第155話今日も無事一日が終わる
「一体ここで何をしているのですか? 明日はクロード殿下という馬鹿との決闘であるというのに、何でカレンドールさんはここにいるのでしょうか? 今自分がどこにいるのかも分からないとは言いませんよね?」
本当に意味がわからないし、あり得ない。
カレンドールさんは一体何をしているのだと大声で叱責したい所ではあるのだが、流石にカイザル様の睡眠を妨害する事になりかねない為ここはグッと堪え、淡々と『どういうつもりでこの部屋にいるのか』と聞く。
そもそも奴隷であり、そして
そもそも婚約者であろうものが、相手の大事な日の前日の睡眠を妨害するような真似をするとは何事か。
そりゃ確かに相手はクロード殿下というゴミ屑なので、たとえ徹夜でカイザル様が決闘を挑んだとしても、万に一つも負ける要素など無いのだが、それでもカイザル様の負担になるような事をするなど言語道断である。
「あら、そういうブリジットさん。 あなたも何故
「質問に質問で返さないで下さい」
全く、質問を質問で返すなどどういう環境で育てばこの様な下品な対応ができるのだろうか? 一度親御さんに聞いてみる必要があるかもしれない。
「あら? 先程の
「ぐぬぬぬっ!!」
カモフラージュの為にと思っていたのだが、まさか少し前まであれほどカイザル様の事を嫌っていたカレンドールが何故ここまでカイザル様に好意を持ってしまっているのか、意味がわからない。
カイザル様の強さや思想に崇拝してしまうのは分かるのだが──
「んん………」
そこまで考え、どう切り返してやろうかと思っていたその時、カイザル様から寝苦しそうな声が漏れ聞こえてきたではないか。
「カレンドールさん」
「ええ、ここはカイザル様を起こさない為にも一時休戦と致しましょう」
そして、あまりにもタイミングが良すぎるような気もするが、きっと気のせいに違いないカイザル様の寝苦しそうな吐息により一触即発の雰囲気は霧散し、今日は三人で眠る事にする。
そもそもカイザル様は皆んなのカイザル様なのだ。
独り占めしようという考え自体がダメなのだ。
その考えはカレンドールも同じらしく、二人で両端からカイザル様を抱き枕がわりに抱きついて眠りにつく。
人三人分の厚みがあるベッドの中には自称筆頭奴隷のサラが、そのベッドの中身を人一人分くり抜いて潜み、カイザルの重みを感じて悦に浸っているとも知らずに今日も無事一日が終わるのであった。
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