第52話 魂鎮め


「……は…?」


粉々に砕けた床、壇上へ登る小さな階段はバラバラに破壊されそこに埋まるような形で鎧姿の男…いや、その鎧はもはや原型を保っておらず、バラバラに分解され砕け散り、その役目を微塵も果たしてはいない状態で


ゲラルドが倒れていた  


気の抜けた男の声はゲッヘナのものである


その異様な状態に、周囲は完全に沈黙に包まれていた



つい先程、身に着けたアーティファクトをフル稼働させて勇者へと凄まじい速度で突撃し、物騒な魔力を堪えた騎士剣を容赦なく彼に向けて振り下ろしたゲラルドは、ゲッヘナとズォーデンと共に間違いなく勝利を確信していた


これだけの速度、これだけの威力…もはや反応する出来ず、自分が切られた事にすら気が付かないだとう、と…


事実、生徒達の中でゲッヘナの動きが完全に見えていた者はほんの一握りしか居なかったのだ


その振り下ろされる致命の一撃…かの最強と呼ばれた勇者を下し、己の強さを世界に知らしめる最初の攻撃となる…筈のそれは


目にも止まらぬ速度で、何の気もなく、無造作に…まるで目の前をふわふわと漂う蝶でも触れるかのように、勇者ジンドーの漆黒の篭手で掴み取られていた


それも片腕で


ギャリギャリギャリギャリギャリギャリッ!


耳をつんざくけたたましい…まるで鉄の塊にチェーンソーの回転する刃を擦り付けるような音が目を焼くような火花とともに接触部分から鳴り、耳を抑える者すら現れる中で


目を見開くゲッヘナに緊張感の欠片もなく黒鉄の鎧が言葉を漏らす


『…まさか、これか?俺を真似して造ったのが、このオモチャだと?本気でこんなガラクタで俺に勝つ気だったのか?』


首を傾げて以外そうな勇者ジンドー…その手で握り止めたゲッヘナの騎士剣は…彼の装甲に傷一つ付けていなかった


ゲッヘナの表情が驚愕に、そこから勇者の言葉で怒りに染まる


己の華々しい勝利の姿が、一瞬にして虚空に消えてしまうのを感じ、それを無理矢理思い浮かべながら鎧と騎士剣の出力をなりふり構わず引き上げる


「って…バケモノが…!この俺の一撃を…っ…止めるなど…!その手を退けろ…ォ!当たりさえすれば貴様なんざ真っ二つに…!」


『ほぅ…いいぞ。なら斬らせてあげよう』


その状態でゲッヘナが放つ言葉に、平然と答えた勇者ジンドーはなんと…掴んでいた騎士剣を本当に手放した


抑え込まれていた一撃が、止められていた勢いが開放され扇のような軌跡を描く斬撃が勇者ジンドーの脳天に叩き込まれる


避ける素振りも、反撃の素振りも見せないまま本当に抵抗を止めて斬らせたのだ


その結果…






バギィィィィィィンッ…

 





甲高い音を立てて…振り抜いた騎士剣が粉々にへし折れた




「…はぁっ!?」



手にした剣を目にして素っ頓狂な声を上げた


当たり前である…手にした武器で無抵抗の相手を斬ったら武器の方が一方的に破壊されたのだ

目の前には自分が渾身の一撃を直撃させた相手が何食わぬ態度で立ったままこちらを見ているのだから…


『イマイチだ。俺からすればその剣は…良くて15点。その辺の雑魚相手に無双して万能感を得るための自慰アイテムってところか』


「バっ、バカにするなァ!貴様みたいなバケモノが偉そうに、この俺に…ッ!俺は次の英雄になる男だぞッ!貴様のような人外を潰してこの俺が人の英雄にごひゃッ」


顔を真赤にして喚き始めたゲッヘナの言葉の途中で無造作に繰り出した勇者ジンドーのストレートパンチは彼の胸のど真ん中にクリーンヒット


その衝撃で着ていた鎧はバラバラに砕けて飛散し勢いよく床に叩きつけられながらそのまま壇上への階段に突っ込み、それをバラバラに粉砕して木屑に埋まるようにして白目を向いたゲッヘナが、立ち上がる事は無かった


