第75話 三ッ星の守護者


「むぅ……っ……あいつら殺すっ……今から行って……メッタメタにしやるっ…!」


「どうどう、落ち着けマウラ〜。よーしよしよし…ほーら嫌なこと忘れてな〜」


「か、なたっ……今はあいつら…をっ…ふにゃっ……あ、ぁ……にゃぁ……」


「おぉ…みるみるとマウラの怒りが霧散していく。やはりカナタのテクは凄まじいのぅ、まるで日向に寝そべる猫のようだ」


「まぁ、怒るのも分かりますけれどね。私だってそう思います…とは言え、マウラのこの怒り方を見ればその気も紛れますが…」


「ほれ、見てみろ。あれだけ不機嫌だったのに、もう喉を鳴らしてカナタに体を擦っておる」



ーーんにゃ、んー…んぅ…んんーっ……


カナタの手が、マウラの頭をくしゃくしゃと撫で、猫耳をくにくに弄り、あやすような言葉を囁やけば地団駄を踏みそうな勢いだったマウラが次第に機嫌よく目を細めていき、遂には頭や体をカナタの体に押し付けてすりすりと擦りながら喉を鳴らすように声を漏らし始めた


既にカナタ達の宿の部屋へと移り、適当な食事を買い込んで机の上に並べて夕食をとっていたのだが、どうにもマウラの機嫌がよろしくない


これはいけない…と食後のマウラへちょいちょい、と手招きをしたカナタのマジックハンドによってマウラが膝の上の猫と化したのが今である


第2予選が終わって今日の武争祭は終了となった


不機嫌なまま闘技場から帰ってきたマウラが今にも襲い掛かってきた冒険者と思わしきグループの方へと向かおうとしていたのを3人で包むようにキャッチして帰ってきたのだ


そう…このままではマウラが彼らを始末しかねない


取り敢えず部屋に連れ帰って落ち着かせなければいけなかったのであった



「しかしまぁ…すっかり忘れてたな、ギルドのナントカっていうサブマス。まだ3人のこと狙ってたのか」


「確かにビオリオ・ジュドラーとか言ったか…。そやつらに雇われた冒険者らしいが、完全な闇稼業の人間ではないのだろう?」


「そ。護衛から指名手配犯の拿捕なんかもやってる対人間専門の冒険者で戦争にも出たことがあるような奴らだ。受ける依頼は金さえ貰えれば種類は問わないってさ…今回みたいにな」


「普通に犯罪のようにも聞こえますが、そこはジュラドー家の権力でもみ消す気だったのでしょうね。確か父と兄は人格者と聞いていたんですけど…この分だと期待は薄いと思います」



目下の気にするべき事はカラナック冒険者ギルドのサブマスター、ビオリオ・ジュドラーがマウラ達の身を狙っている事だが今回冒険者を撃退した事でビオリオも失敗したのは分かっているだろう


失敗したのならば、普通は警戒する…そして警戒したなら下手に手出しはしないのが普通だ


今回マウラの生け捕りに向かってきた冒険者パーティはパーティとして金級を保持していたのを、気絶した男のギルドカードで確かめてある


つまり、個人で金級の者は2、3名しか居ない


ビオリオは明らかに彼女達の実力を見誤っている


それもその筈…うら若き少女が初めての冒険者登録をしに来たのを見ていたのだ。つまり、この手の荒事の世界に初めて足を踏み入れる少女達にしか見えなかったのだろう


この手の拉致を行う冒険者は少なからず存在するが、そのどれもが法やギルドの戒律に違反する重大な違法行為であり、故に彼等は基本的に闇稼業…つまり、犯罪と分かっていて依頼を受けている


余程のことがない限り同情の余地は無く、あの場が大闘技場の武争祭というイベント会場でなければマウラが言った通り…返り討ちにして殺害しても取り締まりなどされはしない



とは言え、だ



彼らは表でも普通の依頼を受けて活動してる分騒ぎにはなる


白でも黒でもない、グレーな冒険者は一番面倒くさいのだ


と言うわけで、この程度の相手に彼女達の手を汚させたいとも思わないカナタはマウラを持ち前のテクでふにゃふにゃにして静めているのである


因みに、マウラ達3人とも風呂に入ってラフな部屋着に着替えて完全に寛ぎモードに入っているので外出の予定はもう無い


後は明日に備えてゆっくり休むだけである


シオンはベッドに腰掛けて本を読み耽り、ペトラは武争祭に関しての歴史やらなにやらが書かれたパンフレットを流し読みしながらお菓子に手を伸ばし、そしてカナタはベッドに腰掛けてマウラを膝枕のように膝上に彼女を乗せた状態で彼女をあやしつづけていた



