第81話 魔界の老師


「いい!すごくいいよ!アガってきたねマウラちゃん!僕の好きなファイトスタイルだよ!さぁもっと遊ぼう!」



稲妻を纏う拳撃を真正面から掴んで受け止めるランと呼ばれた少年が、初めて立っていた場所からマウラの拳の勢いに後退りながらまるで玩具で遊ぶ少年のように笑顔を見せる


マウラが纏う稲妻はもはや先程の比ではない…その苛烈さも、レベルの違う強さに跳ね上がっているのは間違いなく…彼女が加減を取り払った力を見せつけている証拠だろう


この大会で初めて解禁した特異魔法…雷焉回帰ハイエンド・ボルテージを使用した魔法の1つが現在マウラが使用する単装雷心シングル・コア


無限の魔力なんて馬鹿げた力を操るこの魔法は操り方を間違えれば肉体の限界を超えた魔力が体から溢れ出し、一瞬にして肉体が破壊される


何よりも、パワーを上げるよりもカナタがマウラに練習させたのがブレーキのかけ方や制限の発想だった


それが単装雷心シングル・コア


無限に湧き出す魔力を放つ心臓があると仮定し、その心臓を一つだけその身に宿す…その発想から無限の魔力を嫌でも放つ量を制限させる、言わば魔法というより雷焉回帰ハイエンド・ボルテージに自ら施したブレーキ


しかし、たった1つの魔力の源と言えどもそこから生み出される魔力は無尽蔵…それを利用した強化魔法と体に纏わせる稲妻によって彼女に触っただけでも瑠璃色の雷がその身を焼く


それを、素手で掴んで止めたランは明らかに普通の相手ではない



「……っ…強い…!…どうやってるの…っ…?」


「気になる?あははっ!なら僕の弟子にしてあげよっか?」


「……お断りっ…!……やぁっ…!!」



空いた左手の拳も打ち込むが、ランはそれすらも受け止める


流れる稲妻は彼を焼いている筈なのに、その肌にダメージは見られない…この程度の雷撃では全く意味がないのは先程から打ち合ってマウラもよく理解していた


ぐっ、と両足に力を入れて地面に踏ん張り、受け止められた拳からさらに追撃の魔法を放つ



「…雷迅掌らいじんしょうっ!」


「うわっ!?いたたっ…!この状態から魔法放つなんて…魔法使いっぽくないね。いや、どっちかと言うと戦士なのかな…?」



手で触れる対象を莫大な雷撃を直に叩きつけて粉砕する近接魔法、雷迅掌らいじんしょうがランの手のひらをバヂバヂィッ、と焼きこれには堪らず手を離す


その隙を、見逃さない


爆発的に加速したマウラが直角に豪速で曲がり、得意の飛び蹴りによる追撃に入る


動き出しただけで土煙を薙ぎ払う…その動きで加速したマウラの脚撃が真後ろへと飛び退ったランに向けて放たれ…



「……ッ……そっち……っ!!」



目の前からランの姿が消えた…いや、マウラの目は彼が凄まじい速度で飛び蹴りの軌道上から退避したのを確認していた


コンマ数秒すらない速さの中で判断を下す…ガクガクガク、と直線移動で豪速を維持したまま彼を追走するマウラは今の自分とまともに速度で張り合われるこの状況に苦々しい表情を隠そうともしない



「ほんっと速いね!僕とまともに駆けっこ出来るなんてさぁ!ほら、もっと速く!もっと強く!追い付けるかな!?」



イラッ…


マウラの額に青筋が浮かぶ


自慢の速さで煽られて、カチンと来ない筈も無し


だが……ここで張り合う程、マウラは冷静さを失わない


勝てれば良いのだ…己の戦闘以外の心から事態を悪化させる事など絶対にする訳にはいかない


追走を止め、その勢いのまま闘技場の中心地まで移動すると両掌にそれぞれ1つずつ膨大な量の稲妻を集中させ、スフィア状になるまで圧縮…雷撃のエネルギーを集約させると両手のそれを無理やり、力付くで1つに合成


