第14話抑えきれずに漏れ出てしまう程
それが数日間続いているのだから我ながら頑張った方だと褒めてやりたいくらいである。
ぶっちゃけ体感からして一週間ぐらい過ごした気分なのだから。
そんな事を思いながら使用人たちとお茶を嗜んでいると、お父様がこちらに近づいて来ているのが見えたので尚の事気を引き締める。
「城での生活はどうだ?」
「退屈で仕方ありませんわ。 この身体では走り回ることもできませんし、実家の様に読書や勉学に励む事もできませんもの」
そしてわたくしはお父様へ包み隠さず今の気持ちを吐き出す。
この数日間問題を起こさずに大人しく過ごしていたのだ。
お父様からしても話をこちら側が有利に進めやすくする為にも、わたくしが我儘を言って周りを困らせないかだけが唯一の心配であったと思うのでこれくらいの事は目を瞑ってもらいたい。
「まあそう拗ねるな。 今まではお前の体調を考えて、休養させて頂いたのだが、この様子ではもう大丈夫そうだな」
「ええ、なんでしたら一年でも二年でも療養しても良いくらいですわ(なんならそのような休暇など要らなかったのですけれども、わたくしへ与えた身体的及び精神的なダメージをより効果の高いカードへと育て上げる期間と思えば、これくらいの事、なんてことありませんもの。 あの糞殿下を貶める為ならばいくらでも)」
という言葉は建前で隠して決して口にはしない。
いまこの場所が敵の腹の中であるのならば、常に目と耳が偵察していると思うべきである。
しかしそこはやはりわたくしのお父様。
わたくしの言葉の裏に隠された本音を見抜いたようである。
その事をお父様の目が物語っている。
「流石にそんな長い期間だと皇族に迷惑をかけてしまう事になるから、体調が治ったのならばそろそろ我々も実家に帰ろうか」
「ええ、お父様」
◆
「勝手に帰っただとっ!? この俺に挨拶もせずっ!!」
「落ち着け、息子よ」
「これが落ち着いていられますか父上っ!! 奴らは皇帝陛下である父上だけでなく皇族の顔にまで泥を塗った行為ですよっ!!」
「言いたいことはそれだけか? 他に言う事はないのか?」
「はひ……っ!?」
あまりのゴールド家の無礼な態度に、やられたままで良いのかと父上へ進言してみるのだが、何故か父上は俺に対して怒っているようである。
その怒りようは凄まじく、普段感情を絶対に面に出さないお父様から怒りの感情がその表情や声音から、抑えきれずに漏れ出てしまう程である。
「もう一度聞く。 そなたが言いたいことはそれだけであるか?他に言わなければならぬ事があるのではないか?」
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