第31話さすがメインキャラクター
ホント、さすがゲーム表紙にも描かれているメイン攻略キャラクターの一人だけはある。
「今の俺の信頼は無い、いやマイナスである事は分かっている。 あの日俺が行った事を客観的に見れば誰だって同じ評価をしたはずだ。ドラ息子から『つける薬もないほどの頭の弱いドラ息子』だと。 一度貼られたレッテルを覆す事は容易ではない事は理解しているが、もう一度信頼を取り戻すために努力しなければと思ったんだ。そしてそれを思わせてくれたのがお前だ。 ハッキリ言って感謝している」
そしてわたくしは生まれ変わったら悪役令嬢で、目つきはキツく、口調も高圧的だった上に病弱なためお茶会などもなかなか参加できない、そんなわたくしには当然友達はおらず、唯一の理解者だと思っていた婚約者には嫌われ、唯一の楽しみである舞踏会もその婚約者にめちゃくちゃにされ、その事で学園では後ろ指を指され、陰で捨てられた女だと笑われて、カイザル殿下の為にと今まで頑張って来たお勉強も全て意味が無くなった。
差があり過ぎる。
何だこの差は。
しかも目の前の筋肉達磨は改心する為に努力をしているなどとほざきやがる。
きっと、努力した分だけ報われる未来がコイツには訪れるのであろう。
わたくしは産まれ変わる前に培った努力も、産まれてから培った努力も全て水の泡になったというのに。
「……わたくしはあなたが憎らしいほど羨ましいですわ」
そして、わたくしの口から出た言葉は、妬みでも僻みでも罵倒でも中傷でもなく、ウィリアムの事が羨ましいという言葉であった。
その言葉を聞いてウィリアムは『何故』という表情で首を傾げる。
「お前の評価は地に落ちていないだろう? むしろ周囲の評価は変わっていないだろ。 それなのに何故俺なんかが羨ましいんだよ」
そう不思議そうに聞いて来るウィリアムは何となく前世実家で飼っていた大型犬を彷彿とさせる。
「わたくしは、今まで努力してきた物、失いたくない物、唯一の楽しみ、それら全て無くなりましたもの。 これら失ったものは貴方と違って努力どうこうで取り戻せるものではございません。 残ったのは先ほどあなたが言った通り周りの評価である『貴族社会では珍しくもない我儘な令嬢』という評価だけですわ」
そこまで言うと、流石に座りっぱなしで体力が無くなったのか少しふらついてしまうのだが、いつの間にか隣に座っているウィリアムがわたくしの背中から太い腕を回して肩を支えてくれる。
黙ってそんな事が出来るのだから、そりゃ異性にモテるはずだ。 さすがメインキャラクター。
すけこましのジゴロ。
わたくしは騙されませんわ。
そこまで思った所でわたくしは太陽の温かな日差しに誘われた睡魔と今までの疲労が重なりそのまま眠ってしまうのであった。
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