第136話 冷静に対処すればなんて事はない
そしてグレイスはこれまた豪快に扉を閉めて退出していく。
彼はこの家を壊す気でいるのだろうか?
そんな事を思いながら俺はテーブルの向かい側に凛とした佇まいで座っているカレンドールへと目線を向ける。
「一体何を企んでいるんだ? そもそも何で俺と婚約をしたいと言い出したんだ?」
「そんな、他人行儀な対応はしないでくださらない? 私達は婚約者同士なのですよ?」
「そう、何で俺と婚約何か……ってまだ婚約者になった覚えはないからなっ!? まだお前の家であるルイス家が俺の家であるクヴィスト家に対して婚約を申し込んでいる段階であり、まだ俺はカレンドールさんとの婚約を承諾した覚えはないんだがっ!?」
「そうですか、なるほど。 わかりました」
「お、やっと分かってくれたかっ!」
「これはカイザル様が私にたいしての試練なのですね。 そしてその試練を超えない限りは婚約は承諾できないと……そういう事なら受けて立つわよっ」
やっと分かってくれたかと安堵したのも束の間、カレンドールさんは『ふんすっ』と鼻息を荒くし、自信満々にそう答える。
一体どこからその自身が出てくるのか不思議で仕方ない。
「いや、少し前までカレンドールさんは俺のことを嫌っていただろう。 それがどうして今日になってアポなしで婚約の話を持ってくるんだよ。 アポなしでなっ!!」
大事な部分なので『アポなし』は二回言いました。
どこに自分の娘の婚約話をアポなしで持ってくる貴族がいるんですかねっ!?
前代未聞だよっ!!
「そんな事は決まっているわ。 私はカイザル様に魔術でも武術でも人としての器でも完敗した上に、あの日闇ギルドマスターのベルムードから危ないところを救ってくれ、それだけではなくお兄様の薬物依存までも回復することが出来たとんでもない効果を持った回復薬を無償で頂いたから。 これじゃダメかしら? むしろ私から見ればアポなしでも婚約しに行くに値する程の事だと思うのだけれども?」
ぐぬ、それを言われると確かにと思ってしまいそうになるのだがまだこちら側には武器があるのだ。
冷静に対処すればなんて事はない。
「だが、あの時あの場所にいて闇ギルドマスターであるベルムードからカレンドールさんを守ったのは俺ではなくて黒い仮面を被った別の人だったはずだが?」
そう、あの時の俺は変装しており仮面までかぶっていたので素顔は見られていない筈である。
「では何故あの場所になかったというカイザル様が『黒い仮面をつけていた』事がわかったのでしょうか?」
どうやら間抜けは見つかったようである。
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