第234話 奴隷は家族
そもそも本来で有ればカイザル様に夜這いをかけようとする相手を見つけた場合は阻止しようとするのが当たり前であり私だってそうするのだが、なぜか目の前の自称筆頭奴隷であるサラさんだけではなく、後ろに控えている奴隷達もサラさんに同意見のようである。
しかし、サラさんから帰ってきた言葉を聞いても『カイザル様はこと恋愛事に関してはなぜかとんでもなく鈍感である』という、ブラックローズのメンバーで有れば誰しもが知っている事を言うだけではないか。
はっきりいてだから夜這いをするのだと言いたいくらいである。
「そうですね、恐らくカイザル様は奴隷の事を『家族』とでも思っているのでしょう。 だからこその奴隷に対しての恋愛事に関しては超絶鈍感なんだと思います」
「ええ、そうだと私も思います……。 家族だからこそ『そういう感情は芽生えてこないだろう』と思っている上に『奴隷達は家族も同然だから恋愛感情を抱くのは失礼であるし、彼女達への裏切り行為でもある』というような事を考えている事も伝わってきます。 私たちの事を家族と思って接してくれるのはありがたいのですが、でも『本当の家族』になりたい私たちにとってはカイザル様には悪いとは思いますが最も邪魔でしかない価値観でもあります」
「そうなんです。 私たちブラックローズは本当の意味でご主人様と家族になりたいのにこれではいつまで経っても本当の家族にはなれず、カイザル様の『家族ごっこ』に付き合わされて終わる未来しか見えないのです」
サラさんの言葉に私は『うんうん』と大きく頷く。
「そもそもカイザル様はたまに『いつか父さんみたいな大きな背中で〜〜中略〜〜家族になろうよ』と口ずさんで歌ているにも関わらず、その歌詞に感動した上に『ついに私たちに手をつけるのですねっ!!』と期待していつ来てもいいように毎晩可愛い下着で待機しているにお関わらず待てど暮らせど来ないのは、本当に意味がわかりませんっ!! 私がどんな気持ちで待っていたと思っているのですかっ!!」
「確かに、あの歌の歌詞は感動しますし、期待もし舞いますね。 実は私もいつ来ても良いように万全の状態で毎日寝室で眠っているのですが、待てど暮らせど全く夜這いにくる気配もプロポーズする気配すらないですからねっ!!」
どうやらあの歌の被害者は私だけではなかったようで少しだけ安心すると共にサラさんとはこれからも仲良くできそうである。
「そして、だからこそあなた達の夜這いを応援しているのです。 一度『奴隷は家族』という考え方に亀裂が入れば後はその亀裂を広げていけば良いのですから。 ゼロを一にするのは難しいですが一を百にするのは簡単であるということですね」
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