第72話要らぬ心配


 そうわたくしが答えるとスフィアは一瞬ハトが豆鉄砲を喰らったかの様な表情をしたかと思うと、次の瞬間腹を抱えて笑い出す。


「あははははははははっ!!」

「ちょっと、何で笑うんですの?」

「だ、だってっあはははっ!! あ、あんたが、そんな、夢見がちな少女みたいな事を言うからでしょうっ!!」


 いくら何でもいきなり笑われるような事は言った覚えが無いため何故笑うのかとスフィアに聞いてみると、スフィアは必死に笑うのを我慢しながら教えてくれた後「ひぃっ、ひぃっ、お腹痛いっ」と笑い声こそ出さないものの、尚も笑い続ける。


「そんなにおかしな事かしら? 結婚する前の人生よりも結婚してからの人生の方が倍以上長いのですし、お金で幸せは買えないわ。 スフィアには悪いのだけれども大金を積んでもカイザル殿下の様な明らかに地雷である可能性の方が高いですし」

「そ、それもそうね。 私も言うなればそれで失敗したくちよね。 でもそれで笑ったわけではないわ」


 そしてようやっと込み上げる笑いを耐え始めたスフィアがわたくしの話た内容を肯定してくれるのだが、笑いの壺はそこではないと言うではないか。


 意味が分からず続きを目線で促す。


「マリー様の事だから最高の家柄、最高のルックス、最高の地位が揃っているお方でないと嫌だとか思っていたものだから、そのギャップに思わず笑ってしまったんですの。 だってイメージと違いすぎますもの」

「そ、そんなに笑われてしまう程イメージが違いますの?」

「そうね、普段のイメージですとそれこそ高笑いしながら常に誰かをいびっていて、美男子を侍らせているイメージですね」

「……まぁ、確かに否定は致しませんわ」


 確かに、自分でもそう思ってしまうし、実際にゲームをしていた時はそう思っていたのだから言い返す事が出来ない。


 そんなわたくしの反応を見たスフィアは「そうでしょうどうでしょう」としたり顔である。


「けほけほっ、ごめんなさいね」


 そんな時、わたくしは咳を吐き、被せたハンカチには赤いシミが付いていた。


 久しぶりの同性同学年との会話に思わず楽しいと思い興奮したのがいけなかったのだろうか。


 どうやらこの身体は友達と楽しく会話するのも度が過ぎると体力を消耗してしまうようである。


 確かに、久しぶりに盛り上がった会話で前世の様に身体の事は気にせず会話をしていたのだけれども、さすがに弱すぎる身体に自分自身ドン引きである。


「ま、マリー様っ!?」

「いつもの事ですので騒ぐ程の事ではございませんわ。 少し横になれば回復致しますので。 むしろ要らぬ心配をかけてしまって申し訳ございません」

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