第256話 計算通り
そして何よりもクロード姫も元は男性というのが大きい。
そもそも男性である俺ですら想像してみたら男性とそういう行為をするのは無理なのである。
それはクロード殿下も同じであろう。
であればこそ、この婚約関係は近い将来クロード姫から解消するように懇願された結果、この婚約は解消することになるだろう。
まさに、隙のない完璧な作戦である。
皇帝陛下には悪いが、これが現実であり、現実は自分の思い描いた未来にならないからこそみんな必死にもがいているのである。
しかしながら、だからこそ経験や状況証拠から確定された未来は利用できるのであれば利用して行くべきだろう。
これに関しては俺と皇帝陛下との未来予測の精度の問題であり、俺が皇帝陛下を騙しているとかではないと言いたい。
悪いのは未来予測が不十分な皇帝陛下側であり俺ではないのだから。
皇帝陛下は今までの自分の経験則から俺とクロード姫とを婚約させる手段が最善であると予測した結果であり、俺の責任ではない。
そんな事を思いながら俺は皇帝陛下が用意した全ての書類にサインをし、はれてクロード姫は俺の婚約者となった。
後はその事を周囲の貴族に知らせるためのパーティーを行うだけなのだが、そのパーティーだけが唯一この婚約でのデメリットであろう。
しかしながらそれを乗り越えれば俺にはメリットしかないのでパーテーの一つや二つくらい耐えてみせよう。
そして俺と皇帝陛下は固い握手を結ぶ。
「それじゃぁ、次期皇帝陛下となったカイザルくんには、これから少しずつ我の仕事を流していくつもりだからの。 よろしく頼む。 分からない所はクロード姫にでも聞いてくれたまえ。 腐ってもつい最近まで皇位継承権第二位という立場ゆえ幼少期から政の教育はしてきておるし、帝国でもトップレベルの教師をつけてきたつもりじゃから役にはたつじゃろうて。 という事で、空いた時間でわしは少しバカンスに行こうかの」
「はい、わかりました…………え? ちょっと待ってください皇帝陛下っ!! おいっ!! 待てって言っているだろうクソジジイっ!! どういうことか説明しやがれっ!!」
「ん? 何言っているか全く聞こえないの。 最近耳が遠くなってきたかのう。 歳をとるのは嫌なものじゃな。 ではそういう事で」
「都合のいい時だけ年寄りヅラしてんじゃねぇよっ!! まだ四十代でしょうがっ!!」
「では、メイド達よ、後は頼んだぞ?」
その瞬間皇帝陛下はまるで『計算通り』と言うような表情で聞き捨てならない言葉を吐いてこの場から去ろうとするではないか。
流石の俺でも今この場から皇帝陛下を取り逃したらとんでもなく面倒臭い事になることだけは理解できた為必死に皇帝陛下が帰ろうとしているのを阻止しようとするのだが、あらかじめ逃げるために用意していたであろう皇城で支えているメイドたち(メイド服でそうだと分かる)によって俺の身体を拘束されてしまってはそれもままならない。
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