第15話 ボーイズ・ミーツ…?


''ニコニコ''


「………」


''ニコニコニコ''


「………………」


''ニヨニヨニコニコ''


「……な、なんか自分の顔に付いてますか」


職員室…と言っても、臨時教師の為に拵えた休憩スペースのような場所に戻ってきたカナタだが、何故か先程からこちらを満面の笑みでラウラが見つめているのだ


それはもう、甘いものを口一杯に放り込んだような笑みだ


その笑顔は、持ち前の美貌と相まって、まるで絵画に書かれた聖人のような美しさなのだが、何かしらの理由があってこちらを笑顔で見ていると考えると非常に恐ろしい…


ついに耐えきれなくなったカナタが訊ねると「ふふっ」と吹き出すように笑い出すと


「しっかりと守りましたのね、あの3人のこと」


「当たり前です。それが教師の仕事ってもんじゃ…」


「そうではありませんわ。私、こう見えても人の感情を見抜くのは得意ですの。貴方、結構上手に隠すので最初は見えませんでしたけれど…あの3人を守る時はしっかりと見えましたわ。貴方のが、ね」


「………見てたんですね。気づかなかった」


確かに、カナタは教師という仮面をかぶって冷静に諌めたように見えたが、彼女達が貴族に言い寄られて、そして掴まれそうになった時は頭に血が上ったのだ


言い寄られるのも面白いとは思わないが、そこは彼女達の意思がある


自分という一個人に縛り付けたままでは学院に入学を進めた意味がない


事実、カナタは最初こそ魔法など使わずに収めようとしていたのだ


だが、つい身体強化に魔力を回してしまった


自分がここまで彼女達にどっぷり心を占領されているのか、とその時ようやく気が付いたのだ


「いいことではありませんの?恋愛の有無に関わらず、大事な人を守ることに『邪』も『悪』もはありませんわ。むしろ、最初に会ったときよりも好感が持てましたもの、カナタさん」


