第76話 「我、絶好調」


音もなく扉を開けて部屋の中へと入るカナタがフード付きのオーバーシャツとヘンテコマスクを魔法袋の中へと収納すると、あっという間に部屋着に早変わりする


実は部屋着の上から適当に着るものを着てマスクを付けただけのテキトウな変装なのだった


一切の音と気配を立てず、ぐっすり眠る彼女達を起こさないように部屋へと入りそのままソファへと腰を掛ける


ジュドラー邸で約30分…ガイガン伯爵との話し合いを済ませて帰ってきたのが今であるが、貴族嫌いのカナタとしては非常に神経がすり減る話し合いであった


話の落とし所と双方の希望を兼ね備えるのは難しい…とは言え、勇者の身分無しで行くならばこちらはただの一般人だ


ビオリオを処分する方法はそう多くない…一方的に抹殺しても良いが、それは司法が裁く問題となるので闇冒険者のような正面から犯罪行為を行うことに対する正当防衛とは訳が違う


それに…あの場でビオリオの抹殺を希望したが流石にガイガン伯爵に拒否された


あくまでも息子…犯罪に手を染めようともその首が落ちる姿は見たくないのだろう


この件はガイガン伯爵による訴えによって裁きを下すこととなった


カナタとしては、彼女達の安全が保証されればそれで良い


ついでに面倒な奴が消えれば冒険者登録もスムーズに行えるので一石二鳥だったのだ


今後、ビオリオが表に出ることは一切無い…それを確約されるに落ち着いた訳である


…甘い…そう思うカナタだが、伯爵から自らの息子に対する処分としては非常に大きいものだ


法に裁かせるということはジュドラー家から犯罪者が出たことを露見させる事に等しい


今後の社交やジュドラー家の評判に少なからずの影響が出る可能性は大いにあるのだ。それを覚悟の上で法の裁きを受けさせるのであれば…最悪、家の力でこの件をもみ消す気なら家ごと始末する気のカナタとしては悪くない条件なのだ


贅沢の言い過ぎは交渉相手に失礼だろう



(……だから貴族の相手は嫌なんだ。面倒腐ぇ…ま、良識ある当主で助かった方だな。正直…あいつらに粉かけたんだ、ビオリオは殺しておきたかったんだけどなぁ…)



ーーやっぱり甘くなったかな、俺…



そう思わずにはいられない


昔なら家ごと消滅させてたところだ


刺客の方も彼女達が自ら返り討ちにして抹殺出来た可能性は高い


その結果、彼女達の手で人の命を奪うことになろうともカナタは何の気にもならないだろう


しかし…あんなカスのような男達でその手を汚させたくなかっただけである


いや、もっと言うなら……殺される瞬間であろうとも彼女達があんな奴らに触れることすら嫌だった、と言うべきか…



ーー随分、独占欲強いよなぁ俺。マジでどうなっても手放してやれそうにない…



そんな自分に苦笑いが漏れる


ソファの背もたれにぐったりと寄りかかりながら、背もたれの上に頭を乗せて天井を向くようになると全身の力を抜き、目を閉じて張っていた緊張の糸を緩め……





その自分の頬を両側からそっ、と包むような暖かい手の感触に慌てて目を開けばそこに…






「んっ……む…」


「っん…っ!?」



視界いっぱいに……ペトラの顔が写り、赤い瞳としっかり目があったその直後に、驚きで目をぱっちり開くカナタの視界が彼女の首と体を見上げるアングルに変わり…その唇が上から抑え込むようにカナタの唇と重ねられる


まるで顔を抑えて逃さないようにするかのように、頭を左右から手で挟んで、食むような口づけ…さらに求めるように彼女の舌がカナタの唇を舐め、唇に挿し込み…舌が絡むような激しいキス


お互いの唾液が絡んで交換するのも厭わない…粘度のある水音と互いの鼻息だけが、言葉より先に交わされる



何十秒、そうしていただろうか…その間、ずっと言葉もかわさずに、互いを味わい求めて…「ぷはっ…」とペトラが口を離し、互いの唇と舌が月の光を反射する銀の糸でとろり、と繋がれるとペトラは堪らず…といった風にさらに強く唇を重ね合わせた


さらに激しく…さらに強く……何分もかけてじっくりと、互いの舌と唇が溶けて混ざり合ってしまいそうな程に熱く、蕩けるように…


口を離したペトラそのまま、耳元で囁くようにそっとカナタへと言った




「……終わったか?」


「っ…ペトラ、お前…」



その言葉に、はっ、とするカナタを優しい眼差しで見つめるペトラ


その手には箱型の魔道具が乗せられており、それをカナタに見せてるように手の上で転がしながら少し自慢気に笑いかける



「…外部の魔力を探知しずらくする結界…そなた、初めからつもりだったのだろう?」


「…それは…」


「まったく…我は「魔」族であるぞ?…この程度の妨害では無いのと同じ、この胸に…ビリリと伝わってきたわ。そなたの…背筋が震えるほどの怒りが籠もった、魔力の波動がな」


