第137話 ブゥリィジットォォォオオオオオオオッ!!

「そもそも、俺が黒い仮面という言葉を使ったからと言ってカレンドールさんが言う『黒い仮面をつけてカレンドールさんを助けた人』である証明にはならないと思うんだが? 俺はその黒い仮面の男の手下かもしれないぞ?」


 そう俺が苦し紛れな言い訳を言うのだが、そんな俺の言葉をカレンドールさんは無視して更に喋り始める。


「そしてあの時、黒の仮面を被った男性は無詠唱で魔術を行使していました」

「そ、それがどうかしたというんだ? 無詠唱で魔術を行使できる人は珍しいかもしれないが、それでもいない訳ではないはずだ」


 そう俺は何とかそう言い返す。


 挽回できるチャンスがあるのならば、それがゼロではない限り泥臭くても足掻かせてもらうつもりである。


 そもそも、まだ俺があの黒い仮面の人物と同一人物であるという決定的な証拠はない筈である。


 淡々と話す態度こそ、証拠が揃っている証拠を持っている証明に見えなくもないが、単なるブラフの可能性だってあるのだ。


 某バスケット漫画の先生も『諦めたらそこで試合は終了ですよ』と言っていたではないか。


 そもそも、俺とカレンドールさんとは修練場と闇ギルドマスターであるベルムードから魔術アイテムを奪った時の二回しかないのである。  


 そのたった二回でどうやって黒い仮面の人物と俺が同一人物であると特定できるだけの証拠が集まるのか。


 いいや、集まらないね。


「そうね……。 無詠唱で魔術を行使できる人物という点だけで見ればなんだかんだでここ帝都でもざっと千人以上はいるでしょうね」

「そうだろう、そうだろうとも。 だから──」

「でも、無詠唱であれ程の威力を出せる魔術を行使できる人物は一人も居ないわ。 そもそも、今までの歴史上でもカイザル様、あなただけなのだけれども……この点に関しては何か物言いはあるかしら?」


 そしてカレンドールさんは上目遣いでコテンと可愛らしく首を傾げる。


 もし状況が状況でなければ可愛いと思えたのかもしれないのだが、今この状況では正直言って可愛いとは微塵も思えない。


 むしろ俺の首を刈りにきた死神にしか見えないんですけど……。


「……ほ、他にもう一人いるかもしれないだろう? 別に俺一人しかいないと証明ができている訳でもないだろう?」


 なんだかんだでカレンドールさんは決定的な証拠はないので、限りなく黒に近いグレーで逃げ切るしかない。


 卑怯だとか汚いとか逃げるのか、などとカレンドールさんは思うかもしれないのだがコレが大人の世界なのだよ。


「ちなみにブリジットさんはどう思うかしら?」

「は? 当然ご主人様が黒い仮面の正体に決まってます。 そのくらいの事も分からないとは、カレンドールの目は節穴か何かですか?」


 おいぃぃぃぃいいいいいいいいいいっ!? ブゥリィジットォォォオオオオオオオッ!! 


 

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