第156話幻聴
◆
昨日は一睡もできなかった。
恐らく俺が起きている事がバレてしまったら俺の初めては無惨にも肉食獣達によって散らされていたかもしれない。
いや、間違い無く散っていただろう。
ちなみに俺は怖くてマップ機能は結局使用する事ができなかった。
「どうしたんですか? カイザル様。 顔色が優れないようですが?」
そんな俺の、寝不足故の顔色の悪さに気付いたのか、サラが俺の体調を気遣ってくれる。
「いや、何でもない。 大丈夫だ」
「そ、そうですか。 もし体調が優れないようでしたらいつでも私に申してください」
「あぁ、ありがとう。 その時はそうさせてもらうよ」
そんな会話をサラとしながら風呂場へと移動して寝汗を流す。
この世界であるのだが魔石さえあれば水もお湯も炎も出せるので、その点に関しては前世より便利だなと思う。
ちなみに風呂場であるのだが、そこはやはり腐っても
「カイザル様、着替えは脱衣所のいつもの所に置いておきますねっ!!」
「あぁ、ありがとう」
「カイザル様、バスタオルも脱衣所のいつもの所に置いておきますねっ!!」
「あ、ありがとう……」
「カイザル様、湯上がり時に飲む飲料水も脱衣所のいつもの所に置いておきますね」
「ありがとう……」
「カイザル様」
「……何だ?」
「いつでも中へ入れる準備はできて──」
「一人でできるから大丈夫だ」
「…………遠慮なさらずにその若さゆえに激った欲望を私の身体を使って吐き出していただいても──」
「いやほんと大丈夫なんで」
「背中を──」
「もう洗ったから、本当に大丈夫なんで」
「あ、はい……。 それでは、その時が来るまで私は待ってますので、決心がついたらいつでもお呼びください」
ちょっと何言っているのか分からない。
何でいきなりシモの話になるのか。
そして何故サラは少しだけ残念そうな声音で返事をするのか。
普通奴隷主から性的な命令をされると奴隷側は嫌な気分になるのではないのか?
もしかしたらサラの心遣いなのかもしれない。
いや、きっとそうに違いないし、これを追求してはいけないと本能が訴えかけてくる。
「それと、俺が出る時は脱衣所から出てくれ」
「嫌です」
「……え?」
「分かりました」
そしてこのまま俺が出てくるまで脱衣所で待機しそうな雰囲気を感じ取った為俺は一応念の為俺が出る時は脱衣所から出るよに言うと、一瞬だけ幻聴が聞こえた気がしたのだが、睡眠不足故の幻聴だろう。
きっとそうに違いない。
そして俺は寝汗を流し朝食をみんなで食べ、ブリジットとカレンドールの三人で学園へと向かう。
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