第44話目障りです

「ウィリアム、お前……そ、そうだったな。お前はあのマリーに洗脳魔法をかけられていたのだったな。 だが安心しろ。それも今日で終わりだ」

「いえ、私は洗脳魔法などかけられていませんし、カイザル殿下が魔術学園を退学になった事は残念ながら事実でございます。 これ以上自身の名誉をさらに汚されてしまう様な言動や行動はお止めになったなった方が自身の為かと……」


 あぁ、なるほど。


 あの時のマリーの気持ちがなんとなく分かったような気がした。


 勿論、マリーの場合は今以上に辛い立場であったのだから今の俺と比較すると雲泥の差かもしれないのだが、それでもほんの少しだけだったとしてもマリーの気持ちを知る切っ掛け位にはなった事は確かである。


 相手の言い分も聞かず、周りの説得も聞かず、自分こそが正しいと言ってきかない。


 正にあの時、カイザル殿下と一緒に俺がマリーに対して行った行為そのものではないか。


 しかも俺はそれだけではなく暴力でマリーを自分の思い通りにコントロールしようとしていた。


 只の屑ではないか。


 客観的に見れたからこそ本当の意味で自分という人間がやらかした事を再確認できてしまう。


「おいっい! マリーッ!! なにボケっとそこで突っ立ているんだっ!! 今まで貴様が婚約破棄を撤回して来るのを待っていたというのに一向に来る気配が無いからこの俺が自らこの様にして貴様に会いに来たんだろうがっ!! これ以上俺の好意を無下にしてただで済むと思うなよっ!! 謝るなら今のうちだぞっ!! 婚約破棄を撤回してやるって言ってんだから早くこの馬鹿どもを説得してこいっ!!」


 そうカイザル殿下は怒鳴りながらどこからそんな力が出るのか力任せに押さえつけている教師たちを押しのけ、校舎内に入ると腕を振り上げマリーへと、その振り上げた腕で叩こうとしているのが見えた。


「ぐえぇっ!?」

「今何をしようとしていましたか?カイザル殿下」

「き、貴様っ!! この俺に──」

「──もう一度聞きます。 今、この俺の主様に何をしようとしていましたか?」

「な、何って躾をだな……」

「躾が必要なのはカイザル殿下、あなたの方ではないのですか? これ以上この場所に留まるというのであれば俺のご主人様の敵として認定致しますので容赦はしませんよ。俺の気持ちが抑えられている間にこの場所からいなくなってください。 目障りです」

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ、き、貴様っ!! 洗脳されているからと言って調子にのりおって……ひぃっい!?」


 未だにこの場所から立ち去ろうとしない殿下に苛立ち、俺は思わず抜刀してしまう。

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