「…抑えたつもりだったんだけどな。…そんなにバレバレだった?」


「それはもう……寝てる我がぱっちり起きる程度にはバレバレだったぞ?くくっ…安心せい、シオンとマウラは眠ったままだ。それで……我らの為に、だろう?……何をどうしたのだ?」


「そこは知らなくてもい…んっむ…」


「んんむっ……ぷは……言わせんぞ?我らのことだ…そなたが我らの為に何をしてくれたのか…知る義務がある。…良い、我の胸にだけ留めておくから気にするな」



ちゅむっ、と言いかけた守秘の言葉をペトラが直接飲み込むように唇を重ね合わせて黙らせる


そんな口の閉ざされ方をされては…秘密になど出来ないだろう


そもそも、ペトラが起きていた事自体がカナタの計算外だった


外部の魔力を完全に感知できなくしては逆に危険が迫っても反応出来ない…故に、外部の魔力を内部に届き辛くさせるための結界を張って外に出たのだが…


魔族とは最も魔力の扱いに長けた種族の1つである


使用する魔法のセンスや練度も高く、何よりも魔力を感じ取り操る力はピカ一なのだ


ペトラの魔力感知能力は…頭抜けている、という言葉すら可愛らしいものであった


それこそ…カナタが作った防音装置セイレーンの認識不可能なほどに秘匿性を高めた結界を、たかだか感知力を認識出来るほどに、その能力は桁外れである


魔力を感知し辛くなる…そんな程度の結界ではペトラのセンサーを誤魔化すことは出来なかったのだ



「…4人、お前達を狙ってたよ。ビオリオ・ジュドラーが雇った冒険者…それも闇稼業専門の水晶級のみで組まれたパーティだったな。本気でお前達を自分のものにしようとしてたって事だ」


「…それで?」


「殺した」


「…そうか。我が感じたのはその時の魔力か」



事も無げに刺客をその手で葬り去ったことを語るカナタに、悩み考える様子は無い


ただ当然のように、何の感慨もなく


ペトラは人を殺した事など一度もない


しかし、覚悟はしている


いつか、この手で人の命を殺める時が来るだろうということは…しっかりと頭と心で覚悟しているのだが、それでも抵抗はある


カナタが人を殺したことに関してなにか思うところも無い


むしろ、そこまでして自分達を守ってくれた事は嬉しくすらあるだろう


だが…彼が刺客を葬り去らなければ、殺らなければならなかったのは自分達だ


そう考えれば…



(…すまん、カナタ。そなたに、我らの代わりに人を殺させた、か…。分かっておるさ…そなたの考えている事くらい。出来るだけ手を下させたくない…そう思ったのだろう?)



ーー恐らく、カナタは刺客4人を手に掛けた亊に関してはなんの些事とも思っていないだろう


いや、こやつの考えそうなことだ…可怪しな男を我らに触れさせんように自分で始末した、等と言い出しかねんが…



本当にペトラはカナタの事がよく分かっていた…!


まるっとお見通しだった…!


ちょっと独占欲出して、あんな嗜虐欲丸出しの男に彼女達が反撃で触れる事すら嫌ったなどと…そこまで殆ど丸分かりだった…!



ペトラがソファの前に回り込み、向かい合うようにカナタの膝の上に跨って乗りこむ


顔も体も向かい合った状態…自分の上に跨る彼女に目をパチパチと瞬かせて「…ペトラ?」と呟くカナタに再びキス


今度は彼の頭を抱えるようにして、今度は彼女の背中を抱き寄せるようにして…合図もなく互いに互いを寄せ合うと一分の隙間も嫌うように体同士を密着させたまま唇も舌も蕩けんばかりに絡み合わせて…その上気した赤い顔で、ペトラが小さく囁く



