第144話なんらかの方法で洗脳

 なんか学園長に言いつけるとかなんとか言っていたのだが、そうまでして俺の気を引きたいのだろう。


 なんだかんだで可愛らしい所があるではないか。


 もう少しだけ素直になった方が可愛いのに、とも思うんだがあれはあれで実際は俺の事が好きなのだと思えば可愛いものである。


 だが、やはり結婚となると素直で従順な女性が好ましい。


 スフィアには悪いのだが、あれではよくて妾だろう。


「カレンドール、一体どうしたんだ? そんなに声を荒げて君らしくないではないか」


 そんな事を思いながら俺は、未だブリジットと口論をしているカレンドールの元へと向かい、話しかける。


「五月蝿いわね、ゲス野郎。 今はブリジットと大事な話をしているのが見て分からないのかしら? 分かったならどっかへ行ってちょうだい」

「ゲ、ゲス……だと?」


 しかしカレンドールの反応は俺の想像していたものとは異なり、心底面倒臭そうな声音と表情で俺をあしらおうとするではないか。


 それにこの俺に向かってゲスだと言うではないか。


 一体どこをどう見れば俺がゲスに見えるというのか。 おかしな話である。


「は? 自分のしでかした事はクロード殿下の頭の中から抹消されているのかしら? スフィアから、拉致されていた時にスフィアを賊に差し出してでも自分だけは助かろうとしていたらしいと聞きましたが、それはスフィアが間違いを申していると?」


 そしてカレンドールは何か勘違いをしているようなのでここは俺はしっかりと誤解を解いてやる必要があるようだ。


 まったく、まさかここまで頭が悪く手間がかかる女だとは思わなかったぞ。


「なんだ、その事か。 そもそも俺はこの帝国を将来継ぐ者である。 であればスフィアと俺を比べた場合、スフィアを賊に差し出てでも守るべき価値が俺にはあるし、そうするのが当然であろう。 それにそうなればスフィアは皇族であり将来の皇帝である俺の事を、女だてらに身を呈して守ったとして末代に渡って孫、曾孫と自慢できるのだぞ? それはスフィアにとっても、男爵家であるラヴィーニ家にとっても光栄なことではないか? 言うなればウィンウィンな関係で、何故俺がゲスになるんだ?」

「…………あんた、本当に最低な男ね。 カイザル様とは大違い」


 そして俺がバカにも分かりやすいように丁寧に教えてあげたにも拘らず、何故かカレンドールが俺を見る目が汚物を見るような目に変わり、さらにはカイザルの方が俺よりも優れているような事を言うではないか。


 成る程、ブリジットだけではなくカレンドールまでなんらかの方法で洗脳したという事なのだろう。

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