第43話マリーの為である
「だから何故俺が退学だと言うのだっ!! 俺は皇位継承権第一位のカイザルであるぞっ!!そんなでたらめに騙されおってからにっ!! 全員この学園の教師を本日付でクビにしてやるっ!!」
「そうよそうよっ!! あなたたち不敬すぎですよっ! カイザル殿下が優しいからって何なんですかその態度はっ!!」
そして近づくにつれて聞こえて来る頭の痛い言葉に俺は過去の自分を見ているようで羞恥心と怒りが混じったような感情が湧き出て来る。
しかし、何故カイザル殿下には退学の旨を記した手紙を送っているはずなのだが、それを読んでいないのだろうか? いや、あのカイザル殿下の事だ。碌に中身を確認もせず捨ててしまった可能性もあると容易に想像できる。
これがつい最近まで皇位継承権第一位であった事実に、帝国の未来を憂うと共に、マリーには悪いが婚約破棄の際に数多くの失態をして皇帝陛下の怒りを買い皇位継承権を剥奪されて良かったと安堵してしまう程だ。
しかしながら自分自身もつい最近まで第三者からはカイザル殿下と同じように見られていたのだと思うと、もう二度とあのような者にはならないとカイザル殿下を反面教師として強く思う。
「ええいっ、話の分からない奴共だなっ!! お前らにはいくら話してもらちが明かないっ!! 話の通じるやつを…………そこにいるのはウィリアムではないかっ!! 丁度いいっ!! こいつらがこの俺が学園を退学になったという子供でも直ぐわかるようなデマを信じているせいで校舎内に入れさせてもらえないんだっ!! お前からもこの馬鹿どもに言ってやってくれっ!!」
そして俺はカイザル殿下に見つかっては後々面倒だと思い足早にマリーと共にこの場から離れて食堂へと向かおうとしたのも空しく、カイザル殿下に見つかってしまった。
そして一斉に振り向く野次馬たちと、助けを求める教師たちの視線が俺を捉える。
「わたくしの事はいいから教師たちを助けてあげなさい」
「……かしこまりました、我が主」
正直言って無視して通り過ぎようと思っていたのだが、俺の心優しい主様がそう言うのであれば一肌脱ぐのもやぶさかではないと、俺はカイザル殿下の方へ歩みを進める。
しかし同じことが起こる度に頼りにされても困る為一肌脱ぐのは教師の為ではなくマリーの為であるのだと、教師たちに目線で告げる。
「何故退学になったカイザル殿下がここにいるのですか? そもそも校門を無断でくぐって来ている時点で不法侵入なのですが?」
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