「…抱いてくれ、カナタ」


「っペトラ、それは明日の為にって…」


「そう、明日の為だ…元気、付けてくれるのだろう?…しこたま元気を、我の中に注いでくれ。そなたの荒れた心も…我の腹の中にたっぷりぶちまけろ」


「っ…良いのか?それは…ちょっと激しくなるけど…」


「…我が恥じらいを抑えて頼んでいるのだ。そなたは…我の望む通りにしてくれるだけだぞ…?」


「それなら…仰せのままに…っ」



カナタの手から、箱型の魔道具が床に落ち…ソファだけを包むように結界が広がれば、そのソファで何が起きても…周りに音は聞こえない


ベッドから見れば、ソファの背もたれの向こう側にペトラを下にして二人の姿が沈んでいくのが見えるだろう


音もなく、眠るシオンとマウラをすぐそこに…ソファの背もたれ1つ挟んだその隣で、体の奥まで繋がる2人…




その夜は、暫く明ける事は無いのであった








「ぺ、ペトラ?なんだか物凄く気合が入っていませんか?す、凄い魔力の波動が…っ…な、なんでそんなに力が入ってるんですかっ!?」


「ぉぉ……っ……な、なんか一味違う…っ……魔力強すぎて…っ尻尾ピリピリするっ……!」



翌日…どんな手品を使ったのか、朝起きた時からペトラのコンディションは凄まじいものとなっていたとか


そんな2人に、ペトラは自分の下腹を軽く撫でながら不敵に微笑んだのだった



「なに…腹いっぱいに、をたっぷり分けてもらったからのぅ」



ぎくり、とカナタが肩を震わせたのに気が付いていたのはペトラだけなのであって





ーーー





第三予選を終えて、最終予選が始まろうとしていた


最後のトーナメント進出者8人を選ぶ闘いとあって、会場は相応に盛り上がりを見せている中で選手の待機場所となっている入場ゲート内では選手達も残り8席のトーナメント枠を奪い取るべく、ボルテージを上げていた


準備運動、素振りなどの各々が予選に向けての動きを見せている


トーナメントへ進出するだけでも戦闘者として名を売るのには十分な効果があるのだ


これを気に有名どころとなり、貴族からの私兵の声がかかれば高給取り、巧妙な冒険者からパーティの声がかかれば一攫千金の夢など武の将来は明るくなる


ただの腕自慢が冒険者に登録し、そこから順当にランクを上げるよりも遥かに早く効率が良いのである


その待機場所の一角…ベンチで固まっていたカナタ達の前でペトラも闘いの準備を整えていた


身に纏うのはシオンとマウラ、2人と同じデザインの戦闘服…その違いはジャケットのカラーリングが白と緑の意匠となっている所と、手に纏うグローブが左右非対称である所だろう


左は指貫、右手は人差し指と中指だけが指すべてを覆うようになっており、他の指は同じく指貫と変わったデザインだ


これはペトラが弓使いであるからだ


手にしているのは白銀の棍のような棒であり、中心部分に3つの宝玉が散りばめられ、両先端の部分が漆黒のパーツで装飾されている


ペトラが試しに魔力を流せばただの棒でしか無かった白銀の棍の各種装甲がガシャンっと変形し、両先端から魔力の弦が繋がればメカニックな様相の弓へと変形を果たした



「うむ、良いな。地に足付いた使い心地…信頼できる良い武器だ。アルドラのような自分の次元を引き上げるような飛翔感は無いが、全力で寄りかかってもビクともせん…強さを感じる」


「ま、頑強さと使い勝手メインで創ったからな。結構自信作なのよ、それ。機能溢れさせてない代わりに基礎的な武器としての性能がっつり上げてあるから、使いやすさは段違いだと思う」


「私は使う前に普通に殴り倒してしまいましたから、まだ試せていませんでした…そうです、新たな相棒を使ってあげるべきでした…」


「…私も……パンチしてない……あ、でも魔法は使いやすかったっ…」



ペトラの満足そうな感想に、はっ、としたシオンとマウラがちょっとしょんぼり…


そう、武器も新しいものだったのによく考えればシオンは全て徒手、マウラは雷撃で全て沈めてしまっていたのだ


ーー新しい武器が使えていない…!


その事に2人は気が付いてしまったのだ


三人とも魔力は半分以下の出力で予選を突破することを決めていたのだが、シオンは相手となったライリーが徒手にて挑んで来たこともあり競う精神で徒手にて応戦


マウラに至っては冒険者達が相手にならず、軽く素早い動きで1人ずつビリビリして終わってしまったのだ




「さて、そろそろ行くかのぅ。おかげで、調子はバッチリだ。軽くあしらってやるとしよう」


「うっ…が、頑張ってください。その…げ、元気は沢山入れときましたんで…」



悪戯に笑うペトラの流し目にカナタが息詰まり、ちょっと視線が明後日の方向を向く…


それに合わせてシオンとマウラの視線がぎゅんっ、とカナタの方を向いた!


ーーおおっと…誰に何をされたのかしら…?


カナタのしらばっくれて明後日の方向を向く姿と、ペトラの楽しそうでちょっと幸せそうな表情を見れば…自分達が寝た後にカナタとペトラの2人でしっぽりお楽しみがあったのは明らかである



ペトラが入場ゲートへと向かう



カナタがシオンとマウラの2人から、詰め寄られる姿を後ろ目で見ながら…






入場ゲートから入った景色は中々に奇妙な光景だ、とペトラは闘技場内を歩いきながら、辺りを見回して感想を抱いた


大きな壁と、その上に据えられた客席からの視線…目の前に広がる、囲われた空間とは思えない広大なフィールド、周囲の参加者から向けられるギラついた視線…



(…成る程。あの2人が「最初に向けられた視線が気になった」、と言うのも分かる。物珍しさによる好奇か、はたまた見た目で良からぬ事を考える不届き者か…全身に感じるこの視線は色々あり過ぎて判別がつかんな)