『……ちなみに鎧の方はサービスして5点だ。次からはもっと良い鎧を買うといい。その男が造るものは…あまり質が良くなさそうだ』


悠然と言い放つ勇者ジンドーに…生徒達は喜びの声を上げた


本物だ、本物の勇者ジンドーが目の前で戦っている、と


そして、その伝説に疑う余地が全く無いほどに、圧倒的な姿は先程までの不安に押し潰された心を瞬く間に立ち直らせてくれる


急ぐこと無く、ゆっくりと壇上へ近づいていく勇者の姿にズォーデンは元より、ゲッヘナも後ずさる


「っこの私の造った作品が…オモチャ…ッ?て、点数まで偉そうに付けて…ッ」


『ああ。ちなみに1000点満点中だ。かなり甘く採点してやったんだ、感謝してくれゲッヘナ・ガベル』


ギリギリと歯を擦り合わせあまりの苛立ちに着ている白衣のような服まで破きそうなほど力が入り込む


自分の最高傑作の一部を完全に否定された…その怒りはあまりにも強く、今すぐ目の前の鎧の男を原型も残さず殺し尽くしたい衝動が頭の中に埋め尽くすが…それは叶わないと本能が悟る


遂に、壇上まで上がってきてしまったジンドーの前に、先程ペトラを弾き飛ばした継ぎ接ぎのガラスのような結界が現れ、行く手を塞ぐ


ゲッヘナの手にした正十二面体が輝きを放ち、今可能な最大出力の結界を張り巡らせたのだ


それを見て立ち止まり、ノックするかのように結界を小突く勇者に汗を流しながら笑みを浮かべるゲッヘナ


「い、いくら貴様でもコレは崩せまい!我が傑作『ジューラン結界石』は金剛級の魔物ですら傷一つ付けられん!さぁ、今のうちに聖女ラウラの結界を破壊しなさい!」


どうやら「傑作」はまだあったらしい


周囲を取り囲んでいた敵の男達はおもむろに懐や腰から吊り下げていた異様に太い短杖を取り出すと、それを黄金の結界に向け…魔法を放ち始めたのだ


撃たれているのは一般的な『魔法矢』『魔法弾』ではあるが、恐らく杖自体に魔法回路が簡単に刻まれ魔力を流すだけで魔力が発動できる仕組み…アルハザードをもっと雑にした造りの魔導具らしく、それを私兵全員に持たせていたらしい


黄金の結界に光の弾や鏃が無数にぶつかり線香花火のように衝突と炸裂を繰り返していき結界内部にはくぐもった破裂音が連続して響き渡る


魔法使用を制限しながら自分達だけ遠距離からの魔法攻撃を可能とする手口…確かに、これではただ生徒達が抵抗しただけならば多数の死傷者を出す結果になっていただろう


だが、勇者が後ろを振り向く事すらない


…彼女の護りが、彼ら程度に破られる事など考える事すらしていなかった


幾百の魔法がぶつかろうとも罅1つ入らず、剣や斧を叩きつけられても凹みすらしない



「さぁ、やってしまいなさいジンドー」



急かす事もなく、ただ一言、余裕を見せながら彼に向かって言葉をかけるラウラに漆黒の兜をゆっくりと頷かせる


『さて、さっきの剣や鎧に比べればこの結界は悪くない。もしかしたら、本当に金剛級の魔物から身を守れるアーティファクトなんだろう。ただ闇雲に強化して殴っただけでは…破れない』


篭手の掌を継ぎ接ぎのガラスに似た結界に当てながら、低音のマシンボイスが確かに魔法の嵐といえる音の中で耳に届く


そして、振り向いた勇者の光る双眸が生徒達の方を向き…いや、この場でただ一人の少女に向けられた。少なくとも、彼女は…自分へ勇者から、いや、違う…から自分への言葉だと理解していた




『覚えておきなさい。




直後




勇者の掌が、結界を



文字通り、結界の中央に当てた手を握り結界ごと潰し…その破壊箇所から一瞬にして結界全体に破損は伝播していき数瞬の後に…まるで高層ビルから巨大なガラス窓が大量に降り注いだかのような轟音をたてて、ゲッヘナの張り巡らせた結界の全てが粉微塵に砕け散ったのだ



「う、そだ…ッ…ウソだウソだウソだウソだウソだァァァ!?こ、コレは神話遺物オーパーツを一部組み込んだアーティファクトだぞ!?不可能だ!有り得ない!ど、どんなトリックを使ったジンドーッ!」


半狂乱に喚くゲッヘナだが、遂に…勇者ジンドーが目前まで迫って来てしまう恐怖に耐えられずひっくり返るように後退り尻を引きずるように後ろへ下がろうとする


「は、早く転移をしろゲッヘナァ!」


「馬鹿か!?『貪者の心臓』があっては転移など出来ない!ユージン!なんとか…ッなんとかしろ!何のために女の勇者を回してやったと思ってる!?何人分も勇者の腹を使ったお前なら勝てるだろう!?勝てると言えぇぇ!」


