第88話裸の王様
そうカイザルはニヤリと笑いながら俺へ問いかけてくる。
「そうだな。 俺もやられっぱなしは流石にマリー様に申し訳ないし、何よりも俺自身もずっとその事が心残りだったしな。 その話、乗った」
そして俺はカイザルの誘いに乗る。
「そう言うと思ってわざわざ味方のフリをして匿っていた。 あいつの今回の悪業は俺たち同様に両親には筒抜けだったらしく親から勘当され身寄りもなく衛兵から逃げ惑っている所をばったり出くわしてな。 それで俺達同様に自らの過ちに気づき回心していれば見なかった事にしていたのだが。 奴は俺と会った瞬間、いかにマリーが悪であるかだの、マリーに皆騙されているだの、なんなら俺達は既にマリーに何らかの魔術で洗脳されているだのと、口を開けばマリーを貶めるような言葉ばかり吐くので、そいつの話に乗って洗脳が解けたふりをして匿っていたんだよ」
「はっ、お前も悪い奴だなっ!」
「お前にだけは言われたくねぇよ」
「違いないっ!」
そして同時に俺たちは笑い出す。
俺たちがクズである事には変わりないし、クズであった過去が消える訳でもない。
「ここだ」
「ふーん。 ぶっ潰すっ」
そして、カイザルに連れられてきた街中のボロ小屋へと入って行くと、確かに奴、グリムの姿がそこにあった。
「おぉ、久しいなウィリアムッ!! お前もカイザル殿下のおかげでマリーの奴がかけた洗脳から解かれたのかっ!! 私とウィリアム、そしてカイザル殿下がいればまた前のように俺たちは返り咲く事ができ、そしてマリーの悪行を皆にバラして私たちの冤罪も晴らす事ができようっ!!」
そう、嬉しそうに話しながら腕を広げて近づいてくるグリムの腕を、俺は切り飛ばす。
「ハンッ、卑怯だなんて言うなよ? 今回も部屋の中という剣士には不利な場所なんだ。 二回連続で不利な場所で戦ってやる事を感謝するんだな」
「き、貴様ぁッ!! マリーの洗脳を解けたフリをして私とカイザル殿下を騙しやがったなっ!?」
「おいおいグリム君。 まるでウィリアム一人が君を騙しただなんて、それはちょっと酷いんじゃぁないかな?」
「……へ?」
「俺も君を騙してたって言ってんの。 分かる? でも常に周りを馬鹿にして自分の事を頭が良いと勘違いしていて、こんな事になってもまだ自分が正しいと思っているような君じゃぁ分からないか」
「ど、どういう──」
「どういうって、君がいつも馬鹿にしていた裸の王様はグリム、君だったて事だ。 流石に気づけよ」
「そういう事だ。 じゃあ残りの片腕も貰うぞ」
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