第101話黒歴史

「許可します。 どうやら本気・・で戦ってくれるみたいで安心だわ。 しかし、それだけではあなたの事ですから信用できません」

「どうしろと? 契約でもするか?」


 折角こちらからカレンドールさんに合わせて提案してみたのだが、まったく信用されていない事がその表情と、返って来た言葉からも分かるので本気である事の証明として契約する事を提示する。


「それは勿論致しますが、それだけでは心許ないので『勝つ事を最優先事項とする行動を取る』という文言も付け加えさせていただきます。 開始早々わざと負けるなどという事をされてはたまりませんから」

「……分かった」


 ほぼ強制的で、俺の意見など端から聞くつもりなど無い事が伝わって来るその物言いに少しばかり苛立ちを覚えるものの、もしかしたらここで俺を切れさせる事がカレンドールさんの作戦である可能性もある為、ここはぐっと堪えて、返事を返す。


 これこそが大人の余裕というやつなのかもしれない。


「あら……? クズの癖に物分かりが良いわね」

「……あ? …………そりゃどーも」


 あ、危ねぇっ! 危うく軽くキレ散らかしてしまう寸前だった。


 大人の余裕がある俺じゃなきゃキレ散らかしているね。


「じゃぁさっさと契約してこんな茶番は終わらそうか」

「それもそうね。 では契約魔術など使えないであろう貴方の為にここは私が──」

「その必要はない」


 そしてカレンドールさんが懐から書類とペンを出し始めるので俺はそれを止めさせる。


「……やはり、先程の返事は嘘だという事ですか? それとも、今になって怖気付いたのでしょうか? やはり、どの道クズはどう転んでもクズという事が証明されましたね。 お兄様が含みを持たせたような事を言うものですからまさかと思って模擬戦を申し込んでみたのですけれでも、どうやらそれは思い過ごしの取り越し苦労だったようですね」

「ちげーよ。 契約魔術など無詠唱で終わらせろよ、面倒くせぇ……」


 いちいち内容を記入して確認してサインするなど手間以外の何者でもない。


 貴重な休み時間をなんだと思っているんだと言いたい。


「め、面倒臭いってあなた──」


 そして俺はまだ文句を言って来ようとするカレンドールさんを無視して『パチンッ』と指を一つ鳴らして契約魔術をかける。


 本来であれば契約魔術くらい無詠唱で行使できるのだが、ここはやはり指を鳴らしたほうがカッコイイと俺は思う。


 無駄を削ぎ落とされた美というものが存在するように、無駄がある美というものも存在すると俺は思う。


 なんなら意味は無いけど魔法陣が描かれた白い手袋をはめても良いかもしれない。


 しかしながらやり過ぎもダメだという事も俺は知っている。


 その見極めが大切だ。


 調子に乗ってはいけないという事を前世の中学生時代、某錬金術師の某大佐に憧れて暇があれば指を鳴らしていた黒歴史とかいうものが産まれてしまった経験から俺は学んでいるのだ。


 今だからこそ分かる。


 端から見ればそれをカッコイイと勘違いして隙あれば指を鳴らしまくっているその光景は痛い奴の何者でもない。



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な、なんとかカクヨムコンテスト7期限以内に7作品規定文字数10万字を書けました……_:(´ཀ`」 ∠):




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