もはや、戦意は根本からへし折れているようだが、まだユージンは壇上に残っていた


最後、もし戦えるとしたらもうこの優男しか残っていないのだ


「いやぁ…こんなんムリでしょ。どうやってこんなイカれた強さのバケモン倒すつもりだったのかな…ちなみに、降伏とかしてもいい?」


『お前達一族が過去の勇者をどのように扱い、どんな目に遭わせたのかは全て聞いている。その上で…許すと思うのか?この俺が…お前を?生かして降伏させると?』


ユージンの額からべったりと汗が浮かんでは流れる、決して暑いからではなく…今まで好き勝手に生きて、人に好き勝手してきた自分の命が突如として風前の灯と化しているのを感じたからだ


逃げなければならない


勇者の血を何人分も取り入れたユージンの1家…その最若手である自分は一族の中でも特別強い筈だが…強いが故に実力差ははっきりと分かる


こんな怪物に…勝てる訳がない、と


過去、女勇者を一族総出で凌辱し何人もの子を産ませて来たユージンの一家だからこそ、勇者がどの程度の強さを持っていたのか記録が残っている


数で抑え込み、魔法を対策し…そして生かして拘束する


どの魔法が有効で、どの程度打たれ強く、どれ程に攻撃力を持つのか…自分達が使勇者だけとはいえ、何人分もの記録を読み漁った


だから、こそ分かってしまう


間違いない


あれは最強だ


119人もの勇者達がどんな粒揃いだったとしても…こんな怪物に勝てる奴がいるものか


ゲッヘナが言った…『最強の勇者』


その言葉の真の意味を痛感させられた


「…ッ冗談じゃない!まだまだやりたい事はあんだよねぇ俺!女の勇者抱くのは無理でもさぁ、気に入った女侍らせんの俺だけやれないの不公平でしょ!さっきの銀髪ちゃんとか最高だったのに…その2人好きにしていいから、俺はあの子だけでも連れてどっかで静かに暮らしてっからさ!」


遂には自分の主人2人を容易く売り渡す


己の欲を捨てず、その卓越した強化魔法で、まるで消えたかのような高速移動でその場から消え…気が付けばラウラの結界の側まで近寄っていくユージン


「さぁ、銀髪ちゃん!俺と一緒に行こう!さっきあんなに愛し合ったんだから、相性いいんだよ俺達!」


その透明な黄金の結界の向こう側で、最前列で勇者の姿を見ていた銀髪の少女…そう、ペトラの側に寄ろうと結界に近付き驚くペトラに結界越しに手を差し伸べ…


『何処へ行くんだ?』


「あぎッアァァぁアァァぁ!?!?」


結界にふれる直前、目の前にいつの間にか回り込んだ勇者ジンドーに顔面を鷲掴みにされて宙吊りにされていた


メキメキと強烈な力で顔面を掴まれているのか不快な音がユージンの頭蓋から聞こえ拷問にかけられたような声が響き渡る


痛みと離脱の為に全力で暴れまわるユージンを物ともせず…


『殺される直前に女の事か。お前の一族らしいじゃないか。だが…相手が悪い、悪すぎる。お前は今、この世界の誰よりも俺の逆鱗に触れた…!』


「がッ、ギっィ!!は、なせぇ!やめろやめろォ!ギィあァァァあぁあァァ!じぬ!あだまが割れるぅアァァぁぁぁぁ!」


暴れるユージンの拳や蹴りが勇者ジンドーの体に叩きつけられるが、まるで岩を草花で撫でるかのように全く微動だにせず


ユージンの額からどろりと血が流れ始める


そのままユージンの顔面を掴むジンドーの掌が光り始め、鎧から『…−−ィィィ…ィィィィィィ−ィィイイイイイイイイ…』と何かのエネルギーが流れ、溜まる音が高まり始める


「イヤだァァ!な、にをする気だァ!?じにだくなぃィ!ズルいズルいァァァ!俺だっでずぎがっでじでいいだろぉォ!」


『…最期にいい事を教えてやろう、ユージン・グリファニー。そこの銀髪の子はな…』


万力のように締め付けられ、このまま頭を握り潰さんとするジンドーのマシンボイスが、次の瞬間解除され…


ユージンは死の直前…この世界で2番目に勇者ジンドーの声を聞いた者になった


「俺の女だ。くたばれクソ野郎」


その声は、鎧に高まるエネルギーの音に掻き消える程度の小声だったが確かにユージンの耳に届き、驚愕のあまり目を見開くユージンの顔面を…



ジンドーの掌から放たれた極太の閃光が一切の容赦なく消し飛ばした



それだけでは留まらない


閃光の威力は凄まじく、顔面を掴んだまま放たれたそれはユージンの上半身を跡形もなく消し飛ばし、射線上にあった講堂の屋根を吹き飛ばし、それでも留まることなく空の彼方へ光の一線となって直進する


