第36話約束をした覚えはございません
「……は?」
事件は放課後に起きた。
今現在学園の噂の渦中の人物である二人のうちの一人であるウィリアムが何を考えているのかわたくしの教室まで迎えに来たのである。
当然噂の二人が揃った為教室は静まり返っているのだが熱気が高まっていくのが肌で感じる事ができる程クラスメイト達の視線を独り占めにしていた。
耳を澄ませば色恋沙汰が大好物な女生徒たちの黄色い声。
もういっそこの場から逃げ出せるのならば逃げ出してしまいたいと思うのだが、わたくしの身体では逃げ出すことは不可能であろう。
もはやどうにでもなれと開き直る事しかできない。
「迎えに来た」
そしてなおも『なんでウィリアムがここにいるんだよ』と不思議そうな表情で見つめるわたくしに向かってウィリアムが再度迎えに来たと答え、スッと手を差し伸べて来る。
意味が分からない。
「あぁ、もうじれったいっ。 行くぞっ!!」
「なっ!? ちょっとっ!! なんですの!!」
そしてしびれを切らしたのかウィリアムがわたくしの手を取り半ば強引に教室から連れ去っていくと、わたくし達が出た後の教室からひと際大きな黄色い歓声が聞こえて来る。
「ちょっと離してっ! 離してくださいましっ!!」
ただでさえ噂の渦中で学園に居ずらいというのに、これでは明日からどのような顔して教室で過ごして良いか分からないではないか。
恥かしすぎて死んでしまうかもしれない。
それもこれも全て何も考えずにわたくしの教室まで乗り込んできた挙句に連れ去るような形で教室からわたくしを引っ張りだしたウィリアムのせいである。
そのすべての元凶であるウィリアムへ苛立ちを隠す事もせず勢い任せに捕まれた腕を振りほどき『わたくしは今怒っておりますのよ』とウィリアムを睨みつけてやる。
「いったい何故このような事をしたのか、言い訳があるのでしたら聞いてあげましょう。 もしくだらない理由でございましたら我が公爵家の権力を全て使ってでもあなたをぶっ潰して差し上げますわ」
あまり家の権力は使いたくはないのだが、やる時はやるという事を見せつけなければ、バカは痛い目を見なければ分からないので、ウィリアムというバカに分からせる為ならば家の権力も使うのも辞さない覚悟だ。
「は? そんなのお前を馬車がある停留所までサポートする為だろうが。 どうせ教室から停留所まで体力的にギリギリなんじゃないのか? 途中で気分が悪くなったりしたら担いでやるから気軽に言ってくれ」
「そんな約束をした覚えはございませんわっ!!」
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