平然と闘技場内を歩いて回るペトラが開戦前に感じたのは、シオンとマウラも感じ取った周りからの視線


「こんな少女が?」「強い訳ない」「怪しい」「負かしてやりたい」「この子なら勝てる」…そんな声が聞こえてきそうだ


しかし、一部の参加者は…ペトラから距離を取っている事に気が付いた


そう…前例として2人、あからさまに同じデザインの明らかに同門と物語る戦闘服を着た少女が他の追随を許さない強さでトーナメント進出を果たしているのを見ていた者達だ


赤色の少女はかのライリー・ラペンテスとの一騎打ちを演じてトーナメント進出、青色の少女は不意打ちの高位冒険者パーティを一方的に潰してのけた


…ただの少女な訳が無い


そういう意味では、彼女を舐めてかかる者達は少女の実力を露見させる都合のよい当て馬になる訳だ



「今まで相対したことのない相手がわんさか…今までに無い状況…対多の構図…くくっ、これはーー」



予選開始の大銅鑼が鳴り響く


大歓声と共に開始された第四予選は、試合前の静けさから一転、入り乱れる混戦へと表情を変える


当然…開始とともにペトラに向かう者は居る


いかに格下の少女であろうと、倒してしまえば自身の手柄…この闘技場から蹴落とした人数、という戦績の数に変わりは無い


放たれる魔法、振られる武器、飛びかかる肉体…


何人がこちらへ向かって仕掛けてきただろうか


その状況に…ペトラは珍しく



好戦的な笑みを浮かべた



「ーー面白いッ!」



パンッ


ただの拍手…ペトラが胸の前で手を合わせて叩いたたった1つの1拍手


乾いた音が短くなるだけの筈のそれは……まるで衝撃波と思わんばかりの爆風を360度全方位に爆散させ、近寄る魔法も、剣も、槍も、人体も…全て纏めて薙ぎ払った


ペトラに近づこうとした全ての存在が、まるで反射したかのように真反対方向に弾き返され、人は飛び、武器は宙を駆け、矢は他の者へと切っ先を変え、魔法は跳ね返されてあらぬ所で被害を撒く


そして彼女の周りには何一つとして接近を成功させた物は無い


周辺の全ての相手がペトラを驚愕の視線で見る


目立つ、目立たない…そんな策は度外視した、圧倒的な一撃に周囲の全員が戦慄した



「どれ…今の我は元気満タンで機嫌が良い。どうせ目立つのならば待つのも面倒だ……纏めて全て薙ぎ払うとしよう」



魔力は普段の戦闘出力のたった半分…その筈なのに、ビリビリと空気を震わせるこの波動たるや…まるで竜の咆哮を目の前にしたかの如く、他の参加者を強張らせる


その姿を睥睨したペトラは、手にした白銀の棍に唇を当て、愛を囁くように言葉を洩らす



くぞ、緑鉄ロクガネ…我とそなたの初陣だ…」



白銀の棍、緑鉄ロクガネが各部のパーツを展開し、ただの棒から一本の弓へと変形を果たす


それを悠々と、天に向けて構えて弦を引けば、弦を引き絞るその手元に新緑の魔力が螺旋を描いて収束を始めていき一本の矢は象り描く


目の前で起こる超常の魔力は、彼女が普段戦う時のたった半分だけ…それだというのに、まともに身動を取ることすらも忘れる程に別次元の力の波動を放っていた


殆どの参加者が…感じ取った



ーー格が、いや…レベルが違う



「…我が前に立つ資格無き者よ、疾く失せよ。10秒後、立っていた者のみ…我が相手をしてやろう」



彼女が銀の髪を靡かせながら、まるで演劇の中で女神がその矢を放つように…つがえた魔力を天へと放つ


ただ一発の魔法が天へと撃ち上がり…それは上空で弾け、無数の風の砲弾となって数秒の後…大闘技場の地面へと降り注いだ



「倒れ伏せ…暴風雨ゲイルスコール



直後…大闘技場の全ての地面が


風の砲弾が文字通り…スコールのように地面を、いや…地面ごと参加者達を蹂躙し、均していく


まるで大地そのものが勝手に噴出したかのような、地面そのものが炸裂し土埃が闘技場内を埋め尽くし有視界は完全に0へとなるも、それも束の間…純銀色の髪の少女を中心に放たれた再度の暴風は一瞬にして舞い満ちる砂を消し飛ばしてしまう


