第210話 もう三回目ですわよっ!!

 とにかく今はあの二人を無闇に刺激するバカがいなくなった事に安堵するも、依然として俺達の運命は彼女たちに握られている事には変わらない為、これから俺達は一体どうなるのかという恐怖心は無くならないのであった。





 帝国内にある山の奥の小さな村で子供の泣き声と若い女性や青年の悲鳴や怒号が響き、年老いた者の亡骸が転がっているそんな中、この惨状を作り出した五名が楽しそうに飯を食べ酒を飲んでいた。


 そして生かされている村人たちには全員手錠を掛けられており、下っ端であろう男性が自殺をしないように猿轡を嵌めて行っているのが見える。


「しっかし楽な仕事だな本当。 何てったって寂れた村を襲って奴隷として売れそうな奴を攫い王国へ送るだけで大金をもらえるんだからよっ」

「本当そうっすよね。 所詮村に残っている連中は冒険者になる実力すらない雑魚か女子供か老人しかいないっすからね」


 そしてこの村を襲った賊供はそう言うと『ガハハハハ』と汚い笑い声をあげる。


 その光景を見て私達は怒りを抑え、じっと耐える。


 間に合わなかったという後悔は後にすれば良い。 今は来る時のために息を潜め耐える時である。


 そして賊たちはいつの間にか眠っており、そして夜が明け昼頃に奴らは来た。


「やっと来たか、待ちくたびれたぞ」

「そうは言うな。 それで今回のブツはどこにある?」

「それならあそこの平家に全員ぶち込んでるから見てきな」


 その奴らとは奴隷商が雇った買い取り業者であり、賊が捕まえた村人を奴隷として買い取ると言う糞よりも劣る人間たちである。


 そして奴らが来たという事は私たちもこれで動けるということでもある。


「さぁ、行きますわよっ!!」


 そしてわたくしエルフのメアリーは、ケンタウロスのアンナ、ヒューマンのジェシカ、ドラゴノイドのガレットへ声をかけ、彼らがいる所へと隠れていた木の枝から飛び出す。


「って、何でわたくしの掛け声を待たずに皆様突撃しているんですのよっ!! 今回の突撃の合図はわたくしだったはずですわっ!! やり直しを要求しますわっ!!」

「すまんすまんメアリー。 しかし、コイツらの非道に僕は我慢の限界だったんだ。 君の合図で突撃というのは分かってはいたのだがどうしても我慢できなくて気づいたら飛び出してしまっていたよ」

「ご、ごめんなさい。でもどうしても子供たちが可哀想で……」

「次も突撃の合図はメアリーでいいからさ、今回は許してくれない?」

「そう言ってもう三回目ですわよっ!! いつになったらビシッと決まるんですのよっ!!」

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