアの中で自分に直撃、至近弾となる物だけを手にしたバトルアックス『グレイゼル』を片腕で素早く振り回して切断、叩き落としながら真紅の弾幕を突破してきたのだ


その体に傷と呼べる物は無く、服が僅かに煤けているだけ……強力な強化魔法によって頑強に昇華されたライリーの肉体は、赤熱球レッドスフィアの爆発の衝撃程度では傷にもならない



「ははははははっ!つれねーなぁシオンッ!もっと近くでやろーぜ!俺と殴り合うのはこえーのかァッ!?」


「近寄れたら、お相手してあげますよ!それとも、近寄れなくて困ってますか?」


「ならそこで待ってろよ……ッ!」



ドンッ、と地面を踏み込んでライリーの体が爆発的に加速した


それを見たシオンはすかさず連射する魔法を変えた


ボーリング玉より一回り大きいエネルギー球から、螺旋状の溝がある円錐型のドリルのような弾丸…500mlのペットボトル低度の大きさの炎と熱で造られたその魔法『熱旋弾ヒートスパイル』を乱射し始めた


熱旋弾ヒートスパイルは爆発は小さいが、何よりも小型で貫通能力が高く、弾速が速い


赤熱球レッドスフィアの爆発による範囲攻撃が効き目無しと分かれば、それよりも速く、当たればダメージのあるであろう魔法に変えるのは当然のことだ


まるで機関砲のように『ドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッ』と発射される音が連続で響き、ライリーを焼き貫こうと数多の弾丸が殺到するが、これをライリーは回避


鍛えられた肉体と反射神経、天性の勘と動体視力で姿がブレるほどの速度で避けながらシオンの周囲を旋回するように駆け抜ける


その最中、ライリーが器用な姿勢から再びの投擲姿勢を見せた


シオンの視界に、自らが放つ熱の弾丸の光を少し反射する物体の投擲を確認すれば目を凝らして半透明の投擲物…


自分の強化魔法による防御力ならば弾けるだろう


適当な魔法攻撃や武器攻撃は反撃せずともこの体を傷付けられない


たかだか投擲された魔力の凝刃程度は問題ない



そう判断を下したシオンの肩に投擲された刃が到達し、その刃先が彼女の着ている服を突き抜けて肌に触れたその瞬間…



「っ…!!……ちッ……!」



舌打ちと共にシオンは肌に触れた刃を受け流すように肩を透かして体を回転させた…受け止める判断を即座に撤回したのだ


結果、肩で受けようとした刃は肌を掠めて後ろへと飛んでいき、回した体の勢いのままに手にした赤鉄を振り回し、飛来する刃を片っ端から叩き落とす


そのシオンの肩には…ほんの僅かに血がにじみ出ていた



(妙です…っ…私の強化魔法を貫通する威力…!あのまま受けていたら思い切り肩に突き刺さっていました…っ。投擲しただけの武器にしては不自然…っ…)



掠めただけで、強化魔法を行使しているシオンの肌が切り裂かれたのだ


予選から数多の出場者の武器や魔法を素手で握り潰し、体で受けていたシオンの肉体が…容易く切れた


肌に触れた瞬間…皮膚に、肉に僅かに食い込んだ悪寒に従った凄まじい速さの回避…そうでなければ、早々に左肩へ深い裂傷という強烈なハンデを背負う所だったのだ


そこから咄嗟に赤鉄を振り回しての全投擲物を迎撃


しかし、その隙は彼女に対してはあまりに大きかった


叩き落とす為に赤鉄を振るい、投擲物に意識を向けた僅かコンマ数秒…その瞬間、シオンの意識の間隙をついたライリーは、ガクンッ、と進路を直角に変更


真紅の弾幕の中を神がかった回避でシオンに向けて凄まじい勢いで突撃を開始した


はっ、とライリーに向けて標準を定め直すも彼女の突撃に対してあまりにも遅い…そう判断したシオンは即座に迎撃に切り替え、手にした槍をその場で回転させ静止状態から最大威力を放つ、彼女の得意技