その中の光景は…観客が想像だにしないものだった



殆どの参加者が動くこと無く倒れている



そこら中で、先程まで力を試そうと気を滾らせていた参加者達がぴくりとも動くこと無く地に伏し、再び立ち上がる様子は微塵もない


完全に意識を奪い去られている


もはや立っているのは少女を含めて10と僅か…文字通り、自分と戦う資格がない者を彼女は…



一撃の元に一掃した



「ほぅ……思ったよりも残っておるな。くくっ…あと何人か落せば試合も終わり。少し、元気を付けすぎたか?」



元凶の少女は機嫌よく笑う


それを客席から見ていたカナタ達3人は…あわあわしながらその様子を見守っていた





「な、なんかいつもと様子違くない!?めちゃくちゃ張り切ってるんじゃないのあれ!?」


「み、見たこと無い笑顔ですカナタ!ペトラが今までしたことのないサディスティックな笑みを浮かべています!」


「…おぉ……尻尾にぞわぞわ来るいい顔…っ!……カナタっ…ペトラに元気入れ過ぎ…っ…!」


「だってお願いされたから…その…つい気合が入って……」


「気合というか、どうせカナタがペトラに誘惑されて止まらなくなっただけですよね…?見て下さいあのハイテンションを!1人で参加者全員薙ぎ倒す気ですよあれ!」


「…ちなみにカナタ……どれくらいペトラに入れたの…?」


「えっ……あー…っと……じ、時間なかったからなぁ…夜が明ける前までに終わったし…えー……ちょっと20から先は覚えてない…」


「「にじゅうっ!?」」


「い、いつになくペトラが情熱的でな?その…めっちゃ気合入りました、はい…」


「入りすぎたのは気合ではなくです!はっ!?まさかカナタの出すには高揚と増強の作用があるのでは…!?」


「っ!?……それならっ……私達もトーナメントでは……ぎっちり注入してもらうっ……!」


「そんな麻薬みたいな体質じゃないと信じたいなぁ!?というか俺のアレをって言うのやめろぉ!」




どうやらカナタから採取できるにはパワーアップと高揚感を得る作用があるらしい…いや、シオンとマウラが勝手に言っているだけだが、カナタは信じたくない…!


そんな…自分のアレがドーピングみたいな能力あるんだったら益々ビックリ人間に拍車がかかってしまう…!




そんな阿保なやりとりをしている間に…ペトラは予想された問題に、今まさに直面を果たした


眼の前に現れた1人の少年…薄い金髪をはねさせたような髪に将来は美男子になるであろうことを予感させる顔立ち、細身ながらある程度は鍛えていそうな体付き…


そして何よりも、身に纏うチグハグな装備に思わず目が着いた



(…なんだこやつ…?ワケが分からん装備だ…採掘用のヘルムに金色の胴鎧、腰は探索者用の万能ベルトで脚は革製の長靴、腰に短剣、首にネックレス、腕に腕輪と指輪、ハンドカバーは片手だけ、背中には小さめのカイトシールド…まるで服を着たことがない子供が手当たり次第に着てみた感じだのぅ…?)



統一性皆無…冒険者初心者ですらこんな目茶苦茶な防具や装飾品の付け方はしないだろう


たまたまこれしか持ち合わせがなく、仕方なくバラバラの装備を身に着けている?…それにしては、身に着けている物のグレードが妙に高そうだ


どう見ても、それぞれが安物ではなく一定以上の高価な代物に見える。そんな懐に余裕のある者が仕方なく手当たり次第に装備を着込む…?



(…あり得んな。それにこやつ…傷一つ負っておらん。我の放った暴風雨ゲイルスコールをやり過ごせる程度には腕が立つということか?)


「なぁすげぇよ今の!兄さんと俺の仲間にこれ以上無いってくらいだ…!しかも超美人だし!」



そんなチグハグな装備の割には自分の広範囲攻撃の嵐を潜り抜けたというのだろうか…その身にも防具にも傷一つ付いていない


ならば…目の前でよく解らないことを話し始める男に指先を向け、そこから向けて風の魔弾を軽く放つ


適当に攻撃をして運が良かっただけなのかを確かめる。もし避けたり防げるならば見た目にそぐわない力の持ち主、ということになるが…



「うわっ!なっ、いきなり何すんだ!?」



そうとは思えないあたふたとした様子、避けようともしない…というより避けられないのか手を翳して迫る風の魔弾をやりすごそうとするだけ…


しかし


腰の万能ベルトに吊るされた宝石のような物がピカッと光を放てば直撃の寸前で風の魔弾は何かに弾かれたようにあらぬ方向へと軌道を逸らしたのだ


目の前の少年がなにかしたようには見えない…魔力の類もこの男からは感じ取れないが、ペトラの目は別の場所に違和感を感じ取る



「俺が話してる最中だってのに!勇者パーティ『光の行軍』に入れてやるって話してんだよ!なぁ、お前なら兄さんと俺に相応しいんだ!見た目も力も、あの『魔導拳の勇者』にお似合いだ!」


「…は?」



そのはしゃぐような少年の言葉に地を這うようなペトラの声が漏れた


この男…今なんと言った…?


