第105話わたくしの推理は正解だったようだ
「そう言うマリー様だからこそ過保護くらいが丁度いいんですよ」
「カイザル……貴方まで、わたくしの事をなんだと思っているのかしら?」
「目も見えない、歩くのも儘ならい。 俺からすればこれだけでも十分すぎるんだが? 今くらいは俺たちを頼ってくれても良いんじゃないのか?」
「ぐぬっ」
今のわたくしの身体の事を言われたら、言い返せれないではないか。
卑怯だぞ、お前達。
これでも、彼らなりにわたくしの事を思っての発言と行動である事は窺える為、ここで意地を張るのは単なる意地悪でしかないと判断したわたくしは、渋々彼らのサポートを受け入れる事にする。
と言っても既に彼らにはサポートされまくっているので今更なところもあるのだが、結局のところわたくしの小っぽけななプライドの匙加減なのだろう。
であるのならば折れるのはどの道わたくしの方だ。
「わ、分かりましたわよ。 けれど、わたくしが一人で出来る事まで手伝う必要はありませんからね? 自分でできる事は自分でやりますので」
「まったく、素直に甘えれば良いものを」
「変なところで真面目と言いますか、なんと言いますか」
「う、うるさいですわっ」
そしてわたくしはウィリアムに優しく車椅子に座らしてもらい、カイザルに車椅子をゆっくりと押してもらう。
久しぶりに出た外は、風が心地よく、鳥の囀りが耳を楽しませてくれ、日の暖かさを直接肌で感じ取れる事ができる。
今までは当たり前であったそれらが、とても愛おしく感じてしまう。
目が見えなくても感じる事ができる。
世界はこんなにも美しいのだと言う事を。
「あら、風の温度と感触、そして勢いが変わりましたわ。 湖の近くに来たと言う事でしょうか?」
「流石マリー様ですね。 目が見えずとも分かるとは」
どうやらわたくしの推理は正解だったようだ。
音の反響から距離を測るのは流石にまだできないんだが、空気の変化を感じる事くらいはできるようになった。
「マリーの言う通り湖が目の前に広がっているぞ。 取り敢えず湖の近くにシートを敷いてそこに座ってもらうから車椅子はここまでだな」
そして、少しだけ誇らしげにしているわたくしをウィリアムがいつものようにヒョイっと持ち上げてお姫様抱っこをして、おそらく湖の方角へと歩いていくと、シーツを広げて敷く音が聞こえた後、わたくしは優しくそのシーツの上に下される。
すると、先ほどまでは聞こえなかった、海とはまた違った波の音が聞こえてくるではないか。
それと同時に鮮明に蘇ってくる、幼い頃この湖で遊んだ記憶の数々。
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