第102話散ッ!!

「これで契約魔術は完了しているはずだ。 信用できないのならば自身にかけられた契約魔術の内容を確認するがいい」

「こんな子供騙しのハッタリで騙されるわけが無いわ。 そもそも無詠唱で魔術の行使などできる訳が……そ、そんな……嘘……っ?」


 そして俺が無詠唱で契約魔術を行使した事を信用できないカレンドールさんは口でそんな訳がないと否定しながら自らにかけられた契約魔術の内容を確認した瞬間、その表情は驚愕の表情へと変わり、言葉が詰まる。


「流石に契約魔術程度無詠唱で出来なくても、契約内容の確認は自分で出来るようで安心したよ。 それで、どうだ? 契約内容に不備はあったか?」

「な、ないわ……不備なんて無かったわ。 一体あなたは何をしたと言うのかしら? 無詠唱での魔術行使は出来ないというのが常識のはず……。 ならば何か種があるはずよ。 そしてわざわざ無詠唱で魔術を行使した風に見せかけて相手を騙して萎縮させる戦法かしら? 本当、クズが考えそうな事ね。 そしてやはりクズは詰めが甘い」


 しかしカレンドールさんは契約魔術が行使されていることは自ら確認したため認めるが、無詠唱で行使したという点は認めないよである。


 まぁ、良いけど。


「まぁ、無詠唱だろうとそうでなかろうとどっちでも良いだろう? どの道これからやる事は一つだ。 違うか?」

「それもそうね。 では、始めましょうか」

「開始は、この銅貨を指で弾き、床に落ちた時で良いか?」

「なんでも良いわよ? なんなら今不意打ちで始めてもらっても私は一向に構わない」

「ああ、そうですか」


 そして俺は銅貨を親指を使って真上に弾き飛ばす。


 一瞬の静けさと、闘気が修練場に溢れ、そして金属が落ちる音が聞こえてくる。


『ピューーーー一ィッ!!』


 その瞬間、俺は指笛を吹く。


 そしてカレンドールさんの木刀は俺の顔面に当たる瞬間にブリジットの持つ木刀によって止められていた。


 てかブリジットよ。 何でこんなにも来るのが早いのか。 これは、何か? 『散ッ!!』といえば散る事ができるのか? いや、できそうだから怖い。


 もはや犬の域を超えて忍犬と言われても俺は驚かない。


「あなた……これは私とこのクズであるカイザルとの契約魔術を交わして行う模擬戦よ? それを邪魔すればどうなるのか分かっているのかしら?」

「お前こそ何をしているんだ? お前が許可したんだろうが。 邪魔でも何でもなくて契約違反でもない。 今回の模擬戦は勝つために使えるものは使って良いという内容だったはず。 奴隷も当然その内の一つだ」

「なっ!? ひ、卑怯──」

「まさか卑怯だなんて言うつもりじゃないよなぁ?」

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