第42話外が騒がしい事に気付く
そう彼女が言った時、俺は胸が締め付けられそうになった。
今思い返せば、マリーは今までカイザル殿下の婚約者でこそあったものの常に一人で佇んでいた記憶しか思い返す事ができないのである。
カイザル殿下主催のパーティーも、婚約者であるカイザル殿下はスフィアにつきっきりでマリーを相手にせず、学園での生活も他の令嬢と過ごしているところを見たことが無ければカイザル殿下と共に過ごすところも見たことが無い。
記憶の中のマリーは常に一人で端っこにいるか、カイザル殿下へアピールしているか、具合が悪いと言っていなくなるかでしかない。
ああ、そうだ。
目の前にいるマリーは常に一人であった。
そしてこの俺もマリーを煙たがり、強く当たっていた一人である為、今さらながらに強い罪悪感と後悔に襲われてしまうのだが、マリーを前にしてその事を悟られる訳にはいかない為必死に取り繕うと共に俺は心の中で決意する。
確かに俺はマリーに騎士の誓いをしたのだが、守るだけではまだ足りない、それでは俺の罪は消えないと、そう思った。
マリーが一人で寂しくないよう、一人で惨めな思いをしないように、より一層、できる限り、時間が許す限り、マリーの側にいると強く誓う。
そんな俺の決意など、今俺の事を煩わしそうに見つめて来るマリーには一生気づかれる事はないだろう。
だが、俺はそれでいいと思うし、それだけの事をしてきたのだという事も理解している。
そう思いながら俺は今日もマリーへ手を差し伸べる。
するとマリーは嫌そうにしながらも渋々と言った感じで俺の手を取ってくれる。
例え渋々であろうとも、差し伸べた手を取ってくれることがたまらなく嬉しいと思ってしまう。
あんな事をしてきた相手であるのにだ。
差し伸べた手を叩いて拒否しても良いだろうに、それでも手を取ってくれる所に、彼女の優しさが垣間見えて何だかその事が、俺だけが知っている彼女の一面の一つのようで、手を取ってくれる嬉しさとは別の温かい感情があふれて来る。
そして俺はマリーへいつもの様に担いであげようかと提案するも、提案した瞬間に却下され、そのまま不機嫌そうな顔を貼り付けて食堂へと向かうので慌てて後を追い、彼女の隣に並び一緒に食堂へと向かっていると、なんだか外が騒がしい事に気付く。
少しだけ気になるものの、今の俺はマリーの騎士である為に首を突っ込もうとは思わないのだが、火の粉が飛んできても大丈夫なように細心の注意を払いながら食堂へと向かう。
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