ーーいや、現実逃避はよそう…トラブルは向こうからやってくる。それが今…自分の前に現れただけのことだ


しかし…



「新たな勇者である魔導拳の勇者ゼネガルのパーティだ!知らないのか!?今、絶賛パーティメンバーを集めていてさぁ、君みたいな美しくて強い子こそ俺達に相応しいって兄さんも言ってたからな。勿論ただのメンバーじゃないーー」



ペトラの様子などお構いなし…この圧倒的な魔法技能を見せつけられて尚、興奮冷めやらない様相の目の前の男は当然だ、と言うように…



「兄さんと俺を囲むハーレムメンバーの1人として、女としても入れて上げるんだ。君の美しい容姿も、その魔法も全部俺達の為に…」



ここまで語った少年は初めて目の前の少女の異様に気が付く


周囲を壁で取り囲まれてる筈の大闘技場内に、さながら台風が上陸する直前のような風が吹き荒び地面の砂と砂利を撫で舞わせる


轟轟と不吉な風が周辺を取り巻き心なしか空気そのものが重たく感じるような…



「…そうか。貴様が『自称』勇者の弟とかいう奴か…会いたかったぞ」


「あ、あぁ!そうだろう!会いたくて当然さ!兄さんは新しい真の勇者になれる男なんだ!その側で仕えられるんだから…」


「そう…この手で貴様を塵と化すまで擂り潰し息をするだけの肉袋にして吊るし上げるのを、楽しみにしておったのだ。あぁ…今の我は機嫌が良いのだ。特別に…殺さない程度で許してやろう」



ーー嵐鉄の旋刃メタルサイクロン



青筋を浮かべて口角を釣り上げたペトラが指を二本、まるでその指先に蝶を止めようとするかのように上へ向けると新緑色に輝く風の刃が丸鋸のように高速で回転を始める


その手を頭の上に上げれば回転刃は一気に半径1mまで大きさを拡大させ…なんの躊躇いもなくそれを目の前の男へと放った


殺さない程度など大嘘もいいところにしか見えない…明らかに、命中すれば即座に真っ二つにされる魔法に流石の少年も焦り、先程輝きを放ったベルトの宝石を触る


宝石はまたも光を放ち、目の前に迫った風の回転刃が不意に、がくんっ、と停止するが…風の魔弾のように弾き飛ばされる事無く見えない力と競り合うように少年へじりじりと迫っていく



「は!?なんで……!!」


「ふん…その腰の宝石…大方、飛来した魔法軌道を反発する磁石のように外部へ逸らす効果でもあるのだろう?」


「だから…ッ!なんで逸れないんだよ!?くそっ…こっち来るな…ッ!」



風の回転刃は少年の目の前で停止しながらも…徐々に少年の方へとにじり進んでおり、致命の旋刃が近づいてくる焦りが言葉に現れる


少年が腰につけた魔道具の宝石はその通り…飛来した魔法の軌道を外し、逸らす効果がある物だ


真正面から防御し防ぐ魔道具は効果かつ消費する魔力も多い。故に、飛来する系統の魔法に対象を絞り、かつ防ぐのではなく軌道を変える、という効果の難易度を下げたことで携帯性と魔力燃費を抑えている物だった


それが…不自然なことに回転刃は逸れる事無く、少しずつ逸らそうとする力に逆らって少年へと距離を詰めているのだ


それはなぜか…



「簡単なことだ……その魔道具、「投射された魔法」しか逸らせんのだろう?我の今の魔法のように……ならば、逸らされる力よりも強く、力づくで軌道を修正すれば良いだけの話。どれ、あと何秒でバッサリといくかのぅ?」


「クソ…ッ!なんだよそれ…!素直にパーティ入れよなぁ…!掻き消せ、散魔の青石バニッシュストーン!」



少年が慌てて別の宝石を触れば、その青い宝石から放たれた光が風の回転刃の形を崩し…突風へと変えて周囲へと霧散させてしまう


それでも、刃の形から解かれた風は顔を手で覆わなければならない程の暴風であり、あの旋刃にどれ程の力が込められていたのかを遠回しに物語っていた



「ははっ!驚いたか?これは魔法の術式を乱して散らせる魔道具だ!お前みたいな魔法使いタイプじゃ、もう俺には勝てないって事、分かったか?」


「ふむ…魔法の術式を散らす、か」



少年は…ラジャン・クラシアスは安堵する


あまりにも強力な魔法…それを可能とする魔法使いは凄まじい脅威であり本来ならば勝ち目はない。しかし…魔法使いから魔法を無力化してしまえばどうだ?  