「そういえば、ライリーはなかなか強かったな。あれは本気出すとさらに厄介そうだし…シオン、勝てそう?」


「えぇ。勿論…負ける訳にはいきませんから。と言っても、トーナメントで当たるとも限りませんけれどね。ですが…あの戦闘技術は特出しています。はっきり言えば…脅威です」


「確かにあれは強いわな。俺がやってるのも格闘技なんてお高いもんじゃ無いし、ああいう独自の理論に基づいた闘法ってやっぱ相手にするとやり辛いだろ?」


「はい…。正直、少し自信が欠けました。こういう体術で闘ってあからさまに差を感じたのは…ペトラ以来初めてかもしれません」


「我、それ程か?それこそ、我の戦い方こそ我流も良いとこだろう?受けて流して返して当てる、敵の勢いを利用する…次の行動を読み、ここに来るであろう未来の位置を見る…格闘も魔法も同じことよ。むしろ、シオンのような一線を超えたパワーに対応するならば技術というのは必須だ」


「それを実戦で100も実現できる奴が、こういう時に「強い」って言われんだ。勿論、読みを潰せる圧倒的なパワーも強みだし、読みきれない速さで圧倒するのも強みだけどな」



ライリーとの戦いはシオンに新たな緊張感をもたらした


カナタ等の特別な例を除けば今までパワーとタフネスで押し切っていた所、これを上手く掻い潜り自分にダメージを与え得る存在に初めて出会ったと言ってもいいだろう


力を加減していたのはお互い様…つまり、ライリーの戦闘力は未だに未知数であり優勝を目指すならば必ずと言っていいほど彼女は勝ち進んで…自分達の目の前に現れる


最強の冒険者が培った技術と経験を余すこと無く受け継ぎ、そこに天性のセンスが加わった…まさにたった1人にして一番弟子、それがライリー・ラペンテスだ


そのポテンシャルは特異魔法を加味しなければシオン達に匹敵する


まさに天才、持って生まれた側の強者だ


ぱたん、と本を閉じたシオンがベッドに乗り自然とカナタの隣に収まるよう座るとその肩に頭を預けるように寄りかかり、カナタの膝上にあるマウラの頭をそっと撫でた


明日は第3、第4予選が控えている


ペトラは明日の第4試合だ


…完全にこのほわほわぽかぽかとした雰囲気から夜の大運動会が始まる流れが来ている


椅子に座りながらベッドの3人を見ながらも当然、これに参加したいペトラ


これに乗じて英気を養わなければならない…という建前のもと夜の大運動を盛り上げたい。勿論、ただの建前…何も考えず普通に飛び込んで桃色フェスティバルを開催したいし、なんなら今夜こそ頑張って3人でレイドボス討伐と洒落込みたいところなのだ


しかし……ここに来てペトラはカナタの側にはちょっとだけ行くのが抵抗があった…




それはなぜか…?




(明日…っ足腰が抜けていては闘えんだろうっ!そんな体をぷるぷるさせて闘技場など恥ずかしくて入れるかっ!こ、今夜は我慢するしかあるまいっ……!敗因が「愛した男と羽目を外してハメすぎた」などと言える訳もないかろうっ!)



明日立ってられる自信がないからだ!


そりゃマウラとシオンは良いだろう…だって試合終わってるからどんなに歩けなくたって何も問題ないのに、自分は明日に負けられない試合が控えているのだ


そこに震えた産まれたての子鹿のようにぷるぷるしながらリングインするって?



ーーなわけなかろうアホか!明日の昼までに起きれるかすら怪しいわ!普通に徹夜コース間違い無しだ…流石にそんな冗談のような負け方はしたくないっ!



つまり、そこにあるベッドという夜の闘技場に入る訳にはいかないのである


しかも見るといい、あのシオンとマウラの火の付き方を


シオンは初めて張り合える相手との打ち打たれる戦いの後でかなり高揚している


マウラは機嫌が良くなかったのが燃料になっててかなり癒やしを求めてる


今夜は激戦…燃え上る事間違い無しの状態なのだ


そんな大炎上必至の体を打つ音鳴り響くリズム天国を無事に終えてベストコンディションで明日の闘いに挑めるのか…?



(無理だ…っ何せ我は……戦いでは打たれ弱いのだっ!こ、今夜は耳を塞いで眠るしか…!)



「あれ、ペトラ?どうかしましたか?ほら、明日に向けて英気を養わないと…」


「ん……今夜はペトラが主役……っ…私達はその後でいいよ…?」


(同じこと考えておるっ!?しかも主役とか言われてるしっ!?)