後には大穴が空いた講堂の天井から覗く夕日と下半身だけになったユージンが地面にゴミのように転がされるだけとなった


あまりにも一方的で、あまりにも破壊的な力


レインドールは戦慄のあまり体を震わせる


自分達は、を敵に回そうとしていたのか、と



『さぁ、次はお前達だ。王国内に忍ばせた諜報員の類は全てリストアップして、匿名で通報した。今頃王宮内で大掃除がされてるタイミングだ』



その言葉と共に向けられた視線に、ズォーデンとゲッヘナは震え上がる


ゲッヘナは懐や手にした鞄から様々な道具を取り出しては投げ捨て…目の前の怪物を処理できる己の作品を探し続けるがそのどれもが…あまりにも頼りない


どの魔導具を、アーティファクトを使っても、勝てるビジョンが思い浮かばない


しかし、この瞬間だけは…壇上で震える2人に天が味方をした





パァァンッ




巨大な風船を刺し破裂したような音が異様に響き渡り、思わず欲しく全員が顔を上げた


外から…というより、校内全体に響くような音だ


明らかに普通の音ではなく、学生を取り囲んでいる者達から壇上の者まで何事かと辺りを見回したが、さらなる混乱はその後だった


直後、シオンによって蹴破られた扉から大量の魔法が嵐のように飛来し…ラウラの結界を取り囲んでいた男達を撃ち抜き始めたのだ


「これは…ッ…」


レインドールが驚きのまま出入り口に視線を向ければ、次の瞬間雪崩のように…学院の教師陣が乗り込んできたのだ


その先頭に立っている老人、学院長ドロテオ・ガルバニアは身の丈程もある長杖を振りかざし、歳を感じさせない動きで様々な魔法を操りながら声を飛ばす


「ラウラ先生の結界に甘えるとしよう!生徒達へと巻き添えは考えなくても良い、周囲の敵を一掃するのじゃ!加減は無用!取り逃がすくらいならば息の根を止めて構わぬ!」


様々な魔法が飛び交う中でどちらが優勢なのかは言うまでもなかった

そもそも魔法が使えない状況を考えた戦力であったズォーデン達の配下と比べた場合はどうなのか…


魔法が使えるならば…学院の教員は、才能や実技で採用されている者も多い為、学院側が優勢を見せていく


元より群れて人を襲う無法者を私兵に仕立て上げていた軍勢だった為か、統率の取れた彼らに対して激戦の中次第に数を減らす形となる


次々と放たれる魔法に倒れていく賊の中…


「っラウラさん、魔法が使えます!」


「上手く行きましたわね、オーゼフ先生…!さぁ!反撃に出ますわよ!『帰還コール・シャングリラ』!」


手を伸ばし、力強く言葉にするラウラ


その呼び掛けに答えて…稲妻と共にその手に現れた黒銀の錫杖にも見える杖が、自然と彼女の手に握られる


『シャングリラ』…あの日、勇者ジンドーから送られた贈り物


それを床に軽く小突くよう叩く動作と共に…黄金の波動が周囲を染め上げ始めた


まるで金色の光の粒子が波となって何度も押し寄せる光景はあまりにも幻想的で見入ってしまう美しさに言葉を失う…が、そこで気づく


生徒達が負っていた負傷が、綺麗さっぱり消え失せた事に


衣服に染みた血の跡がなければ、この場も誰も傷一つ負っていなかったと、思ってしまう程に完璧に、瞬間的に治癒が施されていく


普通、治癒は1人の癒し手が負傷者に付きっきりで治癒の魔法を使い、傷が塞がるまでかけ続けなければならない高難易度の魔法だ


故に、才能ある者を集めて教え導く聖女教会が存在する…すべての国に聖女教会が置かれ、そして蔑ろにされず最高待遇で迎えられるのはこの為である


しかし


断じて…


周囲の人間を纒めて治してしまう波動を放ったり


目を離した隙に傷が1ミクロンも残さず消えていたりするのは有り得ないのだ


それも当然


勇者ジンドーが『歴代最強の勇者』ならば


大聖女ラウラは『歴代最高の聖女』


そこに嘘偽りは一切無い


彼女がいる場所こそが楽園であり、安全地帯となるのだから


しかし、ラウラの声は鋭く厳しい


「ジンドー!あの2人を!魔法が使えるなら転移魔法が使える筈ですわ!取り押さえを!」


その時には既に、ゲッヘナの足元に完成された魔法陣が輝きを放っていた


即座に発動できるように改良した…その言葉には嘘偽りは無かったようで、通常ならば有り得ない速度で発動された転移魔法は息を切らせて、怯えるズォーデンを巻き込んで、その姿を消してしまったのだ


