第143話普通に考えればあり得ない

 はっきりって意味が分からない。


 そもそもカレンドールはブリジットとはまた違った視点からカイザルのようなクズが心底嫌いであった筈である。


 ブリジットは曲がった事が嫌いであり、カレンドールは貴族の責務をせずに好き勝手生きる者を見下している節があったのだが、そのブリジットがカイザルの奴隷へと成り、次はカレンドールがカイザルの婚約者に成るなど普通に考えればあり得ない。


 そもそもカレンドールは今まで婚約者を作らず、俺一筋ではなかったのか?


 そこまで考えて俺はある一つの可能性に行き着く。


 それは、今まで俺がカレンドールに対して婚約どころか俺の元に集まる、その他大勢いる女性の一人としか接して来ず、最近ではスフィアにばかり意識して追いかけていた為、カレンドールは俺の気を引くためにわざとカイザルの婚約者に成ったフリをして俺の気を引こうとしているのではないか? 


 そう思った俺は、この考えで間違いがないと判断する。


 頭がいいのも考えものだな。 こうも早く問題を解決してしまっては面白くないというものだ。


 しかしながらそうと分かれば今も俺が振り向かない事により寂しがらせているカレンドールを慰めに行くべきであろう。


「御免な、スフィア。 俺はスフィアの事も大切なんだが、それと同じようにカレンドールも大切なんだ。 スフィアという女性がいるにも拘らず別の女性の為に行動するなんて嫌だよな? でも分かって欲しい。 俺はどちらか一人を選べないんだ。 そんな事をしてしまうと俺の心がどうにかなってしまいそうで──」

「うるさい、気持ちわるい。 昨日私には今後一切話しかけて来ないでと言ったよね? なのになんなの? なんで朝開口一番私に話しかけて来てるの? しかも良い事言っている風に聞こえるけど俺は浮気性だから許せって話だし、本当にサイッテー。 百歩譲って皇族だからだとしても、それを好意を寄せている女性に言う? 産まれて来る時にデリカシーは忘れて産まれて来たの? それともただのバカなの? そもそも昨日も言ったけど私、今クロード殿下の事カイザル以下だと思っていると申した筈ですが? クロード殿下の頭の中は空っぽですか?」

「うん、そんなに照れなくても良いんだぞ? まあ、自分の気持ちを、特に好きな異性に対して言うのは恥ずかしいから思わず真逆の事を言ってしまうスフィアの事も分かっているから。 それじゃぁ行ってくるよ」

「だから話しかけないで。 そして一生私に拘らないで下さい。 このまま無視して私に関わるのであれば学園長に相談させていただきますので」


 そして俺はなかなか素直になれないスフィアを後にしてカレンドールの元へと向かう。

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