得意分野の魔法で効果をなさないならば、魔法使いなど脅威ではない。その魔力と魔法に戦闘力を頼り切った魔法使いなど、剣を握れるものならば大人と赤子程に力の差がひっくり返る



この美しい少女から魔法を取り上げてしまえば、後は非力なか弱い女…適当に頷かせてしまえばそれで終わり


あとは制約の腕輪を嵌めさせれば晴れてこの少女は自分達に従う事となる



制約の腕輪は隷属の首輪が禁制品となってから現れた魔道具の1つ


嵌めた者は嵌めさせた者との間に交わした取り決めを遵守しければならなくなり、これを破れば身を裂くような苦痛を与えられる、という魔道具である


隷属の首輪のように、絶対な完全支配を出来るわけではないが有利な制約を取り交わす事ができれば事実上の隷属と変わりない


本来であれば資格と免許を持つ奴隷商でなければ取り扱えない代物ではあるが…兄はその手の伝手があり、表には出せない方法で入手することが可能である


こちらの提示し制約を結ぶまでいたぶってやれば、ひ弱な少女ならすぐに制約の腕輪を嵌めるだろう


ペトラに近づくラジャンは早速1人の話メンバーを確保できそうなことに胸を躍らせて、この先の展望を頭に思い浮かべる



ーーこの魔族の少女は美人系の美少女だ。他の試合にもかなり目立つ美しい少女がいたからトーナメントではその子達も加えよう。獣人にエルフも居た…きっと兄さんと自分の隣なら映えるに違いない



少女の腕を掴もうと手を伸ばす


その力とは対極の繊細でしなやかな腕を掴んでしまえば、魔法使いタイプなどこちらが叩くほうが遥かに早い


そして今……その腕を掴み上げーー








「……え?」






自分の視界が空を向いて浮かび上がっている事に気がついたのは、太陽の光が目を焼いて眩しさに瞼を細めた時だった


なんの違和感も覚えることが出来ない程に、掴んだ手は彼女の肌の触感を感じ取るよりも早く鮮やかに…上空に投げられていた



ーーどうやって?なぜ?



その感想を抱いた時には既に、体は落下へと切り替わる10m以上を一瞬で落ち、そしてその少女と視線が交錯した


口角を釣り上げ、片足を艶めかしく上げていた横薙ぎに自分へ向けて振り抜く、その少女と視線が…



「くだらん。『魔力を消し去る』ならまだしも…術式を乱すだけ?…児戯よりも役に立たんわ!」


「ぶげぁっ!?」



フルスイングの回し蹴りが、まるでピッチングで上に上げたボールをバットで打つかのように落ちてきたラジャンの胴体を薙ぎ払い、文字通り打たれたボールのようにふざけた速度で壁に激突する




魔法の術式とは、顕現させた魔力に現象を起こさせる言わば『計算式』


魔力という『数字』に術式という『計算式』を加えてやる事で『完成された魔法答え』が完成する


高難易度の魔法や高威力ハイリターンの魔法である程にこの『計算式』は複雑化して使用難易度を激的に引き上げるのだ


魔力があれば誰もが使える無系統魔法の1つ…転移魔法が何故、無系統魔法の極致の1つとされているのか…それはこの術式を組むのがあまりにも難解であるからに他ならない


そして、基本干渉される事のない術式だが、もしそれを乱されれば魔法という『答え』には到達できず、ただの魔力数字となって霧散する…



だがしかし…個人が持ち合わせる属性魔法の属性変換に、この『式』は必要とされない


魔力を自分自身の本質…魂魄というフィルターを通す事で、それぞれの属性へと変換しているだけの属性魔力に術式は一切関係が無いのである


先程、ペトラの嵐鉄の旋刃メタルサイクロンが術式を乱された時、術式により形作られた回転刃は崩れたもののそれを形成していた魔力の暴風は消えずに周囲へ爆風となって散ったのはその為だ


魔法使いにとって『答え』を撃てないのは致命的だが…魔法使いは多くの場合ここで固定観念に敗北する

 

即ち…「魔法答えが出せないなら何も出来ない」という固定観念


だからこそ…多くの魔法使いは「魔力数字で直接叩く」発想に至ることが少ない 


つまり、ペトラの場合は風を操ることは造作もない事である


そしてもう一つ…


肉体を媒体として発現させる強化魔法も、この術式を必要としない


強化魔法による身体強化は言わば、直接魔力を肉体に宿してその力で性能を引き上げる…言わば魔力というただの


術式なんてものは端から必要ないのである



「勝手に我に触るでない。この身を汚して良いのはただ一人だ。しかし…妙な手応えだったな…」



鼻息をふんっ、とつまらなそうに鳴らしながらも余裕で首を傾げるペトラは自分がボールのように蹴り飛ばしたラジャンを見るように視線を向ける


普通の鎧ならば今の回し蹴りで粉々に粉砕できるが…脚に伝わった妙な感触はただの鉄防具とは少し違う


数瞬の思考の末に「あぁ、成る程…」と呆れたような声を出す



「随分とおざなりな戦闘術と思いきや…貴様、闘った事など殆ど無かろう?そしてその未熟で甘い戦闘力を必死で隠す為か……身に付けてる物はだな?成る程成る程…どうりで見た目が乱雑で纏まらん筈だ、効果毎にそれぞれ選んで身に着けておるから統一感が皆無な訳か。大方、我が蹴った鎧もダメージを軽減する魔道具なのだろう?」



