第219話 ぶっ潰す事にする
そして姉は私の足を見てそんな事を宣うではないか。
この、ご主人様が治してくれた両足に対してである。
たとえ姉の両足を切り落としたとしても許せるはずがない。
「なーんだ、奴隷に落とされたチビじゃん」
「一体どんな猛者が来たのかとすっ飛んできて損したぜ」
そんな事を思っていると、辺りは私の遠吠えを聞きつけて集まってきた集落の連中で埋め尽くされていた。
「まったく、我が家の面汚しめが」
「まだ躾が足りなかったようね。 折角私たちの娘が集落の長の息子と婚約が決まったというのに」
「本当そうだな。 婚約相手の次男はでき損ないの長男と違ってこの集落一の実力者だというのに、こんなめでたい時に」
「向こうの長男は空気を読んで集落の外れにある谷底へ身を投げて自殺したというのに」
そして、その中には私の両親もいたらしく、私の姿を見た瞬間にに対して恨み節を口にしているのが聞こえてくる。
それを聞いた時私は『あぁ、この集落は遠慮する必要もない』と心の底から思うことができた。
その点だけは、情けをかける必要も無いと思えた事に関しては両親に感謝しようと思う。
「おい、お姉さまを無視してんじゃねぇよっ」
その間、姉を無視していた事が耐えられなかったのか、顔を真っ赤にした姉が私へ殴りかかろうとするのだが、その拳が私に届くことはなかった。
「まぁ待て、ローラ。 実の妹だからこそ腹が立つのいうのは俺も同じように使えない兄がいたから理解はできる。 しかし、俺の婚約者に舐めた態度を取るこいつの態度はそれ以上に腹立たしい。 こいつを潰すのは俺にやらせてもらえないか?」
「ゼンがそこまで言うってんなら……構わないよ。 その代わり私の分もこいつを痛ぶって、私を、この集落をばかにした事を後悔させてやってくれ」
「あぁ、元よりそのつもりだ。 それに『殺してくれ』と言うまで痛ぶるつもりだったしな」
「それでこそ私の婚約者様だぜ」
怒り狂いかけていた姉はゼンという男性に惚れているのか、なんと獲物認定していたであろう私をその男性に譲るではないか。
その光景に驚くと共に『婚約者』だと言っていたので成る程な、と納得する。
そして私はその事実に歓喜すると共に神様に産まれてきて初めて感謝する。
だって、私を捨てた両親と姉の目の前で姉の愛する婚約者をぶっ潰す事ができるのだから、これ以上ないくらいに最高のシチュエーションではないか。
それにしても、いくら私の事を見下しているといっても、敵である私の前で緊張感のかけらも無く突っ立っているのは『どうぞ潰してください』という事なのだろうか? きっとそうなのだろう。
だから私は手始めに姉の婚約者の股間をぶっ潰す事にする。
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