第22話 弟子と弟子

「なぁ、歩きながらでいいからさ、良かったら少し話さない?」


「…」


「僕達も冒険者を目指してんだ!もう銅級まで上がったからいっぱしの冒険者だし、良ければいろいろ教えるよ」


「…」


「女だけだと危ないに決まってんだろ、俺らといた方が絶対いいと思うぞ?」


「…」




ユカレスト東門…


ロッタス山に向いた街の出入り口であるそこは、日付けが変わると同時に門が閉ざされる決まりだ


まだ日没前と言うことで、そこを行き交う人々の数は多く、馬車や徒歩、馬や魔獣に乗った者まで様々でありこの街への往来の多さを物語っている


魔物の襲撃に備えられた外壁に取り付けられた門は大きくそして非常に分厚く出来ており、木製の素材は使われていない純金属製であるその門は魔神大戦の最中に何度かの修復こそされたが、この街の中に決して魔物の侵入を許すことは無かった程の堅牢な門である


そんな門の下に、今まさに歩いて通ろうとしている三人の少女…とその後ろをついてくる五人の制服姿の男子の姿があった


何やら熱心に話しかける男子生徒達に対して三人の少女…シオン、マウラ、ペトラの態度と表情は非常に鬱陶しそうに眉を顰めており、制服のスカートから除くマウラの尻尾もへんにゃりとくたびれている


少し遡ること数十分前…三人はギルドに持ち込まれた温泉不調の情報を得るためにロッタス山へ向かいだしたのだが、この時冒険者ギルドから出てくるのを見ていたのがこの五人の男子生徒なのであった


彼らは五人で冒険者ギルドにパーティーとして登録しており、貴族などでは無いものの軍の高官を父や祖父に持っていたり銀級、金級の冒険者を父に持つ生徒であり腕に自信のある生徒達であった


その腕を試し、名を売るべく学生時代からこうして冒険者活動に精を出しているのだが、三人にとっては運悪く、彼らが自由時間にギルドへ向かったところを鉢合わせてしまったのである


しかし、彼らにしてみればこれほど運が良いことは無いだろう


自分達の得意な冒険者活動に興味を示す三人の美少女…


それも今年入学した中でもっとも男子達を騒がせている大注目の少女達だ


是非ともこの機会に仲良くなっておきたい、ひいては自分たちの格好いいところを見せつけて好印象を抱かせたいのは思春期男子なら仕方のないものだろう


偶然にも彼女達が街を出て魔物や魔獣も出るロッタス山の方向に歩いていたので「護衛をしてあげるよ」とあくまで自分たちが着いていってあげる流れでくっついてきていたのだ


しかし、そんな下心見え見えな上に恩を着せてくる言い方の男子達にいい感情が向くはずも無く、現に何度も「結構です」「お主らには関係なかろう」「……邪魔」と足蹴にされてもめげずに着いてきているのだ


今では何を話しかけられても無視の体制で進んでおり、それでも嫌がられているなどとは思うことも無く彼らは話しかけてくる…


三人揃って「なんでこうなった…」と内心重たいため息をつきながら、ロッタス山の麓…温泉の源泉が湧き出すという一角を目指して進んでいくのであった





ロッタス山の麓付近までは別段何か起こるわけでも、もっと言えば同じく麓を目指す冒険者が何パーティーも居たことから魔物が現れても戦うまでも無く事は終わっていたのだ


ロッタス山は中腹程までが豊かな森林地帯となっており、所々にむき出しの岩場が点在する立地になっており、中腹から上は大昔に固まった溶岩に固められ、火口に近いこともあり赤茶色の岩や黒い溶岩石が積もった岩山のようになる