まるでバランスボールのような大きさの大型雷玉を生み出し……直上へと飛び上がった



「おっ、と。鬼ごっこは無し、か。でもあんまり振りの大きい攻撃は避けちゃうよ?当ってあげる義理もないし」


「……避けれるなら…それでいい……っ!…なら…頑張って避けてね…っ!」



飛び上がったマウラを見上げるランが茶化すように明らかな大技の構えを見せるマウラに言うと、バランスボールのような大きさのそれを無理やり両手でさらに…圧縮していき、空気を連続で踏み付けて空中で小刻みに跳ぶように対空するとその雷玉を自分の真下に落とし…両手をパンッ、と叩き合わせ、その魔法を発動した



「……駆け尽くせ、無情の雷華…!…我が色に染まれ…!……青浄の雷迅アズール・サンダーボルトッ!!」



雷玉が、爆ぜた


膨大な量の雷撃が一気に開放され、文字通り…瑠璃色の稲妻が闘技場内の空間を埋め尽くしたのだ


そう、逃げれるならばそれでいい






「あっはっ♪」



それを見たランは…好戦的で僅かな狂気を感じさせるほどの笑みを浮かべた


大闘技場の防護結界が発動する


闘技場内から客席に向けて攻撃が流れていかない為に設置されている大型の魔道具は、まるでそこに分厚いガラスでもあるかのように客席との間を結界で護っており観客の安全を護る


それが、発動したのだ


マウラが放った広範囲殲滅魔法…青浄の雷迅アズール・サンダーボルトは闘技場内部が見えないほどの雷撃が空間を埋め尽くす…客席に向かった雷撃は結界に阻まれて乱反射し、闘技場内部をさらなる地獄へと変えたのだ