同じような考えをしている親友2人に「む、むぅ…ぅむ…」とよく分からない声が漏れてしまうが、なんとなくこちらの考えを察しているのか…少し苦笑いしたカナタがちょっと考えた後にペトラに向けて腕を申し訳程度に広げ…



「えっと……、付けるか?」


「っ…そ、それはそのぉ…っ」



察されてる事に顔を赤くしながらも、それを言われてしまえばこくり、と頷くしか無い


カナタも流石にそれは分かっているのか「ほら、元気付ける程度ならどう?」と聞いてくれるあたりとても分かってくれている様子で思わず「う、む…っ…そ、それなら…」とベッドに乗るペトラ







その夜はいつも通り熱く、熱く…そして珍しく柔らかく穏やかで、とても幸せな心地の中で彼女達はゆっくりと眠りに就く事ができたのであった


3人は仲良く、川の字になって…ちょうどくったり火照った体を寄せ合うようにして…ほわほわと幸せな気持ちのまま夢の中へと沈んでいく



「よしよし…おやすみ。シオン、マウラ、ペトラ」



その3人の額に、カナタは目を細めて愛おしさ満点に唇を押し当てたのであった






ーーー





「あの宿でいいんだな?確かに調べた情報だと…4階東の角部屋、家族用宿泊部屋に寝泊まりしている四人組の内、少女3人だとよ」


「間違いねぇな。見えた見えた…3人仲良くぐっすりだ。しかも服着てねぇ、こりゃお楽しみだったなぁ羨ましいぜ」


「ま、俺達に依頼出すって事ぁやっこさん、相当あの女の子達に執着してっからな。なんでも前任がミスったんだと。俺らで美味しく頂いてもいいけど今後依頼来なくなんだよなぁ困ったことに」


「別に、手を出すなとは言われてないじゃん。何日かかかった事にしてさ、その間俺達でしっかり男ってもん分からせてやんのはどう?」


「賛成、そのくらいの役得はあってもいいよな」



並び立つ建物の屋上


そこに体を真っ黒な服装で統一した男4人が建物2つ先に見える宿屋の一室を望遠グラスで覗き見ていた


よく見れば、着ている者は革鎧や革のアームガード、レギンスでありその全てが黒の染料で染め上げられていた


夜の闇に紛れる為の真っ黒な染色に加え、胴体や腕、脚の最低限を革製防具で守る装備は一見防御能力が普通の装備よりも劣るように見えるだろう…


しかし、夜闇に紛れて音を立てずに動くには金属のようにガシャガシャと音が鳴らないながらに防御力を上げられるベストな装備


当然、ただのレザーではない


魔物の強靭な皮膚を特性の薬液で浸して鞣したそれは、下手な鎧よりも遥かに頑丈でかつ柔軟…お値段もそれ相応にぶっとんだ代物だが彼らはこの程度の装備を用意できて当然の者達だった



「何せ…俺ら闇専門の水晶球冒険者を雇ってんだからな。ジュドラーんとこのガキは金払いいいんだけどよ、金以外にも美味い思いさせてもらわねぇとさぁ」


「ちなみに俺、あの赤髪のエルフ予約な。あのタオルケットからはみ出た乳見ろよ。ありゃ極上だなぁ、そこらの丈夫が腐って見えるわ」


「おいそれじゃあ1人こっちが余るじゃん。じゃあ俺銀髪美少女にする。あれも股間に悪い子だ、何食ったらあんな男誘う見た目に育つんだか…」


「あ、俺も。2人で輪姦まわそうか。結構強いらしいし、頑丈なんだろ?結構乱暴に使も良さそうだ」


「なら、俺は青髪の獣人。可愛いのなんの…あれは啼かせ甲斐があるってもんだろ。しっかり躾してやるからなぁ子猫ちゃん」



視線の先には宿屋の一室の窓…カーテンはかかっているが、魔道具である望遠グラス越しに見た先にはカーテンを透け抜けて大きなベッドの上に裸体のままの三人の少女が寄り添ってタオルケットを体にかけて無防備に眠りについている


闇稼業専門の冒険者…それはつまり、表の普通の冒険者稼業が不可能なほどに違法行為を繰り返して除名された者達であり、冒険者ギルドを追放されて尚金を貰えればどんな違法行為も実行する正真正銘の犯罪集団