なんてことは無さそうにぼやくペトラではあるが…本来魔道具というのは高価で希少価値の高い物だ


腕のたつ付与が行える魔法使いと道具作成に秀でた職人の2人が揃ってようやく作成の条件が整うのが魔道具である


魔法が得意でなくとも魔力を通せば込められた魔法効果が使えるとあらば、その値段と価値も押して計るべし…そして、その上に立つのが先史文明や過去に栄えた魔法技能を与えられた遺物であるアーティファクトである


その昔、さらに栄えた魔法の技術が賦与されていたり高名な魔法使いが遺した遺産であったり…今後、同じものが現れない強力な魔道具がアーティファクトである


その手のアイテムで全身くまなく武装しているなど尋常の闘い方ではない


所詮は道具…効果の上限が決まっており、度を超えて使用すれば壊れるし普通の魔法に比べて魔道具のみで闘うのは取り回しがあまりにも悪い


しかし、それを多数装備することができたなら魔法のように溜めや技能の錬度に関係なく様々な魔法効果を操れれば確かに強力に違いはない


意表を突くにも十分な効果があるだろうが、あまりにも…ラジャンは相手が悪すぎた





何故なら目の前に相対した少女は……なのだから


意表も何も無い…


ペトラからすればどう見ても……愛した男の戦い方の完全劣化版でしかないのであった



「立て。自称勇者の弟とやら。我が直々に…真に魔道具と呼ばれる物の使い方を教えてやろう」



展開された装甲と変形がガシャンッ、と動き、一本の棒へと変形した武装・緑鉄ロクガネを右手で華麗に振り回す…振るだけで周囲をあまりの勢いにより発生した風がぶわり、と吹き付


そして手にしたそれを脇の下から背中に通すように構え、左手は指二本を立ててくいくい、とかかってくるように煽る



数多の魔道具を身に着けたその男に対し…


ペトラはたった2つ…身に纏う戦闘服と手にした武装の2つだけをもって、妖しく不敵に笑いかけた






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




【後書き】


どうも、未知広かなんです


数話前に感謝の言葉を書きましたが、フォロー数が4000を超えていました


仰天です、ありがとうございます


私からすれば4000なんてちょっと多くて目が眩みそうなくらいです


そんなに読んでくれてるってホントに?って感じがしてます


ストーリーや設定に関しては、まぁ色々な賛否の声もありますがこれも目を通してくれる人が増えてくれたからだと思っております


色々な視点の意見があって書いてる私自身も「あっ、こういう風に捉えられるのか」という経験を得られていますので


今後ともどうぞよろしくお願いします








「おぉぉ!気円斬だぁぁ!」


「…言うと思った…カナタはドラゴ◯ボールも好き…」


「そ、それをイメージして射ったつもりはないのだが…いや、読み返してると確かに気円斬だな、うむ」


「いえ、操作できているからどちらかと言えばフリーザ様なのでは?」


「もしかして…2人にもそんな感じの技が…?」


「私も撃てますよ?デスボールみたいなやつ。小太陽を落下させる感じの…」


「おぉ!」


「…私も撃てる……デスビームみたいなやつ…。……圧縮雷撃を束にして光線みたいに指先から撃つ感じの……」


「おぉぉぉぉっ!」


「…そなた、フリーザ様好き過ぎではないか?」


「なら俺もやるしか無いな…「おまちかねの100%」ってやつを!」


「待って下さい。カナタの戦闘力で100%出したら国が消えます。もっと別の技で…」


「ベッドの上で!」


「待てぇカナタ!それは我らが大変なことに…!」


「…戦闘力…1億2千万……!!」


「洒落になりません!?カナタがフリーザ様なら私達はクリリンみたいなものです!」


「…でも…カナタがフリーザ様系なら……この先にゴールデンとかブラックとかが待ってる…っ!…私達に勝ち目は…んんっ」


「なにをちょっとゾクゾクした顔をしておるマウラ!後2段階パワーアップするなら我らどうなるのだ!?」


「ゴールデンに…ブラック…っ!?な、なんて…くぅっ……強そうな響きでしょうか…!んっん……これは是非、見てみなくては…!」


「何をドM魂を刺激されているのだシオン!?そんなもの試さんでもどうなるか分かるわ!」


「……じゃあ興味ないの」「なら興味ないんですか?」



「………こほん…うむ、今までの我らはただ遊んでいただけに過ぎん。…ここらでお遊びはいい加減にしろと言うことをカナタに見せてやるとするか」


「その意気ですペトラ」


「んっ…流石ペトラっ」



ーーその後…彼女達が立って歩く姿を見たものは一月近く居なかったというーー

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