やはり、そうだ


勇者として魔神を討伐に向かう旅の最中も、彼女は全身鎧越しのカナタの事を感じ取っていたのだ


寂しい、辛い、苦しい…そう思った時は必ずと言っていいほど彼女は触れられるほど側にいたのだ


「……敵わないな、ラウラ先生」


恥ずかしげに苦笑するカナタの言葉は、そんな旅の時の事まで含めた一言なのであった






「ところで、彼女達に指導を施したのは貴方と聞いていますわ?どのような稽古をしたらあの様な強さになりますの?」


「うっ…い、いや、元々才能があってですね…その、みるみる内に成長していったもので…」


まさか大地を砕くほどの熾烈な模擬戦で幾度となく地に伏せている、とか


技のイメージを伝えて無属性の魔力で再現したものを見せたり、とか


大森林の魔物を練習台に狩りをさせまくった、とか


そんなことを彼女に言える筈もない


間違ったことは言ってないカナタだが、言わない情報が殆どである


「成る程…つまり…ザック君を止めた時に見せたカナタさんの身体強化魔法、勿論使


そう、見られていたのなら分かるだろう


ザックは別に弱かったわけではない


あのクラスでも上位の強さを持つ程度に鍛えられているのは間違いなかった


国の軍を預かる将軍から直接、代名詞といえる魔法の身体強化を教えられ、自らの才能も合わさって相当な強さだっただろう


しかし、そのザックをカナタは


彼を遥かに上回るパワーで押さえ込んだカナタの身体強化は、そんなザックのパワーを平然と凌ぐものだった


まさか、そこまでの魔法を「得意でもなんでもない」とは言えないだろう


そして、得意な魔法は弟子に伝えるものなのだ


故に、あの3人の少女も身体強化を使えるのだ、と


彼女はそう言っているのだ


「…はい、使えますよ。。まぁ、まだまだ鍛えてる途中ですけどね」


「まぁ、厳しい師匠ですこと。ふふっ」


冗談めかした言葉に上品に笑うラウラ


しかし、カナタの事をさらに解き明かそうとするラウラの質問責めは、まだ少し続くことになるのであった


ーーー


『クラス・アーレ』の教室内は少しの間静まり返っていた


ザックはこのクラスでもかなり強いのは入試の時に皆が分かっていたのだ


師事している者も大物で、実家も伯爵家


増長し、自分こそが正しいのだ、と


そう付け上がるのも無理はないだろう


だからこそ、あの騒ぎの時に誰もがキレたザックを止めることもできずに離れようとしたのだ


あのまま暴れさせていたら教室もぐちゃぐちゃになり、近くにいた3人の少女も怪我をしていただろう


それを



新任の普通の教師と思っていた若い男が片手で止めて見せたのだ


ザックの体からは身体強化に使われた魔力が光子となって吹き出していたのだから、まず相当な力が入っていたのは間違いない筈だった


それを、なんの苦もなく抑え込み、諌めてしまったあの先生は一体何者なのだろうか…と


教室の誰もが思ったのだ


そんな中、何事もなかったかのように立ち上がったのは騒動の中心にいた3人組で


「さて、帰るかの」


「ですね。学食、というのに行ってみましょうか」


「…ごはんっ……」


自然な流れで教室を出ようとする3人


それを止めたのは…


「お、お待ちくださいっ!そのっ、お話しませんかっ?」


王女マーレその人だ


ここで口を開いたのはシオン

入学前に散々頭に入れた対貴族マニュアルが役に立つ時が来たのだ、と少し楽しんでいて


「何かご用だったでしょうか、マーレ王女?先程の事でしたらどうかお気になさらずに、私達の事も気に止めずとも構いませんので…」


「そ、そうではなくてですねっ…その、止められなくてごめんなさい。ああいうのは注意しないとダメ、ですよね」


「マーレ王女がお気になさる必要はありません。あまり我…んっん…私達に構うと先程の……生徒の癇癪に巻き込まれてしまいますよ?」


ちょっとだけ普段の癖が出たペトラが咳払いをしながら口調を整える


そして少し言い淀んでから、名前も覚えられていないザックに全男子が少し同情してしまいながら


「まずはっ!その敬語をやめましょう!ここでは王女なんてなんの意味もないのです!お友達っ、お友達になりませんかっ?」


マーレも今までで見たことがないタイプのシオン達に興味津々なのだ


是非友人に!そう言って詰め寄るマーレに少し押され気味の3人は『うーん』と困ったような声を漏らす


正直、貴族の友人など作らないつもりだった3人は、突然貴族を飛び越えて王族の少女から友達の申請を受けるとは思っていなかったのだ


しかし、マーレが物珍しさやアピールの為にこのようなことを言っているのではないのは、見れば分かる


真っ直ぐな彼女は『王女として接さないで』と言いながらも王族として場を収められなかったことを謝罪までしているのだから、そんなことを思う筈もない


そんな彼女の申し出に、『王族と関わると面倒だから』いう理由でばっさり断るのも味が悪い…と困った末にお互いアイコンタクトを取りながら導きだした3人の答えは…


「「「……お試しからで」」」


と、なったのである


ここに、彼女達のお友達1号(仮)が誕生したのだった


ーーー


学院の食堂は貴族も庶民も安心して利用できる共同のスペースだ


値段も基本は一律であり、決して高いものではなく、その中で若干の値段の高め、リーズナブルが分けられるような食事であり、決して貴族だけが高価な食事をするのではなく、少しの奮発で全員が問題なく同じ食事に手が届く…限りなく貴族庶民の差別を無くした場所だ


「なるほどっ、皆さんはその師匠さんのおすすめでこの学院に入られたんですねっ」


''もっもっ…''


その後、友好の第一歩として3人に着いて食堂までやって来たマーレのトレーの上には、その細身な体のどこに入るのか、と思われるほど大量の野菜、魚、お肉が詰まれており、上品に食べている筈なのに何故か猛烈な速さで皿の上から食事が消えていく


