第235話 不覚
「サ、サラさんっ!!」
そう語るサラさんの表情は、私たちに自分達の運命を全て託しているような、そんな表情をしていた。
本来であれば立場的に私たちを阻止しなければならないカイザル様の護衛部隊も、想いはサラさんと同じなのであろう。
私たちがこれから夜這いをしかけにいくというのが分かっていながら阻止しなかったというのがカイザル様にバレたらそれこそカイザル様からの印象は悪くなるというにも関わらず、私たちを夜這いへ行かせてくれれる。
その彼女達の想いを、そしてブラックローズのメンバー全員の想いを抱いて私たちはこれからカイザル様に夜這いをかけに行くのだと思うと責任重大である。
そして私たちはサラさんやカイザル様の護衛部隊と固い握手を交わし、見送られながら戦場へと向かう。
◆
不覚
今の私たちの心情を言葉に例えるのならばその言葉が出てくるだろう。
まさかカイザル様がブラックローズの本拠地にある寝室で寝ているにも関わらずトラップを仕掛けているとは誰が想像できようかっ!!
まるで
意気揚々と、しかし慎重かつ細心の注意を払ってカイザル様の寝室へと入室するために静かに扉を開けて足音を立てずに一歩踏み込んだ瞬間に私たち三人の足はロープで縛られて逆さの状態で宙に吊るされてしまっていた。
「なんでこんな事をするんですかっ!! カイザル様っ!!! 酷すぎますっ!! 流石に泣きますよっ!! そしてこれは然るべきところに訴えさせていただきますっ!! それこそ愛護奴隷法違反ですからねっ!!」
「いや、なんだよその愛護奴隷法違反って……」
「先ほど私が考えた言葉ですっ!!」
そう私が自信満々に言うとカイザル様は私を見てアホの子を見るような視線を向けてくるのは気のせいだろうか?
「あ、はい。 ……いやまさか俺もお前達が捕まるとは思って無かったんだが、何をやってんだよまったく。 とりあえず今からおろしてやるから理由を聞かせてくれ」
「も、もうお嫁に行けないじゃないっ!! 恥ずかしすぎますっ!!」
「カレンドールも、今おろしてやるから泣き止んでくれ、な?」
「優しくおろしてくれたうえにギュッとしてくれるかしら? そうすれば泣き止むと思うの」
「あー……分かった分かった」
「私はジェットエンジンの原理を教えてくれたら泣き止むと思いますっ!!。 えーんえーん……ちら?」
「パルスジェットエンジンなら見せてあげるから……瓶と蓋とアルコールは今あったっけな……」
「カイザル様っ!! 騙されてはいけませんっ!! この者達は嘘泣きですっ!! そして私はカイザル様の赤ちゃんを宿してくれれば泣き止みますっ!!」
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