第54話何だか気持ち悪い
もうこの衝動を抑え込む必要も無いだろう。
そう思い攻撃魔術を放つもウィリアムにそれら全てを切り落とされしまい、私はその光景に目を見開いてしまう。
今までのウィリアムであれば私が先ほど放った複数の火球の内、消せても三個程の実力であったにも関わらず、今私の目の前にいるウィリアムは六個全てを切り落としてみせたからである。
帝国広しと言えども火球六個を同時に切り伏せる程の実力を持つ者など片手よりも少ないと言えよう。
本来であれば、魔術師であれば障壁を張るか水魔術の水壁で凌ぐか、剣士をはじめとした体術系の者であれば一個から二個撃ち落としながら安全圏へと避難するというのが一般的な立ち回りであり、それは宮廷魔術師や近衛騎士であろうとも基本的には変わらない。
そのことからも、今ウィリアムが私の目の前でやって見せた行為が如何に人間離れした行為であるかが分かるであろう。
その行為がマリー・ゴールドによって洗脳されたからこその人間離れした剣技であったのか、ウィリアム本人が今まで隠してきた本来の実力であるかは定かではないのだが、いままで想定していたウィリアムの実力を考え直さなければならないらしい。
しかしながら、だからと言って剣士に対して魔術師の優位性が無くなる訳ではなく、さらにこれからは先ほどの様に計算を誤ってしまい隙を見せる事も無いだろう。
その剣士であるウィリアムにとって魔術師である私が隙を見せたあの瞬間に私を討たなかった時点でマリー・ゴールド、そしてウィリアムは私に勝てる唯一のチャンスを逃したと言っても過言ではない。
そしてウィリアムと会話を少しだけしてみたものの、やはりウィリアムも洗脳されている事が分かった。
そもそもウィリアムはウィリアムで前から気に入らなかったのだからこれを機に二人とも始末してしまうのも良いだろう。
そもそもマリー・ゴールドを討つための犠牲なのだから仕方のない事だ。
「ふん、まぁ別にこの毒婦はいつでも殺せる」
そう告げると私はこの場から離れる事にする。
どうせいつでも殺せるのならば、対策をして手も足も出ない程完膚なきまでに、圧倒的な実力差を見せつけてから殺してやろうと思うのであった。
◆
あのままグリムがわたくしに魔術攻撃をしてくると思ったのだが、わたくしの予想と異なりグリムはそのままわたくしの元から去って行った。
それを見て死ななくて良かったと思いと、それとは別に敵を前にしてすんなり帰るグリムの姿は、それはそれで何だか気持ち悪いな、と思ってしまう。
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