対して向かいに座るシオンとペトラは面白いように消えていく料理を見つめながら、うんうん、と頷く…


そして、マーレの隣に座るマウラのトレーに…同じ量のお肉やらお肉やらが山積みにされている


こちらも早送り映像でも見ているかのようにもりもりと食い尽くしていき、無口と饒舌の2人が揃って大食い勝負のように皿を空けていく光景は、シオンとペトラの2人も物珍しそうに見つめてしまう


そして、付近のテーブルには王女マーレと、共にいる3人の美少女に惹かれた少年達が揃って彼女達の会話に耳を傾けているのだ


全てはマーレ王女と…そして3人の少女達と何かしらの接点を作るための健気な努力である


「我らはかなり田舎…というより森の近くに住んでいてな。何かを学ぶ機会もそう無いのだ。すべてその師匠から教えてもらったことばかりでな」


「なるほど…あれ?と言うことは師匠さんと一緒に暮らしてるんですか?」


「ええ。三年前に拾っていただいてから、ずっと共に暮らしています」


家族ではないが、家族のように師匠と過ごす4人の少女…他にあまり無い境遇の話にマーレも夢中で頷く


しかし、「あれ?」と首をかしげると


「その師匠さんは女の人ですか?一緒に暮らしているとなると…」


「いえ、男性ですよ?」


当然のように答えたシオンの言葉に周囲の男子達の表情がピシリ、と固まる


まさかの他の男と同棲…


いや、しかし大人や老年の師匠で父のように…そう暮らしているのだろう、と思うものの…


「では、お父さんのような方なんですねっ。おいくつの方なんですか?」


「む?確か我らが12歳で出会ったとき、あやつは14歳だったか?…となると…2つ歳上だな」


まさかの、少しだけ歳上の男!


手を付けたい美少女達にまさかの男の影が見えてしまい、周囲の男子達が持つフォークやスプーンがメリメリと悲鳴を上げる


「わぁっ…そ、そのっ、関係とかはっ?師匠さんってだけなんですかっ?」


やはり、お年頃のマーレも気になるのはそこである


3年も一緒に暮らしていて、さらに魔法や様々なことを教えてくれたちょっとだけ歳上の師匠さん…


もしかして、あるのでは?