目的の場所は森林の中に開けた岩場となっているが…


「ここだけでも結構暑いな。流石火山の麓と言うべきか…冷暖房系の魔道具でも買うべきかのぅ」


「とはいえ、我慢できない訳ではありません。…と言うより私は魔法属性的にもそこまで暑くは思いませんが」


「……制服嫌…ごわごわする……」


「というよりも、だ。ここまで進んできてまだあやつらは着いてくる気なのか!?流石に鬱陶しいにもほどがあろう!?」


「……ずっと尻尾とか見てきてる……嫌い…」


「確かに…特に何か接点があるわけでも無いので変ですね…。その気は無い、と伝えてる筈なのですが…」


そう、気になるのは数メートル後ろをしっかりとついて回る男子生徒達だ


もはや名前すら興味も無いので聞いてなかったが、彼らからすれば、そもそも接点を作るためにくっついているのだからシオンが首を傾げるのも分からなくは無いだろう


「あ、暑いな。よ、良ければローブとか預かろうか?ほら、僕達はこんな暑さ慣れてるからさ!」


「そ、そうだな。あんまり無理に急いで進まなくてもいいんだぞ?い、一緒に休憩でもどうだ?」


そんな彼らはと言うと……暑さに加えてシオン達の歩くペースが思いのほか速くて少しへばり始めていた


そもそも銅級になって間もないような彼らはこのような違う環境での探検経験も一切無く、足場の悪い岩と木の根が絡んだようなロッタス山の地面を速いペースで歩くのに少々無理があった


普段は王都の近くの草原で小さな魔物や魔獣を五人がかりで倒している彼らにはあまりにも場違いな場所なのである


当然、シオン達三人はカナタとの度重なる訓練など鍛えられており、家の隣の森林がこの世界でも有数の魔物群生地…そこの表層とはいえ庭のように駆け回る彼女達には散歩程度にも思わない道程なのだ


ついて行けないのも当然である


今は天も樹木の葉で隠されているが、もうすぐそれも開けて岩場が見えてくるはずである


シオン達が暗くなり始めた周囲を所持していた魔光ランタン(火属性の魔石を赤く赤熱させて発光させる火を使わないランタン)で照らしながら進んだ先がようやく開けていき、照らし出された目的地である岩場は…









そこら中に冒険者の死体が転がる凄惨な光景で彼女達を迎えていた


「なっ…んですかこれ…!そこまで危険な魔物はいないと聞いていましたが…!」


「だめだ、死んでおる…しかも、どの死体も武器を抜いておらん。出会い頭に気付く間もなく、一撃で殺されておる…」


流石に動揺を隠せないシオンとペトラ


見ればギルドで見かけたような格好の冒険者が多く、そのどれもが何かに切り裂かれ、焼かれ、手足の一本や二本は欠損しているよう死体が殆どであった


あまりにも惨い惨状を前に三人も動揺を隠せず、特に匂いに敏感なマウラは立ちこめる人肉の焦げた臭いと血の臭いに、いつもの眠たげな表情を歪めている


言葉を詰まらせながらここら一体の魔物の情報を頭に思い起こすシオンだが、いかに銅級とはいえここまでの人数を血祭りに上げられる魔物はこの一体には居ないはずなのだ


そんな中、マウラが一番近くの冒険者の死体に視線を向け…


「……食べられてない……殺されただけ…?」


死臭と強烈な血のにおいに鼻を摘まみながらそう呟いたマウラ


そう、魔物の大半は人を殺すのに理由がある


捕食、繁殖、寄生、営巣…何かしらの目的のために人を襲う筈なのだが、どの死体も攻撃以外の手を加えられていないのだ


まだ森の中でひぃひぃと歩いている男子達に目もくれず…







「ッ避けろ二人とも!上におる!」






ペトラの張り上げた一声にシオンとマウラは、その判断を全く疑うこと無く、確認もせずその場を横飛びに離れていき…


直後、三人が先ほどまで居た場所に赤黒いオーラを纏った闇色の炎球が上空より飛来し、彼女達が飛んだ直後に地面に落ち、岩場の地面を木っ端みじんにするような爆発を巻き起こした