彼らが受けた依頼は1つ…今見ている3人の少女を確保して依頼主に渡すこと


依頼主はバカな貴族のマヌケ息子…一度手を出して手酷く失敗したようで、顔を真赤にして自分達に依頼を出してきたのだ



『怪我させても構わないからあの3人を私の元に連れてくるんだ!私をコケにした罰はしっかり体で払わせてやるさ…!金ならやる!早く連れてこい!』



なんて癇癪を起こしたように依頼してきたときは失笑もやむ無しだったが…目標の少女達を見て一気に気が変わった


あれはあんなバカには勿体ない、極上の女だ


水晶級の、自分達こそがあの極上の女を、女体を喰らい味わうのに相応しい…あのバカにはせめてそのお下がりをやればいいだろう


見目麗しい少女が醜い性分の貴族に拐かされて不幸な目に遭う…そんな、頻繁ではないが起こる時は起こる不幸がここでも起きるだけの話



「じゃ、早速行こうぜ。ちょっと楽しみすぎて歩きずらいけどな」


「ハハッ!言えてる!」


「行くかぁ。あんだけの女は久々だしな」


「そんじゃ、パパっと済ませるか。お楽しみも待ってるしな」










「見ーつけた」




「「「「!?!?」」」」




いつからそこに居たのか


並ぶ自分たち4人の真ん中に当然のように並んで立っていた、1人の少年


一瞬で四方に飛び退き、各々が同じく光を反射させないために黒く塗りつぶしたショートソードを引き抜いて構えた


格好は部屋着の短パンに薄手のボタンシャツをすぐに羽織っただけのようで、前のボタンも全開のまま上半身の裸体が覗いており、腕には3つのメタルリングがアクセサリーのように嵌められ、脚に至ってはぺたぺたと音のするスリッパである


背は高く、体も鍛えられてるのがよく分かるその少年は緊張感も無さそうに「ふわぁ…ま、諦めないよなぁ、普通…」と欠伸をしながら後頭部をぽりぽりとかいており、ちょっと眠そうかつ不機嫌な目が彼らをじっとりと見つめている


あまりにも見た目が普通…なのに、自分達が…水晶級の冒険者である自分達が一切気が付けなかった異常事態に混乱する



「…ナニモンだ小僧。ここで何してやがる?」


「ただのデート後の観光客かな。愛した女3人と熱〜い夜を過ごした直後のただの男…とか?まぁ何してるのかって言われると…そうだな…」



ひらひらと手を振りながらそう言った少年の言葉に四人の脳裏に思い浮かぶ事前調査の情報…そこには目標の少女3人と行動を共にする一人の少年の姿もあった


よく見れば確かに…その姿と一致するが…






「人の女の肌勝手に覗きやがって…何しに来たかはっきり言わなきゃ分かんねぇか?……………………















お前達を殺しに来た」





「殺せェッ!!」



少年の言葉と共に、リーダーの男が短く…


隠密行動などお構いなしに…叫んだ


それ程までにこの少年から異様かつ異質な気配を感じ取ったのだ


だから、とった行動は…即断即殺


4人の男達がそれまでの浮ついた空気を瞬間しまい込み、手にしたショートソードを瞬時の踏み込みと共に少年へと振りかざす


水晶級冒険者…才気ある金級からさらに一線抜けた活躍と力と結果を示さなければ到達できないエリート中のエリート


4人は闇稼業を生業とする犯罪集団ではあったが…一人一人が水晶級という高度なレベルのパーティであった


犯罪行為に堕ちなければ彼らもまた、人々から尊敬を集める高位冒険者の一角として称賛を浴びていたことは間違い無い


それを自覚しているからこそ…男は自分が目の前の少年に対して…言いようのない戦慄を感じたことに自ら驚いていた


何か…この少年からは近づいてはならない何かを感じる、と、…これまでの長い経験が己の本能に警鐘を鳴らしているのだ



ーー早く殺しておかなければ…!



4人全員が、同じことを思ったのである


目にも止まらぬ動きで4人同時に、それぞれが別の場所に向けて刃を振り抜く


喉、心臓、腹、太腿…どれか1つでも当たれば致命傷か戦闘不能の重症となる場所への的確な斬撃は素早く、夜闇に紛れれば視認は困難だ


空を斬り裂き、猛速で斬りかかる4人に対して少年はなんとも無防備


ポケットに手をいれたまま誰か1人の方向すら見向きもしない




容赦なく、4点への斬撃を浴びせかかった男達はそのまま少年へと黒塗りのショートソードの刃をつきたて…びしり、と硬直した



何故か?


当たり前である


少年の体を切り裂き、内部をズタズタに食い破る筈の刃が…「ガギンッ」と不快な音を立てて薄皮1枚切り裂く事無く止まったのだから


まるで巨大な鉄の柱を殴りつけたような、手に伝わるビリビリとした衝撃に現実が追い付かない


ガードは無く、ただその体に斬撃を受けただけなのに、その体からはギリギリと人体と金属とでは鳴らないはずの異音が己の得物から出ている事に…言葉すら出なかった


ただ…目の前の少年の肉体が、淡く、仄かに…しかしその内部には濾し取り続けたような濃密な真紅の魔力が滾って光となって纏わり付いていることにようやく気がついた



「ようこそ、完成品の試運転だ…炎環エーデライト、全開放ーー」



その真紅の輝きが力を強めたのを感じ取り、後ろへ飛び退ろうとしたが…一歩遅かった


3人は飛び退いたが1人の男は、その少年の手に触れられてしまったのだ


その時点で…彼の運命は決してしまった



「ーー炎葬」



バォンッ!!ーーそんな聞いたこともない、一瞬に圧縮された爆音のような異音が弾け、少年に触れられた男は一瞬にして…まるで火花のように弾けた瞬間的な爆炎に焼かれ全身を炭化させて即死した


