第12話立派な大人のレディー

「これも全てわたくしの身から出た錆び、我儘を言い過ぎた罰なのでしょうね」

「それにしても今回カイザル殿下とその側近たちが行った行為は度が過ぎます」

「あら、わたくしの我儘は否定してくれないんですの?」

「事実ですから」

「ちょ、メイド長っ!!」


 そう言いながら光る眼鏡の位置を右中指で調整する我がゴールド家のメイド長であるアマンダと、アマンダの後について来るように入って来たわたくしの側仕えメイドであるアンナが顔面蒼白でアマンダを止めようとするその光景がなんだかおかしくて、わたくしは思わず吹き出してしまう。


「ふふ、言い返せないのが悔しいわね。 ですから今後は言い返せるようにできるだけ我儘は言わないようにするわ。 今まで迷惑をいっぱいかけてしまってごめんなさいね」

「お、お嬢様ぁーっ!!」

「何をおっしゃいますか。 子供は迷惑をかけてなんぼでございます」

「め、メイド長ぉぉっ!」


 そしてわたくしは今までの非礼を詫び、心を入れ替える旨を伝えるとアンナは号泣し、アマンダはわたくしを子ども扱いしてくるものの、その口元はどこか嬉しそうである。


「あら、わたくしももう立派な大人のレディーの仲間入りしていると思っておりますのよ?」

「それは十八歳になってから──」

「既にわたくしの胸の大きさはメイド長──何でもないです」

「まったく、ですがそれほど元気があるのであれば安心いたしました。 それに私の胸は成長途中でございます……何か?」

「い、いえ」


 そして今年で二十歳を迎えるメイド長に胸囲の話はご法度であると胸に刻みながら、これからの事を考える事にする。


 まず、このような大事になっては、わたくしとカイザル殿下との婚約は破棄せざるを得ない。


 そして我儘で有名であり、こんな問題を起こしたわたくしを娶ろうという殿方も現れる事はないだろう。


 まだ、我儘だけであれば貴族の中ではありがちなので公爵家の権力でどうにかなったかもしれないが、皇族と問題を起こしたという事は公爵家の権力ではどうにもできない。


 いくら我がゴールド家の力が他の公爵家の力よりも上であったとしても、それはあくまでも公爵家間の話であり、当たり前の話なのだがその公爵家よりも偉い存在なのが皇族なのである。


 だれも皇族からの印象を悪くしてまでわたくしを娶りたいと思うものなど、余程の物好きでかつ破滅思考の頭がイカレた者くらいであろうし、万が一そんな物好きがいたとしても周りの家族がそれを良しとしないであろう事くらいは容易に想像がつく。


 であれば教会でのんびり暮らすのも良いかもしれない。


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