「っ逃げられましたわね…!ジンドー、後を追えますの……ジンドー?」


しかし、気がついた時には…


勇者ジンドーはその場から忽然と姿を消していたのだった




ーーー



『もっと飛ばして、ザッカー!王宮の転移装置が逆算して転移魔法の反応と方角が分かったわ!あの2人の転移先はそのまま北西に直進!ゾレア平原を抜けた先よ!』


「おじさん遣いが荒いねぇ!出来る限りッ最速だよこれ!それにしてもこのタイミングで仕掛けてきてたなんて偶然も良いところだ!」


耳元に聞こえるサンサラの声に軽口を叩きながら猛スピードで平地を駆け抜ける勇者パーティの斥候、ザッカー・リオットは不敵な笑みを浮かべて真っ直ぐに走り続けていた


既に走り出してから15分ほど…これだけの長距離を走り抜けるのには普通では有り得ないスタミナと速度が必要なのは言うまでもないが、元よりザッカーはこの手の脚を使った仕事は得意中の得意である


付近の都市から走り続け、その足の速さで国境付近まで近寄っていたのだ


『ラウラからの連絡だと転移してからそこまで時間は経ってない…近くに居て良かったわね、ザッカー。その速さならもうすぐ見えてくる筈よ』


「近くって言うのかね、ここ!こんだけ飛ばしたらおじさんだって疲れるんだよ?着いても戦闘なんか出来るかねぇ…!」


それは耳を疑う情報だった


かつて勇者との仲を決定的に割いた現況と言える男二人…殺されたと思われた前宰相と大将が生きて目の前に現れたと言うのだ


目的はラヴァン王国へのテロ…いや、王位簒奪


大罪どころの話ではない


それに加えて過去の大犯罪歴もある、サンサラとザッカーが動かない理由も無かった


転移魔法が使えるようになった瞬間、元宰相ゲッヘナ・ガベルは自身の一族で秘密裏に受け継いできた高性能転移魔法で逃亡を図り、行方をくらました…というのがラウラからの情報


もう1つはさらに以外…勇者ジンドーが姿を表し、この2人を消そうとした、と言うのだ


「いやぁ、折角合流したのにナスターシャには悪い事したかな。また後日、歓迎会開いてあげるから。おじさん、良いお酒持ってるよ?」


『それはあなたが飲みたいだけだろう…まさか王宮からくすねてきたんじゃないだろうね?』


「はっはっ、まさかまさか…」


冷たい口調に女性にしては低音の声音が返ってくるのは先日迎えに行き、合流を果たしたナスターシャの声だ


元の職業故に、その当たりは信用がない…いや、別に盗み癖があるとかでは無いのだが、昔はそんな感じの事をしていたのだ


『ほら、集中なさいザッカー。そろそろ見えてくるわ。見つけ次第押さえ付けて腕や足の1つずつ使えなくしてやりなさい。必ず、私の元に連れてくるのよ?』


「こっわ。何する気なのよ姐さん…。っと、人影が見えてきたな…!ちょいと黙る…!」


夕方、夕日が沈み始めた時間…場所は国境付近に広がる「始まりの丘」と呼ばれる…全ての勇者が必ず他国へと向かう際に通る穏やかな草原と丘の広がる場所


…旅の初めの頃、自分達もジンドーと共にこの場所を通ったものだ


その感慨に耽りながら…持ち前の俊足と無音の足捌き、そして手慣れたように身に纏う外套は魔力を流した瞬間に周囲の草原と同じ景色を写し出し、自然の中にその姿を同化させていく


その視線の先には…


(ちっ…本当に生きてやがんな)


よたよたと疲れたように歩く巨漢と細身の男二人が…見間違えるはずもない憎き怨敵の姿がそこにいた


走ろうとしても脚が上がらず、よたよたと情けない足取りで草原を移動する二人の姿が


「ひぃっ、ひぃっ…に、逃げ切れたのか?クソックソッ…わ、我輩の栄えある王国の第一歩がこんな…ッ…何故離れた所に転移したのだ!?もっと近くに飛べればこんな苦労は…!」


「あの短時間で全ての距離を飛ばせる魔力など込められると思うのかね!?しかしッ…転移は成功した!魔力は持っていかれたが…くくっ!もう学院などどうでもいいじゃないか。国境に待機させたならず者共を全員王都に突っ込ませる!その時、私の転移で王宮に直接乗り込み…!」


「そ、そうであるな…!我輩達の手で直接王座を貰えば良いのだ…!だがなぜジンドーがあそこに居る!?全て…全てヤツのせいだ!」


「知らん!完全に計算外…ッ…次会った時の為にまた準備をしなければ…ひ、ひひっ…ヤツの魔導具を1つでも手に入れればそれを複製して…!」


(まーた悪い事考えてんな…。しかし、今回はジンドー君にコテンパンに追い返された、と。…気になるのは国境に待機させてる奴らか。ラヴァンに攻め入る為なら…数だけでも相当の筈。こりゃとっとと潰してやった方が良さそうだな…!)