悲鳴を上げる暇など無い


あまりの火力の高さに骨の髄まで炭と化し、触れた手を少年が離しただけの衝撃で人の形をした炭の塊はボロボロと崩壊して黒ずんだゴミの山へと成り果てる



「まぁ…シオンはこんな惨い使い方しないけどな。逆に言えば…アレンジのやり甲斐が沢山ある」



「ジック!?クソッ…なんなんだコイツァ!?」


「全員戦うな!一目で分かった…こいつは俺達じゃ無理だ!」


「どうなってんだ!なんだってこんな奴が居るんだぁ!?」



それを見た彼らが取った行動は…遁走ただ1つのみ


戦うなんてとんでもない


水晶級ともなれば実力の差、彼我の戦力差は測れて当然のこと


あれは…


建物で視界を遮りパルクールのような不規則な動きで少年からとにかく急いで離れて姿を隠す


脚の速さは自身がある


この手の仕事はスピードが命なのだ


拉致に暗殺は隠密と速度が物を言う…素早く認識されるより速く距離を詰めて気付かれずに拐い、瞬時に消えるのが鉄則。故に彼等は速かった


逃走経路も事前の打ち合わせ通り…後を追い辛く直線で視認されない、追手を撒きやすい最適ルートをひた走る



だからこそ…反応が遅れた



何故か建物の屋上を飛び、ある建物の角を曲がったその先に…あの少年がこちらを向いて立っていたのに気が付いたときには、既に男は自分から少年の目の前に突っ込んでしまっていた


その手が、男の顔面を鷲掴みにして宙吊りにすれば万力のような力が頭に加わり今にもかち割れそうな痛みに男は狂ったように暴れまわる



「あっガぎぁぁっ!!離せ、離せぇぁぁぁ!!」


「人の女で楽しもうとしてたんだ、しっかり代償は払ってもらおうか…俺、結構怒ってんのよ?ーー雷環クラーガス、全開放…」



少年の体が先程と全く違う…まるで秘境の湖が月に照らされたような瑠璃色の光を纏い、それに合わせて…その体が同じ色の稲妻を迸らせる


そしてそのまま瑠璃色の稲妻が目を開けていられないほどに勢いを増していき、それを男の頭を掴む腕に瞬時に流し込み…その姿は奇しくも、大闘技場でマウラが襲い掛かってきた冒険者の1人を沈めたものと全く同じだった



