第39話強制退学

「は、はい。 しかも学生たちの野次馬の前で行ったらしくて目撃者も多く、事実であるかと」


 そう震えながら説明してくるスフィアの肩を抱き寄せてやる。


 きっと仲間であるウィリアムの裏切りに悲しみと怒りで震えているのであろう。


「クソッ! 俺が大人しくマリーの方から婚約解消を取り消してくれと頭を下げて来るのを待っていたというのにっ! どこまで俺を苛立たせれば気が済むんだっ!あの女はっ!」

「つい最近まで私達と同じくマリーを嫌っていたにも関わらず、カイザル殿下が婚約破棄を申してから一か月も経たずに寝返るなど普通に考えてあり得ません。おそらくカイザル殿下が謹慎されている間に何かしらの洗脳魔術を行ったのでしょう」

「あぁぁぁあの魔女めがぁぁあっ!!」


 洗脳魔術、そうスフィアから言われた時、これだ!! と思ったのと同時にウィリアムを少しでも疑ってしまった自分が恥ずかしくなる。


 そしてウィリアムの事を信じることが出来たスフィアはやはり心根の優しい良い女性であると再確認する。


「せっかく婚約破棄を解消して、更に第一夫人にしてやろうと思っていたにも関わらず、この俺様の想いを踏みにじりやがってっ!!」

「とりあえず確認してみてはいかがでしょうか?」


 怒りで頭が真白になった俺をスフィアが静めてくれ、冷静な判断で思考できるようになる。


 確かに、決めつけて行動するのは愚策かもしれない。


 それに、どのみちマリーが俺の婚約者に戻ればウィリアムも俺の側に付く為同じことではないか。


「ありがとう、スフィア。少し熱くなり過ぎていたようだ」

「い、いえ」


 そうと決まれば俺がやる事はマリーと破棄した婚約を元に戻す事である。


「おいっ!!」

「な、何用でしょうか?」


 そして俺は部屋に置いてある、使用人を呼ぶ用のベルを鳴らすとぎこちない動作で今現在俺に仕えている執事がやって来る。


 これでも四回クビにして新しい者へ替えて行っているのだが、替えるたびに使えなくなっていくのだから腹が立って仕方がない。


 こいつも今日限りでクビにしよう。


「明日は学園へ向かうのでその準備をしろ」


 ここ数日はわざわざ程度の低い授業が退屈で登校していなかったのだが、そうと決まれば早い方が良いだろう。


「は? ……………………が、学園ですか?」

「何だお前は? ドミナリア帝国立魔術学園すらも分からない程バカだと申すのか?」

「い、いえ、そうではなくカイザル殿下はドミナリア帝国立魔術学園に相応しくない人物として強制退学の通知が昨日届いており、カイザル殿下にもお渡ししたはず──」

「──不敬すぎるのではないか? この俺が学園を強制退学だと? 冗談にしても笑えない」

「い、いえ、冗談ではなく本当──」

「笑えないって言ってんだろうがぁっ!! 出ていけっ!! この部屋から即刻出ていけっ!! それとお前はクビだっ!!」

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