「何者ですか!攻撃をされる理由はありませんが…ッ」


飛び避けたシオンがすぐさま、右手を光らせて魔法袋から普段の訓練で使い慣れた黒い無骨な槍を取り出し、一回しして上空にいるであろう相手に声を張り上げる


マウラとペトラもそれぞれの武装である弓とガントレットと一瞬で装備して構えているが、相手を見上げたペトラの目が驚きに見開かれる


なにせその姿は……






「お、お主…………………まさか魔神族か…?」









真っ青な肌色の、一本の鋭く伸びた角が生えた、伝え聞いたとおりの姿の相手がそこに居たのであった



「よく避けたな、女三人。ここに来た連中は全員、俺に気付くことも無く死んでいったが…面白いな」


青の皮膚に40代程に見える風貌、オールバックにされあ赤茶色の髪にダークブラウンの現代の軍服に似た服装をした魔神族の男は、事もなげに周囲の冒険者を自らが始末したことをこぼしながら興味深げに三人の少女を見下ろしていた


「ギデオン様、我々が始末いたしましょうか?あのような小娘であれば数秒時間を頂ければすぐにでも…」


「えー、結構タイプなんだけどなー、あの子達…なぁギデオン様、殺すくらいなら俺貰っちゃダメっすか?」


その両側に控えていたのがまだ若く、少年とも青年とも呼べそうな魔神族の若者であり、一人は生真面目そうに鋭くも見下したような視線を三人に向けており、

もう一人は軍服もどきを少し着崩した格好で好色な視線で三人を見つめている


ギデオン、と呼ばれた男そんな二人にあきれたようにため息をつきながら


「馬鹿者どもが……見て力を測れんのなら近いうちに死ぬぞ。…見た目の可憐さに騙されて痛い目でも見てくるといい」


「…ッあんな少女に俺達が負けると言いたいのですか?」


「いやぁ、むしろその可憐さに胸が痛いくらいだなぁ、オレ」


「そういうところがまだ若いと言われるんだ、ゼウル、バウロもな。そんな有様では我々……『三魔将』の弟子は名乗れんぞ?」


「っ!!」


魔神族三人の会話に目を剥いたのはシオン達三人の方であった


(三魔将!?なぜそんな化け物がこのような場所におる!)


(…っ私達で対処できる相手とは思えません…ッ!退きますか…?)


(……隣の二人も……けっこう危ないかも……)


(とにかく二人とも!ここは撤退あるのみだ!いくら戦いの訓練はしておっても三魔将などと打ち合えると思うほど自惚れてはおらんな!?)


(同感です、カナタが…いえ、欲を言えばここはラウラさんも居てくれればと言ったところですが…!)


視線と耳打ちのような小声で意見をまとめる3人だが、既に青年の魔神族2人は地面に降りてこちらへと向かってきているところであった


ゼウルと呼ばれた魔神族は薙刀にも似た、棒状の柄の先に刃が着いた片刃の槍とも言える武器、グレイブを持っており、もう1人の着崩した魔神族の青年、バウロは両手に短剣を持つ



「のう、お主ら。別に小娘3人逃がしたところで問題はなかろう?あのギデオンという男に言っておった通り、我らなど取るに足らん小娘ではないか…?」


そんか彼らに一応の戦闘の意思がないことを伝えるペトラだが、それに答えたのは奥に居たギデオンだ


「ならん。我々がここに居ることを…いや、この世界に来ていることを知っているのであれば何者であろうと消す。ここを調べさせるわけにはいかないからな」


「その通りだ。お前達はここで始末する。バウロ、捕獲は無しだ、いいな?」


「はいはい…はぁ、めっちゃかわい娘ちゃん達なのになぁ」



意見はどう転んでも覆らない雰囲気にペトラも隠さずに舌打ちをしながら弓を構える


戦いを決断した3人の体からそれぞれの色の魔力が色彩を露にしながら噴き出し始めるのを見れば、バウロと呼ばれた青年の魔神族とゼウルの2人も軽く目を見張りる


あの攻撃を避けただけでもただの少女とは思えないが、無血が無理と悟るや否や色付きの魔力を纏い始める少女達は明らかに「魔法が得意!」程度の子供自慢ではない腕前だろう


敬愛するギデオンの言葉に嘘はないことを思い知り、ゆっくりと得物を構えていく


「…面白い!さっきまでのカスのような男達とは違いそうだ!行くぞォ!」


ゼウルがドンッ、と地を砕く踏み込みで一瞬にして距離を詰め、振りかぶったグレイブの刃をそのままシオンに振り下ろすが、その場で勢いを着けるべく回転したシオンの速度を着けた槍がグレイブに振り抜かれ、激突