「ーー雷浄」



「ぎあァァァァ!?やべで!あっがばべべべべァァガガごごがァぺ」



悍ましい量と勢いの稲妻が男の体を這い回り肉が蒸発していき、肉が赤熱して煙が上がっていく

見る見る内に皮も肉も臓器も膨大な電流にくまなく焼き尽くされて水分を含むすべての組織は蒸発し…


ガラガラガラガラッ


綺麗に全身骨格と化した男の首から下が地面に落下して、壊れたジグソーパズルのようにバラバラに崩れ去る


そして、少年が片手で掴んでいた頭蓋を…握り潰した



「これ、マウラがやるなら遠くから沈めた方が早いか?…ま、エグいから教える気無いけど」



その視線がゆっくりと、残り2人の内1人の男を捉えた時には既に…


彼の命は終わりへと差し掛かる


少年の指が二本、男へと向けられると何処からともなく吹き荒れる新緑色の風が男を竜巻の中心に閉じ込めるように巻き付いてしまう



「ま、待ってくれ!違う!ま、まさかあんたみたいな奴の大事な恋人なんて知らなかったんだ!金っ、依頼金は全て渡すから頼む!た、助け…」


「金なんか要るかっての。俺が欲しいのはあいつらの安全のみ…生かして返す意味は無い。ーー嵐環クラリウス、全開放……」



竜巻の中からの必死の命乞いも虚しく、処刑の宣告が振り下ろされる


取り付く島もない少年の言葉を最期に…男の意識は永遠に途絶えることとなった



「ーー嵐罰」


「やめーー」



グチャッ


竜巻が真っ赤な血と肉片を内部から噴き出させた


骨まで粉々に刻まれ、まるでジューサーに入れた果物のように地も骨も肉も全てが1つのミンチとなって竜巻の周囲に飛散する


竜巻はその内部から無数の風刃によって、中心に閉じ込めた男は真っ赤なスムージーと化し、竜巻が役目を終えて掻き消えるとそこに人が居た形跡は何も残っていなかった



「あー…この使い方、ペトラに教えない方が良さそうだな。汚いし」



残りの1人…リーダーの男は既に腰を抜かして立ち上がることすら出来ない


先程まで汚れた夢を語っていた仲間達が人の形すら否定する凄惨な処刑をされたのである


次は自分…そう考えるだけで体の震えが収まらない



「ま、待ってください!依頼主!い、依頼主の情報も全部吐きます!そ、そうだ!お、俺を雇って下さい!タダでいい!依頼主の首を持ってきまーー」


「依頼主はビオリオ・ジュドラー。報酬金はあの子達一人に付き200万に前金300万、受け渡し場所はジュドラー邸裏庭にある詰め所で依頼期間は5日間。そこから1日遅れる度にマイナス100万で隷属の首輪も用意済み…だろ?」


「あ、あ……な、んで…い、依頼を受けたのは夕方の筈…」


「あぁ、調。あのゴミ3匹殺してる間、暇だったからな。ったく…今からあのクソボケ貴族息子のとこにも行かなきゃいけないし…ねっむ…早く3人抱き締めて眠りたい…」



今日の予選での計画が失敗したからこそ、自分達にお喚びがかかったのだ。つまり…依頼されたのは今日の夕刻頃であり、依頼人やら取引先、用意品までなぜそんなに詳しく知ってるのか…もはや訳が分からない


仲間の3人を惨殺しながらも、欠伸を浮かべて去っていく少年


見逃された…そう思ったリーダーの男の安堵も束の間のこと


リーダーの男を放置して、建物の屋上から去ろうと縁まで歩き、そのまま振り返ること無く親指で首を飛ばすジェスチャーをしながら…






「もうリングの試験は良さそうだな。ーーー殺せ、ブラスター・ジョーカー」





無情の死刑宣告


リーダーの男は悲鳴を上げる暇すら無く…その後にいつの間にか存在していた人型のに、頭の上から手で力づくで押し潰され、プレス機に潰された果物のように屋上のシミとなったのであった



「さて、次は…」








「また勝手ばかりしてるのか…いい噂は聞かんぞ、ビオリオ。折角ギーリックにお前を働かせるよう図ったんだ、あまりジュドラーの名を汚すような真似はするな」


「…んだよ父上。好きにやらせてよ。どうせジュドラー家は兄貴に渡して俺は用無しじゃないか、そんな夢の無い未来しか無い俺にはこういう癒やしが必要なのさ」


「馬鹿者が……何故我らジュドラー家がこの貿易都市カラナックをラヴァン、バーレルナ両国から治めることを認められてると思ってる?ーーそれは信頼だ。どちらにも寄らず、どちらにも義を持つ…その信頼がなければ統治というのは出来ないというのにお前は…」


「だから統治うんぬんは俺には関係ないんだ!俺に残ってんは父上が捩じ込んだ冒険者ギルドだけしか残ってないのさ、ならギルドが俺の城だ!好き勝手やってもいい俺の場所!…父上は兄貴と仲良く街でいい顔してなよ、今度俺が捕まえたペット見せてあげるさ。羨ましがっても貸してやらないよ?」


「ビオリオ、何をした?まさか民に手を出したなどとは言わんな!?」


「別にカラナックの人間には手出してないよ。カラナックの人間にはね。安心してよ、父上の大好きな住人には何もしてないからさ」


「そういう問題ではない!そこまで腐ったかビオリオ!事と次第によっては…」



カラナック中心地、そこにある一際大きな屋敷の中、その書斎の部屋で声を荒立てる二人の男がいた


壮年の男はガイガン・ジュドラー


このカラナックを統治するジュドラー家の当主である


カラナックはラヴァン王国と軍事国家バーレルナの両国が共同で国家間に設立した貿易都市であり、その統治は両国からの信頼厚い者にしか任せられない


片方の国だけに融通し、片方の国だけ利を下げるような真似をすれば両国の関係悪化に繋がるのだ


故に、ジュドラー家はこの街が興った時から両国からの信用を背負って統治を行ってきているのだ


ガイガン・ジュドラーは魔神大戦が終わり、現在に至るでの43年間に渡ってカラナックを治め、大戦の終わりからその先の復興、他国の支援、さらには街の繁栄を手掛ける手腕の男であった


民からも信頼があり、厳格な統治と確かな政の腕前は街でその顔を見る度に手を振られるくらいには人気である


その次男として産まれたのがもう1人の男、ビオリオなのだが…



(はぁ…なぜこうなってしまった。私の教育が行き届かなかったか…お前と長男のキュラッソには別の道で活躍出来ると思っていたのだがな。ビオリオが何をしたのか突き止めなければいかんか…)