と気になっちゃったのである


「……ない……でも…」


「ええ。ありませんね…ですが…」


ないのぅ……だが…」


やたらと「まだ」を強調する3人にマーレの顔は既に真っ赤だ


「「「絶対に逃がさない」」」


笑顔の奥に何やら触れてはいけない炎を感じてしまうマーレだが、同年代の少女達が持つまさかの鮮烈な想いに「あわ…あわ…っ」と、なんだか興奮を隠しきれない


そういうお年頃なのだ…


「そ、そのっ、もうちょっと深いお話を…っ」


夜の女子会のようなノリになり始めたテーブル


周囲の男子も「もう聞きたくない!」と意気消沈し始めた矢先


そこに偶然、現れたのは、マーレと同じ橙色の頭髪をきっちり短く切り揃えた美丈夫…



「ん?マーレ、ここにいたのか。まだおめでとうを言ってなかったな」



そう、彼の実の兄…レインドールであった


幸い(?)にも先程までの3人の会話は聞こえていなかったようだが…


「入学おめでとう。これでやっと、成人王族の第1歩を………………」


テーブルに近寄り、お祝いの言葉をかけようとしたレインドールは気づいてしまう


同じテーブルに座り、フォークに刺した焼き魚を口に運ぶ、深紅の髪の少女の姿に


「ま、ま、マーレ?その…彼女達は?友達かい?」


図らずも、突然目の前に居たのは、試験のあの日に一目惚れしてしまった美しい少女


服装は学院指定のボタンシャツにスカート、ネクタイ、ローブと他の女子達と同じタイプの物だが、むしろその姿が新鮮でとても映える


彼女の落ち着いた視線がこちらを捉えると、社交や美人慣れした筈のレインドールが口どもりながら自然を装ってマーレに話を振り


「はいっ!同じクラスでお友達になりました!とっても凄い子達なんですっ」


花咲くような笑顔で兄に初の学友を紹介する妹


しかし彼は舞い上がっていた


どうやって接点を作ればいいのか悩みに悩んでいたのに、まさか妹のクラスメイトで、個人的に食事までするような仲良しになっているのだ


「おほんっ…ごほんっ」と心を落ち着けて切り替えるために咳払いをすると、改めて3人に向き直り、紳士の礼をしながら


「マーレの兄、レインドール・ラヴァン・グラフィニアです。妹の学友となればお気遣いは不要…どうぞ、『レイン』とお呼びください」


さりげなく自分の事を、『妹の友達ならね?』という理由付けで愛称で呼んでもらおうとするレインドール


勿論、深紅髪の少女だけに語るようなあからさまな真似はしない


3人に対して自然かつ、友好的という雰囲気で語りかける姿は流石社交慣れした王族


距離の詰め方が迅速で不自然のない素晴らしい一手である


「とんでもありません、レインドール殿下。同級生ならともかく、貴方をそのようにお呼びすれば周りの1年生に示しがつきませんので」


しかし、一番貴族対応の知識を詰め込んだシオンがうやうやしく頭を下げて丁寧な断り方をすれば、気のせいかレインドールが一瞬だけ「くっ……」と残念そうに表情を渋らせ、すぐに貴公子の顔に戻ると


「いえ、ご無理を言ったのなら申し訳ない。ああ、そうだ。折角こうして縁が出来たのだからお名前を伺ってもよろしいですか?」


こうして話している相手の名前を教えてもらうのは何も不自然なことではない


そう…たとえレインドールが既に彼女の名前を知っていたとしてもだ!

そしてあわよくば…ファミリーネームではなくファーストネームで呼ばせてほしい!


…勿論、そんなことは一切顔には出さないが


シオンが立ち上がり、スカートを少しつまんで淑女の礼をしながら


「申し遅れました…シオン・エーデライトといいます。どうぞ、私のことは『シオン』とお呼びください」


「ああ、よろしく頼む、シオン」


そう爽やかな笑顔で名前を呼ぶレインドールはテーブル内心相当に浮かれている!