耳をつんざくような金属音と火花が散り、槍とグレイブが押しつ、押されつといった具合でせめぎ合う


「ッ……重たいです…っ…けれど!」


火力と力自慢のシオンが地に足をめり込ませながら僅かに後ろへ押されるほどの一撃に彼女も表情を歪めるが、さらに周囲を紅く塗りつぶすような出力の魔力を放ち、纏ったシオンの振るう槍はグレイブをゼウルごと押し退ける形で振り抜かれる


振られた槍の勢いのままに後ろに飛んだゼウルだが、空中で体勢を整えて事も無げに着地してしまい、少し息を乱したシオンも分の悪さを感じながら再び槍をゼウルに向けて構える


「シオン、今回は絶対に出過ぎるでないぞ。マウラ、お主はそちらの軽薄そうな男だ。両手に短剣であれば恐らくはスピード重視の手数で来るスタイル…抑えられるか?」


「ええ、今回ばかりは無茶は禁物かもしれませんね。ペトラ、私もあの力で押されてはいつ抜かれるか分かりません。気をつけてください」


「ん……何とかしてみる…」


「よいか?まずは様子を見る…カナタのプレゼントを使うのは約束通り、追い詰められたときだ」


視線も合わせずに行われる作戦会議に簡潔に方向性を纏めたペトラはそれだけ言い残すとぴょん、と飛び跳ねて数メートル後ろへと下がり、弓を持つ左手に新緑色の魔力に輝く魔方陣を紡ぎ始める


それを見て最初に動いたのは両手に短剣を構えたバウロだ


足音の一つも感じさせない踏み込みで姿がかき消えるほどの速度で動くと一呼吸の間に20mはあったであろうペトラの真横に移動してその刃を振りかざしていたのだ


それに対し、ペトラは視線だけがバウロの方向を見つめている


目で見えているが反応できない…







と言うわけではない


防御の必要がないからだ


そのバウロのさらに真横に瑠璃色のスパークを放つマウラが拳を引き絞った格好でそこに居るのだから


バウロの振りかざした刃が振るわれるよりも先に、黒鉄に覆われた拳がバウロ目掛けてためらい無く、風すら置き去りにする速度で振り抜かれ…


「うおっ!?あっぶねぇ!」


間一髪、という距離でこれを仰け反り躱すバウロはその姿勢のままバック宙で一飛びに距離を取るが、これに追撃をかけたのがペトラ


いつの間にか弓を引き絞った格好で彼に狙いを定めた彼女はまだ姿勢を回復させていないバウロに向けて容赦なく追撃に入る


「『妖精フェアリー流弾バレッジ!」


深緑色の光りと共に放たれた魔法の矢弾は撃ち出された瞬間に十発の光弾に分裂、それが意思を持つかのように発射の速度のままバウロに向かって飛来したのだ


「避けるな!撃ち落とせバウロ!」


ゼウルの怒声が響き、それ以上の追撃を止めさせるべく右手に集めた赤いオーラを纏った闇色の光に編み出した魔方陣を重ねていく


「まずは後ろの小娘!貴様からだ!烈闇黒弾ダークネスアサルト』!」



ゴルフボールのような大きさだった光は魔方陣の中で一瞬にして2メートルを超える大きさに膨れ上がり、即座にペトラに向けて発射


放たれた魔法はその威力故に地を削り、螺旋の波動を放ちながらペトラへと飛弾…しかし、その間に立ち塞がるシオンはすぐさまその魔法へと掌を向け迎撃の意思を示す



「させません!『烈紅蓮弾ヴァーミリオンアサルト』ッ!」


飛来するゼウルの魔法と同じ系統の魔法…彼女の場合、それは太陽のような光を放つ灼熱の炎弾となり、シオンとゼウルの真ん中といえる距離で2つの魔法は衝突




直後、大爆発を引き起こす




閃光と爆風、粉塵がゼウルとシオンを飲み込み、強烈な衝撃が周囲を地鳴りのように振るわせていく



「おいおいマジか!?だぁくっそ、こっちもこっちでめんどくせェ!」


ペトラの放った光弾に追われながらその光景を見ていたバウロも流石に驚いた様子だ


ゼウルの力をもって振られたグレイブの一撃と打ち合う力を持ちながら、彼の即席とはいえ攻撃魔法を相殺できる威力の魔法を即座に迎撃として撃ち出す魔法の使い手というのは人間ではほとんど居ないような戦闘スタイルだ