喜色を浮かべるライリーが手にしたバトルアックスを肩上に振り上げ、速度を増した


シオンの体がくるり、とその場で回り…ライリーが踏み込んだ瞬間に発射される全ての魔法を辞めて回転の勢いのままに、飛び込みざまにバトルアックスを振り下ろすライリーに向けて赤鉄を上段から振り下ろし……ーー







次の瞬間…地面が割れた






グレイゼルと赤鉄が真正面から激突した衝撃は尋常の物ではなかった


押し固められた土の大地は放射状に亀裂が入り、二人の足元は衝突の衝撃波で円形に凹み、弾けた衝撃は客席の結界をけたたましく震わせる


どれだけの力がぶつかりあったのか、結界越しに伝わる衝突音は爆薬でも吹き飛んだかのようなものだった



「おいおい……なんだよその槍ッ!グレイゼル叩き付けてなんで傷1つねーんだッ!?すげーな…!普通はべっきり折れちまうんだけどよッ!」


「ライリーの斧と同じです!これは…特別製ですからッ!私の特別な人が造ってくれたんですっ!」


「っ…妬けるじゃねーか…ッ!」



赤鉄とグレイゼルの刃は火花を散らしてぶつかり合うも、双方に傷どころか刃毀れ1つ付いていない


驚異的な頑強さである


普通の鉄ならば粉々になるのは間違えない


ライリーとシオン…2人の凄まじい怪力でぶつけ合っても尚、びくともしないのは双方の武器がどれだけ手の掛かった物かを表していた



「本気で行くと、言いましたから…ッ!勿体ぶらず行きますよライリーッ!ーー第一臨界オーバーロード・ファーストッ!」


「ッ……!その魔力変異……!そうか…シオンお前…ッ…オリジンホルダーか!?」



シオンの体を、今までの真紅の魔力をさらに煮詰めた濃密な紅蓮の魔力が染み渡り、光を放つ


この魔力の質の変化…ライリーは何度か出会ったことがあるので知っていた


魔力の質が変異するのは…特異魔法の使い手が、その真価を発揮しようとしている瞬間である、と



「うあっ!?」



競り合っていた筈のライリーが勢いよく…槍を思い切り振り抜いたシオンに弾き飛ばされる。力任せな凄まじい振りだ、競り合った状態から突然一方的に力負けした事に宙で体勢を立て直しながらライリーは考える



(なんっだ今のパワー!?いくらシオンの方が力強いからってここまで馬鹿力だったか!?…いやいや、考えろよライリー・ラペンテス…ただの強化にしか見えねーけど、もしこれが…?けど特異魔法が強化だけなんてシラケた事あんのか?…もしそうじゃないなら、何かあんな…)



地に足をつけるまでのほんの数瞬の思考


数多の戦闘経験から、可能性を弾き出すライリーの答えは真実に近いものだ



特異魔法…極限臨界エクスター・オーバーロードによる魔法の1つの、第一臨界オーバーロード・ファースト


ありとあらゆる項目を強化し次元を引き上げる増強を行う極限臨界エクスター・オーバーロード…シオンは自分が戦闘で使う能力をまとめて1つの項目として一瞬で複数項目の強化を達成する


それが第一臨界オーバーロード・ファースト


筋力、防御力、瞬発力、視力、魔法耐性、強化、感知等…これらを纏めて一つの魔法に括っておく事でわざわざ1つずつ強化する手間を省く


しかし同時に……シオンは素の状態での極限臨界エクスター・オーバーロードの操作に万全とは言えない至らなさがあった



(…ッ……そんな簡単に立て直されても困ります…!もしも第二セカンドで仕留められなければ今の私では押し負ける、という事になる…!でもそっちは加減と制御が難しいです…出来れば第一ファーストで仕留めたい……っ!)



