第157話蛇の生殺し

 とりあえず馬車で学園まで向かうのだが、いつもより少し周囲が騒がしいような気がする。


「どうしましたか? カイザル様」


 何か今日はイベント事があったのだろうか?


 そんな事を思いながら外を眺めていると、左側に座るカレンドールが俺に話しかけてくる。


 ちなみに右側にはブリジットが座っており、はっきり言って狭すぎるのでどちらか片方は向かい側に座ってほしいのだが、それを言ってはならぬと第六感が激しくアラームを鳴らしながら訴えてくるので、未だに怖くて言えないでいる。


「あぁ、いや、外が少し騒がしいなと」

「それでしたら私が説明しますねっ!!」

「ちょ、ブリジットっ!? 私がカイザル様に聞いているのですが、それは反則ではなくてっ!?」

「隙を見せたカレンドールが悪いのですぅー。 私は悪くありませんーっ」


 そして俺を挟んでカレンドールとブリジットが口喧嘩をし始めるのだが、口喧嘩がヒートアップしていくにつれて二人の間に挟まれている俺に二人の柔らかな部分が押しつけられるような形でダイレクトに伝わってくるではないか。


 むしろこれこそが二人の仕組んだ罠なのではないのか? などと思ってしまうと流石としか言いようがない。


 何故ならば俺はジュニアを沈める為に頭の中で般若心経を唱えなければいけない程に追い詰められているからである。


 カレンドールもブリジットもこの身体が思春期真っ只中の健全な男性の身体であるという事を自覚してほしいものである。


 はっきり言って昨日の夜から蛇の生殺しでどうにかなってしまいそうだ。


 恐らく、俺が何もして来ないからこその安心感故に彼女達は無防備になっているのだろうが、ここは一度他の奴隷達も含めて彼女達にしっかりと無闇矢鱈に年頃の男性にはスキンシップなどを控えるように言い聞かせた方が良いのかもしれない。


 それ程までに男性という生き物、特に思春期ど真ん中の男性達は簡単に勘違いしてしまう生き物なのだと。


 そんな事を思いながらカレンドールとブリジットの話を要約すると、どうやら今現在三頭のドラゴンがここ帝都に向かって飛んできているようで、その関係で帝都から逃げようとするものと、一度でもいいから見ようと空を眺めに外に出ている者、そして最悪の事態を想定して衛兵などが警備を強化している為のようである。


 にしてはのんびりしてるなとは思うものの、実際にドラゴンによる被害が出たのは数世代前の話であるため、記憶にある高齢者たちは避難し始め、それら以外はちょっとしたイベントのような感覚なのだろう。


 

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