第83話それが答えなのだと俺は思う

 まず父上が俺達二人に教えてくれた事はマリーのあの病弱な身体の事であった。


 マリーが病弱な理由は魔力欠乏症という病気であるのだが、そもそもこの魔力欠乏症という病気には大きく分けて二種類存在するらしい。


 一つは元々魔力が極端に低いというものであり、もう一つは逆に魔力の保有量が多過ぎた結果、その膨大な魔力の受け皿が壊れてしまい魔力も維持できなくなるというものであるとの事。


 そしてマリーの症状は後者である為、魔力の受け皿である魔臓器は激しく損傷しており、少し運動するだけで動悸、息切れ、目眩から始まり、最悪吐血、そして死に至る病であるという事だそうだ。


 今でこそマリーの身体が並の人間よりも病弱で、体力もない事は理解していたのだけれども、最悪死ぬ事もある病であるという事をマリーと出会った当初から知っていれば、周囲が俺に教えてくれさえしていれば、とは思うものの、当時の俺がマリーの身体の事を知ったからといってマリーの身体の事を気遣える行動をとれたのかというと、恐らくできなかったであろう。


 その事が容易に想像できるくらいには以前の俺はクズであったという自覚はあるつもりだ。


 実際にマリーは体調不良で抜け出す事が多かった為知ろうと思えばマリーが病弱であるという事は直ぐに分かったはずである。


 結局、それが答えなのだと俺は思う。


 そして、マリーと俺が婚約した理由なのだが、この膨大な魔力量という血を皇族以外に受け継がせない為であるという事であったらしい。


 万が一、皇族ではない下級貴族とマリーが結婚し、その間に膨大な魔力に、それに耐えうる器を持つ子供が産まれてしまった場合どうなるか、少し考えれば俺でも分かる。


 権力が皇族の血筋が濃い順に高く、ついで貴族の爵位順に権力が高いという構図が崩れ、それと同時に皇族並びに皇帝陛下の発言力が低下してしまうであろう。


 まだそれだけであれば良いのだが、新たな派閥ができ内乱が起こってしまう可能性もある上に、内乱により帝国が疲弊した所で他国に攻められでもしたら目も当てられない。


 そして、帝国が周辺国へ密偵を送っているように、帝国内部にも周辺国の密偵が間違いなくいる為、内乱が起きた場合は周辺国が間違いなく攻めてくると考えて良いだろう。


 だからこそ万が一権力が分散しないようにマリーと俺が婚約をしたのだそうだ。


 そして魔力欠乏症なのだが、元々魔力が少ないのも、人の身体には多すぎる場合も、そのどちらも竜が関係しているのだと父上は言う。

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