観客が驚き、息を呑む…これほどの破壊規模の魔法が使われるのは武争祭長きと言えどもそう起こることではない


そう…こんな魔法が使われては対戦相手の生存が危ぶまれるのだ



「凄い…素晴らしいっ!こんなに感動的な相手はなかなか出会えないよ!ここまで感動出来るのは5年前に会った彼くらいのものだ!今の若い子もやれば出来るじゃないか!」



その声が届いている相手は居ないだろう…これほどの雷撃の嵐の中ではどんな音も羽虫の羽音程度も聞こえない


だが…満面の笑み笑みを浮かべるランに乱反射する雷撃は命中して……いない


彼の衣服に触れる寸前で…何かに吹き飛ばされるように雷撃が弾き飛ばされ掻き消されている



ランは無傷だった



散魔バニッシュ…さぁ、その魔法はどれくらいの魔力使うのかな?そんな大技の後にどれだけ戦えるのか…楽しみだなぁ」



ランは魔力を斬撃や弾丸のようにして撃ち出せた…それを全身から同じように破壊力へと変えた魔力を放つことで雷撃が当たる寸前でそれを迎撃していた


とは言え、1秒に何十本もの雷撃が全身を焼くような密度の稲妻の嵐だ


それを全て撃ち落とすなど正気の沙汰ではない


ーーマウラが使った規模の魔法は人間の間ならば切り札に相当する魔法の筈…さて、戦う力が残っているかどうか…


そう楽しみにマウラが跳んでいた上空を見上げるランは





真横から異常な速度で蹴りを放つマウラの接近を見ていなかった


この雷撃の嵐の中を…突っ切って直接攻撃へと現れたのだ


視界いっぱいの稲妻に紛れて彼女の体が勢いよく、砲弾のように一直線へと加速しその脚撃を…今度こそランへと命中させた


ランの側頭部を強襲したマウラの水平ライダーキックにより、彼はなにか言葉を発することもなく蹴り飛ばされ遠く離れていた闘技場の壁へとノーバウンドで叩き付けられる


そう


マウラの中ではこの大規模魔法ですらも囮だった


自分の切り札と思わせる為…自分の姿を隠す為…魔力を消耗したと見せる為…全てが次の一撃を当てるための巨大なデコイ


自分の放つ雷撃を自分で受けることでさらなる魔力を生み出し、放つこの脚撃は並大抵の防御であれば紙屑のように貫通する


そして、所見ならばまず…この大規模魔法を見て魔力切れを考える。そんな一般的な強者の枠にマウラを入れてしまった者ならば間違いなく……騙される


彼女に…魔力切れは存在しないのだから



雷撃の嵐が止まる



ランは壁に空いた穴から出てくる事はない


観客もいったい何がおきたのか分かるものは殆ど居ないだろう


それでもマウラは……構えを解くことは無かった



『マウラ、聞こえるか?』


「っ…カナタ…?」



マウラの脳内に聞こえるカナタの声に意外そうな声をあげる


カナタの通信魔法である


いったいどうしたのか…それを聞く前に、カナタは自分へこう告げた



『今すぐに、電纏いなずままといとユーピタルを使え』


「……っ…!……でも…っ!」


『今は、俺の言った通りにして欲しい。理由なら後で話す…多分、それで筈だ』


「……通じる……?」



カナタの言う事の意味は分からない


だが…彼がそう言うならば、理由がきっとあるのだ


ならば迷う必要は無い



「……換装エクスチェンジッ!」



マウラの言葉とともに、その胸に刻まれた紋様が輝きを放ち始めた


身に付けた戦闘服は青と黒の意匠から青と白へと変化し、身に付けるガントレットは違う形の物へと変わり、黒色をベースとしたカラーリングの物へ


僅か数秒と掛からずに……身に纏う装備が一新される


そして、この決戦装備を使え…と言う事は当然…



「いったた……すっごい威力だね。僕じゃなきゃ死んでたんじゃない?…いや、僕だからかな?そうなら嬉しいなぁ」



まるで転んでしまったかのような反応…外傷という外傷は見られないランの姿が壁の穴からひょい、と現れたのだ


側頭部をあの威力で蹴り飛ばされておいて「いたた」で済ませているのはどういう事なのか…だが、マウラの戦意は衰えない


この決戦装備を身に纏ったのならば、自分の強さはさらに次元を引き上げられる


効かない…という事はないはず…



「あんな目立つ魔法を囮にするなんて、マウラちゃんかなり狂ってるね!でもお陰で一発貰っちゃったよ、なんにも喰らわずに終わらせるつもりだったのにさぁ。あれ?装備変えた?あははっ、いいね、黒も似合って……ーーーーー」



ランが、笑顔を固まらせた


マウラの方を見たまま、なにか信じられない物を見たかのように


それまで浮かべていた楽しそうな笑顔が消え、真剣な眼差しへと変わり…



ふ、と気が付けば





「ッ…!!?」



反応できなかった…マウラはその事実に戦慄する


これを身に着けた自分が、速さで先手を取られたのだ


嫌な汗がぶわり、と吹き出すのを感じるが…ランは構えたままのマウラのガントレット…ユーピタルを触り、これまでの巫山戯た雰囲気をしまい込んで訪ねる



「マウラちゃん。この武器……どこで手に入れたの?」


「……っ……私の師匠が…好きな人が造ってくれた……拾ったんじゃないよ……」


「…へぇ。君の為に創ったんだね、これ。分かるよ、すごく分かる……こんなにぎっちり、籠ってたなら、僕達みたいな人にはすぐ分かるんだ。僕達は、魔力には敏感だからね」



なにか思う所がありそうに…ユーピタルを触るランは観客席を見回しながら溜息を漏らしてマウラに背を向けると両手をひらひらと振りながら…





「はぁ〜…降参降参っ!僕の負けだよ」




あっさりと、自ら勝負を降りたのだ



「っ……なんで…!?…まだ勝負終わってない…っ!」


「ごめんね、マウラちゃん。本当はもっと遊びたいところなんだけどね……ここまであからさまにされちゃうと、僕も怖いからさ。また機会があったら遊ぼうね!」



戦いを降りるランにマウラが食いつくも、降参の合図は審判員に届いており銅鑼の音がマウラの静止を遮った


あまりにも呆気ない勝負の終わり…凄まじい戦いの様相に会場は盛り上がってはいたものの…マウラの表情は優れない


底知れない強さを見せたランに対し…必ず勝てたとは言い切れなかった


敗北とまではいかずとも…納得のいかない勝負の終わりに表情を曇らせたまま…ランが進むゲートと反対側のゲートへ向けて歩き出す



……その沈んだ心に見合わない、盛大な歓声を受けながら






ーー





「あーあっ、楽しかった!だから儂、一緒に出ようって言ったのに…ほら、好みの女の子とか居たんだよ?超スカウトしてたのに、振られちゃったけど」


『アホ言うなよ先生!オレめちゃめちゃキツく外出禁止言われてんの知ってんでしょ?そりゃぁ行けたら行ってたけどさぁ…』


「でしょ?ま、土産話は沢山してあげるよ。それがね、今の子にしてはすんごい有望で興奮しちゃったよ。…あ、カラナックのお土産いる?」


『自由過ぎる…オレなんか可愛い方だろこれ…』



ランの姿は既に大闘技場の外にあった


るんるんと機嫌良く大通りを歩きながら手には果実ジュースやらサンドイッチ、焼いた肉の串を握り、祭を満喫しているランは虚空に向けて一人話しかけている…いや、正確に言うならば話し相手は遥か彼方にいた