ビオリオは優秀で最初からジュドラー家の次期当主の座を担った長男であるキュラッソとの差に嫌気が差した


もはや何をしてもこの家で自分の場所はない、と思い込み不貞腐れたビオリオをせめて職に付けて生きれるようにしなければならない…そう思って酒飲み仲間であったカラナックの冒険者ギルドマスターにビオリオを預けたのだ


決して忖度なく扱いてやれ、と思っても伝えて、だ


しかし、困ったことにと言うべきか…ビオリオには内部から伸し上がる才能があった


勿論…まともな手段ではなかったようだが、そこも含めて上にあがる力があったのだ


気がつけばギルドマスターの1つ下、2番手であるサブマスターの地位に収まっていたのである


恐らくは闇冒険者を使っての強迫やらアウトローな手段を用いての伸し上がりだが、証拠は残っていない…冒険者ギルドに預けたことが、闇冒険者との繋がりを持たせる裏目に出てしまったのだ


恐らく今も、自分の好き勝手を行うために平然と犯罪行為へ走っている可能性が高い…それを思えば父として、統治者としてビオリオを止めなければこの先どうなるか…



「ガイガン様、お客様がいらっしゃったのですが…」


「む、そうか…来訪の予定など無かったはずだが…」


「いえ、それが……『ガイガン様へ、予定通り裏庭の門番詰め所で待つ』との事でして…どのようになさいますか?」


「なに?どういうことだそれは…」



老齢の執事が眉間を揉むガイガンに来訪者の存在を伝えるが、基本的にアポ無しで貴族の下に来る者はあまり居ない


急に現れて「会わせてくれ」などと言っても格上の貴族でもなければ相手にされないのは当然である


ガイガンも今日はもう来訪者の予定が無いのは分かっていた事もあり、追い返すのもやむ無し、と思いはしたが…執事の最後の言葉に目を細めた


裏門は使用人や物資を納入する時に使う場所であり来訪者が現れるような場所では無い


このガイガン・ジュドラーを名指しで呼んでいる以上はただの仕入れの筈もなく…ならばどういうことなのか?


怪しさが満ち溢れる謎の来訪者ではあったが…これにあからさまな反応をした男が目の前に居たのだ



「なっ…なぜ父上の名を…っあのバカ共…ッ!…お、俺の名前と間違えたのか……!?…クソっ…なんで今なんだ……!」



小声で何かを言っているが、焦る様子の息子に経験則から何かがあるのを察した


恐らく…この息子が起こした行動の何かが、目の前に来ているような気がしたのだ


ビオリオは尻尾を出す事がない…これまでも何度か吊し上げてやろうと調べはしたが、貴族の手が出せない冒険者ギルドという事もあって調べは難航していたのだ


ガイガンの頭は即座にそれを考え…これが不審者であるリスクも考えた上で行動を起こす



「うむ……来訪者に伝えろ。『予定を変える。書斎へ上がるように』とな。案内して差し上げなさい」


「畏まりました」


「まっ、待ってくれ父上!そ、それは俺の…あ、いや…父上が出るまでもないさ、俺が裏門まで行って追い返してくるから!こんな突然来るような客を相手にしてたら家の格を疑われるんじゃないかな?」


「何を言うビオリオ。この私を名指しで呼んでいるじゃないか。それに、予定通りと言っていたからな…うむ、確かにそんな予定を立てていたような気がしてきた」


「っ…」



ビオリオの顔が明確に歪んだ


ガイガンはこの来訪者が「アタリ」である亊を確信する


ちなみに今までビオリオが来訪者を父である自分の代わりに応対した事など一度とし無い


怪しさ極まる状況…ここは自分が予定通りにしている事にしてしまえば何も言えないだろう、とあえて嘘の来客予定であるのを繕えばビオリオはあからさまに動揺している


このまま息子の凶行を止めるならば…今、何かは分からないが目の前のチャンスを取るしか無い


そして、その来訪者は思っていたよりも早く…息子との会話のさなかにこの書斎へと現れた


執事が書斎へと連れ込んで来たのは…とても胡散臭いというか、非常に怪しさを出すマスクを付けてフードまで被った人物だったのだ


しかもマスクの目と口の部分が真ん丸で何故か光っている…一体どうやってるのかとても気になるところではあったが…



「…夜半に失礼、ガイガン・ジュドラー伯爵…それとビオリオ殿も。2人お揃いならば、話は早い…」


「おい、なんだそのマスクは!ここは伯爵家だ!なぜこんな不審な男を屋敷に入れている!?さっさと追い返せ!」



…今回ばかりはビオリオの反応が当然ではあった


貴族の屋敷に怪しさ満点の格好で乗り込むなどマナー面でも安全面でもどうかしている


しかし…長年この家に仕えてきた、当主になる前からガイガンと付き合いのある執事にはガイガンの考えが分かっていた


だからこそ、敢えて…この不審極まる男を貴族当主の目の前に連れてきたのである


声もどこかマスクで籠もっているだけにしては可怪しなぼやけ方をしており、本当の声ではないのが丸わかり…顔はマスクでフードを深く被る姿からではどんな人物なのか全く分からない


