第218話 朝まで子作りコース間違いなし

 もしこれが他の集落であれば一度話し合いを設けようとするだろう。


 ぶっ潰しに来たと言っても殺し合いに来たという訳ではない為、一度ここへ来た理由や戦いにおいてのルールなどを聞き納得出来るのであれば集落一の強さを持つとされる者一名と戦うというのが基本的な流れであると知ったのは私が奴隷となり同じ白狼族で、しかも同じ班になったキュリムから教えてもらった。


 私が住んでいたこの集落だけが何故か強さに対して異様に固執しているのだと分かった時、絶対に見返してやると心に誓ったのである。


 今まで私自身も心のどこかでそれが普通であると思っていたのだと知ったというのも大きい。


 とにかく、私の故郷はこのやり場のない感情をぶつける為に絶好の的であるという場所であり、そんなに強さを求めるのが好きなのならば思う存分求めさせてあげようという事である。


 そして、私はご主人様に褒められ、頭を撫でられる為にも絶対に完膚なきまでにボコボコにしてその腐り切った小根を叩き潰す必要がある。


 それは今の私では簡単ではあるものの時間がかかり面倒臭そうという理由から今まで出来なかったのである。


 それがご主人様が休日をくれるというではないか。


 これはきっとご主人様から『ラフィーよ、言いたい事は分かるな?』という事で間違いないだろう。


 それは、私とご主人様は心と心で繋がっているという何よりもの証拠に違いない。


 きっと、この集落をぶっ潰して来たその日は朝まで子作りコース間違いなしである。


 何故か他の奴隷の中にも私と似たような妄想をして語っている可哀想な娘たちが何人かいたのだが、所詮は妄想は妄想でしかない。


 可哀想ではあるのだがそれが真実であり、そしてそんな妄想を夢見てしまう気持ちも分かるので私は敢えてそっとしてあげる。


 教えないというのも優しさだから。


「あぁ? 久しぶりにバカが喧嘩を売りに来たと思えばチビのラフィーじゃねぇかよ。 弱い弱いとは思っていたが、この様子だとどうやら頭の方まで弱かったみたいだな。 こんな頭も弱いお前を奴隷として買ってしまった奴が可哀想に思えて来るぜ」


 ここへ来る前の事を思い出していると、聞きなれた声が聞こえてくる。


 その声の主は私の姉であり、奴隷へ売り飛ばす時に私の両足を折った奴でもある。


 むしろ両足が折れ、感染症を引き起こしていたからこそ私はご主人様に拾われた事を思えば感謝はしているのだが、だからと言って許す許さないはまた別問題である。


「お? なんだ、足は治ったみたいだな。 せっかく折ってやったのにつまらねぇ」

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