通信魔法によって話す相手はそんな満喫中の彼に呆れた溜息をつきながらも、どこか諦めた様子なのはランの様子がいつもこんな感じだからなのだろう


というか、こちらが話さなくとも口を止める気は無さそうである



「でさぁ。雷の魔法だったんだけど凄くてね、多分特異魔法だと思うんだけど強烈なパワーだったんだよ。思うに増強系なのかな?いやぁ、儂が育ててみたかったんだけど…」


『………』


「あれ?バウロ?」



途中、返事が相手から返ってこないのに気が付いたのは何分も話してる最中の事だった


魔法を再度繋ぎ合わせる為に発動し直しても、向こうの返事が聞こえない



「おーい、聞こえてるー?」







「あぁ、ばっちり聞こえてるぞ、ラン君」



その真横にいつの間に現れたのか…一人の男が肩を並べて歩いていた


黒いフードを被り、妙なマスクをした男がその隣でジュース片手に肩がぶつかるような真横を知り合いかのように歩いているのだ


それに今気がついたランはピタ、と動きを止め…そして再び歩き出す


自分の真横を瞬時に取れる…この時点で普通の相手ではない



「随分といい肌色じゃないか、まったく上手く化けるもんだな。…ん?聞こえてなかったか?ーーお前に言ってるんだ、三魔将…『絶壊』のダンスター・ガランドーサ」


「やぁ、誰だか知らないけど儂になにか用事?君みたいな知り合いは居ないんだけどなぁ…というかそのマスクいいね、どこに売ってるの?」


「寂しいことを言うなよガランドーサ…昔あんなに激しく遊んだのに、忘れたのか?ちなみに、このマスクを褒めてくれたのはお前が初めてだ。そして…」



男が顔に被るマスクをゆっくりと撫でながら……ほんの僅かに、黒紫色の魔力をスパークさせれば少年ランの……いや



三魔将、絶壊のガランドーサと呼ばれた彼の表情が驚きに染まった



「…これは手作りなんだ。創った」


「まさか…っ…本人!?本当にジンドー本人なのか君は!?」


「そこはどうでもいい…大事なのは俺がここに居て、そしてお前がここに来ている事だ」


「あは…っ…はっ…はははっ…あははははははははっ!!すごいや!あの鎧の中に本当に生身の手足があったんだねジンドー!それで……ーーどうするんだい?」


「殺す。すぐにな」


「嘘はやめなよジンドー。それなら君は間違いなく真後ろから強襲してたでしょ?大事なのは、こうして儂と君が肩を並べて歩いていることだよ!儂はね…君と話してみるのが夢だったんだ!」