分かるのは背が高めの男…程度のことだろう



「さて、どのようなご用だ?招きはしたが、妙な行動はせず簡潔に目的を果たそう、客人よ。…用があるのはそこの息子なのではないか?」


「…流石伯爵、話が早くて助かる。ジュドラー家当主は話が分かる男、というのは本当のことだったみたいだ。ならば敢えて、ガイガン殿…あなたにお渡しするか」



マスクの男が虚空から取り出したのは…数枚の紙と何かのカードだった


それを近くに控えた執事に渡し、執事からそれを受け取ったガイガン…しかし、一番如実に反応を表したのはこの三人ではなくビオリオだった



「ま、まてっ貴様!なぜっ、なぜそれを持ってるんだ!俺に渡せそれは!それは俺のだァ!」


「まぁ、確かにお前のだな。まったく…これを復元するのに手間がかかったんだ。これ、契約魔法の掛かった羊皮紙だろう?…お前の血印と魔力だな?」



ガイガンの手に渡ったのは数枚綴りの契約書


厚めの羊皮紙に刻まれたその内容は…目的とした人物の拉致、依頼達成期間、報酬、拉致した人物の所有権の在り処等…事細かに刻まれたそれは明らかに…違法な人身売買などで使われている非正規で流通している契約書だった


正規の契約書に存在する他国のでも共通の発行印が存在していない以上、それは違法な書類で間違い無い


さらに内容は特定人物の拉致…それも負傷に関わらず連れてくるという契約


そこに契約者の魔力が込められている血で刻まれた拇印が押されているのだから、だれが契約の主なのか…それは火を見るより明らかだ



「これは…本物だなビオリオ。どういうことか、説明してもらおうか」



明確な犯罪行為の証拠が、突然目の前に転がり込んできた…それに対し、ガイガンは静かに己の息子に問い掛けた




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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【後書き】



「さて、考察していこうかのぅ…」


「えぇ…これにな考えが必要です」


「お、なんか本気の様子…これは聴き応えがありそうだな…」


「うむ…今回のカナタが仕込んだネタについてだが…」


「あれ?俺結構今回カッコ付けたと思うんだけど…」


「………まず1つ目は、闇冒険者Aを殺った技……あれは最近のアニメで見た……!」


「漏瑚さん!私の炎系魔法と同じ特級◯霊!ナナミンが死んでしまいます!」


「その内隕石でも落とすのだろうか…のう、カナタよ?」


「な、なんのことかしら…?」


「…その次…!…Bを殺ったのも見たことある…!……そう…ヒーロー映画で…!」


「は!?目覚めた直後のブラック◯ダム!?確かに似ている!」


「マウラさん物知りっすねぇ!?お兄さんと趣味合うよほんと!」


「首ではなく頭を掴んだのはちょっと差をつけようという涙ぐましい努力ですね…?」

 

「涙ぐましいとか言わないで!?」


「…カナタは映画とアニメ好き過ぎ……でもそこが良いっ…!」


「我の魔法の時は分からんなぁ。なんかsawシリーズに出てきそうな攻撃法だったが…」


「今回の一際グロい描写はそれでしたよね」


「さぁ、皆も映画とアニメを観よう!オススメはNet◯lixとアマ◯ラだ!」


「潔くおすすめする側に周りおって…」






どうも、未知広かなんです


読んでくださりありがとうございます


最近、コメントでたまに言われるのです…投稿、ちょっと遅くない?1話分の内容減らしてもいいのよ?、と


これに関しては遅筆の致すところではありますが、個人的に文量の軽い話は描写や内容も軽くなってしまう気がしております


実はこれでも、執筆を進めていますが正直な話…今のところ投稿と執筆の速度は完全にイコールです


話数の書き溜めとか無いのです


書く以上はしっかり満足の行く世界を作りたいのでこの投稿頻度でご容赦をいただきたいと思います…とはいえ、これでもかなり急いで投稿してます。最近はむしろもっと時間欲しいとか思い始めてます…


他の作者さんはどうやってそんなにパカパカ投稿頻度を上げられるのか…秘訣が知りたい…


また何かあれば教えていただきたいと思います


どうぞ、拙作をよろしくお願い致します

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