ザッカーの目に物騒な敵意が宿る


流石にこの先の国境に居ると言っていた軍勢を相手にするのは自分だけでは不可能だ


この場で頭の2人を取り押さえ無ければ厄介になりかねない…そう思い、腰につけた短剣に手を掛け、姿勢を下げて突撃を開始しようと距離を詰め始めた瞬間…



「お、やっと来た、2人共。随分時間かかったな」



いつからそこに居たのか


1人の少年がそこに立っていた


背は高い方で、身体つきも何かしらの戦闘職を通っているのか、かなりいい


短く切られた黒髪に珍しい黒い瞳に際立って美男子と言うほどではないがどこか好印象を受ける顔立ち、少年と青年の間と言えるような男…おそらく成人からまだそこまで経っていないような年齢だ


町中でも歩くようなラフな格好で、荷物も持たずこの草原にぽつんと、ポケットに手を突っ込んだままいつの間にかそこに立っていたのだ


「なんだ貴様…ッ、いや、我輩の軍の迎えか?よくぞ、よくぞ我輩達がこの場に転移したのを知っていた!さぁ、まずは馬車の迎えを寄越すように連絡を取れ!」


ズォーデンが最初に警戒するも、この場所は既に自分が掻き集めた兵力が巨大な野営地を展開している直ぐ側だ


巡回の者が自分達に気がついて迎えに来ていてもおかしくはない


目の前の軽い丘を超えれば眼下にはいくつもの巨大天幕に無数のテントが広がる自分の軍勢が待っていると考えれば、一安心も出来る筈だ


「見たことのない顔だな、しかも若い…新入りかね?我々の事は、ちゃんと知っているのか?お前の仕える者の中で頂点に居るのが、我々2人…」


「あぁ、勿論知ってる。嫌ってほど、あんたら二人の事は知ってるから安心しなって。むしろ、俺とは久し振りに顔合わせたってのに覚えてないのか?寂しいなぁ」


少しずつ、違和感が募るザッカー


(なんだこいつ…?タイミング的にはこいつらの使いっ走りの筈だ…なのに妙だ。発言もだけど、雰囲気が明らかに違う…どちらかと言えばその辺の小悪党ゃなく、もっとヤバめな臭いがするな…!それに…ここに転移で逃げるのを知ってたみたいな感じだ…何者だこいつ?)


「いいからさっさと迎えを寄越すよう伝えに行け!馬車を2台に護衛を5…いや、6部隊は連れてくるのだ!我輩の命を狙う不届き者が居るかもしれん…!早く、走って迎えを連れて来い!」


既にその肥満体を動かすのに疲れ切っていたのか、堪えきれずに声を上げて迎えの馬車を来させるようにがなり立てるズォーデンだが、その少年は何でも無い風に手を横にふらふらと振り…


「あー、それは無理だな。だって…」





ーー全員死んだしーー




ぞわっ、とズォーデンとゲッヘナ…いや、側で聞いていたザッカーにも震えが走る


何を言っているのか、こいつは 


一国を攻め落とすために様々なツテを使って形振り構わず掻き集めた大戦力…数にして8万は下らない数を揃えたならず者達の野営地がある筈なのに


全員死んだ?



「だ、誰だ貴様…!貴様のような男など知らん!人違いなら消えろ!我々は忙しい、おかしな冗談に付き合っていられるほど暇ではない…!使える奴の顔なら全員覚えているからねぇ、もしかして無能過ぎて覚えていないのかもしれない。それなら申し訳ない事をした!次からは覚えておいてあげよう!」


ゲッヘナがあいも変わらず口の悪い言葉選びで唾を飛ばす程に声を投げかけるが、少年は全く気にした素振りもなく「あれ?やっぱ覚えてないか」と後頭部を指先で掻いている


「じゃあ二度と忘れんなよ?ちゃんと覚えて行ってくれ。俺の名前はカナタ……















ジンドウ・カナタだ」




時が、止まった


いや、止まったとしか思えない程に硬直した


(ジンドウ…カナタ……ジンドウ………ジンドー………!?ま、さか…まさかコイツ…いや、この少年まさか……!いや、外見の年齢的にはドンピシャか…!いやマジでホンモノなの!?いやでも…あのジンドーが目の前にこの2人が居たのに学院で取り逃がすなんて有り得ない…最初から自分だけでケリをつける気だったって事か…!)


