第16話わたくしの勘違い
◆
「…………はにゃ?」
家族で力を合わせてタリム領の発展に尽力を注ぎ始めて早三年が経ち、わたくしが予想していた以上のスピードで急成長を続けている日々。
その忙しいわたくし宛に目を疑うような手紙が来ており、その内容を読んだわたくしは思わず普段のわたくしならば絶対しないような変な声を上げてしまった。
「どうしたんだ? お前がそこまで取り乱すって珍しいな」
そしてわたくしのその声を聞いたブレットが興味津々といった表情で近づいてくる。
このブレットもこの三年でよき犬…では無くて、良きわたくしの右腕に育ったもので、今では殆どの仕事を丸投げ……ではなく、任せる事が出来る位には、出来る男に成長してくれた。
「んんっ、先程わたくしの口から出た声は忘れて頂戴」
「分かった分かった。 それで何が書いてあるんだよ?」
「貴方ね、絶対分かってないでしょう、まったく」
そしてわたくしは先程の恥ずかしい声を忘れるようにブレットに命令するのだが、そんな事などどうでも良いというような態度であしらわれ、それよりも手紙の内容を早く教えろと催促してくるではないか。
先程出来る男と申しましたが言い直しますわ。
仕事は出来るが気が利かない男ですわ、コイツは。
しかしながら勿体ぶっても仕方がないので、わたくしが読んだ手紙をブリジットに無言で、読んでみなさいという表情で渡す。
「なになに……タリム領発展の功績を成し遂げたランゲージ家に王城で開催するパーティーに招待したい。 それと同時にランゲージ家の長女であり元婚約者でもあったシャルロットを正式に我が第二夫人へと迎え入れたい。 カイザル・ユリウス・レオポルト……だと?」
「本当、どの面下げてそのような手紙を、婚約破棄した張本人が送って来てるのよって話ですわ。 そもそも、婚約破棄を後日正式なものとする為の条件として今後一切カイザル・ユリウス・レオポルトから接触しない事、そして婚約を申し込まない事という条件の上で婚約破棄を飲んだという事をお忘れなのかしら? まさかこの二つの約束を、たったの三年で、そして同時に破って来るなんて流石のわたくしも予想外過ぎて、変な声の一つや二つの出てしまうというものですわ。 なので先程の声はこの手紙を送って来た送り主が悪いわけでわたくしが悪いわけではございませんわ。 それにしても、カイザル・ユリウス・レオポルトはもう少し話が分かるお方だと思っていたのだけれども、どうやらこの手紙を見るにわたくしの勘違いだったようですわね」
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