「その会話が最期の言葉にならないといいな」


「あはっ!そっか、あの子だね?君の兵器を身に着けてた獣人の女の子!そっかそっか……君はこの街で儂と戦いたくない訳だ。なんとも…なんとも素敵な理由だよ!」


「……面倒だな、ほんと。今の俺が、周りに被害を出さずにお前を殺せるとは思わなかったか?」


「君はなんだかんだ周りに気を使うからね。別にそれを狙ってカラナックに来た訳じゃないけど…というか、こんな所に君が居るのは儂の想定外だよ」


「なんだ…レイシアスから聞いてると思ったんだけどな。あぁ、これでお前達の優秀な跡取りの顔が全員拝めた、お前の弟子の軟派癖は完全にお前に似たなガランドーサ」


「儂を軟派って言うのやめてよ。優秀な子を見るとつい声をかけちゃうだけさ。それで……このまま街の外でやるのかな?」


「ふん……お前を追うのは面倒なんだ。消えたきゃすぐ俺の前から消えろ。今は忙しい…」


「珍しい……君が見逃すなんて。まさか自分の教え子の活躍見たいから…とかじゃないよね?」


「その通り…って言ったら信じるか?」


「まさか……ここで儂が暴れまわるのは困るって事でしょ?「生かして返してやるから何もせず素直に帰れ」…そう言いたい訳だ。君も人だね、ジンドー」


「別に情が湧いたとかの話じゃない。はっきり言うならここは封印防衛の重要拠点だ。単純に荒されたら困る…そう言ってんだ」


「へぇー……ならさぁ……儂、ここで暴れ回ったらグラニーちゃんの開放に一役買えたりするのかな?」



ちらり…ガランドーサの悪戯な言葉とともに投げかけられた視線は空気が凍り付くほどの殺気と魔力によって返答がされた


真横から放たれた他の追随を赦さないプレッシャーは敢えて言葉にしたガランドーサですらうっすらと冷や汗を浮かべる程の凄まじい物があり、それを受けて「あはっ、じょーだんだって落ち着きなよ」と手をひらひらと振り、その言葉を撤回させる


すぐに収まったプレッシャーに「まったく…」と溜め息をつきながらもガランドーサは嬉しそうに笑った



「なーんだ、あるじゃないか、「情」…しかもたっくさん。それも多分、あの子だね?街のこと2割…8割はマウラちゃんでしょ?分かりやすいなぁ…」


「狸爺め……それで、答えは?」


「はいはい、何もしないってば。君の防衛網にも触んないからさ、ここはお互い穏やかに別れようじゃないか」


「…それでいい。あと、この街を出るまで俺の偵察を撒くなよ?…お前を見つけるのは面倒臭いんだ」


「儂の動きを「面倒臭い」で済ませる人って他に居ないんだけど…分かったよ、適当に買い物して帰るからさ」


「自由な奴め…ギデオンが苦労する訳だ」



笑いながら「それ、バウロにもさっき言われたよ」と流すガランドーサはそのまま手を振って立ち去ろうと歩き出す




ガランドーサ……彼は勇者ジンドーが初めて相対した三魔将


一番最初から彼を知っている男であり、そしてこの見た目で…三魔将の最年長という見た目詐欺も甚だしい存在である


そして最初にジンドーと会敵した時…彼を半殺しにしたのもガランドーサであった


その魔力を破壊力へと変換して攻撃するガランドーサの魔法…「撃震ゲキシン」によって、彼は一度瀕死の重症を負わされていた…しかしその後からだ



勇者ジンドーの戦闘能力が爆発的に上昇したのは



この時……ガランドーサが彼を殺し損ねなければ歴史は変わったとさえ勇者パーティから言われるほどに、勇者ジンドーの戦闘力は激変したのである



「ねぇねぇ、ジンドー。あの時の…最初に出会った時に聞いた質問の答え、まだ聞いてなかったよね?今聞かせてよ」


「…………」


「儂と一緒にこっちへ来ないかい?この世界に頓着してない君が、儂らと敵対する意味はないと思うんだ。わざわざ互いに血を流す必要もない…儂らは共存出来る。だからさ…」


「…もし、今の俺が5年前にその質問をされたなら、迷うこと無く頷いてただろうな。その通りだガランドーサ。俺は…この世界そのものに興味はないんだ。ただ……ただ、元の世界に帰ろうとしただけのガキだった。今も目的は変わってない…けどな」