その事に驚きを隠すこと無く、迫る光弾を目に求まらぬ速度で振られる短剣が両断…叩き切られた光弾は、パァンッ、と小さく光を放って次々と消滅していく


しかし、バウロに迫るのはペトラの放った魔法だけでは無い


’’バチッ……バチバチッ’’


スパークの迸るわずかな音がバウロの頭に危機感を走らせる


「そこか、子猫ちゃんッ!」


「っ!!」


経験と勘、感じ取れる気配から見ることも無く自身の斜め後ろ…死角に向けて振られた短剣は今まさに雷撃を纏った掌底を放とうとしていたマウラの首を正確に捉えており、その白い肌に短剣の刃先が当たるのはもはや避けられないだろう


マウラの表情が予想外の攻撃に驚きに染まり、急いで回避を行うが攻撃の姿勢からは直ぐ様回避には繋がらない


刃が彼女の首の皮膚に食い込むその直前…






カクン、と刃先が滑るように彼女の首筋の薄皮一枚手前で逸れ、空振ることとなる


「ッなんだ今の…?ちゃんと首すっぱりのコースだったんだけどなぁ…」


いつものチャラチャラした空気を引っ込めて、短剣から無理矢理避けようとして崩した姿勢を戻しているマウラを観察するバウロだが、よく見れば彼女の体の表面は淡い緑色の風が時折わずかに見えており、その魔力の色とペトラの先程の攻撃魔法の時に見えた魔力光…


「あの銀髪ちゃんか!なるほどねぇ、あの子が支援と援護…あと戦況を纏めるブレインか…」


そう、これはマウラが戦闘前から自身とシオン、マウラの二人に施した空気の防壁である


翠緑障衣エメラルドクロス』は人や物に纏わせる防御魔法であり、分厚い空気の壁を一枚の布状になるまで圧縮させ、防御の力をこめる魔法だ


空気故に対象の動きを阻害することは無く、マウラは相当強力な魔力をつぎ込んでいるから彼女の魔力光が時折淡く漏れてしまうが本来は無色透明で敵に気付かれにくい


まるで分厚く、滑るゴムのように当たるものを弾き避けてしまうのだ


(と、いうことは………………だよねぇ)


そう思うバウロが爆風の方向を見れば案の定、あれ程の爆風と衝撃の中に居ながらも髪とスカートを靡かせるだけで、傷1つ見えないシオンの姿が晴れた煙の中から現れる


恐らくあれ程の魔法と力の持ち主なら素で受けても問題はないのかもしれないが不自然なほど明らかに無傷だ


当然、ペトラの魔法が彼女を守っているのだろう



そして、その対極に位置するゼウルも、魔神族でも頂点の力を持つ三魔将の弟子とされているのは伊達ではなく、その強靭な魔神族の肉体も手伝ってあの程度の衝撃や爆風はそよ風のようなものだ


堂々とシオンを睨み付ける形で彼も晴れゆく煙の中から姿を表していく


それぞれが目の前の相手と正面を向いて対峙する中で、ただ一人上空から戦場を見下ろすギデオンはシオン、マウラ、ペトラの三人の戦う姿にどこか嫌な既視感を覚えるのであった



凄まじいパワーで近よる敵をなぎ倒し、突如として魔物や陣中に現れる速さ、多数の魔道具による多彩な補助や猛烈な遠距離攻撃……


まだ彼自身、気付いていない事ではあったがその既視感の奥にあったのはまごうこと無く









魔神族を蹂躙する勇者ジンドーの姿そのものであった

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