ザッカーは目を見開き、口を開けて思わず声が出そうになる

この考えが正しければ…この少年が、あの漆黒の鎧の中身という事になるのだから


「有りえない…い、や、有りえない…ッ……お前が…ジンドー…!?有りえない有りえない有りえない…ぃぃ…!?」


「お、おかしな嘘は止めたほうがいい!わ、我々を謀るとどうなるかわかっているのかね!?」


ズォーデンとゲッヘナは…わなわなと震えて動けなくなっていた


後退ろうとして草に脚を取られて背中から転び、震える脚はもう立ち上がってくれない

嘘だと言いながらも、その恐怖に、「まさか」というその可能性が体を震わせていた


「……確かこうだったな。『幼い内に、あの時ジンドーをちゃんと殺しておくべきだった』…その言葉、今回は俺がそっくりそのまま返してやろう、ズォーデン・バグスター、ゲッヘナ・ガベル…お前達は…」


直後、見間違えるはずもない黒紫の光とスパークが少年の体から迸り、空間から現れた黒鉄の金属がその体を覆い尽くしていく


ほんの数秒もかからない…機械的な金属音を立てて瞬く間にその体を分厚い漆黒の装甲に包み、世界で最も有名なその姿が完成していく


最後、その頭部を完全に覆い尽くし、双眼のバイザーに光が宿った時…



『お前達はあの時、確実に…そう、確実に、殺しておくべきだった』



ーー勇者が、そこに居た



「な、んで…ここが…い、いやどうやってここまで…!」


『そんな事はどうでもいい。肝心なのは…今、ここで、お前達を確実に消し去る事ができる、という事だ。言ったはずだ…「次はお前達だ」と』


「わ、我輩達には10万に迫る大群が控えておる!き、貴様程度はこの場で擦り潰して…」


『言っただろうズォーデン・バグスター。…全員死んだ、と。ならず者や犯罪者ばかり集めてくれて本当に助かった。お陰でなんの気兼ねもなく…殲滅出来た。それに…酷い寄せ集めだった、軍と呼ぶのもおこがましい…あれで正規軍を相手に出来ると思ったのか?多少苦戦はしても、国軍に正面から勝つのは現実的じゃないだろう。とは言え…あんな数を国内だけで揃えるのは不可能だ、お前達が今まで国内に居たとも思えない。さて、どこの国を頼ったのか…何を見返りにして、あんな数の犯罪者やら、ならず者を掻き集めてもらった?』


(学院から追跡…違う、学院から即座にこの二人の拠点に先回りして軍勢全部潰して、待ってたのか!?ちっ…姐さんに連絡できりゃ…!ここで声出してもいいのか…!?顔見たからって殺されたりしないよね!?)


漆黒の鎧が悠然と2人に迫る


もはや、打てる手はなかった


転移魔法は燃費が悪い…いくら改良を重ねてもゲッヘナの魔力量では連発出来ない、まさにここぞという時のとっておきだったのだ


それも尽きた今…


「ま、待て待て待て待て待て待てぇッ!わ、分かった!我輩達が悪かったジンドー!よ、世に勇者と謳われる者が殺しはいかん!よく、よく考えるのだ!我輩の言ったことは間違っておらんと思わんか!?英雄と呼ばれるならば早まった真似はやめよ!」


もはや、命乞いしか残っていなかった


ザッカーは迷っていた


ここで法の裁きを受けさせる為に捕えるのか…だが、ジンドーはこのまま2人を始末する気だ

今、彼が言ったことが本当だとすれば、他国にラヴァン王国を侵害する意図があったのは間違いない


可能ならば絞れるだけの情報を搾り取りたいところだが…

このまま出ていってジンドーを制止して2人仲良く王宮に引き摺っていく?いやいや有り得ない


だがこのまま見過ごして2人が消されるのを見ていく?


……実際、一番それが堅実だ

元より死んだはずの大罪人が秘密裏にジンドーに消されても何も問題は無い


むしろ「長きに渡る犯罪を重ねた害悪が学院を占拠しようとし、勇者に刈り取られた」という形ならば誰もが納得する筋書きだが…


『残念だが、俺は自分で勇者を自称したことも英雄と名乗った事も無い。お前達が言った事だろう?…俺を究極の破壊者と呼んだのは。その通りだ…俺は全てを破壊して進む。この俺の障害になるならば、害となる因子は根こそぎ滅ぼす。俺の望みの為に、立ち塞がる物は悉くを潰して押し通る。簡単だ…お前達は、その「怪物」を敵に回して殺された…それだけの話だ』


「ま、待つんだジンドー!そうだ!帰る手段!我々はお前の元の世界への帰還手段を知ってると言っただろう!?我々を殺せばそれも永遠に分からないままになる!それでもいいのか!?」


