第19話体力は最早すっからかん
このまま一生謹慎されてれば良いのに、なんてことを思う。
そもそも何故魔力欠乏症であるわたくしが無理をしてこの学園へと通っているかと言えば、帝国立の歴史ある由緒正しいこの学園を卒業したかどうかの肩書あるなしで、その他貴族からのその人を見る目が全く違うからである。
それこそ血筋や歴史を大切にしている貴族には学園を卒業していないものはあからさまに見下している者達までいる。
たとえそれが皇帝の妃であろうとも心の中では見下すことだろう。
故に皇帝の妃に学園すら卒業出来ていないものが成る事を極端に嫌う者がいる限り結果として過激派となる可能性が高く、その様な不安要素を発生させないためと、将来皇族が舐められないためにもわたくしの学園卒業というのは必須であったのだ。
だがしかしそれもついこのあいだまでの話であり、カイザル殿下との婚約破棄が決定した今となってはそもそもわたくしが無理をしてまでこの学園へ通う必要はないのでは?と思う。
自業自得とはいえ学園の嫌われ者に友達など一人もおらず、カイザル殿下との婚約破棄が決定してからは陰で笑われ、バカにされる。
それならばいっそ退学してしまえと思ってしまうのだが、お父様が首を縦にふる姿が想像ができなかったので諦める。
愛されている事はわかっているし、退学した結果わたくしがより一層馬鹿にされる事を危惧していることも分かるのだが、それならば誰の目もふれない領地奥地でひっそりと暮らせてもらえればそれでいいのにとも思う。
しかしながら、だからと言ってお父様や家族にはただでさえ今回の婚約破棄で多大なご迷惑をおかけしているにも関わらず、わたくしの我儘で学園を退学して、さらに家族へ迷惑をかけてまで実行しようとも思わない。
結果、登校するという答えである。
そして、やっとの思いで教室まで到着して自分の席へと着席する。
馬車からここまで歩くだけでわたくしの体力は最早すっからかんだ。
机に突っ伏したい気持ちを抑えて担任の教師が点呼を取るまで疲れた身体に鞭を打ち耐え忍ぶ。
もし、わたくしが魔力欠乏症ではなく、いたって普通の健康体であったのならば、カイザル殿下との婚約も無く今回の様なゴタゴタも無かったであろうし、こんな捻くれた性格にもならなかっただろうし、今頃同い年の令嬢と楽しい学園生活を謳歌していた事だろう。
そんな『if』を考えても意味がないと分かってはいるのだが、考えずにはいられない。
妄想するのはいくらしても只であるし、誰にも迷惑をかけていない。
それに、友達がいなかったわたくしにとって唯一の暇つぶしでもあった。
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