第255話 アピールにもなるだろう
そして、クロード姫は身体は女体化したとはいえ元は男であり、さらに俺のことは嫌っているはずである。
ここで婚姻ではなく婚約ということで留めておおくことでいずれ婚約解消することは間違いないので、婚姻関係を結んで後々離婚するよりも簡単に解消することが可能であろう。
俺からすれば中身が元男性であのクロードであるという事さえ目を瞑ればまだ絶世の美女に見えなくもない女性と婚姻関係を築けるというメリットがあるもののクロード姫からすれば何一つメリットは無いのである。
俺でも、もし女体化したとしても男性であるクロードと結婚し、子作りなどと考えるだけで吐き気がする。
それはクロードだからダメなのではなく、男性とそういう関係になるということ事態が無理といういうことなのだ。
それを考えたらばクロード姫も間違いなく男性である俺とそういう関係になることは無理であると考えるのが普通であろうし、そう思っている事だろう。
そして、皇帝陛下はその事にまだ気づいていない。
おそらく皇族として長く生きてきたゆえにそこらへんの男女の関係というのが疎いのだろう。
親が決めた相手と結婚して子を成すという常識がこびりついてしまっている以上、この婚約が破綻するとは微塵も疑っていないはずである。
「では、一応ここに婚約する旨の書類一式があるゆえサインしてほしいのだが、ただ一つ、もし婚約破棄などの流れになった場合はクロード姫の気持ちを優先してほしい」
「それは、どういう事でしょうか?」
やけに用意周到なのは少しばかり気になるのだが、いつクロード姫を押しつける事ができる流れになるかも分からない現状、相手の考えが変わらないうちに契約してしまおうといつも書類一式を持ち歩いていても何ら不思議ではないと判断する。
「そうじゃな、クロード姫に何らかの原因があった場合はその限りでは無いのだが、例えばカイザル君から『やっぱり元男性と婚姻を結ぶのはちょっとな』などと心変わりしたとしてもクロード姫に何も原因が見当たらない場合はクロード姫も婚約の破綻を了承しないと、この婚約関係は解消できないという意味の事をこの書類には書かせてもらっておるのじゃ」
「ふむ、そういう事ですか。 それくらいであれば別に構いませんよ。 それに結婚するという事はノリで『やっぱりやめた』などというような軽い約束事では無いですし、そういう気持ちであるのならば婚約をするべきでは無いでしょう」
なんか後ろでカレンドールとモーリーが感極まっているのか声を押し殺して泣き始めているのが目に入ってくるのだが、その事には気づかないふりをして構わず俺は書類にサインをする。
これで『俺は良い加減な気持ちで婚約したのではない』という事をアピールできたので、万が一婚約破棄となった場合は『クロード姫の我儘で破綻した』というアピールにもなるだろう。
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