振り返ってその問いをかけたガランドーサを見返しながら、マスク越しに語る


その姿はガランドーサには、今までの破壊の象徴としての勇者ではなく…魔神族の天敵としてでもなく……ただの一人の男に、いや…悩める少年に見えた



「譲れない物が出来た。この世界にもな…あと、俺には俺の計画がある。悪いがその計画はどう足掻いても…お前達とは立ち行かない。それに…」



ジンドーがガランドーサに背を向けて歩き出した


もう振り返ることもなく、それ以上の言葉も必要ないと、言わんばかりに


その答えは…ガランドーサをいとも容易く納得させるだけのものだった



「…俺、勇者だからな」



人混みに消えるその背中を、ガランドーサは見えなくなるまで見つめていた


ギデオンもレイシアスも…2人揃って口を揃え語っていた



ーージンドーは変わった、と



その意味が、良く分かった


言葉を発さず、発したとしても発狂とも取れる雄叫びだけを轟かせて魔物と魔神族を蹂躙するあの姿から…どうしてここまで変われるものか


あの頃の勇者ジンドーは確かに強かったが…脆かった


今にも粉々に砕け散り、地に崩れ落ちそうな程に脆かったのに…



弱点護るべき者が出来た…それなのに前より遥かに強く見える



「これは……面白くなりそうだね」



にっ、と笑いながら背を向けて歩き出す


これから始まるであろう波乱にどうしようもなくワクワクしながらも、まずしなければならないことをこなさなければならない


彼に釘を刺されたばかりのガランドーサは己のすべき事を、最優先で行うべく賑わうカラナックの街中へと繰り出した








「さっ、皆にお土産買ってこーっと」








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




【後書き】



どうも、未知広かなんです


あれからもう一件のレビューコメントとギフトもいただきました


ありがとうございます…感謝、絶えません


実は近況ノートに書いてみたんですが、1話分の程良い文量を探っております


今回は試しに…ということで本編の量を約三分の二に削ってみました


読み易い、物足りない等感想あれば是非教えて下さい


小説初心者+初投稿作品ということでまったく手探りで執筆しておりますので…80話も書いてるのに全然その辺が掴めません


難しいですね、小説


良ければちらっと、思ったことを書いたので近況ノートの方も覗いてみてください


今後ともよろしくお願いします




ーーー



◯お題ーー好きなゲームは?



「お、なんとも安牌な題目。これで地雷を踏めるのはエロゲーのみだな…という訳で、健全にいこうか皆」


「ふむ…仕方あるまい。たまにはこういうのも良かろう」


「私も大丈夫ですけれど……こういう時にわざと地雷を踏みに行くのはマウラですよね?」


「安心してくれ。こんな事もあろうかと三日三晩かけてマウラの性欲をじっくりコトコト徹底的にさせておいた」


「「えっ!?」」


「……っ…さ、流石にっ……もう暫くは…っ…無理ぃ……っ」


「「マウラぁ!?」」


「…ち、なみに私は……っ……スマブラが好きっ……プ、プリンで眠る瞬間が…一番っ……気持ちいい…っ」


「いやさてはそなた案外余裕あるな!?」


「足りなかったみたいですよ、カナタ」


「残念だ……あと一週間も延長しないといけないなんて…」


「っ!?」


「あ、私は世界樹の迷宮シリーズですね。マッピングもさることながら育成したキャラが使えなくなる可能性を孕んだ緊張感が素晴らしいです」


「なるほどのぅ。我はDBDがツボだったぞ?あのスリリングはたまらんっ…追われる側と追う側の心理を突くあの感覚にゾクゾクしてしまう…っ」


「…ふ、2人共っ…き、協力してっ……!私だけじゃ……っ」


「カナタはどうなんですか?」


「俺?俺は断然……OW!」


「…それ、確か結構な闇のゲームではなかったか?」


「ばっきゃろぅ、あのヒリついた空気の中でチームワーク試されるのがいいんだろ?…ちなみに、得意キャラはジャンクラット」


「よりにもよってそのキャラですか…味方に引いたら頭抱えられますよ」


「裏取りゼロ距離タイヤがやめられなくてつい…」


「またピーキーな使い方しおって…」


「ですが、今回は安定した話題で終われましたね。久し振りにすっきり終われます」


「だのぅ。ま、趣味全開だがそれもゲームにおいては良し。何をするも迷惑かけなければ自由よ」


「じゃ、今回はここで終わりだな。また次の話で、皆さんよろしくお願いします」


「「よろしくお願いします」」

















「じゃ、行くかマウラ」


「…!?…ま、待ってカナタっ…こ、これ以上は流石に保たないっ…!」


「ごめんマウラ…これも小説の存続の為なんだ…」


「…あ、謝るくらいなら…っ、もっと優しくとかっ…」


「ごめん、ごめんなマウラ」


「…あっ…待って…担いで連れてかないでっ…は、離せば分かるっ……交渉をっ……!」


「哀れマウラ…単独10日連続とは……武運を祈る…」


「流石は耐久・☆☆のマウラ…打たれ弱さが弱点ですね」


「……応援、行くか?」


「…まぁ、流石に行きますか」

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