第33話メインキャラクター補正にあきれてしまう

 いくら努力しても、後ろ指刺されながら学園へ通い続けても、マリーが待っている未来は修道女への道か老いた変態貴族に嫁ぐしかないのである。


 道は険しくとも努力次第で無限の可能性が広がる俺とは似て非なるものだ。


 そこまで考えて、俺は何故マリーがカイザル殿下の婚約者という立場を必死に守ろうと、スフィアに対して姑の如くいびり続けていたのか、ようやっと理解できた。


 カイザル殿下の婚約者という立場は、マリーにとっての全てだったのだ。


 マリーは、この細く、今にも折れそうな身体で今まで戦って来たのだと思うと何故か俺はマリーをこれから守ってやりたいと思ってしまう。


「なんなら俺が嫁の貰い手になってもいい」


 そこまで考えて俺は思う。


 これは意外といい考えなのではないかと。


 しかしそれにはマリーの了承が必要であろう。


 マリーの両親へ言えば、変態老人貴族か修道女の道しか無い為、きっと二つ返事で了承してくれるだろう。


 だけれども、俺はそれは嫌だと思ってしまう。


 マリー本人から了承を得れるようにこれから努力していくのが筋であると、そう思ったのだ。


 それに、マリーが嫌がる事はやりたくない。


 過去、俺がしでかした事はそれだけ酷い事でもあるし、どれだけ謝った所で許されれるような事でもないと理解しているつもりである。


 後悔してもしきれない。


 そして、ここまで考えた時点で自分の気持ちが分からない程、俺は鈍感でもない。


 この数日で一気にマリーという女性にひかれ始めているのだと自分の気持ちが分かっているからこそ、マリーを嫁にと思ったのだ。


 結局は、その考えすら自分本位の考えでしかなく、そんな自分が、あの頃と何一つ変わっていないような気がして嫌になる


 しかしながら自分の、マリーに対するこの気持ちを理解すると俺の膝を枕にして規則正しい寝息を立てているマリーの事がより一層愛おしいと感じてしまう。


「頑張った。マリーは頑張った」


そして、できる事ならばこれから先の未来はこの俺がせめて騎士として。


そう思いながら俺はマリーの頭を優しく撫でるのであった。






 一体全体何が起こっているのだろうか。


 わたくしは今、ウィリアムに膝枕をされており、ウィリアムのその大きな手はまるでわたくしの頭を撫でている途中で止まったかの様にわたくしの頭を包み込むように触られている。


 そして当のウィリアムは木にもたれて眠っているではないか。


 眠っている姿も様になっているとか、メインキャラクター補正にあきれてしまう。


 いまこの状況が、わたくしではなくそこら辺の令嬢であったのならば一発で恋に落ちた事だろう。


 悔しいが、それほどのシチュエーションであると認めざるを得ない。


 しかしながら幸か不幸か今この場所にいるのはこのわたくしである。


 ウィリアムに惚れるなど天地がひっくり返ってもあり得ないと断言できる。


 この屑男がわたくしにやった事は何一つとして忘れて等いない。


「あ、悪い。 起こしてしまったか?」

「いえ、わたくしの方こそウィリアムを起こしてしまったのではなくて?」

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