思い切り赤鉄で薙ぎ払い、壁に叩きつける気の一撃なのにライリーは飛ばされながらすぐに姿勢を回復させてしまい、すとん、と着地していた


押し込み、冷静に見えるシオンではあったがその実…かなりの焦りが見えていたのだ





だがそれはライリーも同じである



(っぶねー。まともに喰らえば一撃でおねんねだぜあれ…。取り敢えずパワーアップ系の特異魔法なのは分かった…幸い、俺の凝魔器マテリアル・ギアは通じてた。距離のアドバンテージはまだどうにか誤魔化せんな。問題は、どうやって反撃されずに殴り倒すか…)



ライリーの使った投擲物…それは彼女自身が凝魔器マテリアル・ギアと呼んでいる魔力攻撃法


通常の魔法に驚くほど適正が無かったライリーは下級魔法ですら大した威力で撃てなかった…しかし、大量の魔力とそれを一気に解き放つ才能はずば抜けていた


遠距離の攻撃手段に悩んだライリーは、強化魔法以外に使い道のない魔力を持ち前の放出力で出し固め、この恵まれたパワーと自慢の強化魔法から放つ投擲で使えばその辺の魔法より遥かに発動時間も弾速も速い


魔力を固めただけなので大きな物は作れない…長さにして20cm程度の物が精々だろう、しかし下手な結界よりも硬いし自分のパワーで投げれば威力は十二分にある


遠距離攻撃に乏しいライリーが遠くの敵へと差し込むための重要な攻撃手段なのだ


だが…ライリーが自分よりハイパワーの相手と戦うのは己を教え導いたレオルド以来初めての相手なのだ


当然…



「楽しーな…!どうやって…どうやって倒そうか…!俺が…俺が得てきた何もかもを使って勝ちてー…!はははははっ!このままじゃ俺もダメだよな!行くぜシオン!出し惜しみはナシだもんなッ!」



ライリーの闘気が爆ぜる


莫大な魔力を身に纏い、紅蓮の魔力を放つシオンに対し太陽のようなオレンジ色の魔力光を煌めかせたライリー


師の魔力よりも明るく、鮮烈な光を放ち…師より伝えられたその魔法を叫ぶ


それは、レオルド・ヴィットーリオの代名詞とも言える魔法であり世界でも最強の1つに分類される強化魔法の中でも体内に術式を張り巡らせて発動させる異質の強化…





「この身を巡れ殲滅の血潮!高まる鼓動に祝福をッ!『バスタード・マキシマ』ァッ!!」





彼女が、最強の冒険者レオルド・ヴィットーリオのただ1人の弟子である理由が示される







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【後書き】



「とうとうこの話題に触れなくてはいけなくなったな…」


「そう…ですね…。私もこの話は避けていたのですが…」


「なんだか物物しいですわね…どうしましたの、これ?」


「わ、わからん…我もさっぱり…」


「んっ……本日の議題は……最近読者さんに言われてる問題……そうっ、『ラウラさん、女疑惑』について……っ」


「なぜわたくしが性女呼ばわりをっ!?」


「…まぁ、当然と言えば当然かもしれんが…」


「ペトラさんっ!?」


「むしろ、あれで呼ばれない訳もなく…といいますか…」


「シオンさんまでっ!?」


「ら、ラウラ…性女様だったのか…。これは以外を通り越して…なんかこう、背徳感を感じるな…」


「カナタさんっ!私は性女では無くてよっ!?だいたい、まだ展開に至れていない私が何故そんな誹謗中傷を受けていますのっ!?」


「……『らぶらぶえっちネトラレ主人公慰め展開』」


「『歳上お姉さん聖女による捨てられ主人公報われイチャラブ生えっち子作り展開』……」


「少し何の話か分かりませんわね。あ、カナタさんお茶飲みます?」


「えっ何そのAVかエロゲーのタイトルにしか無さそうなアブノーマル展開の名前…」 


「はーいカナタさんはちょっとお耳に蓋しておきますわね〜」


「なにっ!?なんなのそれ…あれ何も聞こえない!?耳に、耳に慈母抱擁アマティエル詰めてる!?」


「自覚ありますねラウラさん!?」


「やはりそうか!あのせいで我らがカナタを元に戻すのにどれだけ苦労したか……!」


「あれは致し方ない犠牲でしたのよ…ああしなければ深いNTRの深淵にカナタさんが沒んで帰ってこれなくなるところでしたので…私も恥を押し留めて頑張りましたわ」


「…あれ、なんだろう…あのAVタイトルみたいなのに身に覚えがある…?なんだ…ラウラが、俺を慰めて…シオンとペトラは忘れましょうって、俺を優しく…な、なんだこれは…!?」