初めて心の底から欲しいと思った女性を、ファーストネームで呼ぶ…当たり前の筈なのに、ここまで心が踊るとは思わず


「ペルトゥラス・クラリウスです。クラリウスと呼んでもらえれば…」


「……マウラ・クラーガス……です…」


他の2人の挨拶も同じように「よろしく」と声をかけながら、まずは一歩前進、という手応えに内心小躍りのレインドール


そこにはさらに…


「レイン、ボクも行くって言ったじゃないか。行くなら行くって言ってくれないと困………………」


「おう、山盛り頼んだら『さっき女子2人がバカみたいな量持っていったから作り直し』って言われてよ。ちょいと遅れ……た………」


彼の友人2人であるオルファ・テルミアスとユータス・ストライダムだ


レインドールに合流した視線の先に、まさかの想いを寄せたお嬢さんが居るのだから、その心境はレインドールも『あぁ、分かるぞ…凄く分かる』と心の中で頷きまくる


オルファに向けられる赤色の凛とした眼差し、ユータスに向けられる引き込まれそうな眼差し…一瞬停止した2人はどこかで見たような咳払いをしてすぐさま切り替えると


「ごほんっ…失礼、お嬢さん方。ボクはオルファ・テルミアス、どうぞお見知りおきを…オルファ、でいいですよ」


「ハハッ、レディの前で食事の話は品が無かったな。俺はユータスだ。ユータス・ストライダム…長いからユータスでいい!よろしくな」


オルファもユータスも自然な流れで自分の名前を呼ぶように促す


…ちなみに、貴族階級の者を呼ぶときは基本的に家名に様付けで呼ぶのが貴族の常識だ


この場合は


オルファは『テルミアス様』


ユータスは『ストライダム様』


と皆が呼ぶ


王族であるレインドールに至っては基本的に『殿下』『王太子殿下』と呼ぶのが貴族間の礼儀だ


身分無用のヒュークフォーク魔法学院でも、親しくなければその様に接するのが普通なのである


庶民でも知り合いでなければファミリーネームで呼ぶことが特に多い


彼らがファーストネームで呼んで欲しい理由はそこである


同じように3人の少女も礼をもって挨拶を返すのだが…ここで苦い顔をしたのはオルファだ


そう…ペトラのフルネームは


『ペルトゥラス・クラリウス』だ


彼女を『ペトラ』と呼ぶのは余程親しくしている者しかおらず、彼女もそれを許していない


今のところそう呼ぶのはシオン、マウラ、そしてカナタだけである


''他の2人は念願の彼女に名前を呼ばせて貰えてるのに…ボクだけファミリーネーム…!!くっ…!!''


そして、友人の2人には自分の事を『ペトラ』と呼ばせていることは知っていたので尚更悔しい!


「クラリウスさん…少し長いですね。良ければ折角の交流ですし、ニックネームがあると呼びやすいですね」


さりげなく、知らない風に彼女の愛称ニックネーム…ペトラと呼ばせて欲しいことを遠回りに求めるオルファ


しかし、ここで目を細めたのはシオンとマウラだ


そう、今の言葉からオルファがペトラへアプローチをかけたことに気がついたのである


…ちなみに、シオンとマウラは自分へのアプローチに気がついていない…


シオンの手が、マウラの尻尾がペトラの背中をツンとつつくと『分かっておる』とアイコンタクトをしながら


「そう言わないで、自慢の名前ですから呼んでいただきたいです。どうぞ、『クラリウス』と、そうお呼びください」


これには『ぅっ…!』とオルファの呻きが喉まで上がってきてしまう


(ば、バレた…!まずいまずい…っ!隣の子達からも警戒されたかな…!?)


オルファの内心は大荒れだ


まさかの最初の段階で距離感を誤ったらしい


背中を流れる汗は嫌な感触と心境を同時に表しており、産まれて初めて上手くいかない女性との交流に彼の頭は爆速で回転を始める


「ですね、これは失礼…また、何か機会があれば是非、ボクに声をかけてくださいね」


その結果は…ここで長引かせるのはあからさま過ぎて心象が悪くなる…そう考えたオルファは一時撤退を決めたのだ


それを感じたレインもユータスも


「ああ、何かあれば頼ってくれ。少しは力になれるだろう」


「おう!俺も気軽に話してくれていいからな。あんま気にされるとこっちも面倒だ!」


と言い、流れるように3人揃って離れた机へと向かって歩き始めるのだが…






別のテーブルにて…



「ズルいよ2人とも!?ボクだって名前で…っ」


「ハッハッハッハッ!!いやぁ、笑いそうになった!まさかオルファがしくじるなんてなぁ!」


「まぁ…時間をかけていくしかないだろ?俺も愛称では呼んでもらえなかったしな。しかし…こんなに緊張して女性と話す時が来るなんてな…」


ふぅ…と息を吐くレインドールは緊張から一気に力を抜く


そう考えれば今回の成功者はユータスだろう


想いを寄せた少女からも、自分からもお互いのファーストネームを口に出来る


彼のご機嫌も頷ける話だ


皮肉なことに、3人の中で一番人と気さくに交流が図れるのはオルファだったのだ


王太子という看板に加え、その容姿は背も高く、表情も鋭い貴公子然とした美男子だ


ユータスはさらに背が高く、肉体は筋肉をしっかりと備えた偉丈夫であり、顔付きも整っているが、武骨ゆえに迫力を与えがちだ


そんな2人の中で、背も低く、中性的な容姿で幼いイメージを与える面影、柔らかい口調…男性から女性まで難なく心に入り込めてしまえるのがオルファだったのだ


だからこそ、彼が女性へのアプローチでコケたのはユータスのツボに入っている


しかし、上機嫌のユータスもレインドールも、まだ気づいていなかった






攻略しようとした少女達が、いかに難攻不落の要塞であるのか


ライバルである一人の男がどれだけ彼女達の心を占めているのかを
















「へっくしっ……あいつら、また変な事言ってないだろうな…?」


彼らがライバルの存在を知るまで、後少しの時がかかるのであった






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