第24話あの時のマリーの言葉が蘇る

 何なら前世のクレーム処理に追われる日々の方が何百倍もマシだとも思えてしまう。


 何だかんだ言っても陰口をいう人たちは貴族令嬢であり、育ちの良さが滲み出てしまい良くも悪くも悪意の表し方にまで品がある為どうしても物足りなさを感じてしまっているのであろう。


 それに、一人で過ごせるのならばそれに越したことは無い。


 歯に衣着せまくり、相手の爵位を気にして、自らの立場も考え、相手をするのはやっぱり面倒くさいし疲れるので、こうして遠くから囁くように陰口を言われている方が楽だと思ってしまう。


 そして、わたくしへの嫌がらせが『遠くの方で聞こえない様に陰口を言う』でとどまっている理由は、最早婚約破棄を言い渡されたわたくしをさらに蹴落とす必要が無くなった為であろう。


 といってもスフィアに対しても殆ど陰口のみであり、スフィアの教科書を隠したり濡らしたり、階段から突き落としたり等と言う行為を行っていない事をわたくしは知っている。


 彼女たちがやった事と言えば悪意を口にはするが行動に移す行為は野蛮であるという価値観から『スフィアの近くで聞こえる様に悪口を言う』という行為くらいである。


 勿論悪口といえど、やってはいけない事には変わりないのだが、これを逆手に取り漁夫の利を狙ったのであれば話は別である。


 教科書を隠したり濡らしたり、階段から突き落としたり等とカイザル殿下に相談して誰が一番得をするのか、そして誰がその様な行為をしたのか、そこまで考えてわたくしは『もうわたくしには関係の無い事だ』と思考を切り替えて授業に集中するのであった。





 調べれば調べて行くほど、今回の事件はスフィアの自作自演である可能性がかなり高いと思わざるを得ない。


 ネチネチと小言を言うマリーや、嫌味や悪口をいうその他貴族令嬢という環境をうまく利用していたとしか思えない。


 しかしこれらマリーの小言や貴族令嬢達からの嫌味や悪口などはそもそもスフィアが他人の婚約者でありこの国の殿下であるカイザル殿下へ近づき無駄に親しくしなければ起こらなかったのではないか?


 そう思えば、今までスフィアは皆が見える様な場所でカイザル殿下にスキンシップを過度にしていた事を思い出す。


 我が家の草が仕入れて来た情報、そして俺の記憶等で考えると、どの角度から見てもスフィアの自作自演であり、スフィアが虐められていた環境もスフィア自身が作り上げたものとしか考えられない。


『わたくしは無実なのですもの。 それに聞けば証拠は何一つなく、そこの小娘の戯言が証拠であるという始末ではないですか。 そんな信憑性も根拠も何もない話を聞く必要などないですわよね』


 あの時のマリーの言葉が蘇る。




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