第15話より一層憎悪が強くなった
「……………………あの、その……」
他に何か言わなければならない事はないのかと問われても何も思いつかず、口ごもってしまうのだが、そんな俺の姿を見た父上の表情は、目に分かる程落胆していくのが分かる。
「そ、そうですっ!!これからゴールド家への制裁を考えましょうっ!!具体的な案も出さずに感情に任せて突っ走るのは愚策ですからなっ!!」
これ以上父上を落胆させたくない俺は天才的な頭脳で思考し、その答えを導き出す。
これから皇帝となる男が感情に任せて家臣やその他貴族を罰した場合、そこに明確な大義名分があったとしてもそれを見た他の家臣や貴族達からすればただの暴君にしか映らないだろう。
それを防ぐためには処罰するに値する明確な大義名分を示してから行い、これからその者に与える罰が妥当であり、然るべき処置であるという事を示す必要がある。
きっと父上はその事を問うているのだろう。
そして、ここまでの答えを導き出す事ができた俺は、やはり天才であり、その他馬鹿どもを導く為に皇帝とならなくては、とより強く思う。
「我が近衛兵よ、このバカ息子を拘束し、地下牢へ一週間ほど放り込んでおけ」
「……へ?何故そうなるのですか父上っ!!ま、まさかゴールド家に洗脳されているのではないのですかっ!?ええい、離せっ!!我が父上が洗脳されているかもしれないのにも関わらず、その父上の命令を聞き、この俺を束縛しようとするなど言語道断であり、不敬極まりない行為であるぞっ!!お前たちが先にするべき事は俺を地下牢へ入れる事ではなく、父上の洗脳を解くために宮廷魔術師を呼ぶ事が先決であろうがっ!!」
「黙らんかこのバカ息子がっ!!!」
「ひぃ……っ」
それは産まれて来て今まで、一度たりとも聞いたことのない父上の怒号であり、初めて見る感情を剝き出しにした父上の姿でもあった。
そのあまりの恐怖に俺は足が震えて立つこともままならず、床へ腰をつけてしまう。
「今まで少し優しくし過ぎたのかも知れぬな。それは我のミスでもあろう。お前もこの一週間で失ったものの大きさと、これからの身の立ち振る舞いを考え直せ。では、近衛兵よ、頼むぞ」
そして俺は引きずられる様に地下牢へとぶち込まれる。
なんでこの俺が。
俺は、一体何をしたというのか?
そもそも悪いのはゴールド家であり、マリーではないか。
それなのに、なんでこの俺が牢屋へ入れられているんだ?
それからの一週間ではいくら考えても同じようなサイクルにハマり答えはでず、結局はゴールド家が悪いという考えが変わることはなかった。
むしろ確信し、より一層憎悪が強くなったと言えよう。
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