『ああ、帰る手段か。残念ながら…それならもう知っている。お前達の口先だけの大嘘ではなく、間違いない方法を、な。お前達の協力者もいずれ分かる…もう、用はない』


絞り出された言葉を片っ端から否定し、叩き切るジンドーはもはや止まることは無いのだろう


とうとう二人の目の前に立ち塞がるジンドー

その背後の空間が歪み、金属の柱のようなパーツが現れたると、それが彼の右肩上の後ろに機械音を立てて…接合される

鎧に刻まれた金色の光のラインの上にドッキングされたそれが、まるでレールの上を動くようにジンドーの肩の上まで動けば、1.2mほどの金属の柱に見えたそれは縦にガパッ、と口を開くようにパーツが展開されで


漸くそれが「砲身」だと気がついた


その縦に開いた砲身内に黒紫の波動が猛烈な勢いで収束していき砲身そのものがスパークを放ち始め、空気が軋み風が悲鳴を上げるような不吉な音が彼を中心に響き始める


『……「魔砲・レクイエム」…これがこいつの名前だ。お前達2人の死を、お前達に潰された全ての勇者の魂に捧げよう。これが、俺の…勇者俺達の怒りの一撃だ…!地獄の果まで消し飛ぶといい…!』


「ヒッ」


「ま、待っ」


(うおヤバっ!?)


あまりにも常識の埒外な魔力に呆然としていたザッカーが焦ってジンドーの背面側に向かって飛び込む


次の瞬間



黒紫の極大の閃光が、炸裂した



超極太のレーザービームがジンドーの正面に存在するあらゆる物を跡形もなく消滅させていく

破壊の嵐が周辺を粉々に粉砕し、余波だけで地は裂け、空に少しかかった雲はあまりの衝撃と風圧に掻き消える


ザッカーがその最期の瞬間を見たのは…光とともにズォーデンとゲッヘナが蒸発するように消し飛ぶ所であった


レーザービームが直撃した大地は…凄惨な破壊の爪痕が刻まれていく

どのまで行くのか、大地の奥深くまで貫き、それが衝撃波で拡張され正面数kmに渡って巨大で深淵まで続きそうな渓谷へと変えられていき、レーザービームが収まった直後、エネルギーが通った渓谷のそこからまるで噴火するかのように…大爆発を引き起こした


まるで地獄か、この世の最後に見る光景と言われても納得できる、夕日よりも周囲を赤く染め上げる大爆発の爆炎は遥か先まで連続で大爆発を繰り返していき、それが地響きと地震と化して大地を揺らす



これが勇者ジンドー



彼は愛した少女の1人に自分をこう称した 


 『全てを壊せる、壊せてしまう』


その言葉に、誇張も偽りもない事が、この場で証明されていた


全てが収まったその先は…地形そのものが変わってしまっている


大爆発の煙がもうもうと遥か先まで立ち上り渓谷内は岩まで溶けてマグマと化しているのか、地獄の釜のように赤々とした光が底の方で揺らめいている


(…ッ…滅茶苦茶するなぁジンドー君…!しかも、全身全霊で思いっきり始末した…!ジンドー君…歴代の勇者全員の事まで気にしてたのか…)


ザッカーはその光景に戦慄しながらも、彼の一撃を放つ前の言葉に思いを馳せる

ジンドーの感情が丸々と現れた声音を、初めて聞いたが、それは溢れんばかりの憤怒と悲しみに満ちていたように聞こえる


…彼が勇者の霊廟を破壊し、その遺骨と遺品を持ち去ったのも、無念の果に異界で果てた同胞を気にしてのこと


彼はやはり…仲間に心を寄せられる男なのだろう


その出会いやすれ違い、今塵も残さず消し飛んだ2人が居なければ、ジンドーはもしかしたら最初から…自分達と最高のパーティになっていたかもしれないのだ


その感動を、仲間達の所に早く持ち帰りたいザッカーではあったが…


その前に1つ、問題があった











『……そこに居るのは誰だ?』









ーーー避けた時の動きでバレてるじゃん












〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


【後書き】


「…えっ、こやつ死ぬのか!?」


「さ、流石に死なないのでは?ほら、カナタは結構その辺考えてると思いますし…」


「……安らかに……眠れ……」


「…まぁ、これで殺っちゃったら逆に超展開ではあるな」


「超展開過ぎます!?」






「なぁ、なんか俺が撃った魔砲の名前、どっかで聞いたことあんだけど…」


ほら、デカい虫倒して地球を防衛するゲーム、かなり好きなんだよね。それに出てくるめっちゃデカい戦車の主砲であったじゃん。あれあれ


「あれ実用性皆無だろ!?弾速遅すぎて当たんねぇよ!?」


ひたすら広いだけの平原ステージで空爆落としまくりながらカエル型宇宙人を撃ち続けるミッション…あれ大好きなのよ


「変態すぎる…!そんな残念武器が元ネタなんて、なんか嫌だなぁ!」

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