第11話目が覚めると見知らぬ天井であった。
何を言っているのか初めは理解できなかった。
これが帝国でも歴史の長い貴族家の長男なのかと疑いたくなる程の、余りにも目上の貴族、そして女性に対する無礼な態度に周囲から雑音が消えた。
思考回路が追い付かなかったのはどうやらわたくしだけではなく、今この場にいる貴族達もやはり思考が停止してしまう程に絶句したのであろう。
レッドオーガとも呼ばれる所以である赤い短髪に高い背丈、そして筋肉がついているであろうと服の上からでも見て分かる程に分厚い身体を持つウィリアムが本来守るべき女性、たとえそれが噂では我儘令嬢として有名なわたくしだとしても、暴力を行使したが故に、より一層貴族たちはドン引きしまくっているのが分かる。
「まあいい。むしろこっちの方が好都合だしな」
しかし、相変わらず周囲の反応に気づいていないウィリアムは、膝をつくわたくしの背中を蹴とばし、そのまま突っ伏してしまいそうになるのを防ぐために手をついていた状態のわたくしの頭を足で踏みつけるではないか。
「素直に謝ることができないのならば俺が手伝ってやる。ほら、被害者であるスフィアに頭を下げて謝罪しろ」
「あぐっ!!」
そしてウィリアムはそのままわたくしの頭の上に乗せた足に力を入れ、まるで土下座の様な態勢にさせられてしまう。
「早く謝罪しろよ」
そして一向に謝罪しないわたくしに苛立ったのか、頭に載せている足に更に力を入れて再度謝罪しろと命令してくるのだが、そんな状況をわたくしの身体が耐えきれる訳もなく、あっけなく意識を手放してしまったのであった。
◆
目が覚めると見知らぬ天井であった。
まさかこの言葉を二回も使う日が来るなんて……。
「そっか、昨日わたくしは……」
そして記憶を手放す前の屈辱的な光景を鮮明に思い出すと共にあの時受けたダメージがじくじくと痛み出す。
きっと痣が残っているわね……。
本当に、何もやり返すことができずされるがままな、この身体が嫌になる。
「あら、お目覚めですか?お身体は大丈夫でしょうか?」
そんな時、わたくしが目覚めて身体を起こそうと動いたことにより出た音で、わたくしが目覚めた事に気づいたのであろう。
眼鏡をかけた見慣れた女性の使用人がノックをしたあとわたくしがいる部屋へ「失礼します」と入って来る
「え、ええ。所々少し痛むくらいでそれ以外は何も問題ないわ」
「それは良かったです。最初近衛兵が血相を変えながらマリーお嬢様を抱きかかえて来た時はどうなる事かと思いましたが、命に係わるような状態でないと分かり安心いたしました」
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