第13話気が滅入ってしまいそう

 しかしながら、わたくしのこの身体では教会での生活が何年持つかどうか……。


 なんなら寒い冬を乗り越える事が出来ずに一年も経たずにすぐ死ぬ可能性が高い気もする。


「それでは、私は旦那様へマリーお嬢様がお目覚めになられたことを報告しにまいります。アンナは引き続きお嬢様のお世話をお願い致します」


 そしてわたくしがこれからの事をあれやこれやと考えていると、アマンダがわたくしが目覚めた事をお父様へ報告するために部屋を出るのであった。





 わたくしが目覚めてから五日が経過した。


 分かった事と言えば今わたくしが過ごしている場所が帝国城の一角であるという事と、何故かお父様はわたくしを連れて実家へ帰る気配を見せないという事である。


 因みにお母様と、わたくしの側仕えであるアンナにメイド長であるアマンダ以外の使用人達は、昨日わたくしに問題が無い事を確認した後皆で帰って行った。


 その時にわたくしも一緒に帰りたいと言ったのだが「やるべきことがまだあるから残りなさい」とお母さまにぴしゃりと跳ね返されて今わたくしはここにいる。


 そのやるべき事がど面倒くさいのと、わたくしがいなくともお父様一人でどうにかなるのだからいいじゃないのというわたくしの思いは寸前のところで口には出さず舌の上で転がす。


「お嬢様、口には出ておりませんが顔に出てます」

「あらやだ、おほほほほ」

「あ、このクッキー美味しいですよお嬢様っ!!」


 しかし、だからと言って何もしない訳にもいかず『あんたんとこのボンクラのせいでわたくしはここに居るのですよ』という事をアピールするために中庭まで来てアンナとアマンダで周りの使用人たちへ見せつけるようにお茶を嗜む。


 その為わたくしは被害者面をしなくてはならず、城の使用人たちへこちら側が被害者であると思える行動を取らなければならない為、少しでも被害者面が崩れ始めれば即座にアマンダから指摘され、そしてせっかく今まで築き上げてきた『あれ? マリー・ゴールド様は噂と違い淑女なのね。 さすが公爵家の長女ね』という張りぼてが崩れぬよう崩れかけた表情を引き締める。


 因みにアンナはまだ花より団子なのかお茶と一緒にだされたクッキーにご執心のようだ。


 それにしても中庭で何をするでもなくお茶を飲み花を愛でる日々は流石にいい加減飽きて来た。


 何もすることが無いという事は想像以上に時間の進み方が長く感じてしまい、気が滅入ってしまいそうである。


 一時間経ったと思って時計をみたら三十分しか経っていない時のあれである。


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