第17話最高の悪友

 一度口にすると今まで我慢してきた感情が一気に溢れてきて、自分でも止める事が出来ずに滝のように言葉を吐き続けてしまう。


 それでも、だとしても、契約違反だとしても、家格はどう足搔いたところで向こうの方が上である事には変わりなく、わたくしに選択肢など無い。


 しかしながらタダで行くのも腹の虫が治まらない為国王陛下へ文句を綴った手紙を送るのか決定事項である。


 子供のしでかした事は保護者である親の責任なので契約違反をしでかしたそちらのバカ息子のしりぬぐいとしてそれ相応の対応を、当日求める──というような内容を便箋にして十枚ほど無駄に回りくどい言い回し等使いまくって失礼が無いギリギリの範囲で執筆された絶対に読み難い手紙にしてあげましょう。


 それでもまだやり足りない、といいますか、行きたくないのだがわたくしはそちらのバカ息子と違ってちゃんと両親に常識という価値観を教えられておりますので駄々をこねて無理難題を押し付け周りを困らせる、等という事は致しませんわ。


「なんだか悪い顔しているな……。 それで、なんなら俺がこ、……ここ、婚約者候補として一緒に同伴しようか?向こうが最初にルールをぶち破って来たのだからこれくらいのイレギュラーぐらい許してもらわないとな。 それにあのカイザル・ユリウス・レオポルトの事だ。今回、君に手紙を送って来るような相手なのだから、ここ最近のタリム領ならびにランゲージ家の繁栄欲しさに再度婚約を迫るかもしれないからな。 それに婚約を狙う男性はカイザル・ユリウス・レオポルトだけではなく、パーティー会場に訪れた未婚の男性全てに狙われてしまう可能性も高いだろう。 その事を考えれば俺を虫よけとして連れて行くのはなかなか良い考えだと思うだけど、どうかな?」


 そして、あれやこれやと抗議文の内容を考えていたわたくしの表情をいじりつつもブレットが何故か照れながらそんな事を言うではないか。


「……………………」

「シャ、シャルロット……?」

「あなたっ、天才よっ!! それ良いじゃないっ!! これで当日は面倒事が一気に減るわっ!! それに、もしかすれば逃がした魚の大きさに気付いたカイザル・ユリウス・レオポルトの悔しがる表情が見えるかもしれないわっ!! メシウマねっ!!」

「め、めしうま? 何だそれ。まあ、協力できる範囲で俺も協力するさ。なんてったって今の俺達は運命共同体でもあり悪友だしな」

「そうね、面白そうな悪さを考えるのなら最高の悪友ね」

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