第71話肝が据わった女性である
そしてわたくしに身の内を語ってしまうくらいには弱っていたのだろう。
もし万が一自殺でもされたらと思うと、今ここで彼女の中に溜まった鬱憤を吐き出すことによってその可能性が少しでも減ったのなら、それが例え偽善であったそしても嬉しく思う。
確かに彼女には今までいろいろやられてきたのだけれども、それでも内容と言えば私の
どちらかと言えば嫌い程度の部類である。
その為死んでほしいとか、復讐したいとかは思わないので自殺とか考えているのならば、考え直してほしいというのは本心でもある。
寝覚めも悪くなりますしね。
ちなみにカイザル殿下はその限りではないとだけ言っておこう。
あいつには然るべき処分を下してほしい所だ。
少しの間だけ謹慎と王位継承権剥奪だけでは生ぬるいとさえ思ってしまうものの、彼のプライドを考えると丁度いい塩梅なのかもとも思う。
「まぁ、別にわたくしは何だかんだで今回の件は感謝しているんですのよ」
「か、感謝……何故ですか? 自分んで言うのもなんですが私は地位も富も持っているあなたが憎くて堪らなくて、当初こそお父様やお母様に褒められたい、認められたい一心だったのだけれど、気が付けばあなたの婚約者を奪い、そしてあなたの婚約者であるカイザル殿下が選んだのは私だと悦に浸り、同時に快感も味わっていたような私に対してあなたから感謝されるような事は無いと思うのだけれども」
言いたい事を全て言い終えてスッキリしたのか開き直ったのか、はたまたその両方か、とにかく隠そうともせずあの時の心境を語るスフィアなのだが、彼女の抱く疑問も最もだろう。
そして見方を変えれば公爵家が男爵家にコケにされたようなものである為、カイザル殿下という後ろ盾が無くなった今、それこそその権力でもって男爵家を潰しにかかってもおかしくない程の事をスフィアはやったのだ。
それで謝罪はしないというのだから可愛らしい顔に似合わずなかなか肝が据わった女性である。
「そもそもわたくしはカイザル殿下の事は、どちらかというと苦手でしたもの。 婚約者であるわたくしは無視され、体調が悪いと言っても仮病呼ばわり、パーティーでは婚約者であるわたくしとは別の異性と常にいて、わたくしの事をエスコートしてくれた記憶などございませんもの。 その様な男性との未来など想像しなくても不幸でしかない事くらい簡単に想像できますもの。 それでしたら家格は低くともちゃんとわたくしを見てくれる殿方と結ばれたいと思う事は自然な流れでなくて?」
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