「……っ……突如カナタの脳内に溢れ出す………存在しない、記憶っ……!!」


「あーあーあーっっ!!思い出したら駄目ですカナタっ!そこから先は地獄なんですっ!って聞こえてませんっ!?」


「我が食らった洗脳魔法よりも効果テキメンではないか!?」


「さぁ、カナタさん…少し私の胸でお休みして下さい…えぇ、何も心配要りませんわ?だって……私もついていますもの…」


「ラウラ…?あぁ…そうか…うん……俺にハマダ、ラウラと、マウラガツイテ…ナニモ……シンパイナイ……」


「……だ、抱き締めただけでカナタが……堕ちた……っ!……すごいっ……これが…女の力……っ!」


「「あぁぁぁっ!ダメダメダメダメぇぇぇっっ!!」」


「ふふっ……流石はお母様ですわね。教わった秘伝の1つ…「落ち込んでいる殿方は、恥ずかしがらずに己の胸にうずめるように抱くべし」…さぁ、私の熱と鼓動をしっかりと感じてくださいまし…」


「不味いです…!あのままではカナタの本能がありもしないNTRの記憶に屈して私達が亡きヒロインと化してしまいますっ!?」


「我ら、そんなにコロッと堕ちる女ではないのだがっ!?」


「……でもペトラ……前の後書き読んだ読者さんのコメントの中に実は…『NTR展開してもありだったんじゃ?』…なんて書かれてるのも…」


「読者さんっ!?我のことキライかっ!?」


「……半年間の寝取り返し分からせっ◯スが見てみたいんだって……みんな、ペトラのこと大好き……っ…このえっちめ…っ!」


「我のセリフをとるな!そ、それなら体張って1年間イチャラブ耐久◯ックスお届けするわ!」


「え、いいのペトラ?」


「はっ!?カナタいつから聞いて…!?」


「なんてタイミングで…ラウラさん、これも全部計画通りで…!?」


「ふふっ、私はまだ本編で結ばれていませんからね。ここから先は、結ばれた後に取っておこうと思いまして…」


「……という訳で……はい、ペトラ…」


「な、なんだその荷物の山は…?」


「……1年分の…水と食料……がんばってねっ…」


「えっあっそのっ…か、カナタっ、1年は言いすぎかもって…あ、ははっ!ほ、ほれ、時間長すぎてこっち来れんくなるぞっ?」


「安心してくれ、ペトラ」


「う、うむっ」


「お友達のディンダレシア君に頼んで『中の一ヶ月が外の一分』になる結界を家の周りに張らせ…張って貰ったんだ。何も心配いらない」


「なんだそれはっ!?さ、流石時の魔神…ッ…ではなくっ!なぜそんな奴が後書きで生きているっ!?アッ、カナタ我を担いでどこへっ!?」


「うわ…口を滑らせるとああなるんですね…要注意です」


「んっ……でも、すごい効果…っ…私達も使お…?」


「ですね。…というか、時の魔神ってそんなことまで出来るんですか?」


「簡単に出来ますわよ?世界の時を静止させてその中を動けたりしましたもの。…あ、一応言っておきますと、本編のディンダレシアはちゃんと死んでますわ」


「何でもありですね、後書きここ…」


「……ところで、シオン……私達も行く…?」


「ですね。とは言え……1分後に行きましょうか」


「シオンっ!?そ、それはあっちで一ヶ月経っておるのだぞ!?我っ流石に壊れっ…ーー」


「……あ、転移した…」


「ふふっ、いってらしゃいませ〜」


「……これ、間違えて2、3分経ってしまうと2、3ヶ月過ぎてしまうことになるんですね。恐ろしい…ちゃんと時間を見ておかないとペトラが大変なことになります」


「……でも、読者さん的にはその方が良かったって……」


「……」


「……」


「……お二人共、お茶…飲んでいかれます?」


「「いただきますっ」」










「あ、ペトラから連絡来てます」


「……多分、出たらダメっ……ペトラの喘ぎ声で小説が消える……っ!」


「ですね…あ、もう一杯いいですか?」


「ふふっ、ええっ喜んで…ごゆっくりしていって下さいまし」

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