第17話お前の言いたい事は分かった
「何故だっ!! 俺は皇帝陛下である父上の息子であるのだぞっ!! 皇位継承権、それも継承権第一位である将来皇帝となる者を見限るというのかっ!?」
リカルドが何を言っていのか俺には理解できなかった。
俺はこの国の皇帝となる男であるにも関わらず、リカルドを含めて皆俺の側から離れると言うではないか。
「王位継承権第一位である最大の理由がゴールド家との婚約をしていたからでございます。 ゴールド家の持つ権力と富、貴族との横の繋がり、そしてゴールド家の持つ歴史。どれをとってもゴールド家に勝る貴族は今代にはおりませぬ。 故に、次男であるクリストフェル殿下がどの家の娘と婚約しようとも揺るぎようが無く、あるとすればカイザル殿下の暗殺か多大な成果を上げるのみでございますが、ここ数十年平和が続く我が帝国で成果を上げる事は難しく、暗殺にしてもクリストフェル殿下は欲が無く優しすぎる性格故それも見込めない。 だからこそ今まではカイザル殿下が皇位継承権第一位でしたのです。 カイザル殿下が多少残念な方であっても揺るがない程には盤石であったのですが、その皇位継承権の柱でもあるご婚約者のマリー様がいるにも関わらず他の女性、それも爵位の低い男爵家の娘と親密になるどころかマリー様を蔑ろにするだけではなく、皇族主催のパーティー、その他貴族が大勢出席する場で作法も何も無いどころか聴衆の面前で行うという最低な方法でもって婚約破棄を告げる愚かさを露呈してしまったと同時にゴールド家という柱も失ったのです。 そんな者へ仕える貴族が何処にいるというのでございましょう」
そう語るリカルドの口調こそは丁寧ではあったのだが、その内容は辛辣であり、包み隠そうともしていない言葉の数々が、包み隠そうとしていないが故に分かりやすく、そして俺へとダイレクトに刺さっていく。
リカルドには言いたいことは山ほどあるのだが、彼のおかげで解決方法が分かったので今回の不敬な物言いについては御咎めなしで良いだろう。
きっとリカルドもその事を泣いて感謝するであろう。
何だかんだでこんな事を俺に言うという事は口では俺の側から離れると言ってはいても、先ほどの説教にも近い言葉からみて『早く皇位継承権一位の立場を取り戻してきて下さい』という事であり、俺であれば必ず取り戻すと信じているからであろう。
そう思えば先ほどの不敬な物言いも許せるというものである。
「ふん、お前の言いたい事は分かった」
この俺が婚約破棄を解消してなかった事にしてやれば良いのだな。
何だ、簡単な事ではないか。
あのマリーに頭を下げるのは癪だが、それくらいの事が出来ないおれではないからな。
そして俺は目の前問題が簡単な事に気付き、内心ほっとする。
しかしながら何故周りの連中はこんな簡単な事も分からないのか? と思うものの、そこはやはりこの俺が頭が良すぎるからであろうと結論付けるのであった。
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