第35話甘い考え

そもそも今までのわたくしの行いも今この状況に拍車をかけているわけで、自業自得と言われれば言い返す言葉もない。


陰口などとうに慣れていたと思っていたのだけれども、やはり嫌なものは嫌だ。


それでもここで嫌な顔一つしようものならば相手の思うつぼである。


所詮この者たちは公爵家というわたくしの階級に楯突くことのできず、陰口を叩くしかない小物なのだ自分に言い聞かせて虚勢を張り、なんとか取り繕いやり過ごす。


しかしながら、前世の記憶が戻ったお陰で授業を今までの様に真剣に聞く必要が無くなったのはうれしい誤算の一つである。


そもそもこの学園は魔術又は剣術、歴史、マナー、数学ぐらいしか授業がない。


歴史は、ゲームとウィ〇ペディアで調べる程、乙女ゲーム『永遠のラビリンス』にハマっていたので設定として明かされている範囲であれば覚えているので今さら勉強する事も殆どないレベルだと自負している。やり込むとはそういう事だ。


そしてマナーは幼いころより王妃たれとしこたましごかれてきた上に、数学に至っては前世でいう小学校高学年レベルであり数学と言うよりも算数のレベルである。


それら授業は今のわたくしからすれば授業とは単位を取るために予習復習する場所という感覚に近く、むしろいまでは逆に暇すぎて睡魔という新たな敵と戦わなければならない場所でもある。


問題は魔術・剣術の選択授業なのだが、女性はもれなく全員魔術で固定されているのでわたくしも例にもれず魔術なのだが、そもそも魔力が無いに等しいわたくしは実技に関しては常に見学で授業は終わる為筆記テストさえパスできれば合格ラインである。


勿論魔術の知識に関しても前世の知識を生かせるのだからあとは無難にこなして卒業をするだけである。


卒業まであと二年と少し、わたくしが学生時代から見た二年間という年数は永遠に思えたのだけれども、社会人を経験したわたくしからしてみれば二年なんか一瞬である。


気が付いたら歳を取り、親からの結婚の催促が年々うるさくなり、気が付けば二十八である。


高校卒業してからの十年は一瞬であった。


それと比べれば二年など、少し考え事をしている間に過ぎているような感覚なのである。


問題があるとすれば断罪ルートなのだが、今の所断罪ルートに入っているような展開を確認できない為油断は禁物だが安心しても良いだろう。


そんな甘い考えをしていたからこそわたくしは足元を掬われたのだろうと、今ならば思う。


「迎えに来た」


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